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英雄の末裔①  作者: VERA
惑わしの木
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惑わしの木3

「多分、あいつら、自分が死ぬのが一番怖いんじゃないか?」

 ビリーが震える声で返した。

「もっと言えば、自分達の親分が目の前に現れたら、発狂するんじゃない?」

「フェリシアは、本当に何も見えなかったの?」

 アニスが興味げに訊ねた。フェリシアは首を縦に振った。

「何も見えなかったわ。でも、ビリーの話を聞く限り、私が“恐怖”に対する正しい答えを知っているとは思えない。……私だって、家族や友人を失う事は、耐えられない恐怖だわ。」

 それっきり、三人は黙り込んでしまった。フェリシアは、アニスが何を見たのか聴こうと思った。しかし、彼女の肩が余りにも震えていたので、ぐっと飲み込んだ。

 いつの間にか、三人は大聖堂の前まで辿り着いていた。遠くから見た時よりも、何倍も高く思えた。

 頑丈な扉が目の前にある。三人のうち、誰が押し開けるか、瞳で会話をしあった。結果、三人同時に取っ手を掴み、強く押した。

 暗闇に光が弾け、三人は余りの眩しさに目を背けた。

 次に顔を上げた時に、三人の目には端正な顔立ちの青年が立っていた。

「ようこそ、ディミオスへ。」

 彼は、非常に魅力的な笑みを浮かべると、扉の内側へ新入生を招いた。

「開いている席に、順番に座ってくれ。」

「なあなあ。」

 ビリーがフェリシアの耳元で囁いた。

「僕は、自分の顔に自信が無くなった。」

「これまであったの?!」

 フェリシアが驚くと、アニスが盛大に吹きだした。ビリーは不機嫌に成り、二人を置いて、どんどん歩きだした。

「嘘よ!」

 フェリシアが慌てて取り繕うとする。

「大体、笑顔なんて何の武器にも成らないでしょう?!」

「何のフォローにも成って無いよ!」

 彼は益々怒り、乱暴に空いている席へと腰かけた。衝撃でゴブレットが倒れ、上級生が何人か、慌てて身を引いた。


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