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英雄の末裔①  作者: VERA
惑わしの木
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惑わしの木2

 魔法使いにとって、杖を取り落とす事が、何よりの命取りだ。仮にも義務教育を終えて、ディミオス校への進学を希望した者の迂闊な行為に、フェリシアは眉を吊り上げた。

「あの……二人共。一緒に大聖堂まで行っても良い? 私、今のでふらふらなの。……あ、アニス・メイシーよ。」

「フェリシア・セイモアよ。」

「ビリー・アルフォード。」

 三人は順番に握手をし、歩き出した。その頃になってようやく、背後に一年生がちらほらと、姿を現し始めた。

「ねぇ、二人はいったい何を見たの?」

「何って?」

 アニスの問いに、フェリシアは顔を顰めた。それを見て、ビリーが息を呑んだ。

「君……何も見えなかったの?」

「何が?」

「信じられない! 本当に?!」

「だから、何が?!」

 フェリシアはイライラと聞き返した。口を噤んでしまったビリーの代わりに、アニスが説明した。

「私も近づくまで気が付かなかったけれど、あの老木は多分“惑わしの木”よ。……習ったわよね?」

「ええ、勿論。でも、迷信じゃない?」

「迷信じゃ無いさ!」

 ビリーが怒った様に声を荒げた。

「僕がさっき、死んだはずの家族を見たって言ったら、信じる?!」

「ビリー!」

 フェリシアはショックを受けて、言葉を失った。

「でも……でも、もし本当にそうなら……どうやって――」

「死んだ人間が帰って来ない事は分かってる。それに、家族の幻影が、僕を傷つけたりしないだろう?」

 ビリーは暗い声で答えた。その時、フェリシアは何故、あの老木が“移動ポイント”に選ばれたのかを察した。

「マディスの奴らがあの木の前に立ったら、何が見えると思う?」

 全てを理解したであろうアニスが、消え入りそうな声で呟いた。

「奴らにとって、一番の恐怖は?」

 そう。惑わしの木の花は、不思議な芳香と共に、その人が一番恐れているモノを見せるのだ。何の影響も受けない者は、魔法界の真理の一つを、正しく理解する者と呼ばれている。

 幻の繰り出した攻撃には、実体性がある。つまり、場合によっては命を落とす危険性もあるのだ。


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