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アルヴェニスウェールの春6
「君のせいで、良い暇つぶしになったよ!」
ビリーが皮肉交じりに声を張った。
「良い実践訓練だった!!」
「あの人、この距離で私に粉砕呪文を使ったのよ?! 暇つぶしどころじゃ無いわよ!!」
フェリシアはガクガク震えながら、杖を握りしめていた。その様子を見て、ビリーは目を丸くした。
「もしかして、怖いの?」
「怖いわよ!」
フェリシアが噛みつくように返した途端、ビリーはヘラヘラと奇妙な笑いを浮かべた。
「僕……安心したよ。皆が君みたいに、冷静だったらどうしようかと思った。」
それから彼は、置いてあったフェリシアの新聞を勝手に読みだした。
「君、これ一部でどの位潰れた?」
「一時間。」
「じゃあ、あと三時間を何して過ごすか、後で考えよう。」
呑気を装った様子に、フェリシアは初めて柔らかな笑みを浮かべた。
「じゃあ、貴方が読み終わるまでに、私は暇つぶしの方法を考えるわ。」
外は、悪天候のせいもあってか、早くも宵闇が迫っていた。しかし、フェリシアは半刻前ほど憂鬱ではない事に気がついた。