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不覚  作者: のんびり桃
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第6話: 思考不能

家に着いてからも、泣き続けた。

「なんで泣いてんの?理由があるから泣くんでしょう?」

夫の問いかけに、私は何も言えなかった。 言える筈もない。 「なんでも

ないの。ただ、心が不安定なだけ。明日になったら、きっと元の私に戻って

るから」そう言う私に、夫は、「信頼されてないんだね」と、一言だけ言うと、

悲しそうに、でも、哀れんで私を見ていた。


「ごめん」なんて、一言では片付けられないことだ。 それに、相も変わらず

私は夫を愛している。 離れている子供と、今一緒にいる子供二人が私の命

なのにも、全く変わりはない。

だから・・・私は、これで良かったんだ。

逆に・・・こんなに泣いたけど、胸が張り裂けそうに苦しかったけど、彼が

私に対してしてくれたことは、最善の策だったのだと思う。 感謝しなければ

いけなかったんだと思う。


彼が、帰途の最中、電車の中からメールをくれた。 

「驚きました。すごく、話しやすかったし、仕事が終わって会えなくなるの、

寂しいな、ってちょっと思ってたけど。 でも、まさか、って感じでした。」

彼は、びっくりするぐらいピュアな男性だ。 喩えるには申し訳ないかもしれ

ないけど、私とちょっと似ている。 まっすぐにしか生きれない人。

だから、多くの人には、『わがまま』『マイペース』とか、あまり良い印象を

与えないのかもしれない。

だけど、嘘がない。 ちゃんと、真実に従って発言してくれる。

だから、好きになってしまったのだろう。


きっと、彼は、かなり驚いたのだろう。 年上の、既婚の私がまさか、って。


でも、私もまた、自分の感情に嘘をつけなかった。 ひどい人間って、わかって

いたけど、でも嘘をつけなかった。


じゃぁ、夫には何も言わずに、このままいてもいいのか? それは嘘ではない

のか? そんな自分の矛盾にも自分自身を追い込むぐらいの感情を生んでいたの

は確かだった。


一体、自分は何をしたいのか?

人の幸せを願うとき、私は何を選べばいいのだろう?

そもそも、私が彼を好きになってしまったのは何故なのか?


仕事をやめてから、しばらくそんなことを毎日考えていたころ、一通のメール

が届いた。


「元気ですか?飲みに行きませんか?」

彼からだった。

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