エピローグ
― 10年後 ―
私は10年という長い年月を、あっという間に過ごしてきていた。 人生とはそんなものだろうけど、順風満帆で来たわけではない。 だけど、その全てをいとおしく思えるだけの人生だった。
「あみー! ちょっとこっち持って。 手伝ってよー」
パートナーの声がする。
「うん、待っててー」
私は答える。
お庭でのバーベキューの用意をしているとき、私の手伝いを欲しているのだ。 いろんなこと、この十年あったけど、なんとか楽しく、穏やかに、愛のある時間を過ごしてきた。
上の娘は、もう幸せな結婚をして、子供が一人できた。 私は、まだ40代にしておばあちゃんだ。 下の娘は、今17歳。 アメリカに留学している。 そして、私は、自分で会社を興して毎日仕事をしている。 たまの休みは、こうして、パートナーと仲間たちとバーベキューを楽しんだり、旅行したりと、余暇を満喫する生活だ。
今日のメンバーは、夫、恭子ちゃん、恭子ちゃんのご主人、お二人のお子さん、萌さん、萌さんのお子さん、そして・・・
「あみ、焼けてるよ〜」
私の愛すべくパートナーだ。 そして、そこに私の3人目の子供。
恭子さんは、10年前に彼と付き合っていた彼女だ。 とても幸せな結婚生活をして、私たちとの付き合いも続いている。
萌さんは、夫のパートナーだ。 夫を心から愛し、そして、お子さんも産まれた。
私は・・・あのまま、彼と一緒に生きている。 3人目の子供も産まれた。
なんとも奇妙な関係を続けているが、それが私たちにとって一番良い関係になるということがわかったのだ。
私は、今でも変わらず夫を愛している。 紙上での結婚もまだ、続いている。 子供が、18歳になったら、籍を抜こうということになっているのだ。 それを承知で、萌さんも夫と共に生き、子供も産み育てている。
彼の10年前に付き合っていた彼女も、素敵な人と出会い、それでも彼を愛していることに変わりはなく、こうして私たちとの付き合いが続いてるのだ。
それは、恋ではなく、愛だ。
結局は、愛とは、互いのことを一番に考えることなのだ、ということを、それぞれが考え、実行しているということになる。
私たちは、皆幸せだった。
誰を憎むこともなく、誰に嫉妬することもなく、だけれども、この中に身を置いておきたくて・・・そんな生活を、もう8年は過ごしている。
私は、来年、娘が18歳になったなら、彼とどうしようか?と考えているところだ。 結婚するも良し、このままでも良し。 彼が、私なんかよりも、もっともっと若くて素敵な人と出会えるのならば、それも良し。 私は、彼が幸せならばそれが一番だからだ。
だから、今は、あまり考えずに、このまま進んでいこうね、というところで、留まっている。
今も、変わらず、彼が好きだ。大好きだ。 そして、心の底から愛してる。