表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

8・女心はよくわからなくて困ってしまうんだが

それから数日後


オレは近所のカフェでブレンドを嗜んでいた。

まあ、可もなく不可もなく。

味わいに特に大きな不満は無い。

というか、口コミではそこそこに評価の高いカフェではあるのだが

正直、コーヒーや紅茶の味は究極に不味くない限りは

それほどわからない。

きっとうまいコーヒーではあるんだろうな、うん。


ガランガラン


店頭の扉から小気味好い鐘の音が鳴り響いた。


「あっ、寿くーん!お待たせ!ごめんねぇ、待たせちゃって。。。」


オレを見つけて、外は暑かったのか少し

顔を赤らめながら声をかけてくる少女。


「全然待ってないから気にすんな。

とりあえず座んなよ。何飲む?アイスコーヒーもおすすめメニューみたいだぞ」


汗はほとんどかいていないみたいだ。

座った瞬間に女の子の良い香りがするし

何かの柑橘系のソープの匂いだろうか?


髪は毛先が軽めにカットされていて

肩上くらいの長さのすっきりとした前上がりボブ。

飲食店で働いていることもあってか

清潔感があってとても印象が良い。

幼いころはさくらんぼのヘアゴムで束ねていた髪も

すっきり切って、大人っぽくなった幼馴染の姿がそこにはあった。


「ありがとう!じゃあアイスコーヒーにしようかな。。。」


オレは彼女が席に腰を掛けると水を運んできた店員に

そのままアイスコーヒーを注文した。


「ありがとうな、都子!

その日のうちに連絡くれて。

忙しくて忘れちゃうんじゃないかと思ってたよ。」


先日、ファミレスで偶然再会した幼馴染の都子と

今日は二人で会うことになったのだった。


「そんなのあたりまえじゃん!

また寿君がどこかへ行っちゃって、もう会えないなんてなったら

私だって嫌だよ?

寿君の方こそ、知らない番号から電話来たと思って

電話出てくれないんじゃないかって思ったし(笑)」


笑うとできる笑窪は昔っから変わらない。

そう。そこにいるのは、紛れもなく昔ずっと

一緒だった幼馴染の都子に間違いなかった。


「おいおい・・・ちょっと待てよ!

どこかへ行っちゃったのは都子の方だろ?

オレのせいにするんじゃないよ。ハハハ。」


なんて少し微笑しながら昔話をオレたちは楽しんでいた。


「髪を切っても全然変わってないな、都子は。」


「ん?そうかな・・・。でも背はずっと寿君より高かったのに

今は抜かされちゃってるなぁ・・・、さすがに。

あっ、胸とかはあの時よりもずいぶん大きくなったよ。

ほら見てよ?」


ムギュっとあまり露出をしていない控えめな服装ながら

寄せ集めた胸は結構なボリュームとなって存在感を示している。

小学校5年生のときにはまだ成長の片鱗を見せていなかったから

ものすごく違和感を感じる。それも幼馴染という存在だからだろうか・・・。


「こら、やめろって!

オレだって一応は男なんだからむやみにそういうの見せるんじゃない。

男は獣なんだから何するかわからないぞ!!もちろんオレも含めてな。」


「ぷっ!アハハハハハ!!なにそれー!

そこは『オレはそんな獣とかじゃないけどなぁ』とかって言いなよ。

でも、私のこと女の子としてみてくれているんだ?そこは嬉しいよ。。。」


「そりゃあ・・・その・・・小さいとき・・・キスとかしたり・・・

迎えに・・・・とか・・・あんなこと言われたりしたら嫌でも

好きになったりするし、女の子なんだって意識するだろ!

ガキなんてマセてるんだからな。今は割と素直にモノ言えるようになったよ。」


「アハハハ!そうなんだ!!

ずいぶん素直でかわいくなったんだね、寿君は!

確かにそんな思い出もあったけど・・・

今は大人なんだし思い出だけであんまり本気にしないでね!

私だってちゃんと・・・するときは・・・真剣に・・恋・・・していきたいし・・・」



カアアアアアアアアアアアアッ

都子の顔が真っ赤になってしまった。


「ん?かわいいとかないだろ。。

ってか最後の方ボソボソ言ってて何言ってるか

ぜんぜんわかんねーぞ?なんだって?」


「ん~ん!なんでもない!気にしないで。

ちょっと暑いなーって思っただけ!」


「そうか?クーラー結構効いてるし

アイスコーヒー飲んでるとむしろちょっと寒くなるんじゃねーの?」


「もう!ばかっ!!

なんでもなーよーだ!」


都子はべーっと小さな舌をちょこんと出して

オレにバカっと言った。

どうしたんだろう。変なヤツだな。


「ところで寿君って今何してるの?」


「オレは普通に大学生だけど。2年生。この近くでアパート借りて通ってる。都子は?」


「私は夜、調理師の学校通いながら

寿君と再会したファミレスでバイトしてるの!

あそこのファミレスってチェーンだけどけっこう自由でさ。

店舗ごとにオリジナルメニューを出してるんだよ。」


「そうなんだ!そういえばランチ注文したときも

シェフの気まぐれサラダとか都子の特製デザート出してくれたな。」


「そうよ!だから創作料理とかもやらせてくれて勉強になるんだ。

厨房のシェフの人達もみんな良い人でいろいろ教えてくれるし。

だから私、バイトして学校生きながらいつかは自分のお店を持ちたいの。

陽の当たる森に囲まれたお店!小さくてもいいの!軽食やコーヒーも楽しめるレストラン♪」


「そっか!夢があっていいな都子は。」


「うん!だけど実家だと練習があまりできなくてさ。

大きなキッチンで料理もやりたいから引っ越そうかなって思ってるんだ!

だからバイトも頑張ってるの!

そしたら寿君やお姉さんも招待するね!寿君は夢あるの?」


「オレは就活まだだし。これといって何やろうとかってあんまり考えてないけど・・・。

いつかは大きなお家で高級車とバイクに乗ってブンブン言わせたいな(笑)」


「そっか。早く二人でそれができるといいね。

・・・あっ・・・カアアアアアアアアアアア・・・・・・

ううん・・・・なんでもない・・・。」


「どうしたんだ?急に赤くなって。

それくらいすぐにできそうな気も・・・。

ん?・・・・・・・・ちょっとまてよ・・・・・。」


「ふう・・・・・・・・どうしたの寿君?」


「いやできるかもしれない・・・

その手があったか・・・!!

みんなにとってメリットのある選択肢を見つけたかもしれない。

総てを解決できる幸せな方法が!!」


「え・・・?寿君?」


「都子!!!」


「・・・・・え!?なになに!??寿君?」


「オレと付き合ってくれないか!?」


「・・・・・え!?ちょ・・・ちょっと!!!!いきなりどーしたの!?

そりゃあ寿君のことは幼馴染だし嫌いじゃないけど・・・・むしろ昔は・・・

好きだったけど・・・最近久しぶりに・・・再会したわけだし・・・

その・・・私だってその・・・心の準備が・・・

ボソボソ・・・・」


「何言ってるかわからんけど、とりあえず行きたいところがある!

来月そこに付き合ってくれ!ねーちゃんも来る!!」


「・・・・?・・・・え?・・・・カアアアアアアアアアアアア!!!」


「どうしたんだ、都子!?風邪ひいてんのか?今日ずっと顔赤いぞ??」


「もう!寿君のばかっ!!」


何かよくわからんが、ほっぺをぶたれてしまった。

女心はよくわからんものだな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ