タイガー殺し
地獄の樹海を抜けて、やっと近代都市の長沢市にある長沢高校に着いた瞬太たち。そこで見つけてしまった『団結の儀式』。果たして『団結の儀式』とは、そして長沢高校の実力とは。
長沢高校にやっと着いた名川高校だが、疲れて野球なんかできない状況になった。
瞬太は今思い出した。
守が一番疲れたのは、樹海で疲れさせて勝つ方法を使った高校だって。
今納得した。所々に締め付けられた後があるし。
でも長沢は良いところだ。
みる限り大都会なのに山が囲んでるし、寺らしき所もあるし、新幹線もたくさん通る。
なのに、なんで街の入り口がこの樹海しかないのか。それが一番気になる。
まあとりあえずここには練習試合で来ているのだから、街にいちゃもん付けなくても平気だと瞬太は思った。
長沢高校に着くと、瞬太は驚いた。野球なんて一気に4回の試合ができる程の広さだ。
「部長、ここめちゃくちゃ広いですね」
「確かにここは野球をするなら最適な場所だ。だけど、樹海しか行けないから…」
もう長沢高校の野球部は練習をしている。
袖に赤い線が3本入っているセンスがいいユニフォームだ。
「名川高校野球部部長の林田です。お願いします」
部長が一歩前に出て、帽子を取ってあいさつした。
「お願いします!!」
その後、部員が一歩前に出て帽子を取って頭を下げた。
「はい、よろしく」
白髪交じりの長沢高校の顧問があいさつした。
「さあみんな、練習をやめて。試合だ!!」
「はい!!」
その時、瞬太と同級生の岡崎が何かに気づいた。
「どうした?岡崎」
野口が言うと、岡崎は長沢高校の人たちに指を指しながら言った。
「あいつら、同じスパイクだ」
部員たちが一斉に長沢高校を見る。
確かに長沢高校の人たちは、同じスパイクだった。
「あっ、本当だ!!」
すると、栗島が気づいて言った。
「あとあいつら、グローブもバットも全く同じだ!!」
部員たちがまた長沢高校の人たちを見ると、確かに長沢高校の人たちはグローブもバットもサイズは違うが同じだ。
「もしかして、これは、団結の儀式」
部長が汗を垂らしながら言った。
「団結の儀式?部長それは何ですか」
岡崎が聞くと、部長が何かに怯えているかのような顔をした。
「団結の儀式。それは1980年の高校野球でやっていたグローブもバットもスパイクも全く同じにして、一人一人が団結して勝利を収めようという目的で行う儀式だよ」
「へぇ、それは野球だけに限らず団体で行うスポーツにはいい儀式ですね」
笠置先生が言うと部長は焦った。
「何言ってるんですか!!この儀式を破る。つまり、一人だけで勝利しようと行動する人を発見した場合、集団リンチ後、強制退部」
「えっ!!」
「だから、ランナーがいる塁の近くでスローフライとかしてアウトしたら…」
「はぁ!!そんなのよくあるだろ!!俺だって何回もしてるぞ!!」
そのころ長沢高校では。
「見ろ…。俺らの儀式を不評してるぜ」
キャッチボールしている一人が言いながら投げた。
「確かに団結の儀式は、効果が発揮される分、ペナルティーがある。だが、長沢高校はこれだけじゃないぜ」
ピッチャーが投球練習をしている。
「なっ、東」
壁に跳ね返ってきたボールを取って、ほほえみながら『ああ』と言った。
ついに試合が始まった。じゃんけんの結果、名川高校が先攻だ。
一番、細波。名川高校唯一の長打者だが、練習はさぼり気味だ。
「がんばれよ!!細波」
笠置先生がバットを細波にバットを渡しながら言った。
「はい。絶対外野を走らせます!!」
笠置先生は細波を見ながらうなずいた。こいつなら絶対やると確信したからだ。
細波がバッターボックスにつき、バットでホームベースを二、三回叩いて、センターとレフトの間をバットで標的を定める。
「タイガー・タイム」
内野と外野がバッチこいやーというかけごえを背に受け、ピッチャーが投げた。
「えっ…」
ベンチ内がつい応援をやめてしまう程あきれている。
なぜなら、ボールがゆっくりゆっくりと進んでいるからだ。
ボールを投げ飛ばすというよりかは、ボールを浮かしているといった方がいいのかもしれない。
「フワフワって効果音をつけたいな」
「あぁ」
細波もおもいっきり打ってやるぜって感じの構え方になっている。
「へっ、なんだこのフワフワボール。まるで風船を投げてるようだぜ」
ピッチャーが笑みを浮かべる。
すると、ボールが急に速く回転していまさっきのフワフワボールとは違う速さになった。
ボールは一瞬にして細波を素通りして鈍い音と共にキャッチャーミットへと入った。
「ストラーイク!!!」
細波は呆然と立ちすくんでいる。
「何がタイガーだい?」
ピッチャーが笑みを浮かべながら言った。
「マジかよ…」
瞬太は驚いて微動だに出来なかった。
意味不明な投球で長打者で打率もある細波を見逃しにした。その投球を見た細波が行った行動とは?果たして名川高校は勝てるのか?




