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神様の恋愛日和 

作者: 文月みい
掲載日:2026/04/22

たくさんの作品の中から選んでいただき、ありがとうございます。


「ぷはぁ、生き返るぅぅ。」


 ここは、町外れの古い教会だ。人から忘れ去られて、もう何十年も人間など来たことがない。因みに、僕はこの教会で神をやっている。

 そんな教会に、全身を呪いに包まれた若い女が突然入ってきた。

 

「やっぱり古くても教会は教会なのね。ここに入った途端、呪いが逃げていったわ。フフ、ザマァみろ。はぁ、久しぶりに体が軽いわ。」


 彼女は、今にもスキップしそうな軽やかな足取りで祭壇の前まで来ると、祈りのポーズをして、僕に感謝の言葉を口にした。


「神様、呪いを消し去ってくれて、ありがとうございます。感謝致します――」


 彼女は、長々と感謝を伝え、スッと立ち上がると、そのまま教会の椅子に腰かけた。


「はぁ、まさか私が呪われるなんて信じられないわ。私が何をしたと言うのかしら。私だって望んであの方の婚約者になったわけではないのに…。あんな浮気者こっちから願い下げよ。叶うなら今すぐにでも婚約破棄したいわ。」


 どうやら彼女は、婚約者に浮気されているようだ。そんな最低な男は、さっさと捨ててしまえばいいのに、そんな簡単なことができないなんて人間も大変だな。


「神様だって、嫌いな相手とずっと一緒に居るなんて耐えられないわよね。」


 急に話しかけられて驚いた。まさか、僕が見えているわけではないよな。

 彼女の前に立ち、顔を覗いてみるが反応はない。やっぱり見えてないようだ。


(なんだ、ただの独り言か…)


「あの男のどこがいいのかしら。そこまで頭が良いわけでもないし、剣の腕もイマイチ。確かに顔は…まぁ、美形の部類に入るけど、上から目線で命令ばかりだし、ダンスだって下手くそよ。夜会のダンスくらい楽しみたいわよ。神様もそう思うでしょ。」


『うんうん、そうだね。』


 彼女には見えてないけど、久しぶりの来訪者に少しだけ嬉しくて、つい返事をしてしまう。


「やっぱり、そうですよね。神様も分かってくれますか。」


 僕の言葉が聞こえるかのように、彼女が言葉を返すからドキリとした。

 

 本当に聞こえてるわけではないよな。彼女の目の前で両手を振って、『おーい』と声を掛けてみる。

 やっぱり反応無し。聞こえてない。さっきのは、偶然か…。


「ついつい話しすぎてしまいましたわ。神様、今日は話を聞いてくれて、ありがとうございます。」


 彼女は、そう言うと、そのまま帰ってしまった。

 

 彼女が帰った後は、しんと静まり返り、いつもと同じ筈なのに、何だか少しだけ寂しく感じた。



♢♢♢♢♢♢


 あれから、数ヶ月……。


 あの日から彼女は毎日教会にやって来た。


「神様、どういうことですか!呪いが消えていません!祓ってくれたんじゃないの!」


 翌日顔を見せた彼女は、前日と同じように呪いで包まれていた。


「…あれ?また呪いが消えた?体が軽い。どういうこと?教会に来たら呪いが消えるけど、しばらくしたら元に戻るってこと?」


 正しくは、教会内の聖域に入ると呪いが薄くなっているだけで祓われたわけじゃない。

 だから、教会から外に出ると呪いの力が元に戻る。弱い呪いならそのまま祓えるだろうが、彼女の呪いは、少し厄介だった。


「教会の中では呪いが消えるなら、毎日通えばいいのね。わかったわ。神様、これからよろしくね。」


 それから彼女は、決まった時間に毎日教会に来るようになった。


(そろそろ、彼女が来る時間か…。)


 彼女は学園に通っているらしく、学園が終わると教会に顔を出す。

 あの浮気男も同じ学園の同級生で、浮気相手は一つ下の女らしい。

 

 学園では、婚約者と浮気相手は恋人同士の様に振る舞っていて、彼女は恋する二人を邪魔する悪役令嬢だと言われているようだ。

 あの彼女が悪役令嬢ならば、この世の殆どの女性は悪役令嬢と言えるのではないか。


「神様、ご機嫌よう。ひゃっほー、今日も生き返るぅぅ。さいこぉぉ。かるーい。」


 教会内に入り、呪いが薄くなると気持ち良さそうに伸びをして、いつもの場所に腰を下ろす。

 相変わらず、令嬢らしからぬ言葉遣いだ。


「神様、聞いてくださいよ。あの浮気男、ついに夜会のエスコートを断ってきたんですよ!しかも前日にです。酷くないですか?明日の夜会は欠席できないから、一人で参加ですよ。もっと早く断ってくれたら、新しいパートナーを探したのに、本当に最低。それにね――」


 いつも通り、愚痴をこぼす彼女。ここでは、僕しか居ないので、不満も苦情も言いたい放題だ。  

 

 彼女の話は、ほぼ愚痴だけで、満足するまで話せば、後はスッキリして帰っていくだけだ。

 人間は、欲深く傲慢で他人を蹴落とす事ばかり考えていると思っていたが、彼女は違うようだ。

 

 こんなに酷い仕打ちを受けているのだから、婚約者に対して恨みや憎しみを抱き、''地獄に堕ちろ''くらいは願ってくると思ったが…。

 

 僕が居るというのに、彼女からは何の恨みも願いもない。無さすぎる。


 だから…だろうか。


 彼女の話を聞いてても嫌な気持ちにならない。

 

 人から何も願われない。彼女は、ただの話し相手として僕を見てくれる。対等な関係。


 彼女との時間が心地よくて、ずっと続けばいいと思うくらいには、気に入っていた。


「はあ、スッキリした。神様いつも聞いてくれてありがとう。今日は、クッキーを作ってきたので、一緒に食べませんか?」


 彼女は、一通り話し終えると包みを取り出し、それを広げた。

 中からは甘い匂いがして、美味しそうなクッキーがたくさん見えた。


「今日は、クッキーを作ってきました。気に入ってくれたら嬉しいのだけど、どうでしょうか?」


 僕は、クッキーを一つ摘まんで食べる。


『うん!とても美味しいよ。やっぱり君はお菓子作りの天才だな。』


 もう一つクッキーを摘まんで食べる。美味しくて手が止まらない。

 

「フフ…。気に入ってくれたようで嬉しいです。もっと持ってくればよかったですね。」


 気がつけば半分以上のクッキーが無くなっていた。美味しいからと食べすぎた。少し恥ずかしい。


「あれ?もういいんですか?まだ残っていますが…。」


 クッキーが減らないことで、彼女が少し寂しそうな顔をした。


『いや、まだ食べるよ。』


 一つクッキーを取って口に運ぶ。


「あっ、フフ。ありがとうございます。神様の姿は見えなくても、ちゃんとクッキーが減っていくので、存在が感じられて嬉しいです。私が作った物を食べてくれるのは、神様だけですよ。」


『こんなに美味しいものを食べないなんて、人間は愚かだな。』


 結局、全部食べてしまった。食い意地の張った神だと思われてないだろうか。


「明日は、ドライフルーツの入ったケーキはどうですか?」


『ケーキ!大好きだ!』


 嬉しくて彼女の両手を掴んだ。小さくて温かい。


「…っ。何かしら…?もしかして…神様?」


 つい手を握ってしまった。見えなくても、僕の気持ちが溢れて、彼女に伝わってしまったようだ。


「ケーキが好きってことかしら?では、明日作ってきますね。楽しみにしていて下さい。それでは、また明日。」


『ああ、楽しみにしているよ。』


 明日が楽しみだなんて、こんな風に思ったことは一度も無かった。

 

 最近は、一方的に愚痴を聞くだけなのが物足りないような気もする。


 もしも、僕が姿を現したら…彼女はどんな顔をするだろうか。



♢♢♢♢♢♢



 ある日、いつもなら、「ご機嫌よう。」と元気な明るい声で入ってくる彼女が、無言で静かに教会内に入ってきた。


『どうしたんだ?今日はやけに大人しいな。』


 普段と違う彼女に、何かあったのかと気になり声を掛ける。

 勿論、彼女には聞こえていないが…。


「…ご機嫌よう、神様。えっと、今日は…その、恋に…私…恋に落ちました。」


 こ…い?こいとは池にいる魚ではなく…?


「あの、私…好きな…好きな人が出来てしまいました。その方は、スラッと背が高くて、騎士の方なんですが、力強くて優しくて、笑った顔が素敵なんです。陽の光に照らされた笑顔がキラキラで眩しくて、倒れた私に手を差し出す姿が、とても格好よくて素敵で、一目惚れしてしまいました。」


 どうやら、学園で婚約者と揉め事があったらしく、突き飛ばされ転んでしまった彼女に手を差し出した男がいたようだ。

 そして、その男に一目惚れしてしまったらしい。


「婚約者がいるのに、こんなの駄目だと分かってるのですが、そもそも婚約者は最低な男なので好きでも無いですし、今すぐ関係を絶ちたいくらいなんですけど…。あの方が婚約者ならよかったのに…はぁ…」


 彼女の瞳は、すっかり恋する乙女で、頬は朱に染まり、ウットリとしている。


 それからも、どれだけその騎士が格好いいか語り尽くし、今日は愚痴を言うことはなかった。


「あら、もうこんな時間。すみません。遅くなりましたが、今日はチーズタルトを作ってみました。」


 彼女が作るものは、いつも美味しい筈なのに…何だか今日は味がしない。


「あら?もしかしてチーズタルトは、お好きではないのですか?」


 なかなか減らないので、好きではないと勘違いしたようだ。

 彼女の作るものは、全部美味しくて大好きだ。でも、何故か今日は…それ以上食べる気がしなかった。


「…神様?そうだわ。明日はクッキーを作ってきますね。クッキー大好きですよね。これは…私が食べるので持って帰りますね。」


 彼女が少し悲しそうに、チーズタルトを包み直し、鞄に仕舞おうとしている。


『駄目だ!』


 僕は、鞄に仕舞おうとした包みを彼女から奪い取る。

 急に消えてしまった包みに、驚いた彼女だったが、すぐに笑顔になりクスクスと笑い出す。


「神様、受け取ってくれてありがとうございます。明日はクッキー楽しみにしていて下さい。それでは、また明日。」


 それだけ言うと、彼女は帰っていった。


 彼女の好きな人…か。婚約者がいる限り結ばれることはないだろう。

 

 それに…あの呪い。あれは、怨念の塊だ。人の憎しみや恨み、嫉妬や執着などが呪いとなって彼女に纏わりついている。

 多分、彼女の婚約者の浮気相手が呪いをかけているのだろう。人間の想いが強ければ強いほど、呪いも強固になる。

 神の聖なる力の前では力が弱まっても、すぐに呪いは彼女を覆い隠してしまう。


(彼女が、幸せになるには…婚約破棄が必要か。)


 神は、必要以上に人間に関わってはいけない決まりだ。

 ただ、一つ例外がある。神様だって恩返しがしたい時もある。

 

 この教会は、彼女が祈りや供物を捧げることで、僕の力が強くなり、聖域の力が増した。これは、僕からの感謝の気持ちを伝えるために、恩返し制度を利用する時ではないだろうか。

 

 今度こそ、彼女が婚約破棄して、好きな人と結ばれ幸せになるように、円満な婚約破棄をさせて上げよう。


 そして、僕は彼女の幸せのため、力を使って彼女の未来を変更した。


 翌日、彼女の愚痴ではなく、幸せな話が聞けるかと期待して待っていた。


 …だが、その日、彼女は教会に来なかった。



♢♢♢♢♢♢


 彼女が教会に顔を見せなくなって、3週間が経った。

 翌日、クッキーを持ってくると約束したのに、未だ約束は守られていない。


(やっぱり、彼女もただの人間ということか…)


 僕の力で、あのクズとは婚約破棄となっているはず。きっと今頃は、好きな彼と結ばれて楽しく過ごしているのかもしれない。

 恩返しになったのだから、良いことなのに、どうしてこんなにもモヤモヤするんだ。


 何故こんなにも、寂しい気持ちになる?


 何故こんなにも、彼女のクッキーが食べたくなる?


 何故こんなにも―――


 彼女に会いたいと願ってしまうんだ?


(僕は、おかしくなってしまった。これは、力を使った弊害なのか。)


 今まで誰かに会いたいなんて思ったことはない。こんな気持ち初めてで、どうしたらいいのか分からない。


(彼女に会えば、分かるのか…。)


 僕は、自分の気持ちの正体を知るため、彼女に会うことにした。


 彼女の名前も家も知らないけれど、僕は神様だから、彼女の事を思うだけで、居場所は分かる。


(彼女はどこにいる)


 彼女の事を思い浮かべる。


 思い出されるのは、呪いが消えて嬉しそうに笑う笑顔に、愚痴を言いながら頬を膨らませて可愛く怒る顔に、手作りのお菓子を僕が食べたことを知って嬉しそうに頬を染め、喜んでいる笑顔。

 どの表情も彼女らしい温かな雰囲気に包まれて、見ているこっちまで心が温かくなるようだ。


(あっ、見つけた。)


 彼女の存在を見つけて、直ぐさま、彼女の元へ移動する。

 着いた場所は、何処かの部屋。辺りを見回すと、大きなベットが目に入る。

 誰かが眠っているようだ。近づいて確認してみる。


(…っ、彼女だ…)


 そのベットには、よく見ないと顔が分からないほどに、濃くなった呪いで覆われた彼女が眠っていた。

 

『これは、どういうことだ。どうしてこんなにも呪いが濃くなっている。婚約破棄したら、呪いも消えるはずなのに、どうして。』


 僕は、そっと彼女の手に触れる。呪いが僕の手の方へ這ってくる。


(神である僕をも呪おうとするのか。)


 黒い呪いからは、人の執念や嫉妬、恨みや憎しみなどの感情が渦巻いていて、吐き気がする。

 

(こんな呪いを人の身で受ければ命に関わるぞ。)


 彼女の表情は、呪いのせいで見えないが、生命力は弱くなっているのが分かる。


 このままでは、彼女は死んでしまう。


 そう思うと胸がズキリと痛くて、彼女の手を握る手に力がこもる。


「……だれ…か…いる…の?……も…しか…し…て……かみ…さ…ま…?」


 彼女の弱々しい声が途切れ途切れに聞こえた。僕は、さらに握る手に力を込める。


 どうして彼女がこんなことになっているのか確認するため、彼女の記憶を読み取る。


 あの日、僕が力を使って彼女の未来を変え、クズ男有責で無事に婚約破棄が成立していた。

 そこで彼女と、婚約者との関係は絶たれるはずだった。しかし、自己保身のため婚約者が復縁を迫ってきたようだ。

 普通に考えて、政略結婚の相手に不誠実を働いての婚約破棄なので、クズ男の未来は絶望しかないだろう。

 クズ男の自業自得なのに、浮気相手は、それを彼女のせいだと恨み憎み妬んで、それが呪いの力を増幅させた。そのため彼女は倒れてしまったのだ。


 僕が力を使って未来を変えてしまったせいだ。たかが人間の呪いだと軽視して、未来だけを変えたから彼女が苦しむことになってしまった。

 恩返し制度は、既に使ってしまった。これ以上、人間に干渉することは出来ない。

 このままでは、呪いを解くことが出来なくて、彼女は本当に死んでしまう。


 神なのに何も出来ない自分に、腹立たしくて、気づけば視界が歪む。 

 

 その時、彼女の小さな声が静かな部屋に響いた。


「かみ…さ…ま…クッ…キー…って…いけ…なく…て…ごめ……さ…い」


 嗚呼、彼女はこんな時でも僕の事を気にしてくれる。約束を守れなかったことを謝る必要なんてない。だって彼女は、何も悪くないのだから。


 僕の目から、つぅーと何かが溢れた。


『君は、謝る必要なんてないだろう。謝るくらいなら、早く元気になって、またクッキーを僕のところへ持ってきてよ。』


 神は、人間に干渉してはいけない。その規約を破ると神でも罰が下る。

 

 僕は、もう神ではいられなくなる。

 

 それでも、僕は彼女を救いたい。


『早く元気になって、また教会で…』


「……かみ…さま…?」


 僕は、迷わず力を解放した。


 彼女を強烈な光が包む。彼女の体に、黒くこびり付いていた呪いが綺麗に消し飛んだ。


 僕は、全身の痛みに耐えながら、薄れていく意識の中で、目を覚ました彼女と視線が合った気がした。




♢♢♢♢♢♢



「神様、ご機嫌よう。ちょっと聞いてくださいよ。私が好きになった騎士の人なんですけど、声をかける女性みんなに良い顔して、たくさんの女性と関係を持ってる最低な男だったんですよ。告白する前で良かったんですけど、危うくまた最低男に騙されるところでした。やっぱり、恋愛日和は駄目ですね。みんなが特別、格好よく見えちゃうから。えっ?恋愛日和が何か知りたいですか?それは、例えば、陽の光や月明かりなどに照らされてキラキラ輝いて見える演出や、危険から王子様のように助け出したり、普段と違う姿を見てギャップにドキリとする場面など、ドキドキやキュンキュンしやすいことを言うんです。そういう時は、恋に落ちやすい時ってことですよ。」


 町外れの古い教会では、今日も若い女の子が、手作りのお菓子をお土産に訪れ、楽しそうに愚痴を話している。


 その隣には、若い男性が一人。手作りのお菓子を美味しそうに頬張りながら、彼女の愚痴を聞いている。


「あっ、まさに今ですよ。これこそ恋愛日和。私の作ったクッキーを美味しそうに食べてくれて、私を優しい笑顔で見てくれる。そんな神様に私は恋をしました。あなたはどうですか?」


 聞かれた彼は、クスクスと笑って彼女の手をそっと握る。


「恋愛日和か。それなら僕は、君が初めてここに来たときから、君の明るい笑顔や優しい心に癒されていたし、会える日を楽しみにしていたから、毎日が恋愛日和で、恋に落ちるのも早かったのかもしれないな。」


 彼の言葉に、嬉しそうにしながらも、彼女は困ったように話しを続けた。


「でもね、神様、恋愛日和には欠点もあるんですよ。それは、相手が駄目な人でも素敵に見えて恋しちゃう事があるってことです。だから恋愛日和は危険なんです。」


「それで、騎士の彼は…失敗だったね。でもね、僕に限っては、そんなことはないと思うよ。だって、好きな人を救うために神から人間になることも厭わないんだから。君のことを大切にできると思わない?」


 彼女が少し考える素振りを見せる。


「そうね。神様となら毎日が楽しい日になりそうだわ。」


「それは、任せてよ。僕はもう神では無くて、ただの男で神力は使えないけれど、君を毎日楽しませる力は十分残ってるよ。きっと、幸せにする。愛してるよ。」


 それから町外れの古い教会では、好きな人を救うために神から人間になった男と、彼に救われた明るく優しい彼女が、幸せな出来事を話す様子が、よく見られるようになりました。


 

            ― fin ―

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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