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第2話:村長さん、そのボロ家、ポシュッとお直ししましょうか?

「ポシュッ」という音と共に、村の常識が崩壊する。

ハズレ魔法と笑われた少年アルクが最初に着手したのは、村一番のボロ納屋のリフォームだった。

「そんな泥遊びで何ができる」と鼻で笑う大人たち。

だが、出来上がったのは見たこともない精密な石造りの建築物で……?

狩猟に採掘、そして王国建設へ。アルクの「規格化無双」が加速する!


エデル村の朝は早い。だが、その活気はどこか空虚だ。

 あちこちの家の屋根はひしゃげ、壁の隙間からは冬の足音が聞こえるような隙間風が吹き抜ける。この村の貧困は、もはや「魔法」という便利な力だけではどうにもならないレベルに達していた。

「村長、話があるんだ」

 アルクは、村の広場で頭を抱えていた村長のもとへ歩み寄った。十歳の子供の歩みにしては、あまりにも迷いがない。

「おお、アルクか。属性判定の結果は聞いたよ……災難だったな。だが気にするな、農作業なら魔法がなくても——」

「村をリフォームしたい。まずはその、崩れかけの共有納屋からだ」

 アルクが指差したのは、村の食料貯蔵庫も兼ねている巨大な納屋だった。柱はシロアリに食われ、今にも自重で潰れそうな代物だ。

「リフォーム? 何を言い出すかと思えば。あれを直すには腕利きの職人を街から呼んで、金貨が何枚も飛んでいくんだぞ」

「俺がやる。俺の『造形魔法』で」

 その言葉が聞こえた瞬間、近くで農具を研いでいた男たちが一斉に吹き出した。

「おいおいアルク、あの『ポシュッ』か? あのままごと魔法で家を直すってのかい?」

「聞いたかよ。小さな石ころ一個出すのが精一杯の欠陥属性で、村一番の巨大建築に挑もうってんだ。身の程を知れよ!」

 大人たちの嘲笑が広場に響く。アルクはそれを、冷めた目で見つめていた。

(……やっぱりな。この世界の連中は、魔法を『万能の出力装置』だと思い込みすぎている。一気に家を作ろうとするから魔力が足りなくなるんだ。なら、分けて作ればいい。ただそれだけのことなのに)

「いいから見てて。村長、もし俺がこれを直せたら、俺に村の『開発責任者』の権限をちょうだい」

「……ああ、勝手にしろ。どうせ壊れかけなんだ、好きに遊ぶがいいさ」

 村長は投げやりに手を振った。

 アルクは納屋の前に立ち、深く息を吐く。

 脳内に描くのは、完成した家ではない。前世で何億回とクリックし、配置してきた、一辺一メートルの「石のブロック」だ。

 構造計算? いらない。このブロック自体が完璧な直角と耐久性を持つように『規格』を固定してある。

「……生成ジェネレート

 ポシュッ。

 足元に、一点の曇りもない滑らかな石の立方体が出現した。

「ハハハ! 出たぜ『ポシュッ』だ! おいアルク、その石ころを積み上げていつ終わるつもりだ? 百年後か?」

 男たちの野次は止まらない。だが、アルクの指先が次に動いた瞬間、その場が凍りついた。

 ポポポポポポポポポシュッ!

 残像が残るほどの超高速連打。

 アルクの周囲に、まるで滝のように石のブロックが溢れ出した。魔力消費は「深呼吸一回分」のままだ。一回の負担を極限まで減らしたことで、アルクは前世のキーボード入力と同じ速度で魔法を行使できる。

 彼はそのまま、崩れかけた壁の土台にブロックを滑り込ませた。

 ガチン、と。

 物理法則がひれ伏すような完璧な噛み合わせ。接着剤など不要。自重だけでガッチリと固定される「組石造そせいぞう」の極致だ。

「な……なんだ、あの速度は……!?」

「それに、あの石の形……全部同じか? 職人が数日がかりで切り出すような精密な石が、あんなデタラメな数……!」

 アルクの動きは止まらない。古い柱を魔法で生成したブロックでジャッキアップし、腐った部分を切り離して、新しい石の柱に置き換えていく。

 前世で培った「建築理論」と「狂気的な作業量」が、異世界の魔法と融合した瞬間だった。

 ものの三十分。

 そこには、元のボロ納屋の面影など微塵もない、白亜の石造りの神殿のような「超高機能貯蔵庫」がそびえ立っていた。

「……できた。断熱魔法を込めた砂利ブロックを壁の間に挟んだから、中は夏でも氷が溶けないよ。これで食料が腐る心配はない」

 アルクが汗を拭いながら振り返ると、村人たちは口をアングリと開け、腰を抜かしていた。村長にいたっては、入れ歯が落ちそうになっている。

「……よし、実績は作った。次、仕事の割り振りを決めるよ」

 アルクは呆然とする大人たちの中から、二人を指名した。

「ガラムさん、こっち来て」

 呼ばれたのは、村一番の巨漢だが、獲物を仕留められず「図体だけの無能」と陰口を叩かれていた狩人だ。

「あ、アルク……お前、一体何を……」

「これ、あげる。俺の『造形魔法』で作った特製だよ」

 アルクが手渡したのは、二つのブロックを繋げたような、カクカクとした無骨な剣だった。

「なんだこれ、石の棒か? こんなので獲物が……」

 ガラムが半信半疑で、近くにあった丸太に剣を立てかけた。すると、重みだけで丸太がスゥ……と真っ二つに割れた。

「なっ!?」

「おっ!」

「ちゃんと切れたみたいでよかったぁ。心配だったけどこれじゃあ大丈夫そうか。」

「分子レベルまで密度を均一に固定した『高密度ブロック剣』だ。名前どうにかしろよおい。そのへんの鉄剣より百倍切れる(はず)だし、研ぐ必要もない。(はず)それで森へ行って、肉を確保してきて。今の村にはタンパク質が足りない」

「お、おう……! これなら、オークの皮だって紙同然だぜ!」

 ガラムが鼻息荒く森へ駆けていくのを見送り、アルクは次にもう一人を呼んだ。

「ボルドさん。これを持って鉱山へ行って」

 現れたのは、頑固一徹で偏屈な老採掘師だ。渡されたのは、重心バランスがミリ単位で計算された、奇妙な形のツルハシだった。

「……ほう。この重心、この握り心地……。アルクよ、お前、鉱山に入ったことがあるのか?」

「ないよ。でも、物理的に一番効率がいい形に設計したんだ。それで奥の硬い岩盤を砕いて、鉄と石炭を取ってきて。王国を作るには、資源がいるから」

「……ふん。小僧に指図されるのは癪だが、この道具は本物だ。行ってきてやるよ」

 ニ人はそれぞれの現場へ送り出された。

 村の広場には、アルクと、まだ事態を飲み込めていない村人たちが残された。

「さて……。肉と資源の供給ラインは確保した。次は『水道』と『道路』だな」

 アルクは地面に大きな地図を広げた。

 そこには、ただの農村を遥かに超えた、巨大な王国の都市計画図が描かれ始めていた。

 ハズレ魔法使いと蔑まれた少年は、今や村人たちにとっての「救世主」……いや、得体の知れない「若き天才建築家」として、その第一歩を踏み出したのである。

(ふふ……やっぱり建築作業は最高だな。前世の窓際より、よっぽどやりがいがある)

 アルクの口元に、前世の「神建築家」と呼ばれていた頃の、少しだけ危うい笑みが浮かんだ。


思ったより全然かけるなコレ。

成長期来てないけど早く寝ないと身長伸びないよ俺ー。


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