浮遊 -ふゆうー
※注意:ちょっとネタバレになってしまいますが、集合体恐怖症の方はブラウザバックしてください。
悪夢を見て夜中に起きてしまうことは大変辛いものです。日々のストレスがそんな夢をみさせるのでしょうか?
それとも……
ここのところひどい悪夢にうなされて目を覚ますことを繰り返している。
砂漠のような見渡す限りの砂地の場所を歩いている。ギラギラと真上から容赦なく照り付ける太陽に乾いた風が吹いている。暑さで汗がハタハタと砂の上に落ち、激しい喉の渇きを感じているが、水筒の類は持っていない。
足元を砂漠の蛇やトカゲが走り過ぎていく。高い空には何羽かの猛禽類がエサに有りつけないかと旋回しながらこちらの様子を伺っている。
時々遠くに緑の塊が見え、オアシスかと思い近付こうとするが、なぜかその影はゆらゆらと揺れていていつまでたっても辿り着くことが出来ず、いつの間にか消えてしまう。
何に追われているのかは分からないが、足を止めてしまったらきっと追いつかれてしまうという焦燥感と、どこかで見られている気配を感じ歩みを止める事が出来ない。
砂が丘になっているところを足を取られながら登って行くと、突然足下に落とし穴に落ちるような感触がして、砂の中に引き込まれる。流砂だ。手足で砂を掻きもがくが、どんどんと砂に飲み込まれていく。
もうだめだ、と思ったところで目が覚める。
全身に冷たい汗をかき、喉が痛くなるほど乾いている。
薄闇の中をキッチンに行き、大きなコップに水を汲んでごくごくと飲み干す。
こんなことを毎日繰り返している。
充分な睡眠時間は取っているはずだが、眠りが浅くなっているのか昼間の仕事中にも強い眠気に襲われることがあり、席を外して伸びをしたり缶コーヒーを買ってきたりはしているのだが、このままでは仕事に支障が出てしまいそうだ。
同じ課で同期の野村に冗談めかして相談を持ち掛けると、
「お前の今抱えてる案件の締め切りって結構ギリギリだったよなぁ。ストレスが溜まっているんじゃないか?喉が渇くのはもしかしたら睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるし。まあ、一段落したらストレス解消にカラオケにでも行こうや」
と言ってくれた。
自分でも追われる夢というのは締め切りのストレスでは無いかと思っていたので、やはり他から見てもそのように見えるということで、仕事を仕上げてストレスが軽減したら解消するだろうと考えていた。
しかし締め切りまでに案件を仕上げ、しばらくは激しいストレスが係るような案件も無いにも関わらず、相変わらず同じ夢を見て全身の冷や汗と共に喉の渇きで目を覚ますことが続いている。更に夢の影響か、この頃は起きている時も何かに見張られている様な気持ちがして落ち着かない。
いよいよ、ストレスか睡眠時無呼吸症候群の診察でも受けなければいけないのかな、と思い始めた夜、また激しい喉の渇きで目を覚まし、キッチンで大きなグラスに水を汲んだ時、何か少し違和感を感じた。
水は並々と汲んだがいつもより少し重い感じがする。
薄明りに照らしてみるとコップの中には無数のパチンコ玉大の目玉がフヨフヨと浮き沈みしている。
驚いて
「うわっ! 」
と声を上げた時、コップの中の目玉は一斉にこちらへ振向いた。
夏のホラー2025 として書かせていただきました。前書きで集合体恐怖症の方が間違って目にされないように注意書きをさせていただきましたが、もし目にしてしまいましたら申し訳ございません。皆さんに楽しんでいただきたいと思い書いておりますので、不快な思いをさせてしまうことは本意ではございません。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。
アクセス状況を見ていると、読んでいただいてあまり反応をいただけないと、
「面白くなかったのかな……」
とか
「それどころか開いただけで読んでもらえていないんじゃないか……」
とネガティブな考えが浮かんできて、気持ちが折れそうになってしまいます。
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