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もう遅い
森を駆けている途中、血に塗れた少年の死体がを見つけました。
私から離れるように私の寝ていた場所に背を向けて倒れていました。
きっと私を森に隠してできる限り離れておこうと思ったのでしょう。
まだ成人もしていないような、小さな男の子がこのような姿になっているという事実に私は悲しみを覚えました。
死体を見ても顔色一つ変わらない。私はそういう世界に生きてきました。
人間に見つかり殺されていく同族を見て、生存競争に負けて死に、啄まれる獣の姿を見て生きてきました。
弱肉強食。
この世の理。
美しいものなどいらない。背負うものなどいらない。身一つで命だけを持って一人で生き抜く。
私はそれができませんでした。
美しく自身を飾りたいし何かを背負い何かを守り欲のままに生きてみたい。
誰かと話をしていたいし誰かと楽しく笑っていたい。誰かと楽しく生きていたい。
それは心が擦り切れても心が冷たくなっても変わらないものでした。
私も、この少年もきっとそうだったでしょう。
私は軽く手を合わせ、また街へ駆け出しました。
私が街についたころにはすでに戦いは終わっていました。