崩界
「ココっ!!」
私は、飛び起きました。
冬だというのに私は汗をかいていて、寝間着はぐしょぐしょに濡れています。
不快感に眉を顰めつつ、私は夢の内容を思い出します。
不思議な夢でした。
私の妹が目の前で死ぬ夢。
馬鹿らしい。そんなこと、あるわけないのに。
私は、隣で眠る妹に目を向け、そこにいることを確認するように頭をなでます。
ほっとしている自分にあきれて、でもあまりにもリアルな夢だったせいで、私の心臓はまだ激しく鼓動を打っていました。
そんなことはあるわけがない。
そう、もう一度自分に言い聞かせ、私はそっとベッドから降ります。
ベット脇の机に置いていた仮面をつけ、兄の部屋に向かいました。
コンコン、とドアをノックをして、中にいる人に言いました。
「・・・・・・はいってもいいですか?」
「いいよ」
ドアを開け、中に入ります。
「どうしたんだ?こんな夜中に。・・・・・・いやな夢でも見たのか?」
時計を見てみると、針は3:54をさしていました。
兄はビーカーとアルコールランプを使い、牛乳を温め始めます。
「実験器具で牛乳を温めないでください」
兄は私の言葉を無視して十分に牛乳が温まったことを確認すると、手を止め、
「はちみつとココア、どっちがいい?」
「歯磨きしたのでいりません」
「そうか」
そういうと、兄ははちみつとココアを片付け、青汁(袋入り)を取り出しビーカーに入れかき混ぜました。
出来上がったものに氷を二つ入れて一口。
「ふむ、やはりこれに限るね。………ナナはそのままかはちみつ、ココはプロテインかオレを好む。苦味の良さは大人にしか分らないのだろうか?」
「そんなことありませんよ」
個人的には生ぬるい青汁を飲むほうが意味が分からないです。
「そうか。………それで、何か話したいことがあって来たんじゃないのか?」
「………はい。実は―――」
しかし、そこで会話が止まります。
なぜなら――—私を中心に世界が崩れていくから。
「お兄様!」
「ナナ!」
一瞬、派手な柄の蝶が視界に映ったような気がして、私と兄は世界の崩壊にそのまま飲まれていきました。
「知らない天井です」
目が覚めた時、私は知らない天井を見上げて、呆然としました。
しかし兄様の教えはしっかり守ります。
そう、「知らない天井」というよくわからない言葉を言うこと。
そんな絶賛混乱中の私の耳に、楽しそうな笑い声が聞こえます。
「あっ、目覚めたんだ!ねぇ、君は誰かな?名前、教えてくれない?」
「?・・・・・・夜鳥、ナナですけど」
呆然としたまま答え、衝撃を受けます。
「お兄様は?ココは?」
「え?知ーらない。君しかいなかったもん。ここはノウェム王国ヘルバース諸島だよ」
「そんな・・・・・・」
頭に手を当て、また衝撃を受けます。
「私の仮面は?」
ココはをここは?ととらえたらしいです。
初対面でココが人の名前だとは気づかないかもしれないので。
この世界には地域によって微妙にアクセントがちがうのです。