9.チーム補強
@クラブハウス 会議室 (フレンドリーマッチの翌日)
今日は試合翌日ということでチーム自体はリフレッシュ休暇だ。
俺はこれから打ち合わせのためクラブハウスまで来ているが…
正直なところフレンドリーマッチを終えてクラブの選手層の薄さを俺は実感した。
現スタメンに不満はないが、やはりリーグやカップ戦の試合数を考えるとオーバーワークになりそうな点が気がかりだ。これを解決すべく今日は親父を含むチームスタッフと対策を立てていく予定だ。
『遅くなって済まない、レオ。ユースチームの練習が長くなってね』
親父のジャック・エドワーズは現在、ユースチーム監督兼スカウトチーム部長になっている。
元々スカウトチーム部長として数人のチーム専属スカウトマン達を束ねていたが、俺のトップチーム監督就任に伴って俺の後任としてユースチーム監督に就任した。
ちなみに親父は俺の「数字」の能力について知らない。そのため俺が昔から、ときどきスカウトしてほしい選手をリストアップした有望選手リスト(「数字」の能力で見極めている)を渡しているのだが、そのリストを見て、「うちのスカウトマン達は優秀なはずだが、お前が見つけてくる選手のほうが活躍するのはなぜだ…」とよく落ち込んでいる。
『気にしないでいいよ。あの子達は順調に育ってる?何人かは親御さんと離れて育成寮に住んでるだろう?学業も疎かにはして欲しくないしね。まあ親父なら問題ないとは思うけどさ』
現在ユースチームには15歳から18歳までの25人ほどの子供たちが所属している。
さらにジュニアのトレーニング教室(チーム方式ではなく、あくまでサッカー教室で基礎練習がメイン)には14歳以下の子供が通っており、そちらは地元の子しか参加できず、実家から教室に通えることを条件にしている。
あまりに早く親元を離れるのは心身の発達に良くないという観点からだ。
15歳以上になればユースチームと寮に入ることが可能で、国内外でスカウトされた子も入寮することができる。
あくまで選択制なため、家から通える子や移住者は自宅からチーム練習にくることも可能だ。
クラブ施設についてはトップチームとほぼ同じものが利用可能なため、練習後に同じ食堂でトップチームメンバーとユースの子が食事する光景をときどき目にする。
『学業については学校の成績基準をクリアできていない子は練習に制限を設けて勉強時間に充てているから大丈夫だ。我々はサッカーしかできない人間を作るつもりはないからな。それに、優れたプレイヤーになるにはインテリジェンスは必須だと考えている』
『僕がスカウトに関わったからには最後まで面倒を見てあげたかったんだけどねぇ…引き継いでくれてありがとうございます』
『俺も一人の子を持つ親だからな。あの子たちも自分の子供だと思って接してるぞ。さて、子供たちの話はここまでにして本題に入ろう。俺以外のスタッフたちの貴重な時間も使うわけだからな』
『そうでした……では皆さん。お手元の資料をご覧ください…こちらが現状のチームメンバーです。ご覧のとおり、スタメンを張れる選手の層の薄さが問題となっております。皆が替えの利かない貴重な戦力といえば聞こえはいいですが、シーズンが始まればオーバーワーク等による故障のリスクが懸念されます。そこで補強が必要なポジションをまとめましたので2枚目の資料をご覧ください』
『ふ~む…OMFにCMにRBねぇ。OMFは昨シーズンまでのレンタル選手の契約満了に伴って現状オーウェンかネヴェスしかできず。だがそのネヴェスもCMの役者不足でCMからは動かせない。RBに至ってはコーリング以外適任がいないってことね』
『スカウトマンの方々でよい補強、レンタル候補がいれば推薦願います。また、ユースからCM候補で1人昇格させたいのでお願いします』
『ちなみに昇格はだれを? 』
『CMリュード・ミケルを考えています。もう少しユースで鍛えたかったですが、早いうちにネヴェスとプレーすることでなにかインスピレーション得てもらえればと……』
このCM候補のリュード・ミケルは、両親はナイジェリア人だがイギリス生まれイギリス育ちで、既に国籍選択でイングランドを選択している。
17歳、右利きで191㎝と大柄ながら足元の技術に優れているユースチームのスタメンだ。
プレイスタイル的にはネヴェスと同じく攻守両面で活躍できるだろう。
『なるほど…ユース監督としては彼を昇格させることに異存はないよ。明日にでも伝えておこう。合流はフレンドリーマッチ・アウェイ戦の終了後でいいかな? 』
『その予定でよろしくお願いいたします』
『レンタル選手についてなんですがよろしいでしょうか?スペインのセビージャFCにてU-20代表のRBが出場機会を探しているとの情報があります。同チームにはスペイン代表RBダニー・アルバレスがいて出場数が少ないようです』
世界中に散らばるスカウトマン達は今回オンラインで参加してもらっている。
プレー中の動画があれば俺の「数字」の能力で見極められるので撮ってくれているといいのだが……
『すみませんがプレー中の動画はお持ちですか?あれば見たいのですが……』
『ちょっとお待ちください…あ、あります!画面に映しますね。昨シーズン終盤戦の動画です』
この金髪で色白な選手か。すごいスピードでオーバーラップしてRWの選手を追い越していくな…
「数字」は現状「76」、将来的なポテンシャルは「88」。うちのアシュリー・コーリングのような「数字」とはすばらしいな。
できれば獲得したい!うちのユースにRBの素質がある選手は少なかったからな…
『ありがとうございます。できればなるべく早く、クラブへ交渉を提案お願いします。とても良い選手ですし、うちのコーリングの後任も目指せるはずです。買取オプション付きのレンタルを目指しましょう。完全移籍でもいいですがその場合はうちのフロント陣へのプレゼンが必要ですね…。どちらにせよ私が何とかします。よろしくお願いいたします』
『では引き続き候補のある方は……』
こうして会議は進んでいき、19時に始まった会議は深夜2時ごろようやく解散となったのだった。