7.フレンドリーマッチ 前半
現実のノッティンガムフォレストはなんとかプレミア中位をキープしてるみたいですね。補強もたくさんしてるとか……
@シティ・グラウンド
ジョナサン・ネヴェス 視点 (左CM)
俺の前方、センターサークルの主審がホイッスルを吹き試合がスタートした。
今日の俺は攻撃的な4-3-3の左CMだ。
相棒のCMウィングスさんはたしかに上手いが、正直、歳のせいでスプリントがあんまりよろしくねぇ。
その分、RWブレイディはやや低めの位置に、RBアシュリー(この2人は同い年なこともあって真逆のタイプだが仲が良い)は高めの位置にあって、右サイドがコンパクトになった少し変則なフォーメーションだ。
右サイドの2人が豊富な運動量で上下に動くことでチームに変化をもたらす戦術をするためには、俺が中盤と左サイドを支配する王様になってやらなきゃなぁ。クククッ。
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レオン・龍馬・エドワーズ 視点
試合開始から10分が経過したが、スコアレスのままだ。
ノッツカウンティは開始直後こそ両WBを上げて試合を支配しようとしたが、うちの両サイドがカバーに入り、さらに中盤は左のCMネヴェス、右に縦並びにOMFオーウェン、CMウィングスが位置し、トライアングルでお互いにカバーしあいインターセプトを狙うため支配しきれなかった。
逆に現在はポゼッション志向のうちが一方的に攻めているが、枚数の多いDF陣を突破しきれていない状況だ。
相手のCB3人に対してウチはSTグラムとOMFオーウェンの対峙、枚数不利の前線中央はペナルティエリアになかなか侵入できず、バイタルエリアで攻撃が止まってしまう。
『さてさて……どうすっかなぁ』
中央がダメなら両サイドをうまく使って深く入り込んでいくかぁ。
そのためにロングフィードのサイドチェンジを挟んでつられて寄ってくる相手ディフェンスラインを左右に動かして、ボールと逆サイドのスペースを作って行けるかだな。
最後はSTグラムの高さとフィジカルでねじ込むか、RWブレイディかLWハーグリーブスがうまくスペースに抜けられれば………
『アシュリー!! サイドチェンジを有効に使え!!! ブレイディ! サイドチェンジに合わせて裏意識しろ!! 』
試合が始まると監督の指示をゲームみたいに全員に伝えることはムリだが、ベンチサイドの選手に声掛け程度ならすることはできる。
あとはこの指示に選手達が気づいて意識の統一ができるかだが……逆サイドへの指示出しはGKロッジェなら気づいてくれそうだが。
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リーマス・ブライト 視点(左CB)
『あぁーー!!!クッソッ!!またダメかぁ』
相手エースSTニコール・ランスタッフの悔しがる声が背後に聞こえた。
『はぁ…はぁ…今日は何度ダッシュすりゃいいんだ?ボールを繋ぎながら相手サイドに侵入しても肝心のペナルティーエリアでプレーできてねぇし』
試合開始から20分が経過した頃。
今日何度目かのサイドから中央にいるSTグラムさんを狙ったクロスが弾かれ、相手エースSTランスタッフを狙ったキックアンドラッシュをなんとか走り切って防いだCBブライトは、額の汗を拭いながら呟いた。
うちの中央STグラムさんは190㎝と巨大でフィジカルに優れてるが、OMFオーウェンは173㎝、相手CBとはミスマッチだ。
そのせいで的となるグラムさんを重点マークされると、いくらフィジカルが優っていてもそううまくは動けねぇわなぁ。
そんなことを考えていたところに、
『ブライト!! ナイスラン!! ボールを持ったらサイドチェンジを意識だ!! 』
GKロッジェさんの掛け声がポジションに戻る俺の後ろから聞こえた。
片腕を上げてロッジェさんに反応した俺は、CBカンナバーロさんからボールを受け、LBスミスの方向へ大きく近づきながら、左サイドでCMネヴェスを含めた3人でパスのやり取りをしながら相手コートへ進んでいった。
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マーカス・ブレイディ 視点(RW)
あーそろそろ前半も半分近く過ぎたな……早いうちに得点して勢いつけたいところだ……
『……ん?相手のフォーメーションが逆サイド側に寄ってきてるな……』
そうか……ブライトさん達がわざと左に寄せるような動きを見せてるなら俺は……
『………ここだ!!!』
相手RBがコート中央に寄ってできたライン際のスペースを駆け上がった。
『ハァハァッ、ほ〜れきたッ!さすがブライトさんッ!完璧なタイミング!ハァハァ……』
ブレイディが相手RBの裏に抜け出したタイミングにCBブライトからの完璧なロングフィードでブレイディの目の前にボールがやってきた。
ライン際をそのままスルスルと上がっていったブレイディは、追いついてきたRBをシザースで抜き去り、中に切り込んだ。1番近くの相手CBがPA内に入らせまいと迫ってくるが、シュートフェイントを挟んでタイミングをずらしたところでボールを少し横にずらし右アウトサイドで中央にループパス。
『ほ〜ら、よっと……ハァハァッ、ナイスタイミング!グラムさ〜ん! 』
相手中央のCBの死角から飛び出してきた190㎝STグラムの豪快なパワーシュートがゴール左隅に決まった。
『うぃーーーーしッ!!!! 』
グラムさんが叫びながら右腕を掲げ、満員の観衆の声援に応えている。
『ナイスゴール!! 素晴らしい飛び出しのタイミングですよグラムさーん!! 』
グラムさんの背中をバッシバシ叩いて俺はチームのみんなとグラムさんを讃えまくった。
『痛えんじゃボケェ。いいタイミングだったのはオメェの裏抜けもだろがぁ!! ブライトのフィードもよかったがなぁ……さぁ、気引き締めて前半このまま優位にいくぞ! 』
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田中 健悟 視点(RW ベンチ待機)
『『ウァーーー!!! 』』
グラムさんがゴールを決めた瞬間、湧き上がるスタンドからの歓声でまるでスタジアムが揺れているような錯覚に陥る。
『よぉーーーし!!!! よくやったぁッ!!!! 』
目の前で監督がガッツポーズで雄叫びを上げ、フィールドに立つ選手達に惜しみない賛辞を叫んでいる。
『グラムさん、あのでデカい身体であのスペースに飛び出す嗅覚……どうやったらあーなれるんだろ……』
俺の隣に陣取るファビーが燃えるような瞳で観衆の声援に応えるグラムさんを見つめていた。
『グラムさんもすげぇがブレイディ君のあの走り込みとあの切り込み方!!僕に足りない技術だ……』
『でもきっかけはブライトさんのあのロングフィード。ブレイディ君が受けやすいようにバックスピンかかってたぜ、あれ』
同じポジションを争う先輩との技術の差に、困ったような顔で呟くブランズ君。
僕たちはチームが先制した喜びと共に、自分達ならどうプレイできるかをひたすら考えていた……
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レオン・龍馬・エドワーズ 視点
グラムの豪快なゴールが決まった後、ノッツカウンティは守備をキッチリ固めちまった。
サイドチェンジにも揺さぶられず亀のように篭って攻めてくる気配はなし。
そのままズルズル時間が過ぎて今はアディショナルタイム。
『前半はこれ以上波に乗らないようにきっちり締めてきたか』
審判が笛を鳴らし、前半終了。
スコアは1-0。スタメン組は想定通りの良い仕上がりのようだ。
おそらくリーグ戦はこのメンバーがベースとなることは確実だろう。後半は頭から若手に切り替えて戦うつもりだ。
この1点のリードを守りきって追加点が取れたらラッキーと言ったところか。
さぁ、フィールドの選手を出迎えて後半に備えよう。
試合を監督目線で書き続けるのはキツいので選手目線を多めにしてみました。どうでしょうか……