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30.プレミアで戦う者

新作も書いてますがこちらも更新です!


@キングパワー・スタジアム

ジェイル・ヴァーディ(レスターシティ(プレミアリーグ)、左ST、背番号[9]、能力「78」、36歳)


 レスターシティお得意の縦に速いパスに反応した俺は、ディフェンスラインを飛び出しゴールマウスへシュートを放った。


 『おっしゃ!! ゴールいただきぃッ』


 2部リーグなんかにここで負けてられっかよ。


 『ピピーッ!! 』(主審の笛)


 『おーいなんでだよ。クソッ、まーたオフサイドかよ』


 今日は何度も鳴らされているシュート直後の主審の笛。俺はサイドラインをチラッと見て、ラインズマン(副審)の上げている旗にイラつき、主審に見えないように悪態をついた。


 今日は、レスターシティのホームグラウンドであるキングパワー・スタジアムで、EFLチャンピオンシップ第4回戦の真っただ中だ。


 対戦相手は、2部リーグのノッティンガムフォレスト。プレミア優勝経験もある名門ながら長らく2部リーグに甘んじてきたチームだが、プレミアへ返り咲こうと現在|EFLチャンピオンシップ《2部リーグ》首位をひた走っている。


 かく言う、うちのチーム:レスターシティも、数年前までは2・3部リーグを約10年近く彷徨いながらも、なんとかプレミアへ昇格。


 次年度にはチーム初のプレミア優勝まで果たし、「ワンダーレスター」とイギリス中で話題となった。優勝時の主力の引き抜きもあって昨シーズンはプレミア9位と良くも悪くもない成績になっているが……


 そして今日の試合、かつてのレスターシティと同じように調子を上げているノッティンガムフォレスト相手に前半が終了しても得点が取れていない。


 チームでも年長組の俺はこれでもレスターシティで昨シーズンのトップスコアラーだぜ? まったく、なんだって2部リーグのディフェンス陣にこの俺が封じられなきゃなんねえんだ。


 そんなことを思いながら、さっきのオフサイドにイライラしつつポジションへ戻る俺に、フォレストディフェンス陣の会話が聞こえた。


 『ホワイト! いいタイミングでのオフサイドトラップだ。練習の成果が出ているな』


 『DFライン統率と自分のプレーの両立が大変なのはわかってましたが、ここまでとは……カンナバーロさんはリーグ戦でいつもこれをやってたんですね』


 『まぁな、いいかホワイト。常に声を出せ。周り(DF)を統率して1対1に持ち込め。そしてGKを信じてトラップ(オフサイド)を仕掛けろ』


 『はいッ!! わかりました、カンナバーロさん』


 スタメンのフォレストCBブランズ・ホワイトとマルケス・カンナバーロだ。今日はまだトップチームデビューも間もないようなひよっこ(ブランズ・ホワイト)がDFラインをまとめてやがるのか。


 まあ、ひよっこにしては身長も体格もとんでもなくデカい野郎(ブランズ・ホワイト)だが……


 『今日は若手のお()りですかい? 』


 フォレストGK(ロッジェ)FK(フリーキック)が、俺のはるか頭上を越えていったのを確認して、俺はマッチアップ相手のカンナバーロへ軽いトークを投げかけた。


 『うち(ノッティンガム)は今シーズン、リーグ戦に重きを置いててね。カップ戦は若手の腕試しなんですよ』


 遠回しに俺がそのお守りが必要な若手に抑え込まれてるんだぞと煽られたが、今日の試合はそれが事実だから仕方ねえな。こんなんで熱くなってちゃプレミアではやっていけねえ。


 『FWの俺が言うのもなんだけど、プレミアのレスターシティに対して0点に抑えるとは優秀だぜ? やられてる俺からするとイラつくけど』


 『うちは若手が有望って有名でね』


 かつてのイングランド代表エースが監督で、若手の登竜門とも呼ばれるノッティンガムフォレストFCに所属する若手は確かに将来有望な奴らが多いと俺だって感じる。


 どうやったら世界中からあんなに才能あふれる奴らを見つけ出して集められるってんだ?


 スカウトが有望なのか、育てるコーチ・監督が優秀なのか。できることなら若かった時に俺もあのイングランドの獅子王(ライオンキング)の下でプレーしたかったぜ。


 だが自分が年食ったことを悲観してても何も始まらねぇ。こいつら若手に、ジェイル・ヴァーディには敵わねえと思わせるようなプレーを見せてやろうじゃねぇか。


 そんなことを思いつつ、俺はカンナバーロとフィールドに常に目を配りながら、しばしのトラッシュトークを楽しんだ。


――――――――

レオン・龍馬・エドワーズ


 EFLカップ4回戦は、格上レスターシティ相手に70分以上スコアレス(0-0)で推移している。


 リーグ戦での昇格を第一目標に掲げた今シーズンは、カップ戦を色々試す場として利用し、勝利は二の次としてきた。今日の試みは、ディフェンスリーダーをブランズに任せることだ。


 結果的には、今日のブランズは動き出しが悪いがライン統率といった戦術的な動きは良いように思える。


 もしかしたら戦術面の動きを考えすぎて、本能的なボールへの動き出しやマークの動きが緩慢になってしまっているのかもしれないが、そこは今後の修正点としてコーチ陣としっかり共有すべきだな……。


 レスターシティのベテラン:ジェイル・ヴァーディもかなりのやり手だな。


 前半はゴールを遮二無二目指すパワーサッカーだったため、カンナバーロ仕込みのブランズのディフェンス戦術にはまっていたが、後半は全体を見ながらの動きにシフトチェンジして対応し始めたな。


 年々頭上の「数字」が下がってきても、ベテランには経験という積み重ねが大きなアドバンテージになる。


 常にフルギアの若手よりも、何段階にも細かく分けたギアを使い分けるベテランのほうが脅威となることも多いのがサッカーだ。


 ヴァーディに対応され始めているのに気付いているのだろうが、如何せんディフェンスリーダーがホワイトでは役不足か……


 『審判ッ!! 選手交代だ!! 背番号「21」リュードに代えて「17」ハリー・ウィングス』


 中盤の守備を厚くして少しバックラインの負担を軽減しないと厳しいな。


 負けないサッカーに切り替えてPK狙いで耐えしのぐ時間になりそうだ。リーグで勝ち上がるためには、そしてプレミアで戦うチームになるには、いけいけどんどんで勝つ以外にも、負けないメンタリティを若手にはつけてもらいたい。


——————


試合結果:0-0(PK:5-3ノッティンガムフォレスト勝利)


(内容)

・前半 20分

ジェイル・ヴァーディがディフェンスラインから華麗な飛び出しでシュート。ボールはポストを揺らすもオフサイド判定。


・前半 45分

CMリュード選手、CMネヴェス選手、STグラム選手の連携プレーでディフェンスラインを崩すも、ボールはポストに嫌われラインの外へ。


・後半87分

終始レスターシティが攻める展開になるも、フォレストCDMウィングス選手を中心にコンパクトな守備でしのぎきる。



・PK戦

守護神ロッジェ選手がキッカー1人目からいきなりビックセーブを見せ、雄叫びを上げると連続セーブでチームを鼓舞。

結果、5-3で勝利となった。


MOMマンオブザマッチ ジャンポスト・ロッジェ



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