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28.竹馬の友

まだしばらく不規則更新が続きます。

面白かった、続きが読みたいと思われた方は、いいね、評価、ブックマーク等もよろしくお願いします。

@ロンドン郊外 カイル自宅

カイル・ムスタフ 視点(トッテナム、背番号[2]、能力『90』27歳、イングランド代表)


 サポーター、選手共に大熱狂のノースロンドンダービーを終え、俺たちトッテナムの選手達は各々解散して家路に着いた。


 試合はノッティンガムで共に育った友、ステファン・ジェラートがミドルシュートを決め0-1でトッテナムは敗北した。


 ジュニア時代にレオン監督にスカウトされた俺とステファンは、16歳になると一緒にノッティンガムフォレストのユース寮に入寮して20歳までプレーしていた。


 所属チームは違うが、お互いイングランド代表に選出されるくらいに成長して、昨年のワールド杯では共にスタメンで活躍した。


 同じ釜の飯を食った仲の俺たちは、移籍先がどちらもロンドンに本拠地を置くこともあり、頻繁に連絡を取り合ってオフには家族ぐるみで付き合っている。


 『あいつ、得点決めたってのに試合終了の時の浮かない顔はなんだったんだ』


 さすがに仲が良いとはいえ、ダービーマッチ直後にサポーターの目の前で馴れ合うわけにもいかずそのまま帰ってきたが、終了間際のステファンの浮かない顔が俺は気になっていた。


 16歳から辛い時も嬉しい時も共に戦い、今も切磋琢磨する友のことだ。その表情や普段と違う雰囲気でお互いに何かあったなどはすぐにわかるものだ。


 『あいつまだ起きてるかな。とりあえず電話してみるか……』


 『トゥルルルルッ、トゥルルルル……』(電話の音)


 『カイルか。どうしたこんな時間に。今日の試合の文句でも言いにきたのか? 』


 『ハハハッ。冗談を言えるくらいの元気はあるんだな。心配は杞憂だったかな』


 『心配? 何の話だ? 今日のシュート見ただろ。俺は絶好調だぜ』


 あーまったく……強がってやがるぜコイツは。絶好調のヤツがあんな複雑そうな顔するか?


 『ならいいんだがなぁ。試合終了の時のお前の顔は、ゴールを決めたヤツとは思えなかったけどなぁ』


 『んー……なんだよお前。俺のこと見てたのかよ』


 『まぁなぁ。試合を決めたヒーローがどんな顔してるか見てやろうと思ってたんだが、なんだか悩みでもありそうだったからな……チームでなにかあったか? 』


 『お前だから言うが、誰にも言わないでくれよ。監督交代と新チーム体制でいろいろあってな……チーム内で軋轢があるんだよ。俺はまだ耐えてるが、耐えられないやつも出てきてる』


 今日の試合、確かに一部の連携がガタガタな印象があったな……ステファンの中盤がしっかりしてるから崩れるようなことはなかったが。


 『レイノルズ監督は持病で昨シーズン途中退任したんだっけか。あの人(レイノルズ)はたしかレオン監督のリヴァプール時代の同僚だったっけか。新監督はチームの不和になんも行動してねぇのか? 』


 前任のレイノルズ監督は、レオン監督が選手時代に仲の良かった先輩後輩の関係だと聞いていた。人格者で優秀な監督だったが、ガンが見つかって昨シーズン途中で無念の退任となったはずだ。


 『何もしないわけじゃないんだ……戦術や技術的には優秀な監督なんだが、人間関係的にはあまり役には立たないタイプの人でな。期待はできない』


 『うーん……昨シーズンまではお前を中心に、よくまとまったチームだと思ってたんだがなぁ』


 『俺のここでの6年契約も今シーズンで満了になる。フロント陣から契約更新の打診をもらってるんだが、ちょっと考えようかと思ってな……』


 『俺たちがノッティンガムを出て6年も経つのか……』


 『この前、レオン監督がノッティンガムをプレミアに引き上げようとしてるって記事見てさ。いろいろ考えちゃったんだよねぇ』


 さすがにイングランド代表でもトップ下を務めるやつが2部リーグに移籍はない。だが、プレミアに昇格したノッティンガムならプレーする意味はあるかもな……


 『プレミアに昇格すればその(移籍)可能性はあるな。レオン監督に連絡取ってみるか? 』


 『一度出た俺をノッティンガムは受け入れてくれるだろうか』


 『どうだろうなぁ。でもレオン監督が選手だった時もそうだけど、ノッティンガムの人たちはみんな温かい。ノッティンガムから出た選手だって応援してくれてるよ。去年のワールド杯の時だって見ただろう? 』


 ノッティンガム出身の俺たちは実家がまだノッティンガム郊外にある。昨年のワールド杯の際には実家にノッティンガムの人達が応援に集まってくれたと家族から連絡があった。


 『そうだな……まぁまだ昇格が決まったわけじゃないが、連絡してみるよ。気にしてくれてありがとな、カイル』


 『いいってことよ。お互いまだまだ頑張ろうぜ。じゃあまたな。次のノースロンドンダービーはうちが勝つからなハハハッ』


 『まったく、減らず口を……じゃあな。おやすみ』


 『プーップーッ……』(電話の切れた音)


 すこしはステファンが元気になったようでよかった。俺はまだトッテナムでプレーするつもりだから、来季は古巣に戻ったステファンと対決かな? なかなか厄介な古巣との対戦になりそうだ……


 夜風に当たりながら、カイル・ムスタフはステファンとプレーしたノッティンガムユースの懐かしい日々を懐古していた。



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