23.第8戦 対バーミンガムシティ・アウェイ
@ノッティンガムフォレスト クラブバス車内
レオン・龍馬・エドワーズ
今日はバーミンガムシティ戦がアウェイ・ナイトゲーム開催のため、お昼過ぎにクラブバスでノッティンガムを出発した。
アウェイの地、セント・アンドルーズ・スタジアムがあるウェスト・ミッドランズ州はノッティンガムシャー州の南西に車で1時間ほどの距離にある。
日本と違い街中を走ることは少なく、都市間はハイウェイをひたすらまっすぐ走る区間が多いので、それほど左右に揺られて疲れるといったことはない。
ホーム戦以外は移動が付き物の生活だが、基本的にリーグ戦はクラブバスか電車等で移動することとなっており1~3時間ほどの移動が常となっている。
今日の行程では、午前は戦術の打ち合わせがあり、昼食を挟んだ後、バス移動となっており、車内での選手の過ごし方は様々でみんなの個性が伺える。
今日も仲良く隣に座っておしゃべりするのはハーグリーブスとブレイディのウチの両ウィング達だ。一方的にブレイディがハーグリーブスに話し続けているように見えなくもないが、毎回隣に座るハーグリーブスも嫌がっているわけではないんだろう。
その後ろでグラムとケンゴ、シルバーノとブラシッチがサッカー談議で盛り上がっている。
話題は、「現プレミアのストライカーで優れた選手は誰か」というもので、グラムとシルバーノは同じSTでプレーする長身アタッカー:フリアム・モイス(マンチェスター・C、能力『93』28歳、ガーナ代表)を、ブラシッチは万能型OMFのステファン・ジェラート(アーセナル、能力『92』27歳、イングランド代表)、ケンゴは攻撃力抜群のRWロドリゲスJr.(トッテナム、能力『88』26歳、スペイン代表)をそれぞれ挙げ、やんやかんやと盛んに話している。
年齢がいくつになっても好きなものを語らいあえば、みんな子供のような笑顔になるんだよなぁ。
さらにその後ろの席では、ネヴェスからポジションや戦術的な話を聞きたいとリュードがネヴェスの隣に座っているのだが、肝心のネヴェスはいびきをかいて爆睡中。
仕方がないので通路を挟んだ反対座席のウィングスやカンナバーロから教えを乞うているようだ。真面目で自分に足りない部分を補おうというリュードの姿勢は大変よろしい。
コーリングは音楽を聴きながら静かに窓の外を眺め、心を落ち着けており、その横でロッジェはなにか書き物をしているようだ。よくバスの中で酔わずにそんなことができるものだと感心する。
ウェンディ、オーウェンは同年代のマルセルの英会話勉強に付き合っていて、逆にマルセルからスペイン語を教えてもらったりと微笑ましい光景が広がっている。
自分もスペイン、イタリアへ移籍した際は苦労したものだ…慣れるとなぜかすんなり覚えることができるようになるのが語学の不思議なとこだな。
ホワイトは最近ブライトにディフェンスラインの統率や個人技術について講義を受けているようで、今日も車内で熱心にノートを取って話を聞いているようだ。
ユース育ちでノッティンガム愛の強いホワイトは早く戦力になりたいという熱い想いを持っている。
その横のマッサージ台では、スミスがチームに帯同しているサポートスタッフから入念にマッサージを受け、夜の試合へコンディションを整えている。
個性豊かなチームを同一方向、共有された目標を持って試合に臨む。監督業は面白さもあり難しさもある特殊な仕事だな……
『さて、スタジアムまであと30分ほどかぁ。』
俺は俺で、相手チームの試合映像の見直しをやるとするか…
試合が始まってしまえば細かく選手達に逐次指示出しなどほぼできない。ゲームのようにリアルタイムで選手と意思疎通をすることは不可能だ。
ひとたび試合が始まれば監督の仕事は選手たちのモチベーションの維持とハーフタイムでの指示出しや戦術の方向性のすり合わせくらい。
試合までの準備段階と試合後の振り返りをしっかり行うことが一番重要な仕事といえるからな。
——————
@セント・アンドルーズ・スタジアム
ファビアン・シルバーノ 視点 (ST:背番号「14」)
『ファビアン。お前の強みはシュート力だけじゃない。身体能力の高さとその身長もだ。もっとエゴイスティックにゴールを求めてみろ。185超えのその身長の高さと足元の技術でバラエティー豊富な攻めは破壊力抜群だぞ』
RBマルセル君がボールを保持してサイドをオーバーラップするのを確認し、ペナルティーエリアへ駆け出した俺は、グラムさんに今シーズン始まってからずっと言われ続けている言葉を思い出した。
グラムさんは身長180㎝と小さくはないが俺より5㎝以上低い身長ながら、フィジカルを活かしたプレーで相手CBを跳ね返すような力強さが持ち味のポストプレーヤーだ。
対して俺は万能型のプレーヤー。得意な形を挙げるならスピードを活かした飛び出しとミドル・ロングを問わないシュート力だろう。
小さい頃から身体の線の細かった俺は、シュート力と相手と接触しないパス技術・ドリブルを志向して練習していた。もともとドリブラーやパス技を重視するポルトガルサッカーで俺はシャドーストライカーとして頭角を現していった。
エドワーズ監督にスカウトされてイングランドへやってきたが、昨シーズンの俺はイングランドのパワーサッカーに圧倒されていた。
「フィジカルコンタクトが多すぎる…」そう思ったが、フォレストのフォーメーションは中央のFWは1人でウィング配置が固定のチーム。
中央で戦うために俺は昨シーズン、自分の身体を鍛えぬいた
『イングランドに来て俺は成長してるんだッ! 』
ライン際をオーバーラップしたマルセルは、PA内で相手CBと競り合うファビアンへ高軌道のクロスでボールをファビアンへ蹴り上げた。
中央の相手CB2人に前後を固められた中で、ファビアンの鍛え抜かれた肉体は押しつぶされることなく空中へ頭一つ躍り出たのだった。
『『……ハァ~……』』『『ウォォォーー!!』』
一瞬、観客たちの歓声の間が開いて聞こえてきたのはため息とアウェイにもかかわらず応援に来ているフォレストサポーターの歓声だった。
『ナイスゴール!!! グラムさん並のフィジカルコンタクトだったなッ!! 』
アウェイ会場の一角で応援してくれているフォレストサポーターにゴールパフォーマンスをしていると、ネヴェスさんをはじめチームメイトが次々と集まり背を叩いて祝福してくれる。
イングランドにやってきて確実に成長できている。勝手に苦手意識を持っていたポストプレーもこれからは強みとして発揮できれば、グラムさんとはタイプの違う万能型ストライカーとして更にチームの力になれると、ファビアン・シルバーノは実感できた試合となった。
——————
試合結果:2-1 (ノッティンガムフォレスト勝利)
(内容)
・前半 36分
サイド際をオーバーラップしたRBカスティーヨ選手のクロスにSTシルバーノ選手が合わせ豪快なヘディングシュート
ファビアン・シルバーノ 1G
マルセル・カスティーヨ 1A
・前半 45分
CMミケル選手、CMネヴェス選手、STシルバーノ選手のワンタッチパスによる連携プレーでディフェンスラインを翻弄し、最後はSTシルバーノ選手によるシュート
ファビアン・シルバーノ 1G
リュード・ミケル 1A
MOM ファビアン・シルバーノ