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22.地球の裏側で

@日〇テレビ GOGOスポーツ:収録会場

勧修寺 浩一郎 (日〇テレビ アナウンサー:35歳)


『…~以上、今週の欧州サッカーダイジェストコーナーでした!!続いては、MLBメジャーリーグベースボールのコーナーです!!……』


『はい!! カットぉぉぉぉ!! 』 


『『お疲れ様で~す』』


『ふぅ~今週の収録も無事終わったかぁ……』


 他の出演者たちが次のコーナーの撮影の準備に移る中、自分の担当コーナーの収録を終えた自分はカメラマンさん達へあいさつを済ませながらTV局の廊下を歩いていた。


『おーっと!! 勧修寺ちゃん!! 収録終わりかい?? お疲れさまぁ!!』


 陽気な声掛けで控え室のドアから顔を覗かせたのは、昨今あまり見かけなくなったカーディガンを肩に巻き、眼鏡を頭の上に乗せた昔のプロデューサーのような出で立ち(いでたち)のGOGOスポーツプロデューサーの向山さんだ。ちなみに、しゃべり口調が少し変わっているが男性である。


『向山さん。お疲れ様です。収録途中なのにプロデューサーがここにいていいんですか? 』


『まったくお堅いこと言わないのッ。生放送でもないんだからいいのよ少しくらい』


『はぁ、そうですか…それで、私を待っていたように見えたんですが。何かありましたか? 』


『察しがいいわねぇ。実は来週のコーナーに向けて勧修寺ちゃんにイギリスに行ってもらいたいのよ。プレミアリーグの取材とノッティンガムフォレストの取材を合わせて二週間ほどの滞在よ』


『プレミアの取材はわかりますが、2部リーグのノッティンガムフォレストもですか…。それは、私が取材に行くから…ですか? 』


『いやぁねぇ、あなたの立場を利用しようってんじゃないのよ…まぁ多少は期待はしているけれど。フフッ…あなたはうちの番組スポンサー達を知ってるわね? 』


『日本を代表するIT系の企業の数社がうちのスポンサーでしたね。スポーツチームや大会への出資・協賛も多くしているため、その報道番組であるGOGOスポーツにも多額の予算を出してくれていると聞いています』


『そのスポンサー企業からノッティンガムフォレストをもっとクローズアップしてくれってお願いが来ているのよ。それも1社だけじゃなくいろいろな企業様からね』


『2部リーグのノッティンガムフォレストを? なんでそんなとこを……』


『どうやら新監督のレオ様が原因みたいよ? 』


『レオ様って……』


『どうやらレオ様は、選手現役時代から日本のIT企業に多額の投資をしてきたみたいなの。そのおかげで世界でも有数のIT企業として発展できたってことで、その分野の人たちから相当感謝されてるらしいわ。


 そこで新監督として新たなキャリアを歩み始めたレオ様を支援するために、スポンサーやら協賛やらでノッティンガムフォレストを支えようとしているみたい。あなた、聞いてなかったの? 』


『……知りませんでした』


『そう。まぁ親戚だからってなんでも知ってるわけじゃないから当たり前よ。とにかくそういう意向があってあなたには明後日にはイギリスに飛んでもらうからよろしくね。ノッティンガムフォレストの広報担当者には取材の日程をしっかり確保してもらったから! もしレオ様に会えたらサインだけは貰ってほしいわ。私たちの世代にとって、レオ様はヒーローみたいなものだからッ! 』


『わかりました。会えるかわかりませんが、準備はしておきます』


『よぉろしくねぇ~』


 独特なしゃべり口調と手をひらひらさせながら向山さんは控え室のドアからフェードアウトするように消えていった。


『はぁ……レオ様ねぇ……』


 向山さんがいなくなって静かになった控え室で俺はレオン・龍馬・エドワーズ、俺と10歳、年の離れた従兄(いとこ)のことを考えていた。


——————

@軽井沢 勧修寺家別荘

勧修寺 浩一郎 (当時6歳)


『浩一郎!! もうすぐパパ(慎一郎)のお姉ちゃんと家族が来るからリビングにおいで!! 』


『パパのお姉ちゃん? イギリスにいるって言ってた? 』


『そうだぞ~。浩一郎は覚えてるかわかんないが、お前が2歳か3歳くらいの時にも会ってるんだよ?今日は旦那さんのジャックさんと息子のレオン君も来るから楽しみだなぁ。浩一郎の従兄(いとこ)にあたる子だな。サッカーをやっててすごい上手なんだって』


『まぁ! 浩一郎もサッカー始めたばかりですし仲良くできそうね? 』


『大丈夫だよママ(真奈美)』


『バタンッ(扉の閉まる音)』


『どうやら、着いたみたいだ! 迎えにいこうか』


『久しぶり景子姉さん。ジャックさんとレオン君も久しぶり! 』


『『久しぶりです! 』』


『こんにちは! 勧修寺 浩一郎です!! 6歳です!! サッカーしてます!! 』


『お~~~~これは立派な挨拶をありがとう。僕はレオン・龍馬・エドワーズ。レオンか龍馬って呼んでくれ。日本的には龍馬のほうがいいかな? サッカーしてるのか! 僕もやってるんだ。ボール持ってきているから庭で軽くリフティングでもするかい? 』


『これこれレオン、ついていきなりサッカーか……』


『うん!!! やる!! お兄ちゃん教えて! 』


『OK!! 父さんごめん! 荷物よろしく!! 慎一郎おじさん、浩一郎君とサッカーしてきます。よし、いこう!! 』


——————

勧修寺 浩一郎 (現在)


 幼いながらにいろいろなリフティングを披露してれた龍馬くんはとてもかっこよかったことを覚えている。


 龍馬くんがプロデビュー後もオフシーズンには時々集まって、サッカーの話やイギリスの話をしてくれた良いお兄ちゃん的な存在だ。


 そんな龍馬くんに憧れて大学までサッカーを続けたが、プロの夢は叶わずアナウンサーとして現在は報道する側で携わっている。


 今はお互い子供を持つ親として、オフシーズンには日本で集まって育児の話や若手の育成についてなど気軽に身内として話す仲だ。


 世間が日本人のハーフでイギリス代表のエースになった龍馬君を「レオ様」と呼んで大フィーバーした時も、龍馬くんと浩一郎の関係性は変わらなかった。


 オフシーズンをキッチリ休みたいレオン・龍馬・エドワーズにとって、ただの従兄弟として接してくれる浩一郎はよい弟的な存在だったのかもしれない。


『家族の関係を仕事に持ち込むのは抵抗があったけど、既にTV局とノッティンガムフォレストの広報担当とのやり取りが決まっているなら龍馬くんに連絡してもいいか……』


 そう考えた浩一郎は、スマホを手に取って地球の裏側に住む従兄へ連絡を取るのだった。

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