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12. 第1戦 後半 対サウサンプトン戦・ホーム

@シティ・グラウンド (23-24第一戦 後半)

リュード・ミケル 視点 (ポジション:右CM)


 チームは前半26分新加入のOMFブラシッチさんの強烈なロングシュートで先制した。


 これまでは観客席で見ていたスタジアムの熱気をこのフィールドでトップチームの一員として感じることができて最高に感動して鳥肌がたった。


 そんな前半をリュードは少しフワフワした気分で終えていた。


 現在は後半15分。サウサンプトンは前半の失点を取り返そうと4-1-3-2のフォーメーションで中盤を押し上げて攻撃的になっている。


 ネヴェスさんも僕も後半は守備に手いっぱいだ。現在は僕とネヴェスさんがCDM的な位置に降りてブラシッチさんはCM、STグラムさんが交代で、代わりにやや低い位置でCF的にファビアン・シルバーノ君が投入されたばかりだ。


 フォーメーション的には守備的な4-3-3といったところか…相手ボールの時間が増えた分、耐えてショートカウンターを狙っていく。


『ハァッ…ハァ…耐える時間が長いってのはキツイなぁ……』


 後半が始まってからのほとんどの時間を相手2列目OMF3人とST2人が連携できないようになんとか張り付いて走りまわっている。


 特に相手STリー選手が足の速さを活かしてスペースにひょこひょこ現れるので相手OMF陣のパスコースを絞れない。うちのCBカンナバーロさんもラインの統率に苦戦しているようだ。


『クソッ……リュードカバー頼む! 』


 中央の守備を意識していたリュードはほんの一瞬、コンマ数秒反応が遅れた。


 先ほどから右サイドで相手OMFを抑えていたコーリングさんが抜かれていた。


 相手中央OMFのディフェンスはネヴェスさんに任せ、インに切り込まれないよう立ち塞がりに飛び出したが、時すでに遅し……


 伸ばした右脚の前をパスが通っていった。


 リュードが見つめるボールの先にはブライトさんの傍から飛び出したSTリーがいるのが見えた。


『マズイッ!!! 』


 スルリと抜け出したSTリーのシュートにロッジェさんが飛びつくも、ボールはそのままネットを揺らした。


 STリー選手がうちのゴールマウスからボールを持ってセンターサークルへ持っていくのを僕は歯を食いしばって見送っていた。


 後半23分 サウサンプトン得点 1-1

ST シャオフェン・リー   1G(ゴール)

LMF カイ・ポールセン   1A(アシスト)


——————

レオン・龍馬・エドワーズ 視点


 後半も残り10分ほど。うちは相変わらず責められているがなんとかディフェンス陣の踏ん張りで失点は逃れている。


 先ほどのゴールで1-1のイーブンに戻したサウサンプトンは気持ち的に波に乗っている。このままもう1点取れるのではないかと……


 対してうちは冷静に守りを固めているが、リュードがやや不安定だ。先ほどRBコーリングのカバーに行くのが遅れた事と初先発の疲労か、プレー強度が落ち始めているな……初めてでここまでやれれば十分だろう。


『ウィングス!! リュードに変わってCDMで中盤の底を頼む。ネヴェスを攻めに使いたいんだ。マルセル! RBコーリングと代わって投入だ。隙があればオーバーラップしていいぞ。うちはあくまで勝ちを目指す。頼んだぞ2人とも』


『『はいッ! 監督!! 』』


——————

マルセル・カスティーヨ 視点(ポジション:RB)


『ピューーッ』


 後半36分リュード君がゴールまで40mほどの中央付近で相手OMFを倒して笛が吹かれた。カードは出なかったようだが審判から注意を受けている。


『さぁ2人ともいってこい!! 』


 選手交代のプラが掲げられる。

CDMリュード・ミケル OUT

CDMハリー・ウィングス IN


RBアシュリー・コーリング OUT

RBマルセル・カスティーヨ IN



 私がプロデビューしたのは16歳だった。スペイン南西のジブラルタルに近いセビリア市で育った私はセビージャFCの下部組織でサッカーを始め、メキメキと実力を伸ばした。


 フラメンコの本場であり、情熱溢れるセビリスタ(セビージャファンの名称)に応援されるセビージャFCでスタメン取ることが夢だった。いつしかスペインのアンダー世代代表にも呼ばれ、ようやくトップチームで試合に出れるかと思われた。


 だが、そこで待っていたのはとても高い壁だった……


 私と同じくセビリア出身でセビージャFC下部組織出身でありチームの顔、スペイン代表RBダニー・アルバレス。


 そのサッカーの強さ、メンタリティは27歳にして既に完成されていると言っていい。国内外が認める実力、チームからの信頼を得ているこの先輩と一年以上競ったが、出場機会を得ることはできなかった…


 生まれ育った街、育ててくれたチームを離れるのは辛かったが、私はもっと強く、速くなるためにこのチームに来たのだ。


 スペインで私をスカウトに来たノッティンガムフォレストFCのスカウトマンに言われた「エドワーズ監督にスカウトされたなら必ず偉大な選手になる。」という言葉を、「私自身の可能性」を信じている。


 今の私の目標はセビージャFCのスタメンではない。ノッティンガムフォレストのRBスタメンなのだ。


『『ワァーーーッ!! 』』


 交代するためにフィールドを歩く選手に観客達の歓声と拍手が送られる。


『すまんな。俺に代わって暴れてこい』


 失点に絡んでしまったからか、苦い顔で交代にやってきたコーリングさんにハイタッチで送り出された自分はピッチの状態を確かめるようにスプリントしながらポジションへ向かった。


『さぁ皆さん!! 監督は勝ちを目指すって言ってましたよ!残り時間攻めましょう!! 』


——————

ファビアン・シルバーノ 視点(ポジション:ST)


 リュード君が相手に与えたFK(フリーキック)は枠には飛んだがキャプテンのロッジェさんが難なくキャッチ。


 ロッジェさんが軽く転がして右CBカンナバーロさんにボールを渡し、バックラインとCDMウィングスさんがパスを出し合いながら上がってくる。


 ウィングスさんが1人ボランチとして中央にいるが、ネヴェスさんがブラシッチさんと同じくらい上がったことで中盤が逆三角形の4-3-3(守備時は4-1-4-1)フォーメーションになった。攻めるには俺がボールをキープする時間を作って両ウイングか中盤のフォローを貰うしかないな……


 そして、さすが! ネヴェスさんとブラシッチさんは相手OCMからのをプレッシングをモノともしていない!


『ネヴェスさん! こっち! 』


 サウサンプトンは中盤に圧力をかける選手がネヴェスさんやブラシッチさんと張り合えるような人がいないのか簡単に抜けられるな。


 あとは俺が相手CDMをかわせれば……


 ネヴェスさんからボールを貰った俺は相手CDMを背中に背負う形でボールを貰いそのまま背中と腕で相手を牽制しつつ少しキープ。


 フォローに上がってきてくれたブラシッチさんにボールを戻してCDMを引き剥がすようにスプリントで前線へ上がった。


——————

ロヴゥロ・ブラシッチ 視点(ポジション:右OMF)


 シルバーノ君がポストプレーを意識して中盤で時間を稼いでくれるおかげでサイドが整ってきたな。よし!


『ブレイディくんッ!! 』


 僕が左脚で蹴り上げたボールは右サイドを裏抜けしたブレイディ君の前にピッタリ届いた。


 ブレイディ君はそのままゴールライン近くまで上がるが相手LBにピッタリ張り付かれて抜けそうにない……


 だが、ここでマルセル君か。


——————

マルセル・カスティーヨ 視点(ポジション:RB)


 ファビアン君が戻したボールをブラシッチさんが左足一閃、僕の前方を駆けるブレイディさんの足元にボールはキッチリ収まった。


 あの人の左脚の精度は半端ないな……


 ブレイディ君の速さはなかなかだがディフェンスは振り切れないな…


 よし! ここが攻めどきだ!


 ディフェンス意識の低い相手OMFを一瞬で置き去りし、インナーラップを仕掛けるとブレイディ君へ


『Damela! ブレイディ! 』


 咄嗟にスペイン語を使ってしまったが、ブレイディ君は気づいてインナーラップする自分へマイナス方向へのパスを出してくれた。


 自分はそのまま斜めに切り込んで相手CBを引きつけたところで、ファビアン君の前方へ右脚でアーリークロス。


 スプリントでゴール前まで来ていたファビアン君のダイビングヘッドがサウサンプトンゴールに決まった。


『ウォーーーシャァーーーーッ! 』


 ファビアン君が立ち上がり、両腕を掲げてサポーター席に叫びながら突撃するのを眺めながら、マルセルは自分の移籍初アシストに安堵したのだった。


 後半43分 ノッティンガムフォレスト得点 2-1

ST ファビアン・シルバーノ  1G

RB マルセル・カスティーヨ  1A


 試合はそのままノッティンガムフォレストの優位で終了。ホームでの開幕戦は無事勝利で飾ることができたのだった。






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