11. 第1戦 前半 対サウサンプトン戦・ホーム
@シティ・グラウンド 実況解説席
アンドリュー・ゴードン 視点(元イングランド代表CB 51歳)
8月に入りいよいよシーズン開幕だ。今日は解説者としてシティ・グラウンドでエドワーズのノッティンガムフォレスト戦の担当。
エドワーズとは現役時代、何度もマッチアップして戦った敵であり、同じ代表ユニホームを着て戦った友でもある。
当時の選手たちが監督や解説者として活躍するのを見ていると歳を取ったと実感するな……
『全国のサッカーファンの皆さん、こんにちは。待ちに待ったシーズン開幕戦。このノッティンガムフォレスト、ホームスタジアムにはファンの開幕を喜ぶ歓声が響き渡っています』
『素晴らしい熱気ですねぇ。今シーズンのチームの勢い、昇格への熱い想いを表しているかのようです』
『そうですね。本日の試合は、ノッティンガムフォレストがサウサンプトンをここ、シティ・グラウンドで迎えた23-24シーズン第1戦をお送りいたします。
実況は私、ディッキー・スタントン。解説はイングランド代表CBとして活躍したアンドリュー・ゴードンさんです。よろしくお願いします』
『よろしくお願いします』
『今日の対戦相手であるサウサンプトンは昨シーズンまで1部でプレイしていたチームですから実力は確かでしょう。昇格を目指すノッティンガムフォレストにとっては厳しい戦いになるのではないでしょうか』
『そうですねぇ。2部に降格したとはいえ、昨シーズンと主力は変わっていないようですからね。ノッティンガムフォレストにとっては今日の試合は格上との対戦と言えますね』
『昨シーズンは得点力不足に悩んでいたサウサンプトン。主力メンバーは変わっていませんが、今年は一部補強を行ったことで再び昇格を狙っています』
『サウサンプトンSTリーは昨年までベルギーでプレイする中国選手ですが、そのスピードと得点力を期待されての移籍獲得ですねえ。ベンチにも新戦力が窺えるこのチームは注目です』
『対するノッティンガムフォレストも補強とユース昇格で若手数名を加えていますね。
若手の育成に定評のあるエドワーズ監督ですが、どのような戦略でシーズンを戦うのでしょうか。
ゴードンさんは現役時代、ワールド杯を3大会連続でエドワーズ監督と過ごしていますね』
『クラブが一緒だったことはないけれど、彼が代表に初めて選出されたワールド杯98年大会以降、約12年間一緒に戦いましたね。
あの頃から彼は若手を指導・引っ張るのが上手だった…今も当時も、彼が関わった選手は大活躍してね。
僕を含めた代表時代の彼の友人達はみんな口をそろえて「エドワーズがスカウト・育成した選手に間違いはない」って評判ですよ』
あの頃、俺は26歳で代表の主力CB、エドワーズは20歳で代表初選出だったなぁ。
当時は控えとして呼ばれていたエドワーズは不貞腐れることなく、キラキラした目で俺や先輩選手たちのプレーを見ていたのを覚えている。
よくコート際やベンチで「みなさん「数字」がすごい!!努力してきたんですね!!」とかわけのわからんことを言ってたなぁ。
周りの選手のトレーニングに興味津々で、たとえそれが他国の代表選手だろうが、よく同年代や若手選手に話しかけてはいろいろアドバイスや情報交換してたな……
『昇格を目指すチームでその監督が育成した若手選手達がどのように活躍してゆくのか。期待ですねぇ。さあ選手達がロッカールームから出てくるようです。いよいよ、23-24シーズンの開幕です!! 』
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@シティ・グラウンド フィールド横 ベンチ前
レオン・龍馬・エドワーズ 視点
入場のアンセムが鳴り響き、選手たちがピッチに入場してくる。いよいよ開幕だ。
監督就任から2か月。このシーズンで必ず昇格することをチーム全体で確実に共有してきた。
目指すはリーグ優勝!プレーオフでの昇格ではなく確実な1位通過を目指してやる。そのためのメンバーが揃いつつあるんだ。
今日のフォーメーションも攻撃的4-3-3。初出場で右CMリュード・ミケルとOMFロヴォロ・ブラシッチを採用している。
ブラシッチについてはレンタルでいろいろなクラブを経験しているだけあって安定感があり安心だ。右脚フリーキッカーのネヴェスと左のブラシッチで中距離の破壊力もUPだ。
リュードに関してもユースチームで鍛えた足腰は伊達じゃない。
今日も攻撃的に勝ちを目指す!!
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ロヴゥロ・ブラシッチ 視点(26歳 OMF・レンタル加入)
試合開始から20分経過したが、両者得点がない。
レンタル加入のため、ある程度の出場数が確約されてるとはいえ若手の勢い豊富なこのチームでは活躍できなければ安心できない。
同じポジションを争うベンチスタートのOMFオーウェン君はこれまでの練習で優秀なことはよくわかった。175㎝行かないくらいの小柄な身長ながら、確かな足元の技術と鋭いパスで前線のコンダクターとなる。
俺もウカウカしてられないな……
やや前に飛び出してディフェンスラインに指示を出している相手GKを確認した俺は、
『ネヴェスさん!! こっちくれッ!!! 』
相手を2人引きつけてなお、ボールキープして前を窺っているネヴェスさんにやや斜め前方、相手ディフェンダーの前スペースへのパスを要求した。
『おぅらッ! 』
ネヴェスさんがややスピンをかけて蹴ったことで、相手ディフェンダー前だが相手が飛び出しても届かない位置に止まったボールに俺は左脚を振り上げた。
『……ザッ……ドンッ……』
しっかり踏み込み、芝に食い込む音がした右脚を軸にして、上半身と下半身の捻転によるパワーと地面スレスレを振り抜きボールのサイドを擦り上げたことによる回転によって、ゴールまで35メートルという距離を虹のような放物線でボールは相手ディフェンダーとGKを越えた。
一瞬の沈黙の後、スタジアムは歓喜の雄叫びに包まれた。
『『…………ウォォォオオーーーーーー!!!!!! 』』
前半26分 ノッティンガムフォレスト得点 1-0
ロヴゥロ・ブラシッチ 1G
ジョナサン・ネヴェス 1A