4:愚か者達の様子
アリアは、馬車が魔物に襲われて死亡したとしばらくは思われていたが
死体や魔物の種類からして、おかしい事に気がついた憲兵団の兵士は、報告書を男爵と国に報告した
アリアが行方不明になって一ヵ月後のことだった
「旦那様、どうされますか捜索は」
男爵家の執務室で執事が主人に聞いた
「あの森は魔獣も出る、もう死んでるだろう駒にもならん下賤の娘などほうっておけ、死亡届けはそのままにしておけばいいさ」
「しかし・・・」
「修道院への寄付金が浮いて良かったわ、はっはっはっ」
下衆な笑いを上げる男爵だった、しかし死亡届を撤回しなかった事を後ほど悔いることになるとは思って居なかった
一方、愚か者王子達は
「フリィーデル、そなたの言うう通りだったな、苦言を無視して済まなかった、もう一度側近に戻ってくれないか」
王子の周りにいた側近候補たちは婚約者に対する扱いが悪質だったと、王家からも家からも断罪されて辺境送りになったり、規律の厳しい修道院に送られたりして、王子の傍には近い年齢の側近は居なくなっていた
「お断りいたします」
「ど・どうして・・・国を盛り立てていくにはそなたの力が必要なんだ」
「私の苦言をうっとおしいとおっしゃったのはあなたです、私はもう侯爵家を継いでおります、領地の管理で手一杯ですので、老将軍や、その弟子の方々は優秀な方々ばかりでしょう、歳が上で頭が上がらないかと言って、私に白羽の矢を当てたのでしょうが、私の意見を聞く気もない方の下では働けるわけが無いでしょう・・・」
久しぶりに召喚された王宮の王子の執務室、大きなため息をつきながら、フリィーデル・フォン・グランバート侯爵は出ていこうと踵を返す
「フリィーデル、これからは意見をちゃんと聞く」
「・・・・彼女・・・アリアレティ・フォン・ギール男爵令嬢のの免罪の件、無視したでしょう」
「え・・・それは・・・そんなわけ無い、彼女があんなに苦しんだのに」
「・・・いった傍から無視ですか・・・ではこれで失礼いたします」
「え・・ちょっとまて・・・それとこれとは違う・・・」
「違いませんよ・・・直接王に進言しました、調査してくれるそうですよ、あんなに側近候補がやらしいてたのに・・・・あなたが王になったらどうなるのか、今から不安でしょうがありませんよ」
そう言ってフリィーデルは執務室から出て言った
人を見る目がなく、婚約者をないがしろにしていたと、王からも婚約者の家からもかなり怒られて、このままだと王太子から降ろされそうになっていた、婚約者は王子を好きと言ってくれているがこのままだとそれも危うい、信用を取り戻そうと努力はしているが、身近な側近が誰もいなくなって協力者が必要だった、早々に側近候補から外れていた、優秀なフリィーデルに助けを求めたが、このありさまだった
「男爵令嬢が、免罪・・・」
やっと動き出し、もう一度調査しようと動き出す王子だった
調査は学校関係者、教師にも及び卒業生在校生に聞き込みが行われた、その結果、いじめられていたのは男爵令嬢で、王太子の婚約者を免罪にかけていたのは側近達とその婚約者だと、直ぐに証明された
そもそも男爵令嬢の断罪は、学園内でそれも一方的な王子からの言いがかりのようなもので、正式に裁判されたものではない、男爵が自分に罪が降りかからないように、勝手に修道院送りにしただけだった
問題は、ろくな調査もせずに、一方的に感情のまま断罪した王子側だ
婚約者令嬢も、フリィーデルと同じく苦言を王子に言っていた、その点は王子より冷静だった
正式に、男爵令嬢の免罪は周知されていった
アリアはそれを知らない
「お前はもう必要ない出て行け」
「・・・・」
そう男爵がアリアの母親に言い放った
無言で床に倒れ下を見ている母親
そして、荷物をつめたかばんを投げつけられ、アリアの母親は屋敷を追い出された
アリアの死で駒が居なくなり、駒にもならない母親はまた捨てられた
だが、今回母親の様子が変なのに男爵は気がついて居なかった
かばんを持ち、わずかな手切れ金とアリアの小さな姿絵を胸に抱えて母親は町に向かった
「アリア・・・くっ」
涙を流す母親
アリアが死んだと聞かされた時、自分がアリアを愛していたことに初めて気がついた
うっとおしいとも思ったことがある
邪魔だと思ったこともある
それでも
「お母さん」
とすがる小さなアリアの顔を思い出して胸が苦しくなる母だった
「きっと私のこと恨んでいたでしょうね・・・アリア・・・ごめんなさい」
母親はこの国にはもう居たくないと思い、隣国に向けて乗り合い馬車に乗り込んだ
隣国に入り、関所近くの町まで来ると路銀が少なくなった為、その町の食堂で働き始めることにした母、
その町で、アリアの噂を耳にする、娘と同じ名前の聖女と噂される女の子、母の心臓がドクンと鳴った