発明品2 待望のお風呂回
「なんで下着と水着とお風呂だけは『げんだいにっぽん』と変わらないのかしら?」
「姫様。なんですか、それ?」
ここはメイドや侍女たち、王城で働く者たちの従業員専用浴場…もちろん女湯である。
当然、城の主や一族、それなりの地位にある者には個室と個人の入浴施設はあるので、本来こんな所に来る必要は無いのだが、厨二王女のわがままでマーガレットが連れて来てしまった。
湯船に浸かりながら警護の女騎士に取り囲まれて、それでも呑気に周りを観察する。
向こうから賑やかな声が聞こえてくる。
「あっちの三人組は誰かしら?」
「アリス、ベティー、キャサリン。最近入ったハウスメイドたちですね。年が近いから仲がいいみたいですね」
「モブA、B、C、まだ若いわね。発育途上、経過観察ね」
「なんの話ですか?」
「こっちの話。あっちのは?」
リラックスできる空間でついつい声が大きくなる若い娘たちを、ちょっとした咳払いで静かにさせるオカン軍団。さすがの迫力だ。
「ベテランの洗濯メイドたちですね」
「腕が逞しすぎるわね。でもその分胸も逞しくなってるのはいいか。あっちは?それとそっちも」
「そちらはキッチンメイドの…それから…」
「やっぱり力仕事かしら?やはり土台の筋肉をつけるのが先決かしら。『富士の高さはすそ野の広さ』ってね」
「また訳の分からないを。フジってなんですか?」
次々に質問を投げかけていく。王族として人の名前と顔を覚えるのは仕事であり義務であるのだが、この浴場を利用する層とはそもそも顔を合わす事すら稀だ。
一通り好奇心が満足した頃にはすっかり皆茹っていた。
「まぁ、だいたい分かったわ。次行きましょ」
「どこですか?」
「もちろん、騎士たちの風呂かシャワールームに…」
「男湯じゃないですか!却下です!」
バッシー-ン!!
「はぅぅ…(ブクブク)」
「「「キャー。姫様ー-!!」」」
どこからか取り出した張り扇で豪快にどつく。本当に、お風呂の中でどこから取り出したんだろう?
それはともかく、いつも以上に変な事を言い出した王女も、何時もの調子で張り扇を振るったマーガレットも、ボーっとしてたとしか言いようがない事故であった。
「それにしても姫様は目が良いですね。私なぞ湯気が多過ぎてて首から下は殆ど見えませんでしたのに」
「「「「私も 私も 横からの光も入るし それ、ハレーションって言うのよ ワイワイガヤガヤ」」」」
「しー、しー!あーあ、ばれちゃった…言わなきゃみんな夢を見ていられたのに!!」
読んでくれてありがとうございました。
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「おお、そらワシや」でした