厨二王女対策会議
更新が滞ってすいません
平日よりもお盆の方がやる事が多くて全然休めないってのはド田舎あるあるのようです
「しかし、どうにか成らない物か?わが娘ながら頭が痛い」
ここ王城のとある会議室に、国王陛下と王母陛下を始めとする国のVIPが一堂に会し、目下の懸念を話し合っていた。
内政、外交、その他一通りの議題に一応の決着がつくと、定期的にでるいつもの話題~王様の愚痴~に移る。
「やはり、5歳の時の水晶爆発事件でしょう?通信水晶に魔力を込めて、加減が出来ずに爆発させるなど前代未聞での事件でしたな。長年魔法に携わってきましたが他には全く聞いたことがありませんよ」
宮廷魔術師にして錬金術師、王国最高の魔法の権威、トトギス・ホルメス先生が笑う。妙にツヤツヤとした肌で年若いようにも見えるが老人のようにも見える。噂では200歳を超えるとも言われているが真偽は不明だ。
「不謹慎ですぞ!あれで王女殿下は危うく死にかけたというのに
それにしても、姫がよく言うように、本当に転生者なのですか?」
こちらはマックビスティ公爵。王国内の貴族の最大派閥を率いる重鎮だ。
頑固な魔法至上主義者で、自国と同程度かそれ以上の魔法文明から来た転生/転移者以外は認めたくない。認めたくないが、無魔法世界から来た転生/転移者の方が魔力自体は多かったり、魔法がないからこその発想で新しい魔法や技術を作ったりするので、複雑な思いを抱いている。
「それに関しましては、ここ30年ほどはそのような時空の乱れは観測されていません。99%は違うと言えます。まぁ私は神ではないので1%は否定しきれませんが。
にしてもですよ。儀式魔法なら間諜に見つかるし、偶発的なら予兆にしたがって私たちが東奔西走して探し出しましたよ。当時は『三賢者』なんておだてられて、先代、先々代さらにその前と三代に渡ってその役目を仰せつかりましたよ。おかげで私以外の二人は過労死してしまいましたがね」
国王は引きつった笑いを浮かべているが、そんな事お構いなしにヘラヘラ笑いながらトトギス・ホルメス先生がしゃべり続ける。
別に王家に文句がある訳でもなく、悪口を言っている訳でもない。一応、礼儀作法も知っている、敬語も使えるが、『命は平等』という主義が行き過ぎてお偉いさん達には傲岸不遜に見える時があるだけだ。
傲岸不遜に見えない時は一日24時間の三分の一程度…眠っている8時間くらいの間くらいだ。
「ところで王様、再婚する気はありませんか?」
「い、いや。当分ないが」
唐突な質問に戸惑う。
王妃は病弱で厨二王女が物心つく前に他界している。以来国王は寵姫も囲わず独身だ。
姫は乳母や王母陛下に育てられ、おかげで妙に古臭い教育を受ける事となる。【火球】や【雷撃】と言った攻撃魔法は苦手で、【変身】や【巨大化】や【縮小】と言った王母様の子供時代に流行っていた古典的魔法が得意だ。
「やはり跡継ぎは男の子がいいでしょ?そうでしょ?そしたら姫様いらないでしょ?そしたら姫様下げ渡してください!ちゃんと面倒みますから。いやいや解剖したり頭勝ち割って調べるなんて事しませんから。経過観察したいだけですから。ね?ね?どうです?」
国王がとんでもなく苦い顔しているのに気づかずしゃべり続ける。
いったん深呼吸をすると、恐ろしく静かな声で人を呼ぶ。
「誰ぞ!この者を捕まえよ。王家に対する不敬罪で首をはねておけ」
「ほぇ!?」
全くの予想外だったのか間抜けな声が漏れる。ヅカヅカと入ってきたの衛兵ではなく、フードを目深に被り顔を見せないようにした、異常に筋肉質な大男だ。
トトギスを軽々と担ぐと足早に去って行った。
「………さて。何の話をしてたかの?」
しばらく間をおいた後、疲れ切った表情で王様が話を促す。
「水晶爆発事件でしたよ。前に実験したんですよ!」
「貴様!!早かったな!!!」
「おっと、『一つの罪には一つの罰』ですよ陛下。私は不敬罪の罪に対して、斬首刑はもう受けましたからね。また何かやるのは野蛮な行為ですよ」
・
裁判も無しにいきなり斬首刑は野蛮じゃないのか?
それはともかく、掴みかからん勢いの国王陛下に、先生は早口でまくし立てる。
先生は錬金術の秘法『ホムンクルス』でスペアの体を複数持っていたのだ。
ちなみに、影武者として又は暗殺対策として誰もがこれを欲しがったが『ホムンクルスで自分用のスペアボディー作るには、分け与えた魂の調整が難しいですからね。作るなら自分自身でしか作れないんです。ところで王様は私くらい錬金術の天才でしたか?』と、先生しか持っていない。
「んじゃ、説明しますよ」