仮想杞憂
約400字の短編のお話です。
よろしくお願いいたします。
いよいよこの日だ。
周りの子たちもみんな、私と同じで、落ち着かない様子だった。
「ちゃんと、できるかな」
人生で最初のコンテストだ。このコンテストで上位に入らないと、私には別の頭が作られる。
「ううん。私は、綺麗だから」
お母さんやお父さんたちと早く同じ家で暮らしたい。そのためにも、このコンテストは大事なんだ。だから私は自身がない顔を磨き上げて、身体を絞って、自信を付けた。
他の子たちもきっと。
「なん、で」
でも、結果は駄目だった。基準点にも満たなくて、いくら頑張っても上位は無理。そう、言われた。そして今私は、控室にいる。
新しい顔は、三か月以内に書類で申請する。
ならいっそ、借金してでももっといい顔に――。
「なんで?」
――したいのか、私は?
確かに、綺麗じゃない。基準未満で予選落ち。
それでも私だ。ちゃんと向き合ってきた私だ。
失くして、たまるか。
係員から受け取った申請書類を、私は控室のごみ箱に破って、捨てた。