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第98話 ジオスとアゴン、再び

ー魔族領 コーカサス州州都「ガイエスブルク」近郊の森ー


パチパチ パチッ カタン、メラメラ …… ササ〜  キキキッ


闇夜の森の中、木々を揺らす緩やかな風の音と虫の音、夜行性の動物達の鳴き声がたまに聞こえるそんな中、焚き火の音がその場の雰囲気を演出していた。その焚き火を囲み、ジオスとユリナは真剣な顔つきで話しを続けていた。


「ジオス様、『この世界は後一年も持たない』、これが私の知る全てです」


ユリナのその答えに、ジオスは問い続ける。


「......それだけ? 他には?」


「ん~、穴が開く? じゃない枯渇だったかな? 何かがなくなると聞いてます。 あと魔王様が『魔族だけは助ける』とかなんとか..」


「そうか、魔王がそんな事を、だからユリナは落ち着いているのか」


「はい、ですが..」


「ん、何か気になることがあるのか?」


「ええ、多分魔王様は..私達を偽っています」


「ん?なぜだ?」


「はい、何故ならすでに魔族領の一部が消失しているから…」


「消失..消えてしまったのか?」


「はい、もし、魔王様がおっしゃられる事が本当なら、魔族領はたとえ一部でも、消失してはいないはずなんです。ですが..」


「その領地の一部が消失したんだな」


「はい、......そこに住まう民達と共に…」


「ユリナは、その情報をどうして知ったんだ?」


「はい、私には双子の姉、『アイシャ』がいます。その姉とは、双子特有のつながりがあって、たまに、お互いの情報を共有しているのです」


「じゃあ、今回の情報はその双子の姉からなのか?」


「はい、姉は、他の州の州知事に嫁ぎました。その州知事からの情報では、『魔族領北方、ノイエラント州の最北端、その一部の街が消失し、今もそれが進行しつつある』と言うものでした」


「なんか物凄い情報なんだが、いいのか?」


「ジオス様以外、誰も聞いてません」 ニコ


「おまえらが相手だと情報駄々洩れだな、もうザルを通り越して穴だなそりゃあ」


「ふふッ、ですから、今晩の事は姉にも伝わりますね♡」 エヘッ


「ふう、(双子の2人はつながっている、だとしたら、ここから別の場所の情報が得られるかもしれん、だがそれは、逆にこっちの情報も向こうにいくのか)」


「ジオス様?」


「ん、ああ、なあユリナ(そうだ、この情報は得られるかな?)」


「はい、何でしょうか?」


「最近よく降っていた星降り、君は知ってるかい?」


「ええ、知ってますわ、ここひと月の間に20ほどの、大小様々な大きさで降ってくる星ですね」


「ん、その星降りがなんだか、(20以上?)君はなにか知ってるかい?」


「え? 星降りがですか?」


「ん、」 コクン


「いえ、特に気にもしていませんでしたから」 フリフリ


「そうか、(という事は、魔族でも本質はつかんでいないという事か)」


「ジオス様は、星降りがなにかあると思われるのですか?」


「ん? ん~ (どうする? ここでそれを言えば、ユリナの姉にその事がわかってしまう。そうなれば、この魔族領はパニックになってしまう、う~ん)...んッ⁉ やばッ‼︎」 ザッ!ババッ!


「きゃあッ!」 ガバッ! シュンッ‼


ジオスがユリナの質問に、どう返答しようか迷っていた時、いきなり大きな殺気と魔力を感じ、ユリナを抱えてその場を離れた!


「《バーザル.デバラッ!》」 キュン! ババアアッ! ドバアアアンンッ!


闇夜の中から殺意のこもった炎の魔法が襲ってきた。それは、ジオスのいたあたりに着弾し、その場を燃え上がらせた。


ボボウウウッ! メラメラメラメラ!


「くうう、いきなりかッ‼︎ 」 ザザーッ!


「え? なになにッ⁉︎ 攻撃された? え?いつ? 気が付かなかった」 ギュウッ


ジオスは魔法攻撃を避け魔法が来た方向を見る、ユリナは突然の事に驚き、ジオスにしがみついていた。そこへ、ジオス達に魔法攻撃を放った者が、語りだす。


「ほう、今のを避けたか、流石だな、ジオスよ!」 シュン ザッ タタタ


「へえ~、グレーターギルスってのは不意撃ちもするのか?」 ザッ


「え⁉︎(グレーターギルス? それにこの声! 兄様ッ⁉)」


「フンッ! ジオスよ、時と場合による!今回はその場合の方だッ!」 ザッ


「ん、アゴン、おまえにしては随分、乱暴なやり方だな?」


「ふむ、ユリナッ!お前はここで何をしている⁉」


「え、わ、私は...その...」


「言い訳はいい! 城に行けばお前は昼から出かけたまま帰らぬというではないか! だからこうして探しに来てみれば、こ奴と一緒とはなッ!」 バッ!


「そこのあなた、ユリナ様を放しなさい! さもなくばこの場で殺します!」

 チャキッ!


「ん、(この子は確か依然、アゴンと共に去ったメイドの子だな! ユリナの事を探しに来たのか?)」 ザッ


「うそッ!(わああ、クリスちゃんもいる⁉ えーッ! どうしよおッ!)」タラ...


その場に現れたグレーターギルスのアゴンとアヴィスランサーのクリスは、ジオスに対し完全なる敵対行動をしていた。


「ジオスッ!、貴様が抱いてるのは、私の妹だ!その手を離せッ!」 シュンッ!


「えッ!妹おおッ⁉︎ (ああーッ!そうか、「ユリナ・フェル・アゴン」、アゴン家! どうして気が付かなかった⁉)、クッ!」 シュンッ!


「え? きゃああー(はやいはやいはやいーッ!)」 シャシャシャッ!


「クッ! 待てッ!卑怯だぞジオスッ!」 シャシャシャ!


「マスター、援護しますッ!《塵破!》帝級剣技!《スタルデン.シャウツッ!》」  シュンッ! シュリイイン―ッ!


アゴンとクリスは、超高速でジオス達に近づき、剣を振りかざしてきた!


「んッ! 早いッ! 仕方ない、神級戦技!《ファントムッ!》」 ブンッ!


「「何っ!(えッ!)」」 ギュウウンンッ! ズバッ!ビシュッ!


ジオスと抱きかかえていたユリナの姿が二つに分かれた。アゴンとクリスは同時にジオスのみに仕掛けたが、2人の剣は手ごたえ無く、ジオスのその姿がユリナと共にぶれて消えていった。 ユラユラ シュン


ザザッ! タタッ! チャキッ!


「マスター、相手をロスト、申し訳ありません」


「クッ!あ奴めッ!どこに消えたッ!」


そんな2人にの背後から、突然声が聞こえた!


「ここだよッ!」 ババッ! ビシッ! ドカドカッ‼


「「え! なッ‼ キャアア―ッ! グワアアーッ!」」 ババッ! バシイイッ!


ダンッダダーッ!タタ..ザザ―ッ! スチャッ!


アゴンとクリスは、いきなり背後に現れたジオスに手刀と足蹴りをくらい、勢いよく飛ばされたが、流石グレーターギルスととアヴィスランサー、難なく体勢を立て直し、ジオスに剣を構えた。


「い、今のはなんだ? 何をしたッ⁉︎」 チャキッ!


「マスターッ!危険ですッ! 標的対象のトレースができませんッ!」


「なにッ! クリスの能力でもかッ!」 キッ!


「はいッ! 私の能力を遥かに超えてます!」


「さすがはジオス、だが、ユリナは返してもらうぞ!」 ウヲオオッ!


「あ、そうか、兄妹だったな、ユリナどうする?」


「へ?え~っと...(凄い、あの兄様とクリスが2人がかりで戦ってもかなわないなんて、それも平然としている。なんて人なんだろ)」


「ユリナッ!今私が助けてやるからな!もう少し待っていろッ!」 シュゴオオ―ッ!


「い、いや、あの兄様…」


「マスター! 鬼神魔装は気を付けてください! ユリナ様がいるのですから」


「心得ておる!妹には当てん!」 チャキッ!


「あ~、あれは何を言っても無駄だな、頭に血が登ってるわ。まったく、しょうがねえなッ!」 ポリポリ


「ジオス様?」


「ユリナ」 ストンッ


「は、はい」 スタ


「ちょっと離れていてくれ、アゴンの奴の目を覚ましてくるから」

 シュウウンン チャキッ!


ジオスはユリナを下ろし、後ろへ下がらせ異空間より自分の愛刀、超神剣「エルデシーゲル」取り出し構えた。


「えッ? ええーッ⁉ アイテムボックスッ⁉」


「ふむ、ジオスよ、ようやくやる気になったか」 チャキ


「仕方ないだろ、こうでもしないと収まらないからな!」 チャキン


「魔王様から勅命があってな、お前を『魔王城まで連れてこい』とのことだったが...」


「お!では、もういいだろう? やめにしないか?」 パアア


「そう言う訳にはいかないッ!」


「でも俺を連れてかなきゃいけないんだろ?」


「貴様の生死は聞いておらんッ!」 キッ!


「そんな無茶な..」 


「兄様!おやめくださいッ!」 タタタ バッ


「止めるなッ!ユリナッ、これはお前の為なのだッ!邪魔をするなッ!」


「では、なおさらです!」


「なぜだッ⁉︎」


「この方は、ジオス様はッ! ユリナの、ユリナの大事な旦那様だからですッ!」 ギュッ


「「ええーッ!(ブチッ)」」 


「なッ⁉ ななッ‼︎ なんだとおおおッ!」 グオオオオ―ッ! メラメラメラッ


「あちゃ〜、それ今言わなくても…」


「えッ⁉ ユリナ様の旦那様ッ⁉︎ 結婚なさってたんですか?」


「お、おい、ユリナ..」


「はい、ジオス様?」


「いきなり旦那は不味くないか?」


「いいんですッ!」 グイッ


「でもなあ、お前の兄、アゴンがそれこそ凄い事になってるぞッ!」 ほれッ


「え? あ、あらあ~...」


そこには、鬼神魔装を帯び、更に怒りをあらわにしたアゴンが立っていた。


「ゆ、ゆ、許さんッ! ジオースッ‼︎、俺は貴様を認めんぞおおーッ!」ババッ! 


「いや、認めるもなにも、まだお前とは、いま会ったばかりじゃないか!」


「そんな戯言、魔王様には後で取り直しておく! 貴様はここで俺が打ちのめしてくれるッ!」


「「兄様ッ!(マスターッ!)」」


「おいおい、もう無茶苦茶だなあ、ハア〜…」 ザッ チャキンン


「行くぞおおッ! ジオースッ!」 バババッ シュンッ!


「どうぞッ!」 ザザッ


「これでも食らええええッ! 《塵破!》 幻魔鬼神級剣技ーッ! 《アヴァビラス.ザム.グラビティーッ!》」 ヒイイイインン! ドギュウウウンンッ!


アゴンは鬼神魔装を帯びそのままの状態で魔人が使う最大剣技の一つ、「幻魔鬼神級」の剣技をジオスに向かって使ってきた。 だがジオスは冷静にそれを見ていた。


「悪いなアゴン、前とは違うんだ! ユリナもいるし、早めに終わらせてもらうッ!」 ググッ


ジオスは一度、アゴンの鬼神級剣技を見ている。その時は相打ちだった、だが、今回は違った。ジオスは早急に、事を終わらせたかったので、一部、ほんの一部、本気をだし、神級剣技を使った。


「いくぜッ! アゴンッ! さっさと目を覚せえッ! 《刹那!》 超神級撃殺剣技ッ!《ヴェルテリア.グラン.ヴェルザードーッ‼︎》」ギュインッ! ギインッ! ギュヴァアアアアーーッ‼︎


ジオスはこの世界では存在しない、誰もなし得ることのできない、最強戦剣技を使った。それは誰にも防ぐことのできない剣技、局地戦略戦を想定して創られたジオスオリジナル剣技であった。 アゴンとジオス、両者お互いの最強剣技同士がぶつかり合った!


カアアッ! バアアアアンンーーッ! ビュヲオオオーーッ ……


「「 キャアアアアーーッ‼︎ 」」


「「 ウオオオオオオーーッ‼︎ 」」 ババババアアアアアーッ………


辺り一面が、まるで昼間のように明るくなり、その輝きで、誰も目が開けられなくなっていた。


「くそおおッ! ジオス!ジオス!ジオスーッ‼︎……」 パアアアーーッーー


「すまんな…アゴンッ!……」 パアアアーーッーー


2人は光の中に埋もれて見えなくなっていった。………

           ・

           ・

           ・

その光の輝きが収まったのは、ジオスとアゴンの剣が触れ合った瞬間から数分後だった。 辺りはまた夜の闇に閉ざされ、静かな森へと戻っていった。 そして、その森の中に2人の男と2人の少女達の姿があった。少女達2人は気絶して隅の方に座っていて、男の方は、1人はその森の地面に横たわり、もう1人はその横たわっている者の横に、自身の超神剣を携え立っていた。


シュ〜…… サワサワ…サワサワ…  キキ、キキキッ…



「う、うう…こ、ここは?…」 ズキズキ


軽い頭の痛みを覚え、アゴンは目を覚ました。その視界に映る人物の輪郭が少しづつはっきりとして見えたその時、その人物をしっかりと認識した。そして現実に戻る。


「ようッ! 目が覚めたか?」 ニカッ!


自分の目の前に立つその人物の、その仕草を見てアゴンは軽く返事をした後思った。


「ああ…(完敗だ… ジオスッ!…  妹を…ユリナを頼む!)」 コクン


グレーターギルス、【ゲルバド・フェル・アゴン】 ユリナの兄はジオスを認め、自分の最愛の妹を彼に託した。




いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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