第96話 4人目は魔族
ー魔族領「アスモガルト」ー
ノイエラント州の州都、「エルドレーテ」がインペリアルスパイダーの襲撃に遭う少し前、ジオス達4人は、アトランティア法王国からここ魔族領、アスモガルトに差し掛かっていた。
「なあ、セレス」 ザッザッ
「はい、ジオス様、なんでしょう?」 テクテク
「何気にセレス達を連れて街を出てきたんだが、護衛の2人はどうした?」
ザッザッ
「え⁉︎ あ、あーーッ‼︎」 テク ピタッ
「ん? ま、まさか〜…」 ザッピタッ
「そ、そのう〜…まさかです…」
「黙って置いてきたと?」
「……..うん」 コクン
「ハア〜…もう魔族領だし、今更か…」 フウ〜
「ごめなさい…」 ペコ
「ん、いい」 ザッザッ
「え、でも…」 テクテク
「大丈夫、俺がセレスを守ってあげるから。だから気にしない!」 ザッザッ
「ありがとうございます」 ペコ テクテク
「ん、ッと、ここから魔族領だ、いくよ!」 ザッザッ
「はい!」 テクテク
ジオス達は国境であると思われる異質な空気の壁を通り過ぎた。
「ん〜、セレスちょっと聞くがいいか?」ザッザッ
「はい、ジオス様」 テクテク
「魔族領には、検問みたいな物はないのか?」 ザッザッ
「ええ、無いですね。と言うか、実力の無いものは入れません」 テクテク
「ん? それはどう言うことだ?」 ザッザッ
「はい、魔族領には隣国との境界に、強力な結界があります」 テクテク
「結界?」 ザッザッ
「はい、で、その結界は魔族か魔族並みの魔力と身体能力の持ち主、又は、許可を得た免罪符を持っている者しか通ることは出来ません」 テクテク
「免罪符?」 ザッザッ
「これです」 テクテク チャラ
セレスはその胸元から、綺麗な首飾りを出して見せた。
「ふ〜ん、通行許可証みたいな物か」 ザッザッ
「ええ、コレがあれば、魔族領のどこへも行けます。そう魔王城の中も..」 テクテク
ジオスはセレスの持っている首飾りを一眼見ただけで、それが何か理解した。
「(セレスは知らないかもしれないが、アレはこの世界の全ての隔たりを通過できる、『アレスファクター』つまりマスターキーだ!どこからあんなものを…)」 ザッザッ
「そう言えばジオス様?」 テクテク
「ん?」 ザッザッ
「ミュウさん達はどこへ行ったのでしょう? さっきからずっと見当たらないのですが?」 テクテク
「ああ、ミュウ達なら…ん?」 ザッザッ ガサガサッ!
ジオスがセレスの質問に答えようとした時、前方の脇にある草むらが揺れた。
「ジ、ジオス様! 何かいますッ!」 ピタッ
ガサガサガサッ!
「え、ああ、アレは…」 ザッ ピタッ
ジオスがそう言いかけた時、その草むらその音の正体が現れた。
ガサガサッババッバッ! ミギャアアッ! にゃにゃあッ! ザザアー!
「ジオス様ッ! 採ったにゃあッ!」 にゃんッ! バタバタ
「ミイもにゃあッ」 ミャンッ! ピクピク
ミュウとミイの2人は、魔族領に入る少し前から、森に入り自由散策をしていた。2人の手には、大きな「ファングボア」と「ペリガモ」が捕まっていた。
「お、おう!凄いな、じゃあそれは今日のご飯にしようか」
「「はいにゃ!(ミャ)」」 にゃん
「うわあ〜 2人とも凄いですねえ」
「にゃ? そうでもないにゃ! いつもの事にゃ!」
「ミャアッ! おにく〜ッ!」
「まあ、2人とも元は狩猟民族だからな、本能的に狩りができるんだろ」
「じゃあ、私がそれを捌きましょうか?」
「え?セレス出来るの?」
「はい、こう見えてもちゃんと出来ますよ」
「じゃあ、水辺を探してそこで今日は野営だね」
「「「はい! (にゃ、ミャ)」」」
ジオス達は、魔族領の森の中を進み、暫くして綺麗な川を見つけ、その近くに野営用のテントを貼った。
「魔族領のと言うから、もっと禍々しい場所を思い浮かべていましたが、人族の森となんら変わらないですね。普通の森に普通の川です」
「当たり前じゃないか、セレスは知らなかったのか?」
「はい、城の者や街の人たちに、魔族領の事を少し聞いただけですから」
「偏見や噂だけではダメだな、自分の目で見てその体で感じたことが全てだ。それを認識する事で自分の視野を広めるんだ、いいね」
「はい、ジオス様。では、さっさとやってしまいますね」 ペコ
セレスは川辺にいて、獲物の血抜きをしていたミュウ達のそばへ行った。
「さて、此処から『王都ブロスベルク』迄はどれだけあるんだ?」
カサッ ガサガサッ!
「(ッと、魔族領、気を許せんな!何かいる!なんだッ!)あっちか!」
シュン!
ジオスは何かの気配を感じ、その場所へ素早く動いた!
ガサガサガサッ ザザッ
「(見つけたッ!)そりゃッ!」 バンッ!ババアッ!
「キャアアアアーッ!」
「え⁉︎ キャアって、女..の子..」 シュウ〜…
草陰に怪しいものを感じ、高速移動でそれを捉えたジオス。そこには赤色のショートヘア、白いブラウスに紺色のハーフパンツ、グレーのジャケットに黒色のマントを羽織った、歳の頃は17歳位の魔族の美少女が倒れ震えていた。
「う..うう…こ、殺さないで..た、たすけて..」 ブルブル
「え、あ、あ〜…すまない..」 バッ
ジオスはすぐに少女から離れ、倒れている彼女を起き上がらせた。
「あ、あのう〜…」 ブルブル
「ん、ああ、てっきり魔物か何かかと間違えたんだ。怖い思いをさせてごめんね!」 サスッ
ジオスは彼女に謝りながら、汚れてしまった彼女の頬を撫でた。
「ひゃッ!」 カアア〜ッ
「ん、顔が赤いぞ! どこか痛いのか?」
「い、いえ.. そうではなくて..そのう〜…(ど、どうしよう、でも…)」 モジモジ
ガサガサッババッバッ! ミャにゃアアアッ!
そこへミュウとミイが飛び込んできた。
「にゃッ! ジオス様離れてッ! 誰ですにゃッ!」 シャーッ
「そうミャッ! おまえッ ジオス様から離れるミャッ!」 シャーッ
2人はジオスと魔族の少女を引き剥がし威嚇した。
「えッ? えッ? あ、あのう〜…」 オロオロ
そんな怯えている彼女を、ミュウが警戒しながら見た。
「ウ〜、コレはまずいにゃ」 にゃあ
「ん、ミュウこの子がどうしたんだ?」
「でかいッ! 大きすぎるにゃッ!」にゃあ〜! ギンッ
「ひゃッ え、ええ〜」 ビクッ
「ミャッ! お、お姉ちゃんどうしよう」 ミャア
「だから、どうしたんだよ2人とも。この子が危険なのか?」
「にゃ、ジオス様」
「ん?」
「この娘、おっぱいがデカすぎるにゃッ! 危険にゃッ!」 にゃあ
「ええ〜ッ!(私のそんなに大きいかなあ? 普通だと思うけど)」
「はあッ⁉︎ なんだよそれえッ! そんなの何の危険もないじゃないか!」
「いえ、私達の、ジオス様の妻としての危機ですにゃ!」
「へ?(妻?今、妻って言った? でも私もこの人が欲しいッ!)」
「ん、いやミュウ、そんなことは…」
「にゃあ、ジオス様〜、まさかこの子もお嫁にするつもりでは〜…?」 ジリッ
「イヤイヤイヤッ! ないからッ! そんなつもりは無いからッ!」 ブンブン
「にゃ、それを信じても?」 ジッ
「ん、俺にはおまえ達がいるからな!」 ニコ ナデナデ
「にゃッ にゃあ〜 もうジオス様はずるいです」 カアア〜
「あ! ジオス様ッ!ミイも!ミイもしてッ!」 ミャ
「ん、いいよ!」 ニコ ナデナデ
「ミャアア〜 気持ちいいミャ」 ミャウ〜
「あ、あのう..(いいなあ〜、私もして欲しい)」 ソオ〜
「何にゃッ! いいとこなのに!」 ガアッ
「あッ! す、すみません!」 バッ!
「ああ、ごめんね、ミュウも落ち着いて、この子の話を聞きたいから、ね」
ナデ ナデ!
「にゃあッ! はいジオス様♡」 にゃん
「で、何だったかな?」
「は、はい、あのうあなた達は何者ですか? 此処は私共の領地、私有地なんですが?」
「え? ここ、君の持ち物なの⁉︎」
「はい、私の名前はユリナ、【ユリナ・フェル・アゴン】此処は魔族領、コーカサス州の州都『ガイエスブルク』近郊の森ナデラ、私の兄様が納めている領地です」
「そ、そうなんだ、俺の名前はジオス、でこっちがミュウとその妹のミイ、後あそこで獲物の処理をしているのがセレス、本当にすまなかった。勝手に私有地に入ってしまって」
「ええ、構いませんよ、それを咎めるつもりはありません(わあ、凄い魔力持ち、それにかっこいい〜)」 ニコ
「でも、狩りをしたり、野営のテントを張ったりしてしまったけど..」
「大丈夫ですよ、そのような事をしたぐらいで怒る兄様ではありませんから!ですが…」 フッ
「ん? 何かあるのか?」
「そ、そのう〜 わ、私が手込めにされ乱暴されたとなると話が変わりましてえ..」 モジ
「は⁉︎ 手込め? 乱暴? なにを言ってるのかな? ん、ま、まさか…」
「はい、今しがたあなた、ジオスさんに私は茂みに押し倒され、凌辱されそうになりました。ま、それは奥様達に助けられたんですけど、そのことを聞いた兄様がどうなるか、恐ろしくて言葉が出ません」 ニコ
「にゃッ! 奥様達ッ⁉︎ にゃあ〜 この子はいい子にゃ」 にゃ
「ミャアッ! ミイもそう思うミャッ! よろしくミャ!」 ミャア
「はい、よろしくです、ウフ!(チョロいな〜)」 ニコ
「ちょ、ちょっと待てええッ! は⁉︎いつ俺がそんな事をしたあッ! いや、確かに押し倒したはしたが、そんなことのためじゃ無いぞお!」 グワッ
「うふふ、 それを誰が信じると?」 ニコ
「(あ、悪魔だああーッ! ここに悪魔がいるうーッ!)ど、どうすれば良いのでしょうか?」 プルプル
「はい、私の夫になってくださいッ!」 ニコ
「「「へ⁉︎(にゃッ⁉︎ミャッ⁉︎)」」」
「ちゃんと、プロポーズもいただきましたから、その返事です♡」ウフッ
「「「えええーーッ‼︎」」」
「にゃッ!ジ ジオス様いつの間ににゃッ」 ガバッ
「ミャアッ! ミイ達だけではダメですか?」 ミャア
「してないッしてないッ! 俺プロポーズなんてしてないぞ!」 ブンブン
「あらあ〜、先程私の頬を触りましたのに、ダメですよ言い逃れは、ウフ♡」ニコ
「ま、まさか、魔族にとって女性の頬を触るのは…」 ブルブル
「はい、『あなたを一生愛します、結婚してください』と言う意味です」キャッ!
「ど、どうしよう〜…」 ジ〜
ジオスは川辺で獲物を捌いているセレスを見た。
「ハア〜、とにかくユリナさん、こっち来てくれるかな?もう1人合わせておく女性がいるから」
「ユリナッ!」 バッ
「え?」
「私のことは、ユリナッと呼んでくださいッ!」 キッ
「は、はい ではユリナ、いいかな」
「はい、旦那様♡」 ダキッ ポヨン ニコ
「「ミギャアアッ! ダメーッ!」」 ガバッ!ギュウーッ!
ミュウとミイはユリナに負けじとジオスにしがみついた。
「あらあ、別にいいじゃないですか、みんなの旦那様でしょ」 ニコ
「ま、まだセレスが認めてないにゃッ だからダメにゃッ!」 シャーッ
「んふ♡! いいですよ。では、そのセレスさんに会いに行きましょう」テクテク
「にゃ、凄い色気にゃ! それにあの自信、凄い子にゃ」 にゃあ
そう言ってジオスから離れ、ユリナは川辺で獲物を捌いているセレスの方へ歩いて行った。
ズバアアッ! シャッシャッ! シュシュッ!
「うん!コレでよしッ! あとは下味をつけて..」 ドサッ
「この胡椒と塩でいいですか?」
「ええ、お願い、それが終わったらよく馴染むように揉んでく……だれ⁉︎」 バッ
「はい、私ユリナと言います。ジオス様の新しいお嫁さんです。セレスさん」
パッパッ モミモミ
「え? 新しい、なに?」
「んふ♡ お、よ、め、さ、ん、 妻です♡」 モミモミ
「はああーッ⁉︎」 バッ
「あ〜、セレス、ちょっと良いかな?」 ソ〜
「ジ、ジオス様ーッ! 何なんですかあの子はあ⁉︎」 ガバッ!
「い、いやそれがね」
「それが、なにッ!」 キッ
「何かの拍子に、婚約になってた」
「はああ? ジオス様、ちょっと目を離した隙にい、何でそうなるんですか?」
「いやあ、俺も知らなかったんだよ。頬に触ったら婚約なんて」
「頬に? では、この子は魔族なんですね」
「知ってるのか?」
「はあ〜、ジオス様、コレは一般常識です。 で、あなたお名前は?」
「はい、私の名前はユリナ、【ユリナ・フェル・アゴン】、魔族領コーカサス州、州知事の妹です」
「へ? じゃあ侯爵令嬢じゃない!」
「いえ、侯爵なのは兄様です。私は兄様と一緒に住んでいるだけの都民ですよ」
モミモミ
「あ、それ、もう馴染んでるからやめて良いわよ」
「はい、では香草と食油の準備ですね」
「うん、でコレを使って、あと香草はって、話が逸れたけど…なかなか料理上手じゃない」
「はい、私、料理得意ですから!」
「私もよ、えっとユリナ..さん」
「はい、セレスさん?」
「あ、セレスでいいよ、コレからよろしくね!」
「はい!セレス、私のこともユリナでいいです!」
2人は和気藹々と料理を作っていった。
「にゃ、どうやらセレスは認めたみたいにゃ」 にゃあ〜
「ミャ、本妻が認めたのならいいかミャ!」 ミャン
「ああ〜、セレス、そのう〜なんだ…すまん!」
「ジオス様! いいえあなた!」
「え⁉︎ あなたって…」
「うん⁉︎ なにかッ!…」 ジッ
「いえ、はい、なんですか?」
「気を付けてください、ジオス様の行動一つで女の子の一生が、大きく変わるんですから、責任重大ですよ」 ババッ
「ん、そうだな、セレスの言うとうりだ! 気を付ける」コク
「はい、!」 ガバッ!ギュウーッ!
「お、おい!」
「お仕置きですッ!」 チューッ!
セレスはジオスに抱きつき、そのまま彼の口に自分の口を重ねた。
「「「ああーッ‼︎」」」
「ミイッ! 私たちも行くよッ!」 バッ
「はいミャッ! お姉ちゃん! さッユリナも早くッ!」 バッ
「え⁉︎ えッ⁉︎ ええーーッ‼︎ (キャアーッ‼︎ ま、まだ、まだ心の準備がーーッ! ムグ! チュッ!)」カアアーッ ポンッ! プシュ〜…
その日、ジオスは4人の妻とキスを交わし、正式に婚約となった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。