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第92話 星降る異次元世界「アーク」

ー衛星都市アルゴン 宿屋街ー


夕闇が訪れた賑やかな繁華街、その通りを過ぎると宿屋街であった。今、ジオスはその繁華街を1人考え事をしながら歩いていた。その表情は少し硬く、酒場の呼び込みも声をかけるのは躊躇うほどだった。


「(どうする?あまり時間がなさそうだ。このままでは…)ん?」 ザッ


ゴゴゴゴッ シュウウウーーーッ!


すると突然、街の遥か上空を光り輝く巨大な球体が横切って行った。


「ア、アレは…」 ジッ


「キャア〜 綺麗! 見て見て、星降りよおッ!」


「おう! 今回のはデカイなあッ! こりゃあ絶景だああ!」


「今日ので6個目かあ、最近よく降るな! 何かが起きようとしているのか?」


「ははは!心配すんなって、そうそう、大事なんて起きないさ!」


「綺麗だからなんでもいいわ。お願い事でもしようかしら」


「滅多に見れないものを見たんだ、もう一杯行くかあ!」


「おう!付き合うぜえ! ははは」


繁華街でこの天体ショーを見た人々は、口々にそれを見て不安や喜び、感動をしていた。が、ジオスだけは違った。


「(まずいぞ! アレは星降り(流れ星)なんかじゃない! アレはこの世界を覆っている還元された魔素の塊だ!それが一気にアレだけの大きさで落ちている…それが6回目だと? 見落としも有ればもっとか?)」 ググッ


ジオスは光球が過ぎ去った夜空を凝視して、一つの結論に至った。


「間違いない。やはり、この世界は、この世界の人々は、創造神、神に見放されたのか!」 ババッ


創造神、それはありとあらゆる世界を作り出せる神である。その創り出された世界は創造した神、創造神の御心一つで繁栄もすれば滅亡もする。創造神に見染められた世界は多大なる加護と膨大な魔素の恩恵が受けられ、繁栄していく。 その一方、創造神に見放された世界は加護を剥奪され、魔素も供給が止まり、やがてあるだけの魔素を使い果たし滅亡していき、そのまま消滅してしまうのである。 今、ジオスがいるこの世界こそが、創造神の加護を無くし、残っている魔素を使って、必死に存在している世界だった。


「俺は大変な勘違いをしていた。セレス達、この国の者たちが俺をこの世界に召還したと思っていた、だが違った。そもそもあの魔法陣で召喚が出来るはずがないのだ。となれば、俺をこの世界に召喚したのは、この世界の他の誰かだ! 維持管理をしているメイン制御コアか? それとも魔族の王、魔王か? または他の誰かなのか、とにかく、ここまでの事は俺に向けての救難要請、この世界からの「SOS」なんだ!」


ジオスはその真実を完璧に言い当てた。この世界はもう後がない、人も動物も陸や海、その全てが消え去ろうとしている。その兆しが、魔族領で始まった。魔族領のとある州では、大地が消え去りつつあり、動植物が姿を消し始めた。それをなんとかしようとした魔王であったが、創造神に見放された世界、崩壊を食い止めるほどの魔素もなく、ただ大地が消え去るのを待つだけになってしまった。 


魔王は自国の民を守らんとするため、隣国のアトランティア法王国に援助を求めたが断られた。魔族と人間、この隔たりがそれをした。一部の法王国の人間が魔族を一方的に殺害した。これを契機に法王国侵攻となった。魔族領の民を守るために。その間に、メイン制御コアはこの世界の魔素を集め、必死に世界の崩壊に対処してきた。それが先の星降りである。 その副作用で魔界の生物、ブラックスパイダーが活性化して魔族領に現れてきたのだ。 


この世界の未来なき事を断定したメイン制御コアは、残り少ない能力と強勢制御力を使って、異界の世界へ救難要請のつもりで強制召喚をした。 不安定な強制召喚の中、ジオスが呼ばれ、場所はアトランティア法王国の召喚儀式の間に偶然降り立ったという事だった。


「何処の誰だか知らないが、呼ばれた以上急いで会わねば」 ザッザッ


ジオスは宿屋街には向かわず、街の中央、ギルドのある建物に向かって行った。


ー冒険者ギルド アルゴン支店ー


ギイイッ コツコツコツ


ジオスはギルドの扉を開けて、真正面の受付までやってきた。


「ようこそギルドへ、登録ですか?それとも依頼ですか?」(見かけない方ねぇ)


「少し聞きたいことがある」


「はあ、私でわかる事でしたら」(あら、結構タイプかも♡)


「星降りの方向には何がある?」


「ああ、それでしたら知ってます」(うん、楽しょお)


「そうか、では教えてくれ」


「はい、その方向には、魔族の住む広大な土地、魔族領「アスモガルト」があります」(エッヘンッ)


「魔族領..魔王がいるのか?」


「ええ、魔王だけではありません、アスモガルトには6つの州があり、それを統治している強力な魔人がいます」(まさか行く気なの?)


「魔王の他に強い魔人か、(アゴンみたいなやつかな?)わかった、ありがとう」


「あ、あのッ!」(え!行くの?行っちゃうの?)


「ん?」


「まさか、行かれるのですか?」(え~、行かないでえ)


「ん、」 コクン


「危険です! 危ないですよ! 行ったら死んじゃいますよ!」 ガバッ!(やめえてえ!)


「心配してくれてありがとう でも大丈夫、それにコレは俺に託された事なんだ、だから行ってくる」 二ッ


「必ず帰ってきてくださいね」 ウル(グスッ!)


「ああ、じゃッ!」 ザッザッザッ


ジオスはそう言ってギルドを出た。 そして星降りの光が去った方向を見る。


「魔族領、「アスモガルト」か…魔王いるのかな?」


ジオスはそう言って魔族領の方へ歩いて行った。


「とにかく、まずは魔族領に行ってあの星降りなる魔素の塊がどうなっているかだな」


そして、街の出口に差し掛かった時だった。


ババッ ガバッ!ギュゥゥゥ!


「なっ!」ザッ


「捕まえたミャーッ!」 ミャア!


「え、ミイ?」


「えいッ!」 ガバッ! ギュゥゥゥッ!


「おわッ⁉ 今度はッ ムグムグッ!」 ババッ


「ジオス様!ゲットにゃ♡」 ギュッ!


「ボムバムメ(もしかして)ムウウ?(ミュウ?)」 モゴモゴ


「はいにゃ! ジオス様逃がしませんにゃ」 ギュウ


ジオスが門に向かって歩いていた時に、ミイが背中に抱き着き、そして続けざまに、ミュウがジオスの顔面にしがみついて来た。


「あーッ!お姉ちゃんずるいミャッ! ミイもそっちがいい!」


「ミイちゃん、早い者勝ちですにゃんッ!」 ウフ♡ ギュウ


「ずるいずるいずるいミャア!」ブンブン


「モミマム(とにかく)ミョッモ、(ちょっと、)ママメメムメマメムマ(はなれてくれませんか)」 モゴモゴ


「はいにゃ、十分感応させてもらいましたにゃ」ハフウ♡


ミュウはジオスの顔から離れジオスの前に立った。


「ジオス様、この格好どうですかにゃ?」 クルッ!


ミュウはセレスと一緒に買った服を着ていて、一周回って、その感想をジオスに尋ねた。


「ん、よく似合ってるよ、可愛いじゃないか」 二ッ


「あ、ありがとう…ございます」 カアアッ プシュ〜


「ミャッ! ねえねえミイは、ミイは可愛い?」 クルクル


「ん、可愛いぞ!」 二ッ


「ミャアああッ!」 ニコッ


そこへもう一人の少女セレスが走ってやってきた。タタタタ


「ミュウさ~ン、ミイちゃ~ん、待ってくださ~い!」 タタタ


「ここですにゃ!」 フリフリ


「はあ~、やっと追いついた、ってジオス様⁉」 バッ!


「よ! セレス」 バッ


「ジオス様あ♡」 タタタ


「ストップにゃ!」 バッ


セレスがジオスに飛び付こうとした時、 ミュウがその間に割って入って、セレスを止めた。


「え、ミュウちゃん?」 ピタッ


「それ以上はダメにゃ、セレスはそこまでにゃ」


「え、ちょっと意味分かんないんだけど..」


「ん、俺もだぞミュウ、何なんだ?」


「はあ〜、良いですかにゃジオス様、セレス」


「「ん、(はい)」」


「セレスは婚約者のいる殿方に近づいてはいけないにゃ!」


「「婚約者あッ!」」 ババッ!


「はいにゃ」 コクン


「誰が婚約者なの!」 


「ジオス様とミュウとミイにゃ」 にゃん


「「はあああッ!」」 


「ジ、ジジ、ジオス様ッ! い、いいい、今のはは話は本当ですかあッ!」 グイッ


「知らん知らん! 何にも知らないぞおッ!」 ブンブン


「ジオス様ったら、照れなくてもいいにゃ」 ポ


「ほらあ! あんなこと言ってるう!」 ガバ


「イヤイヤイヤ、本当だって、 お、おいミュウ!」


「はいにゃ」


「説明、してくれるかな?」


「にゃあ、あ、あのですねえ」 ポ ポ


「「うんうん」」


「私たちの里では、『若い未婚の女性の頭を撫でる』という行為は、女性なら親愛、男性なら求婚の合図ですにゃ」 キャアー♡


「あ、俺、2人の頭を撫でたわ! それかあッ⁉︎」


「はいにゃ!」 コクン ポ


「え?それで、どう婚約になるの?」


「はいにゃ、そのまま撫でられたら婚約成立、ダメなときはその手をひっかいて、相手にかみつくにゃ」 にゃん


「ちょ、ちょっと待ってください。 そんなのミュウたちの習慣でしょ! 私たちには関係ないわッ! ねえ、ジオス様」 ジッ!


「(え! え〜俺に振ってきたよ〜、どうすんだよコレはあ)」 タラ..


「ダメにゃ、もう私達は決めたにゃ! 諦めるにゃ」 フフン


「キイイー! はッ! だったら私もその婚約者です!」 フン


「にゃ、にゃんですとおお⁉︎」 


「ん、何を言い出すんだセレス!」


「何か根拠があるのかにゃ」


「ありますッ!」 


「え⁉︎ あるの?」


「その根拠は何にゃ?」


「はい、初めてジオス様にお会いした時、お父様からはっきりと言われました!」


「ん?…あ! ああーッ! アレかあッ!」


「にゃ、ジオス様にも心当たりがあるのかにゃ?」


「フフン、私は、この国の王である父から、ジオス様の元へ嫁にやると言われました!」


「ああ〜、そうだった。 あの王様そんなこと言ってたな」


「にゃあッ! で、では..セレスは..」 オドオド


「私はあなた達より先の、婚約者『許嫁』ですッ!」 バーン!


「にゃにゃにゃッ!にゃんとおおッ!…」 ガク..


「え? い、いや、その..なんだあ..どうしよう..」


「さあ、ジオス様 こちらへ」 スッ!


その勝ち誇った笑顔のセレスを見て、ミュウはジオスを見た。


「ジオス様〜」 にゃ〜ん


そんな時、ミイが一言。


「ミャ、大丈夫だよお姉ちゃん」


「ミイ、」


「皆でジオス様のお嫁さんになるにゃ!」 ミャ


「「「 !!! 」」」


「そうです、そうしましょ!それならもめないし、私達、3人がジオス様の事をしっかり繋ぎ止めておけばいいのです!」


「にゃあ! それはいいですにゃ、では私達3人は、婚約者同士という事にゃ、手を結びましょう!」


「あ、あのう..」


「わかりました、それに、これ以上ジオス様にお嫁さんはいりませんッ! よその女が近づかないように、しっかりと見張りましょう!」


「お、おい、ちょっと...俺の話を..」


「そうにゃ!ほかの女はだめにゃ!絶対に近づけてはだめにゃあ」 ギラン!


「ミャ、なんかお姉ちゃん怖いミャ..」


「お~い、聞いてるかあ~..」


「ではそういう事で決まりましたね!」 うふ


「「にゃあ(ミャアァ)」」 バッ


「君たちねえ、俺の意見は聞かないの?」


「却下です(にゃ。ミャ)」


「ううう、もう、この3人を嫁にもらう事決定じゃないかああ..」


「「「何か不満でも?(にゃ、ミャ)」」」 グイイイッ!


「いえ、何もありません」


「「「きゃあ―ッ!やったああ―ッ!♡」」」


「(まあ、なんとかなるか)..ん!なッ なにいッ‼」 ザ


シュゴオオオオ――  シュウウウーーッ!


「わああッ! 綺麗いいーッ!」


「にゃあ、星降りにゃあ!大っきいいいッ!」


「ミャアミャア! すごいすご~いッ!」


「ジオス様、素敵ですねッ!」


「......」 グッ


「ジオス様?...」


「だ、ダメだッ!」 ババッ


「え?…ジオス様?..どうなされ..」 オロオロ


「あ、あの還元魔素の塊を率いる誘因因子..ま、まさかッ!..」 ググッ


「あ、また来たにゃあッ!」 にゃ


シュゴオオオオ――ッ! シュウウウウ――ッ!


「わあ! 今度のはもっとでっか~いミャ!」


「あ、あああ..や、やめろッ!」 ガッ!


「ジオス様あッ! 一体どうし...」 オロオロ


「それ以上... それ以上使うんじゃあないいーッ! アリシアーーッ‼︎」ガバアッ‼︎


ジオスは無意識に叫んだッ! この天体ショーの執行者の名をッ‼︎




いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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