第90話 ジオス VS 執事ゼビオ
ー衛星都市アルゴン 貴族街グラード邸ー
領主の殺害を計画した此処「ギムロ・ゼン・グラード」の屋敷で、ジオスと執事のゼビオが大広間で戦っていた。
キンギャンンッ! バシイイッ! ザッザザアーッ!
初見の攻撃は強力な剣技、剣圧に弾かれ、2人はそれぞれの後方へ弾かれた。
「なんと、この私の剣を弾くとは!あなたは何者ですか?」 チャキ
「ん、俺もあんたは何者だい? ただの執事じゃないだろ」 チャキ
「これはこれは、お互いに秘密というわけですか。では負けた方がそれを明かすと言うのはどうでしょうか?」ジリッ
「いいのか?そんな約束して、本気でやるぞ」 ジリッ
「ほう、先程のは本気でないと?」 グッ
「ん、まあな」 グッ
「人を挑発するのがお上手い。いいでしょうッ!」ザザッ!シャ!ダダダッ
「ん!行くぞッ!」 シャンッ!ダダッ!
2人は剣を後方持ちして高速接近し、お互いの距離を詰める。そしてそれぞれの間合いに入った瞬間、ゼビオは剣技を放った。
「{激烈せよゼーバス!}《超加速!》帝級剣技!《ベルトゥ.ギラ.ヴェルトオッ!》」ヴィインッ!パッアアンンッ! シュッ!
「ん⁉︎ 詠唱剣技か! 《刹那!》神級剣技!《イージス.エッジ!》」キュンッ! シュパアアッ!
ゼビオはジオスに接近すると、自身の技をさらに強化するため詠唱する。それは武器の持つ攻撃力を増し、そのまま放たれる剣技にも上乗せして攻撃をする、攻撃力付加剣技であった。 付加を受けたショートソードは、その刃を赤く光らせジオスを襲う。 ジオスはそれを得意のカウンター剣技を使いゼビオの攻撃を返す…はずだった、それはジオスの予想を遥かに上回った攻撃であった。
ギャギイイイインン! ジュウウウッ!
「ん! なッ⁉︎ まずいッ!」 ギインッ! ババッ! ダダッダンッ!
ジュウウ〜 ドロッ ポタン ポタン ポタタタ…
ジオスはゼビオの剣技を神剣デザートシーゲルで受けたのだが、その刃同士がぶつかった瞬間、神剣デザートシーゲルの刃が溶け始めたのを見て、一瞬の判断で飛びのいた。が、神剣デザートシーゲルの刃は少しづつ溶け始めていた。 ジオスは溶け始めた神剣デザートシーゲルをじっと見て、その場で佇む。一方、大技を出したゼビオはその結果に、ジオスを見た。
シュンッ! ダダアアアーーー!タン チャキ! シュ〜
「なんと、素晴らしいッ! お見事ですッ! 私の必殺剣技をしのいだのは貴方が初めてですぞ! このゼビオ称賛いたします」サッ ペコ
ゼビオは技を出し終わった後、再度構えながらジオスを褒めたのち、紳士的な挨拶で頭を下げた。だがジオスは、溶けて崩れ去っていく神剣デザートシーゲルを見守っていた。
「………」 ジュウウ〜 ボロッ ボタボタッ!
「おやおや、あなたの剣では私の攻撃を受けきることが出来ませんでしたか、これは失礼しました」ペコ
「………」 シュ〜……シュン…
ゼビオがジオスに語りかけていたが、ジオスは自身の神剣が完全に消えるまで見守り、そしてしばらくして神剣デザートシーゲルは消えてしまった。
「武器を無くしてはどうしようもありません、勝負は私の勝ちという事で、貴方の正体を聞いた後、その命頂きます」 ザザッ チャキッ!
「おお! 流石はゼビオ!そのまま其奴を殺してしまえ!」
ギムロはゼビオを褒め称え指示を出す。ゼビオは勝ち誇りながらジオスに再度剣を向けた。するとジオスはゼビオに体を向けて語った。
「ん? 誰が勝ったって? 僕はまだやれるよ!」 バッ
「強がりを、既に勝敗は決しているのにどこからそんな言葉が出るのですか?(僕?)」
「そ、そうだ、貴様は負けたのだ!観念するがいい!ゼビオ早くやれ!」
「お前、うるさいぞ」ギンッ!
「ヒッ!」ブルブル
ギムロはジオスのひと睨みで萎縮し黙ってしまった。
「ふむ、威圧ですか。で、武器も無いのにどうしようというのですかな?」
「武器? 武器を持ってない? そうだ、彼女には大変申し訳なかった。」
「何?(彼女?)」
「僕の判断ミスだ、そのせいで彼女を失ってしまった…」
「何の話ですかな?」
「僕はもうミスをしない、だからごめんね」 ピリッ
「(僕とまた言った、口調が変わった? なんだ一体?)」 ザザッ!
ゼビオはジオスの変わり様にたじろぎ、警戒のため構えた。さらにジオスは話を続ける。
「だから、今度は間違えない! だから甦れッ!」ピリピリッ ヴィンッ! バアアアアッ! シュオオオオーッ!
ジオスの周りに、いきなり光の柱が形成された。
「ウグウウッ! な、何が!…」 ビリビリッ
ドドドッバアアアアンンッーッ! シュウウウウウ〜
いきなり現れた強大な光の力は、ジオス自身を眩い光に包み、その周囲一帯に強風が起きた。そして、その光と風が治ったそこには、武器を片手に持ったジオスが立っていた。
「待たせたね、さあ、続けようか?」 ビュンッチャキ!
それは武器というには余りにも神々しく美しい剣であった。その刀身には神語ヒエログリフがびっしりと刻まれ、剣自体は青白い黄金色の光を放ちその周りから聖なるオーラが溢れ出ていた。
「なッ⁉︎ 何という神々しさッ! それが武器というには余りにも偉大すぎる! 何なんだあそれはああッ!」 ワナワナ
ゼビオは驚愕の顔をして叫んだ。今まで自分の武器ほど強大で、無敵的存在だと確信していたのだが、今、目の前に存在している剣は、いかなる武器もコレを超えることなどできるはずがないと、確信させるほどの存在感がある武器だった、そう、この剣は超神剣だったからだ。
「ん、良い剣になった」 スッ ビュン!
ドンッ!ビュウウウウウ―ッ!
「ウ、ウウウッ! 何という検圧! ただ振り下ろしただけでコレほどとは…」ビリビリ ググッ
「さあ、続きをやろう!」 ザッ チャキ!
「グッ! (口調が戻った?だが、何かが違う! それにあの剣、アレに私の剣が通じるのか?)」チャ
「ん? ああ、このままじゃいけない、このまま使ったらあたり一面更地になってしまうね」 ブンッ
そういうとジオスは、持っている超神剣に力を込める。それに応じる様にジオスの持つ超神剣がそのオーラと輝きを抑えていった。 そしてその剣は誰もが知っている普通の剣の様になり、表面のヒエログリフも消えていた。
「これでよし!」 シャヤキンッ! チャ
その様子を見て、ゼビオはジオスに語った。
「いくつか尋ねても?」
「ん、手短なら」
「ではお言葉に甘えて、その剣は何ですかな?」
「ん、ああこの剣かい、コレは先の神剣デザートシーゲル、彼女の生まれ変わりさ、『超神剣エルデシーゲル』、君の持つ『魔神剣ゼーバスグランディア』に対抗できる神剣さ」
「なッ⁉︎」
ゼビオは絶句した。 先程自分の剣技で消滅したはずの神剣を「生まれ変わらせる」、要するにこの者は神剣を無から作り出せるという事だ。しかも前の物より数段上位の物を! それだけではない、自分が今手にしている剣、それの正体を完全に把握されていたからだ。この剣「魔神剣ゼーバスグランディア」は極秘魔剣、見た者は消さねばならぬ、ゼビオの家の家宝中の家宝で、一子相伝に譲られてきた物だったからだ。
「クッ…では、今ひとつ…」 ググ!チャキキ!
「ん⁉︎」
「き、貴様は…貴様は一体何者だあああッ!」 チャキッ! シュンッダダダ!
ゼビオはあまりにも突拍子な返事を聞き、居ても立ってもいられず、魔神剣を片手に、ジオスへ突っ込んでいった。
「行くよシーゲル、今度は大丈夫さ」 チャキッ シュンッ!
ジオスも超神剣を片手に走り出した。
「{激烈せよゼーバス!}《超加速!》帝級剣技!《ベルトゥ.ギラ.ヴェルトオッ!》」ヴィンッ!パアアッン!シュッ!
ゼビオは渾身の力を使って剣技を出してきた。先程と同じ技だが込める魔力を全て出した、彼の最終必殺剣技であった。
「{撃滅せよ!シーゲル}《刹那!》超神級撃滅剣技!《アルテナ.グラン.バスターッ!》」ヒイイイインンッ!ドッパアアアーーンッ! キュンッ!
ジオスも超神剣エルデシーゲルでの大技、あの高位魔人「アゴン」との戦いで使用した剣技を使った。
ゼビオの剣は赤く輝きジオスに襲いかかる。それに対しジオスの神剣は真っ白に輝きゼビオの技を真っ向から受けていった。そしてお互いの超神剣、魔神剣がぶつかり合った。
ドッギャアアアンンッ!ドガアアアアンンーッ‼︎ ブワアアッ!ババッバッ! バラバラバラッ!
「ギャアアアアーッ!」 ビュンッ!グシャアアッ!
するつもりは無かったが、互いの剣技の威力で、ギムロ邸は完全破壊され、建物の基礎だけになってしまった。その威力に巻き込まれた建物の持ち主、ギムロ侯爵は、爆風に吹き飛ばされ、遥か離れた地面に叩きつけられて絶命してしまった。
ギャギイイインンッ! バアアアアンンッ!………ギリギリ! ギリッ!
「グッ、さ、流石に同じ手は..つ、通じませんか」 グッ ギリッ
「ん、そうだな、さっきより威力は有ったぞ、ちょっと驚いたよ」 ギリギリ
「ググ、す、涼しい顔をされて、よ、よく言う!」 ギ ギリッ!
「ん〜、まあ、お前はアゴンほどじゃないからな」 ギリ
「なッ⁉︎」 ギ!
「はあッ!」 ギインッ ババッ ザザザーッ!
ジオスは力押しで、ゼビオを押し、鍔迫り合いから離れた。
「ウワアッ!」 ギンッ! バッザザーッ!
両者は離れ、更地になったギムロ侯爵邸の跡地で再び構え向き合う。
「ムウウッ! アゴンだと、まさか..」 チャキ
ゼビオは再び驚かされる。長く執事をしていると、世の情勢をよく知っていた。その中で、隣の魔族領の情報もよく熟知している。国の規模、人口、生産力に財力、そして、各魔人の力と勢力だ。その情報の記憶にある1人の魔人の名前を、目の前にいるこの者が口にした。「アゴン」と、 ゼビオの記憶が確かならその名前の持ち主はただ1人 「グレーターギルスの【ゲルバド・フェル・アゴン】」その人しか思い当たらなかった。
その魔人は絶大な魔力を持ち一つの州を治め、傍に「アヴィスランサー」を従えている魔族領最強魔人が1人「ヘキサリアム」次席の実力を持つ魔侯爵の貴族である。
「ア、アゴンを知っているのですか?」
「ん、ああ、この間、やり合ったが相打ちで勝負が付いてないなあ」ポリポリ
「は?(あのアゴンと相打ちで? この者は本当に何者だ! まさか魔人ではあるまいな)」
ゼビオはジオスの言葉に思考を駆け巡らせた。
「ん、では、決着をつけるかい?」 シャキン!
「ふッ もう私の剣技では通じない様ですな」 チャ
「じゃあ、降参かい?」
「ふふふ、この世界では、まだよく知られていない技があるのですよ」スッ
「ほう、じゃあまだやるんだ」
「ええ、この技は誰にも破られない、そう、神ですらね!」ヴンッ! ユラユラ シュン!
そう言うと、ゼビオの姿が揺れ、消えていった。
「え、この技って.........ん~! ここッ!」ヒュン! ギイインンッ! パッ!
いきなりジオスの真横から剣撃が現れた。が、ジオスはそれを超神剣で防いだ。そして、そこにはゼビオの姿があった。
「な!、馬鹿な、この技は誰にも分らぬ技だ!なぜ防げる?なぜわかったのだ?」 ザザッ!
「ん、それ知ってるからさ」チャキ
「ぬう、はったりだ!これは我が曽祖父が、曽祖父しか使えなかった技だ! 貴様などに分かるはずがないッ!」
「え、そう言われてもなあ」カキカキ
ジオスは頭を掻きながらゼビオに答えた。
「ふ、今一度この技で仕留めて見せようぞ!」 チャキ
「ん、来い!俺も終わらせてやる!」チャキ
「フン、これで終わりだ!」 ヴンッ! ユラユラ シュン!
ゼビオは再び、その姿を消した。それと同時に、ジオスも技に入る。
「運がなかったなゼビオ、その技はもう知っているんだ!《ディアスタシイ.フラッツ》」ヴィンッ!シュン!
そしてジオスの姿も消えた、一瞬後2人の姿が現れた。
「ガアアーッ!」ゴロゴロゴロッバタン!
「ホイッと!」 シュン!タタ ザッ!
そこに現れたのは、全身血まみれで地面に転がっている執事のゼビオと、全くの無傷で技を出し終えたジオスが立っていた。
「な..何が..起こった..の..でしょうか….」 ハアハアゼエゼエ
「悪いな、コレで勝負有りだ」キン
ジオスは超神剣を鞘に戻し、転がって血まみれの執事のゼビオに近づいて行った。
「な..なぜ?…」ハアハア
「ん、お前の技か?」
ゼビオはコクンとアタマを振った。
「お前のアレ、《イリュージョン.ダイブ》だろ!」
「なぜ、それお…」 ゼエゼエ
「ああ、以前、お前と同じ技を持ったものと戦ったからな」
「だ..だれ…」 ハアハア
「ん、確か…ああそうだ、『シャザルゲンの【ルシェ・ロバラス】』だ!」
ゼビオは目を見開いた、その名前は自分の曾祖父の名前だったからだ。
「そ..曾祖父と..た、戦った..のか?..」 ハアハア
「ん、ああ成り行きでな」
「お前は..ウソ付き..だ..ハアハア .. 曾祖父は ..120年ま..え..に..」 バタッ シュウ...
侯爵執事、【ゼビオ・ロバラス】はここに生き絶えた。やがて彼の体は元素還元され消えていった。
「ここでも100年以上前の話か、ま、コレでミュウ達には、もう危害が及ばないな。あとは、ここの世界だ」 バッ!
ジオスは空の遙か高い所を見た。
「ん、あまり時間がないのか、揺らぎが出てるな。とにかく急がないとな」ババッ!
そう言って、ジオスはセレス達のいる宿屋街に急いだ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。