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第87話 回り始める運命

ー異次元世界「アーク」ー


時は少し遡り、ジオスとアゴンが出会って大技を使ったその頃、ここ魔族領、アコン州にある王都ブロスベルク、その王城の玉座の間にいた魔王は異様な力を感知していた。


「ん?、こ、この魔力..ま、まさか!」 ガバッ


ジオスとアゴンの剣技による衝突の魔力をその鋭敏な魔力感知能力で感じ、座っていた玉座から立ち上がった。さらにその魔力の質と量を探っていた。


「この感じ、この魔力…間違いないッ!」


「魔王様、如何なされました?」


側近の魔人の1人が、魔王のその様子を見て尋ねた。


「エタール!」ザッ!


「ハッ!」


「今侵攻作戦中の我が軍団に撤退命令を出せ!」


「は?撤退でございますか?」


「そうだ、状況が変わった。すぐに撤退だ!」


「御意!」 タタタ


側近のエタールは足早に玉座の間から出ていった。それを見送った後、魔王は再び玉座に座り、別の側近を呼びだした。


「ザンバ!」


「はッ!」 ヒュンッ!


「私の感じた魔力だが、上級高位魔人、貴族の誰かが法王国に行っておるのか?」


「はッ! 恐れながら申し上げます」


「うむ、申せ」


「はッ、彼の地には魔宮将、【ヘキサリアム】次席魔侯爵のアゴン様がいます」


「呼び戻せッ!」


「はッ しかし、あのお方は、私どもの言う事はなかなか聞いていただけないのですが..」


「うむ..そうであったな(まったく、【ヘキサリアム】の連中は身勝手な奴が多い)」


「魔王様、如何いたしましょう?」


「そうだな…そう言えば、アゴンの【ベターハーフ】はどこにいる? 奴と行動を共にしておるのか?」


「いえ、あの者はこの居城におり、他の者と待機しております」


「呼び出せッ! その者にアゴンへ使いを出す!」


「はッ! ただちに!」 バッ


そう言うと素早く動き、ある人物を呼びに行った。


しばらくして、玉座の間にザンバに連れられて、一人のメイド姿の美少女が入ってきて、魔王の前に膝まづいた。


「魔王様、【アヴィスランサー】のクリス、まかりこしました」 サッ


「うむ、呼び出したのはほかでもない、お前の主人であるアゴンをここへ呼び戻せ!」


「恐れながら申し上げます」


「うむ」


「私は、主人、マスターよりこの居城にて待機せよ、と命じられています。たとえ魔王様でもこの命令には逆らえません」


「確かにな、お前達ランサーは、主人であるマスターの命令は絶対だからな。だが特例はある」


「あ!」


「そうだ、魔王である私の緊急招集の呼びかけには、誰であれ応じなくてはならない。そのためならランサーであるお前たちは、主であるマスターを魔王である私の所へ連れてくるのが、最優先命令である」


「では...」


「魔王が命ず!アヴィスランサーのクリスよッ!」


「はいッ!」


「『緊急招集』である、余の前に主人であるマスターのアゴンを連れて参れッ!」


「はいッ!アヴィスランサーのクリス、これより我が主人であるマスター、アゴン様を呼んでまいります」


「うむ、頼んだぞ! 転移陣を使うがいい」


「はい、ありがとうございます。すでに居場所は把握しています。どなたかと戦闘中のようですが、直ちに行ってきます」 ペコ ババッ!


クリスは既に自分の主人、マスターが、誰かと戦っているのを感じ取っていた。魔王に一礼して素早く玉座の間から出て、転移陣のある部屋へと急いで行った。


ここで補足、【ヘキサリアム】とは魔族領内最強の魔人の総合呼称で、強さに応じて、首席、次席、参席と順位が有り、常に6人がそう呼ばれている。魔族領には6つの州があり、それぞれの州を納めているのが彼らであった。 強い者がその州を治める、これも魔人特有の風習である。 ただ、最強の魔宮将と言っても、別に軍を任せられている訳でなく、単独行動で軍団規模の強さがあるため、そう呼ばれているのである。


【アヴィスランサー】と【ベターハーフ】、アヴィスランサーとは、先のヘキサリアムで説明した6人の最強魔人が作り出した、美少女戦闘メイド(メイド姿でない者もいる)で、常に彼らの傍に付き従っている。彼女達は自分たちの主人をマスター、(あるいはマスターの個人名)と呼び、そのマスターの命令は絶対である。(特例はあり) ベターハーフとは、マスターである主人とアヴィスランサーであるメイド達との命の繋がりで、もともと彼女達アヴィスランサーは、個々の魔人達が生み出した、いわば自由意志の人格を持った魔人達自身の分身体である。 それ故に、彼女達は絶大な戦闘力と魔力を持ち、その身を呈して命ある限り、自分を生み出した主人、マスターのために行動する。 普段はどこにでもいる少女の様に振る舞い、笑うときは笑い、怒るときは怒る、感情が豊かで、主人に対しても意見や反論もすることもしばしば見受けられる。 そんな彼女達であるが、いざ主人、マスターを守るためなら驚異的な力を発して戦いを挑んでくるメイドである。



「ザンバ!」


「ハッ  魔王様」


「アゴン以外のヘキサリアムの者をこの場に集めよ!」


「ハッ ただちに!」 シュン!


ザンバは再びこの場から消え、魔王に言われた他のヘキサリアムの魔人を呼びに出た。


「あの魔力の持ち主が余の想像する者ならば、この魔族領を救えるかもしれん..」 ザッ! コツコツコツ ビュウウン!


魔王は玉座より立ち上がり、部屋の隅にある魔王専用小型転移陣に入り何処かへ転移していった。



ー衛星都市アルゴン近郊の森ー


魔族軍第2侵攻部隊がアルゴンまで後5Kmの地点まで侵攻した時、いきなり魔法の防御壁が構築され進軍が止まっていた。 その部隊の隊長ゴルドは苛立っていた。


「ダメですゴルド様! これ以上進行できません!」


「ええい! 後少しだと言うのに、ガルガの奴めしくじりおって!」


「空はどうだ⁉︎」


「ダメですね、此処からドーム状に覆ってますから入れません」


ダアアンン!


ゴルドは防御壁に対して、思いっきりパンチを繰り出したがびくともしなかった。


「くそ〜 忌々しい防御壁めえッ!」


ゴルドが恨めしそうに防御壁を見ていると、そこへある命令が届く。


「ゴルド様ーッ!緊急伝ですーッ!」


「ん、なんだ?読めッ!」


「はッ! え〜、『侵攻作戦中の全魔族軍へ、ただちに作戦中止撤退せよ! 魔族領まで撤退せよ!これは魔王様直々の命令である』 です」


「な、何いい⁉︎ 撤退だとおお!」


「はッ 撤退です。しかも魔王様直々の撤退勧告です」


「魔王様は何を考えているのか、次の街まで目の前だぞ!」


「はあ〜 ですがこれは絶対命令です! 破るわけには〜…」


「わかっておる! まあこの防御壁ではどうにもならん! 頃合いかもしれん」


「では、」


「うむ、全軍に伝令! 撤退ッ! 速やかに祖国まで撤退する!」


「はッ!わかりました!」 ババッ!


「「撤退! 撤退! 速やかに準備せよ!」」 ザワザワ


「(まあ、このままでは済まさんがな!) ふふふっ!」 ザッザッ!


「おらあッ! もたもたすんじゃねええッ! さっさと帰るぞおッ!」


「「「オオーッ!」」」 「撤退ーッ!  撤退ーッ!」


衛星都市アルゴン近くまで侵攻していた魔族軍は、魔王の命令により此処だけでなく、既に占領していた全ての街から、アトランティス法王国から撤退していった。



此処で時は戻り皆同じ時間を過ごしていく。


ーアトランティス法王国 王城ー


自室で王妃と休憩をしていた法皇の元に報告が入る。


「法皇様ーッ! 法皇様ーッ!」 バンッ ダダダダッ!


「何事か騒々しい、入る時はノックぐらいせんか!」


「も、申し訳ありません!」


「で、何があったのだ?」


「はッ 魔族軍が、」


「なんじゃ! もう魔族軍が攻めてきたと申すか⁉︎」


「あ、い、いえ、」


「ではなんじゃ! はよう申せッ!」


「はッ! 魔族軍が、魔族軍が我が領内から全て撤退しました!」


「それは誠か⁉︎」ガバッ


「はい、本当です! 確認も取れています」


「おお〜 では勇者様が魔族軍を退けてくれたのだな!」


「そ、それは確認しておりませんが、おそらくそうでしょう!」


「うむ、さすが勇者様だ!」


「それで、今勇者様はどこのいる?」


「はッ! 勇者様は今現在、姫様と一緒に衛星都市アルゴンに滞在しております」


「なんと、セレスと共におるのか?」


「はッ そのようでございます」


「ぬぬぬッ ワシはまだセレスをやるとは言っておらんぞ!」


「はあ、しかし姫様ご自身から、勇者様の元へ赴き同行を願ったと聞きます」


「ええい、そんな訳があるか! あの子は優しいのだ! おそらく勇者に脅されて仕方なしについていったに違いない」


「(そんな訳、あるわけないじゃないですか〜)」


伝令に来た兵士はそう思ったが口には出さない。


「とりあえず報告は以上です」 バッ


「うむ、ご苦労、下がって良いぞ」


「はッ 失礼します」 コツコツ バタン!


伝令兵は王の自室から出ていった。


「うぬぬ!あの勇者めえ、私の可愛いセレスをおお!」プルップル


「あなた、魔族を、魔王を倒せばセレスを嫁に与えると言いましたではないですか」


「う〜、うるさい! あれはその場の方便だ! 本気ではない!」


「まあッ! それ、セレスが聞いたら怒りますわよ」


「ふん、セレスにはもっと格の高い良い男に嫁がせるつもりだ、あの様な異界から呼び寄せた男に与えてなるものか!」


法皇は憤慨しながらジオスの事を罵った。その様子を見た王妃は、法皇である自分の夫に聞こえないように小声で言った。


「肝の小さい人、セレスはおろか、神から怒りを受けるかもしれませんね…セレス、頑張りなさい、私はあなたを応援しますよ」 フフフ



ー衛星都市アルゴン 宿屋街ー


ジオスは領主と分かれて、セレスが宿を取っているであろう宿屋街にやってきた。


「ん、やっぱり制御コアが正常だと人々の様子も違うな」 


制御コアとは、その土地を潤すだけでなく、その場の雰囲気や気候、そして魔素を操作してそこに住む者の心を豊かにすることが出来る環境生命維持装置である。 魔族はそれを領主を使って人心を惑わし、楽に占領しようとしていたのであった。


「ふ〜ん..ふふ..♪」ザッザッ


ジオスは鼻歌を歌いながら、賑やかな酒場と飲食店、路上販売に屋台が立ち並ぶ、宿屋街の街中を歩き、セレス達を探した。 ザワザワ ワイワイ アハハハ キャア 


「ん〜、アイツらどこに泊まってんだあ? 数が多すぎてわからん!」


ゆっくりと街中を見回しながら歩いていると、ジオスは右足に違和感を感じた。


「ん?」


ジオスは自分に足元を見ると、そこには1人の獣人の少女が自分の右足に抱きついていた。それを見てジオスは少女に語りかける。


「ん〜、私に何か用かな?」


するとその獣人少女は顔をジオスに向け、涙目で語った。


「お願いしますミャ、お姉ちゃんを助けて!」


ジオスはその場で固まってしまっていた。そして思わず声が出てしまった。


「ミウ?」





いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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