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第8話 異世界料理

ーマゲラル近郊 野営地ー


日が沈みかけ空を赤く染め始めた。アニスは夜を明かすため野営地に足を運ぼうとしたが、ふと思い足を止めた。


「う〜ん、この格好ではちょっと目立ちそうだね、服装を変えるかな」


今のアニスは転移した時の白を基調とした服装のままなので、森や平原など街から外を歩くような服装ではなかった。それ相応の格好をするため一度茂みの方へ行き服装を変えた。周りを確認すると両手を祈るように組み、アニスのみ使えるユニークスキルを唱えた。


「服装瞬時置換!」


アニスの身体を柔らかい光が包み、しばらくして装いを変えたアニスがいた。

その姿は、顔立ち髪型は変わらず、服装は薄水色を基調としたインナーで白の半袖シャツに漆黒のレザーアーマージャケット、細い胴回りに同じ色のコルセットアーマーとスカートではなく裾が少し空いた動きやすい黒のショートパンツ、左腰にミニストレージバックと腰裏にミドルダガーの「アヴァロン」はそのままで、黒のニーハイソックス、そしてひざ下までのロング野戦ブーツをはき両手には指さきがない手袋をはめていた。

このユニークスキルのおかげでアニスは着替えに不自由しないのである。


「森林や野原活動にはこんな格好の装備服装かな。あとは顔も隠したいから全体を覆う外套と、念の為、存在自体の気配を鈍らせる認識阻害魔法を使おうかな。《グノシス.アナスティー》」


アニスの体全体を一瞬弱い光が包み何も変化が起きてないように見えた。この認識阻害魔法、意外に使い勝手がよく、見えないのではなく見えているが全く気をひかない、気にしない、興味がないといった扱いになる魔法で、例えるなら友人に会った時、その横を通り抜ける赤の他人は気にならない、といった状態になる魔法である。


「よし、これで完璧ね。じゃあ行こうか」


アニスは茂みから出て、野営地へ歩き出した。そして、野営の準備をしている者たちを見てこの場の状況を確認した。アニスの確認は、馬2頭引き大型馬車を伴った商人とその護衛冒険者達11人、小型の荷馬車の荷物運び屋とその護衛冒険者6人、男女の冒険者パーティー6人、女性のみの冒険者パーティー6人の29人と自分の合計30人というものだった。それぞれがお互い干渉もせず食事をしたり談笑をしていた。


「さて私は..そうだねあの女性冒険者パーティーの横にある開いたところにしよう」


一通り見渡してから比較的安全そうで、自分ひとりくらいなら野営できそうなスペースにある女性冒険者パーティーの横に行くことにした。野営地の中を、てくてくと外套を被った背の低い人物が歩いても、魔法のおかげで誰も気づきはしなかった。 目的の場所についたアニスは、腰の横に付けているミニストレージバックより一人用のテントと焚き火用の薪などを出し野営の準備に入った。創造者の彼女には、睡眠や食事、生理現象は皆無なのだがエレンディアの指示のもと、人間らしくそれらしい振る舞いをということで、食事の準備をしていた。


「食べれないわけではないけど、一応目立たないようにするという事で、他の人のように食事と睡眠をしてみるかな」


テント前の小さな焚火にトライポットを立てそこから小さな鍋をつるし、その中に水を張ると様々な食材を入れ調理を始めた。


「確か友人の創造神【シュウゴ】の作った世界に地球とかの世界があって、『食に関しては最高食に関しては最高』とか言ってそこの食材を無限に送ってきたんですよねぇ、それがここで役に立つとは思いませんでした」


いま、アニスが作っている料理はその友人が進めるカレーなるものであった。その鍋を一人コトコトと煮込んでいると、アニスの所に一人の少女がやって来た。


「あの~、隣の野営の者なんですがちょっといいですか?」


アニスは鍋をかき回しながら返事をした。


「はい、なんでしょう」


「あッ、女の子だったんだ、ってごめんなさい!失礼なこと言って」


とその少女はアニスが女の子と知るや否や謝ってきた。


「え、いやいいですよ、外套をすっぽり被っていては男か女かわかりませんものね」


「すみません、でぇその~..それ、なんですか? ものすごく美味しそうなにおいがして、仲間たちが聞いて来てって言うもんですから..あッ私、パーティー名「ロフティードリーム」の【ソフィー】です」


「私はアニス、今は旅人です。それでこれですが、これはカレーという料理です」


「アニスさんですね。カレーですか、おいしそうな料理ですね。何か食欲がわいてきます!」


今にも食べたそうに見つめている彼女を見て、アニスは彼女になべのカレーを掬って持ち手付きのお椀によそい手渡した。


「良かったらどうぞ、熱いから気を付けてたべてくださいね」


「いいんですか! あ、ありがとう‼ いただきます~..ッ‼ お、おいしいーーッ! 何ですかこのおいしさは、私、こんなの初めて、 ん~~ッおいしいッ!」


ソフィーがアニスのカレーを食べ声を出して称賛していると、隣の野営地から5人の少女たちが駆け込んできた。


「ソフィーッ!あなただけおいしい思いしてずるいッ!」

「そうよそうよ、何の料理か聞くだけって言ったのに、食べさしてもらっているなんて」

「ソフィー、あんたは私たちを裏切った、食べ物の恨みは怖いってしってる?」

「おいしそう!おいしそう!おいしそう!..」

「ソフィー殺してそれを盗る!」


5人が5人いろんな事を、カレーを食べているソフィーに話しかけていた。


「ヒーーッ‼ みんな許してぇ~ でもでも、目の前に出されたら食べるしかないじゃないですか~」

「そんな言い訳が私たちに通じると? ここ数日ろくなもの食べていない私達には通じないからね」


などと言い合いが始まり、他の人達にも目立ち始めたので仕方なくアニスは「ロフティードリーム」の女性陣皆にカレーを食べさせることにした。


「良かったら皆さんもどうですか、一人分ずつならありますから」


そう言うと、先ほどの喧騒はなくなり涙ながらにアニスにお礼を言った。


「ありがとうございます、いただきます。」

「うれしい、食べれるのね!」

「やったー、久しぶりのご飯だー!」

「たべれる!たべれる!たべれる!..」

「ふ、命拾いしたなソフィー、アニス様に感謝するがいい」


「料理一つで知り合いが6人もできちゃった、認識阻害をも打ち破る異世界料理カレー恐るべし!」


「ロフティードリーム」の彼女たちは、魔物討伐以来の帰りで、予想以上に日数がかかり手持ちの食料を3日ほど前に無くしずーッと空腹だったらしかった。アニスが1人ずつカレーを配り、おまけに柔らかい黒パンをあげたら、みな夢中に食べていた。その後彼女たちからいろいろ情報を得た、マゲラルまではあと半日ほどの距離、冒険者登録するといろんな情報や、優遇措置が得られること、この国の情勢やほかの国の情勢などである。ほどなくして彼女たちは、自分の野営テントに帰っていった。明日にはマゲラルに入り色々することになりそうと思いつつアニスは自分のテントに潜った。












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