第70話 騎士団と聖騎士達
―衛星都市 アルゴン郊外―
黄金の騎士、我が国アトランティア法王国の伝承に存在する偉大な騎士である。法皇の上に位置する伝説の存在であった。その黄金騎士が伝説ではなく、今私の、我々の目の前に剣を構えて現れた。
「参るッ!」 ババッバッ!
「総員!臨戦体制!来るぞおお!」 チャキ!
タレス達は剣を構え、トラン達第三騎士達はそれに備えた。
「カソダ、アノン、テルゾ! ソフィア様から教わった技で行くぞ!」
「「「了解ッ!」」」
タレス達4人は、それぞれの神剣を構え技に入る態勢に入った。そして、トラン達第三騎士達に向かって技を出す。
「《刹那!》神級!聖騎士剣技!《アサルト.グラン.カルテットオオッ!》」 シャンッ‼︎
「来た! 総員絶対防…」 シュザンッ‼︎………バアアアンンンンンッ‼︎
トランはタレス達が剣技を使用した瞬間、自分の配下の騎士達に防御指示を出した。が、その指示が言い終わらないうちに、衝撃波を受け、そのあと音がやってきた。 そうタレス達はこの場にて高速剣技のさらに上、超音速剣技を使ったのであった。
「グウウッ!」 ビリビリビリッ!
トランはタレス達の剣技を自分の聖剣で何とか凌いでいた。……暫くしてその技の威力が収まった時、彼は配下の騎士達に声をかけ、振り向いた。
「皆、無事かあッ!….え⁉︎」 クル
振り向いたそこには、70人はいた第三騎士団達は全員その場に倒れ伏していた、そして更にその向こうに、眩い光を放つ白黄金色の鎧を着たタレス達4人が立っていた。
「な、何が起きたあーッ⁉︎」
トランは理解ができなかった。自分の第一小隊以下70人が、自分を残して一瞬で、全てその場に倒れ伏してしまったからだ。 それは超音速による衝撃波で、対象全ての五感を奪う、多数対少数時に有効な剣技であった。これはタレス達が「エイン」の称号を持っていて初めてできる神級聖騎士剣技である。
「なあアニス」
「ん、なんだマシュー?」
「アイツらまた強くなってないか?」
「…………しらな〜い、しらな〜い、アニちゃんは何も知らないよ〜♪」
「いえッ! アイツらに何をした⁉︎」 ガシッ!
「ぎゃあああ! あたま!あたま!頭がわれる〜! 言う!言うから離してえ〜!」
マシューはアニスの頭を鷲掴みにして迫った。
「よし、さあ話せ! 何をしたんだ?」
「あいたたた、いやあ、さっきね、アイツに言われた時さあ..」
「アイツう?…ああ、あのトランというやつのことか?」
「そう、タレス達の事、剥奪だの反逆だの言った時つい勢いで魔法をね、つかっちゃった!」 えへへ
「つかっちゃった!じゃねえよ!アイツら大丈夫か?」
「Rog.大丈夫ですよマシュー、見たところ何の影響も出ていませんから」
「見たところって、なんで俺を見てるんだ?」
「Lst.お姉さま、言ってなかったので?」
「ん、忘れてたわ!アハハハッ!」
「アニス、俺にもなんかしたのかあ⁉︎」 グウウッ
「ぎゃあああ、言う!言うから離してえ〜!」
「で、一体何だ?」
「さっき使った魔法はねえ、身体能力超上昇と全てをトリプルアップする魔法で、「エイン」の称号を持つ者、女神の騎士に力を与える魔法なの」
「ほう、すげえな身体能力超上昇にトリプルアップか…ん?「エイン」の称号?」
「Rog.分かりましたか?、お姉さまの魔法は「エインへリアル」のタレス達4人と、「エインチャリオット」のマシュー貴方、合計5人に作用したんです」
「お、俺もなんか変わっちまったのか?」
「ん、すまん、その話はまた後で、今はタレス達の方だ」
そうしてアニス達はタレス達の方を見た。
「しょ、小隊!集合せよ!」
トランの号令の下、アニス達を後方包囲していた残りの騎士達がトランの元に集合し始めた。その数40人ほどであった。騎士達は集まり陣形を再編、タレス達に向かって進軍する。
「フォーメーション!俺が突っ込む援護を!」チャキ!
「了解しました! 行くぞ!密集隊形!剣技!《ファランクス!》」 ザッ!
「よし行くか、《超加速!》帝級剣技い!《ライジング.バル.ボルトオオッ!》」
第三騎士団、第一大隊残存騎士による合同剣技であった。 《ファランクス》を使った騎士集団は、タレス達4人に剣や槍、弓の多種多様の猛攻撃を続け、その隙にトランは自分のユニークスキルを使って、タレス達を攻撃した。
バリバリバリッ‼︎ ドドオオオンンッ‼︎
猛烈な雷の攻撃が、タレス達のいた場所に集中雷撃で落ちた!
「ハアハアハア、や、やったぜえ!ハアハアこ、これでどうだあ!」
その様子を見てマシューが叫ぶ!
「ああッ‼︎ 思い出したあッ!」
「おうッ びっくりしたあ、どうしたんだマシュー?」
「ああ、思い出したんだよアイツの事」
「ん、第三騎士団団長だろ?」
「それは今の役職の名だ、アイツは、アイツは五天位の一人【雷帝のトラン】だあ!」
「ふ〜ん、でなんなのそれ?」
「聖王国に俺達『三大天』がある様に、この国にもその『三大天』に匹敵する能力者がいる。それが『五天位』で、アイツがその1人【雷帝のトラン】だ」
「で、そいつが相手だと何かあるのか?」
「え、…いや...今の俺にはなんにも障害にならねえな!だが、アイツら、やつの雷撃をもろに喰らったぞ!大丈夫か?」
「ん、タレス達なら大丈夫だ」
「そうなのか?あの雷撃だぞ?」
「ん、だって彼らには私が創造創生した鎧を着ているし、それにもう『エインへリアル』じゃあないから」
「どう言う事だ?お前さっき『エイン』の称号を持っている者って言ったじゃないか」
「ん、だから彼らは新しい『エイン』の称号を持った」
「新しい『エイン』の称号?」
「ん、新しい」
「アニス、それを教えてもらえるか?」
「ん、彼らの新しい称号は、【女神の守護聖騎士 エイン・フェルト・ガーディアン】略して【エインガーディアン】これが彼らの新しい称号さ」
「聖騎士!つまりアイツらは聖戦士なのか⁉︎」
「ん、そうだ」
「じゃあ俺は….いやすまん、後で教えてくれるんだったな」
「ん、気にするな」
アニス達がそんな会話をしている最中、雷撃の煙が晴れそうな時、第三騎士団は、素早い剣撃に襲われた。
「聖騎士剣技!《アスカロン.ゼル.メッサー!》」シュピインッ!
「聖騎士剣技!《ファルテン.ゼル.スピッツ!》」シュンッ!
「な!ぎゃあああ!」
「わあああッ!」
タレス達の高速接近攻撃を受け、第三騎士達は総崩れになっていった。
「な、俺の雷撃攻撃が通じてないのか?」
「団長、我々はどう対処したらいいのでしょうか?」
「ウッ!……」
トランは団員の問いに言葉が出てこなかった。 『どう対処したら?』それはトラン自身が誰かに問いたい質問だった。
「(どうする?、俺の攻撃さえ通じない、これでは戦いにならないじゃあないか!対処? 何をどう対処するんだ? 目で追えない相手に対処もクソもない) クッ! 総員撤退! 負傷者を担ぎ速やかに撤退せよ!」
「了解! 総員撤退! 負傷者をかつげ!」
トラン達第三騎士達は、負傷して倒れ込んでいる騎士達を担ぎ撤退を始めた。それを見て、タレス達も攻撃をやめた。...そしてトランはアニス達の前までやってきた。
「今回は我らの負けだ、この場は引こう」
「ん、懸命な判断だ」
「だが、次に会うときは覚悟しておけ!」 ザッ!
「ん、またな!」
「トラン殿!」 タタタ
「うん? ああタレス分遣隊隊長だったかな」
「タレスでいいです。もう自分は、アトランティア法王国の騎士ではないのですから」
「ああ、そうだったな。 叔父貴達にいっておくぜ、『お前達はとんでもない過ちをした』てな!」
「いえ、我々の方こそ国を裏切ったみたいで…..」
「はん、気にすんな、俺から言わせれば、お前達の騎士称号剥奪した叔父貴達の方が悪い。それに当初の目的も果たしたしな」
「はあ….」
「黄金の騎士になったんだ、誇りを持て」
「はい!」
そしてアニス達に振り向き話しかける。
「そうだ、王都へ向かうんだろ?」 クルッ!
「ん、そうだ、行って法皇に会う!」
「そうか、じゃあ忠告だ」
「ん、なんだ?」
「法皇より元老院のジジイどもに注意しろ!」
「ん、わかった、注意する!」
「フッ!またな!」
そう一言言って手を振り、トラン達第三騎士達は退却していった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。