第69話 騎士称号剥奪、エインへリアル昇華へ
ー衛星都市アルゴンー
アニス達は衛星都市アルゴンの街中をアトランティア法王国の王都【アダム】に向けて馬車を走らせていた。
「アニス様、もうすぐ街の出口です。忘れ物はないですか?」
「ん、ないな。忘れたい記憶はあるが….」 じ〜….
「だから今朝のアレは誤解だって! 何もやましいことはしてねえよ!」
じ〜〜〜〜
「ああ〜ッ!俺のイメージが崩壊していくうう!」 ブンブン!
アニス達女性陣に冷たい目で見られて、マシューは頭を両手で掴み左右握っていた。そこに当のテルゾが弁明する。
「アニス様、昨日は私達はただ同じベットに酔いつぶれて寝てしまったんです。決していかがわしい事はしてませんので安心してください」
「ん、テルゾが言うんなら信じよう」
「え、俺の時は信じないの?」
「Lst.マシュー、貴方と違って、『エインへリアル』は私達に嘘はつけないのです」
「え? そうなの?」
「はい、我々は女神の守護騎士『エインへリアル』になった時点で、アニス達達には嘘はつけないのです」
「ひえ〜! マジかよ!」
「ん、マシューもそうするか?」
「申し訳ありません! マシューくんの完敗です。 それだけはお許しください!」
マシューは、テルゾ達の事を聞いて、アニス達に土下座した。
「ん、マシューは特別だからね! 忘れちゃダメだよ」 ニコ
「うッ! 分かってるよ..(あの笑顔は卑怯だぞ!)」
馬車の中で、アニス達が会話をしていた時、急に馬車が止まった。 ガタンッ! ザザアッ!
「「「オットット! きゃあ! うわあッ!」」」
「どうした、馬車が急に止まったぞ!」
「アニス様ッ! 騎士団による検問です!」
「ん? 検問…ってなんだ?」
「Lst.お姉さま、騎士による人や荷物の検査です」
「検査ねえ、誰かなんかした?」
するとマシュー達男連中とミウの皆が(やべえ〜)という顔をしていた。
「ん? マシュー達はともかく、ミウはなんでそんな顔をしてるの?」
ミウは恐る恐るアニスに答えた。
「すみませんアニス様!」
「な、なんかしたのミウ?」
「はいにゃ、ミウはアニス様達と会う前に街の噴水にいたお魚を獲って食べてしまいましたにゃ! それで騎士さん達が怒ってるにゃ!」
それを聞いて、馬車内の全員が笑った!
「「「「「どあっははははッ!」」」」」
アニス達を見て、ミウはキョトンとしていた。
「ははは、ミウ、そんな事で騎士は動かないよ!」
「Lst.全くです!我が妹ながら恥ずかしいですね!」
「そうですよミウちゃん、我々もそんな事で騎士が動いたという記憶がないですよ」
「にゃ、じゃあミウは大丈夫なんだにゃ!」
「ん、まあ、多分やつらの目的はマシュー達なんだと思う」
「やっぱり〜イ?」
しばらくすると、検問の順番が回ってきた。
「よし!次ッ!」
アニス達の馬車の順番が来た。
「止まれいッ!中を拝見する!」 バッ!
検問の騎士が馬車の後ろの幌をめくった。
「ッ! き、貴様達はッ!」
「ばれたッ! カソダ!出せッ!」
「ハッ! それ行けッ! ヤアーッ!」 パシンッ!
ダダダダッ!バキイッ!ババッ!ダダッ!
マシューに言われ、カソダの操る馬車は急発進し、簡易バリケードを打ち破って街の外へ走っていった。
「逃すなあッ! 送り狼をだせえッ!」
「信号手! 信号弾上げえ! 赤、赤、黄だッ!」
「了解直ちに!」 バババッ….シュウー……パンパンパンッ!
「団長、及び各小隊に伝令!急げ! 残りは俺に続けえッ!」
「「「オウッ!」」」 ババッバッ!
流石に第三騎士団の検問小隊であった。手際よく処理をし、逃走したアニス達の馬車を追い始めた。
「どうだタレス後ろの方は?」
「ああ、厄介だ!追跡用の魔獣、送り狼が3頭近づいて来ている! 多分その後ろに騎士達もいるはずだ」
「Lst.お姉さま、アレは私がやりましょうか?」
「ん、ソフィアお願いするね」
「Rog.追跡魔獣を排除します」
するとソフィアは、馬車の後ろから、右手の中指と人差し指をそろえて伸ばし、指鉄砲のような形で、追跡中の魔獣に向かって魔法を放った。
「Rog.接近中の移動目標を補足!数は3、《イーゲル.ランツエン》!」 パパパシュンッ!
「ギャンッ! ギャッ!」 ビシビシッビシ! ボシュンッ!
ソフィアの指先から3本の光の矢が高速で飛び、追跡してきた3頭の魔獣全てに当たり消し飛ばしてしまった。 そのまま馬車は走り続けた。
「さすがソフィア様、お見事です」
「次、来るぞお! 騎馬騎士だ3騎!」
「クソ、向こうの方が早い!」
馬車と単騎の馬では当然早さも違う、あっという間に3騎の騎士は追いついてきた。
「アニス!このままじゃあいずれ追いつかれる、止めて奴らとやるか?」
マシューがそうアニスに尋ねた時、前方に新手が現れた。
「アニス様!前方に騎士多数! 挟まれました!」
「ん、仕方が無い、カソダ!馬車を止めろ!」
「ハッ!了解です!」 グイッ! ザザー ヒヒ―ン
馬車を止めたことにより、アヌスたちは騎士団に囲まれてしまった。
「さて、この後奴らはどう動くのかな?」
次第に騎士達の数が増え、その場には役100人ほどの騎士が集まっていた。そして少しったった頃、騎士達の中から一人の青年騎士が現れた。
「お~い。聞こえるかい? できれば馬車の外に出てきてほしいのだが」
その人物は、第三騎士団団長の【トラン・ラ・ドーラ】侯爵であった。
「ん、仕方がない出るか」
アニスの一言で8人全員が馬車の前に出てきた。カソダやテルゾ達は小声で話す。
「おい、あれって第三騎士団団長のトラン様じゃあないのか?」
「ああそうだ、あの鎧とエンブレム、そして後ろの団旗、間違いないだろう、トラン様だ」
「カソダ、アノン、テルゾ!」
「「「ハッ!」」」
「たとえ相手がトラン様であろうと、我々は「エインへリアル」、全力でアニス様達を御守りするのだ!」
「「「了解ッ!」」」
タレス達4人は警戒体制に入ったが、まだ鎧は着ていなかった。
「ウ〜ン、…..」
「ん、どうしたマシュー?」
「いやなアニス、俺アイツを知ってる気がすんだよなあ〜」
アニス達がそうしている中、その騎士団長より声がかかる。彼は片手を軽くあげて、気さくに話しかけてきた。
「やあ! 私の名前はトラン、この騎士団を預かる身の者だ。君達にちょっと用があってね、いいかな?」
「ん、私はアニス、このパーティー「ワルターラスター」のリーダーだ」
「え、君がリーダーなの?、そっちの【閃光のマシュー】がリーダーじゃないのか?」
「ほう、俺の二つ名を知ってるのか、こっちの事はずいぶん調べ上げられてんじゃあないのか?」
「あ、バレちゃったかあ。 まあね、それを踏まえて、こっちの指示に従ってくれないですかねえ」
「ん、ことわったら?」
「もちろん!実力行使っという手段を選びますが?」
「ん、それでいいぞ、実力行使。そっちがその気なら我々もその手を使う」
「いやいやいや、見えますこの数、どう見ても勝ち目ないでしょ?諦めて素直になりなさい!そうすれば手荒なことはしません、また、我が元騎士達にも寛大な処遇を約束しますよ」
「元騎士達? トラン殿、私は第六騎士団所属ディアル皇国方面ガルア分遣隊隊長のタレスと申します」
「はい、知ってますよタレスさん」
「では先ほどの元騎士団とは?」
「ああ、それですか、君達分遣隊4人は既に元老院より騎士称号剥奪、国に対する反逆行為のため、捕らえよ!と言う命令が出てるんですよ」
「元老院が...我々を...」
「ん、そうか、じゃあその元老院の者達に言ってくれ」
「ほう、何をですか?」
「『お前達がいらないってんなら、私がもらう!今後口出しするな!すれば私が許さないから』とな」
「アニス様......ありがとうございます」
「ん、気にするな、半分は私のせいだしな」
「ははははっ、気の強いお嬢さんだ!いいでしょう、では実力行使という事で...」
「ん、分かった、じゃあマシューいいかなそういう事で」
「ああ、いいぜえ、今準備する!」 チャキッ!
「ふう、やれやれ、では、第一大隊!戦闘準備!(これだけ、あおれば、本当の力がわかるかな?)」 シャッ!
「「「「「オオーーッ‼」」」」」 シャキシャキシャキキン!
その号令の下、100人近い騎士たちは、剣を抜きアニス達に構えた。
「Lst.では私達も準備しましょう、いいですねミウ!」
「はいにゃ、騎士さん達には悪いけど、アニス様やお姉ちゃんの敵ならミウ、やります」 チャキッ!
「Rog.ミウちゃん、お姉ちゃん、頑張っちゃうね!」 シュキンッ!
2人が共に自身の神器級神剣を手に構えだした時、声がかかる。
「アニス様、ソフィア様、マシュー殿、ミウちゃん、ここはわれらにお任せください」
そう進言してきたのは、「エインヘリアル」のタレスだった。
「ん、タレスいいの? 元とはいえ同じ国の騎士団だよ?」
「アニス様、我らは『アトランティア法王国』の騎士を剥奪され、今は、『アニス様達だけ』の騎士、『エインヘリアル』です、異存はございません!」
4人はアニス達の前で片膝をつき、平伏しながらそう言った。それを見てアニスはタレス達に言い渡した。
「ん、分かった。好きにするがいいよ、では、我が従順なる騎士達よ、その願い承った。お前たちに女神の祝福を!《クリッパー.バースト》‼」
パアアンン! 一瞬、ほんの一瞬、彼ら「エインヘリアル」の体が光り輝き収まった。
「アニス様?」
「タレス以下「エインヘリアル」の称号を持つ者達よ、我が眼前の障害を取り除けッ‼」
「「「「ハッ‼」」」」 ザッ‼
タレス達は即座に立ち上がり、トラン騎士団長に正対した。
「おや、君たちが先方ですか? 丸腰じゃあないですか」
「トラン殿、今準備する!」
「は?」
「行くぞみんな!」
「「「オウッ!」」」
「何をしても無駄だと思うんですけどねえ」
トランはタレス達の動向をじっと見ていた。
「「「「神級スキル!《エルドラ.ラフター》!」」」 パアンッ!
そこには眩い光が現れ、一瞬何も見えないくらい眩しかった。
「ウオッ! 眩しいッ!」 グッ
トラン達第三騎士達はその眩しさに、皆目を瞑った。やがてその光が収まり、視界が戻った時彼等はそこに信じられないものを見た。
「な、ななな、なんだとおおッ!」
トランはそれを見て絶叫していた。
そう、そこに現れたには、4人の眩い白黄金色の鎧を着た聖騎士が立っていたからだ!
「お待たせしたなトラン殿、ではいくぞッ!」 チャキンン!
「き、貴様らが黄金の騎士だったか….」
「参るッ!」 ババッバッ!
タレス達はその一瞬でトラン達、第三騎士団へ向かっていった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。