第66話 黄金の騎士達
ー酒房 デンデン前広場ー
そこには1人の銀鎧を着た男が白目をむいて、大の字に倒れていた。
「小隊長おおッ!」 ユサユサ
分隊長が小隊長の体を揺さぶり声をかけていた。
「よくも小隊長をやって(殺して)くれたなあ」
「殺してねえって、殴っただけじゃねえか」
「うるさい!黙れえッ!小隊長の仇だあ!」 チャキ
「だから、殺してねえって、わからんやつらだなあ」
マシューと分隊長の話がかみ合っていなかった時、他の騎士が発令する。
「分隊長に続けえ! 総員抜刀!」 チャキン!
「「「「オオーッ!」」」」 チャキチャキン
11人の銀鎧の騎士たちが一斉に剣を抜き、マシューに向けて構えた。
「おいおいおい、そいつを殴っただけだぜ! 君たち死にたいの?」
「ふ、死ぬのは貴様達だああ! かかれえッ!」 ババッ!
「「「「わああ――ッ!」」」 ダダダッ!
銀鎧の騎士たちが一斉に剣を振り上げ駆けてくる。それも、各々がスキル、剣技を使いながら。
「「「《加速!》 騎士剣技!《グロウ.ランス!》《スラッシュ.アタック!》《ジャスティス.フラック!》」」」
11人がマシューに剣技を使いつつ、高速接近していった。
「おもしれえ!こいやッ!…ム⁉︎」 ピカッ
「ウォオオオーーッ…え⁉︎ うわああーーッ!」 ピカッ バシイイッ!
マシューにとって、早くもない攻撃だが両者がぶつかる瞬間! 眩い黄金色の光がその場を包み込んだ。その光の勢いに、11人の騎士達は吹き飛ばされ、小隊長が気絶して倒れている所まで飛んでいって、皆膝をついていた。
「ウググッ、一体今のはなんだ?….へ⁉︎な、なな..何者だああ!」
分隊長が驚くのも無理はない、彼ら騎士団小隊の前に4人の白黄金色の騎士が立っていたからだった。
「そこまでにして頂きたい!」 シャキンンンッ!
白黄金色の鎧を着て、黄金の神剣を振りその言葉を発したのは、今までマシューのそばにいた「エインへリアル」のタレス達だった。
「な!ななッ!ななッ⁉︎ お、黄金の騎士だとおお!」
分隊長が驚きを隠せなかった。黄金の鎧は、この国では、王かそれ以上の存在しか着ることの許されない聖鎧だったからだ。その聖鎧を着る者が王以外に4人も目の前に現れたから無理もなかった。その4人の鎧もただの鎧ではなく、王の所持する鎧よりも遥かに神々しく、所々に素晴らしい模様と神語であるヒエログリフが刻まれていた。その文字からも不思議な力が湧き出ていた、その姿を見て、小隊騎士達だけでなく、この騒動を見ていた街の人々達も膝を突き彼等を崇めていた。
「我らはエインフォース!『フェスタ―ルの4騎士!』 第三騎士団所属の小隊騎士達よ、この場は引け! さもなくば我らが相手をいたそう!」 ザッ!
「あ…あッ!ああーーッ! ひ、ひけッ引けーーッ‼︎」
タレスのその言葉を聞き、小隊騎士達は気絶している小隊長を抱え、足早に去って行った。
「よし、みな解除だ!」
「「「おう」」」 シュン
一瞬で、「エインヘリアル」の4人は鎧姿から私服姿に変わって行った。
「本当、この魔法は便利ですな!重い鎧を常時着ずに済むし、何より手ぶらで鎧を持ってるというだけで随分と楽になりました。アニス様、様々ですな」
そんな中マシューも小隊騎士と同様彼らの変貌に驚いていた。
「お前らさっきのあれ、まさか…またアニス達か?」
「ええ、ほら、マシュー殿も覚えておいででしょう」
「お、なんだったかな?」
「2日前のソフィア様が使った技で瀕死の状態になった私達を助けた時、アニス様が使われた魔法です」
「ああ。あの時の魔法か?確か創造者がどうのとか言ってたっけ」
「そうです、その魔法で我々は治ったのですが、そのとき我々はさらなる進化とレベルアップをしたのです」
そう、それはあのソフィアの地獄特訓その時に彼らは重傷を負った。死の一歩手前までの重傷を、アニスが慌てて魔法を唱えたので、彼等もまたその創造者の影響を受けたのであった。 小隊騎士達が去り、周りが騒がしくなってきたので、マシュー達はまた「酒房 デンデン」の中に入って行った。
「ま、とにかくもう一回飲み直そうぜ! おう!おやじいッ!酒とつまみだあ!」
「ヘイッ! ちょっとお待ちを!」
「ああ、頼むぜえ! で、聞きたい事が山程あるがいいか?」
「そうですな、色々有りますし」
「ヘイお待ち!」 カチャカチャ
「まずは乾杯だ! 乾杯ッ!」 カチン! ゴクゴクゴクン
「「「「乾杯ッ!」」」」 カチカチン! ゴクゴク
「プハア〜ッ うめえ!」 ドン
「ハア〜 本当ですね! で、聞きたいこととは?」
「ああ、さっきの鎧姿と今のお前達自身だ」 ゴクン
「アレですか、まあマシュー殿なら良いか」 ゴク
「おう!で何だ?」
「あの鎧はアニス様が我々4人に創造創生して頂いたものです」
「アニスかあ、またとんでもない能力付きなんだろうな」
「ま、まあそれはいずれ解ります。次に私達なのですが、全員人の枠を越えそうな状態みたいで、ソフィア様曰く、『Lst.お姉様か私の許可なく、無闇にその力を使ってはならない』だそうです」
「おいおい、さっきあの鎧、着ちまったがいいのか?」
「鎧を纏うだけなら別に良いそうです。力を使ってはいけないと」
「力を使うなって言ったって限度があるぜ!」
「はい、ですからアニス様はおっしゃいました。『ん、身を守るため、理不尽な目にあった時はその儀にあらず。やっちゃえ』だそうです」
「またアイツは、最後が『やっちゃえ』か、アイツらしいぜ!…フッ…あははははッ!」
「「「「プッ!あははははッ!」」」」
マシュー達は大声でアニスの振る舞い方に大笑いした。マシュー達が大笑いをしていた頃、街の中央で第一小隊を従えたトランがそこいた。彼は中央の噴水の淵に腰掛け部下から宿の手配を待っていた。
「団長おお!」
「お、来た来た、どうですか副長? 宿、取れましたか?」
「はい、大丈夫です!そこの宿を手配しました、すぐ入れます」
「お、ありがとう。では第一小隊、今日はここまで、宿にて休め以上」
「「「ハッ! お疲れ様でした」」」
「うん、じゃあ解散」 バラバラ
今日の任務が終わり、小隊全員がバラバラに歩いて行った。それを見て副長が団長の耳に告げた。
「団長」
「何だい」
「我が隊の第五小隊が、先ほど帰ってきました」
「うん? 早いねえ、演習サボったの?」
「いえ、それが小隊長は気絶、他の騎士達からは、『黄金の騎士』が出たという報告を受けました」
「『黄金の騎士』ですか、また忙しくなりそうですねえ…副長!」
「ハッ」
「直ちに法務局の叔父貴に緊急通信!」
「ハ、で通信文には何と?」
「通信文はこうだ、『緊急通信、アルゴンに金龍降り立つ、注意されたし、トラン』で頼む」
「ハ、直ちに送ります」 タタタ
団長のトランは副長に通信を任せ、日が傾き始めた空を見て思った。
「(金龍だけで済めば良いが…単なる討伐行動がなんか雲行きが怪しくなってきたな)」
その時、彼の耳元に声が聞こえた。彼は念話スキルで話をする。
「(トラン様、忠告です)」……
「⁉︎..(ミラージュナイトか?)」
「(ハ、お久しぶりです)」
「(法皇の幻影達がここで何をしている?)」
「(法皇の勅命により、ある者達の監視をしております)」
「(ほう、そのある者達と私の標的が重なると?)」
「(御明察、恐れ入ります)」
「(で、俺にどうしろと?)」
「(トラン様におきましては、今回、引いて頂ければ幸いかと)」
「(引く?、それは法皇の命か?)」
「(御意)」
「(わかった、善処する)」
「(トラン様!)」
「(善処するって言ってんだろ、向こうから仕掛けてきた時は知らないからな)」
「(わかりました、くれぐれも、法皇の命に背きませんよう)」 フッ
「雲行きが怪しいどころじゃねえなこれは….はあ..」 チャキ!
トランは自分の愛刀を抜き、夕焼けの太陽に翳した。
「うわッ! 血い吸ってるみたいに赤いぜ!不吉な……」
衛星都市アルゴンは、穏やかな夕日を浴びて佇んでいた。まるで嵐の前の静けさのように。
「にゃ!ソフィアそれミウのだ!返せニャアア!」
「Rej.遅いですよミウ、口に入って仕舞えば私の物です」 パク
「ミギャアアアア! ミウのおにくうう!」
「ん、やっぱり2人は仲がいいねえ」 モグモグ
3人は「焼肉王 カルビ亭」で食事をしていた。ここはまるで嵐の中だった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。