第52話 エインチャリオット
ー政令都市ガルア近郊ー
小高い丘にある木の下で、大きめの丸テーブルと7脚の椅子に座っているのは、青みのかかった銀髪と光黄金色の双子の姉妹とマシュー、そしてたった今ここでエインヘリアルになった元分遣隊騎士の4人がそこにいた。それぞれの席に紅茶と菓子を用意しての話し合いが始まった。
「ん、まずは全て元の戻って良かった。で、あなた達はこれからどうしたい?」 コク
「まずはお礼が言いいたい、私を、我々を治し、さらには人のいや騎士の最高の高みまで、引き上げて頂きありがとうございます」
隊長のタレスを始め、その場にいた分遣隊騎士4人が同時に立ち上がり、アニスに頭を下げた。
「ん、別にいいよ。私のも責任があるから」 コクコク
「うん?責任?アニス、おまえ何かヘマしたのか?」ゴクン
「ヘマゆうなッ!ちょっとはっちゃけただけだいッ!」
「Rej.お姉さま、アレはちょっとと言う物で済ますには、いけないと思いますが」コク
「あーッ! ソフィアまでいじめるうッ!」
「で、おまえはコイツらになんの魔法をかけた?」ギロッ
「わああ、マシューの顔がこわあい!」
「素直に言えッ!」 ガシッ
マシューはアニスの頭を鷲づかみにして迫った。
「ぎゃああッ! いたいいたい! 言う、言うから離せええッ!」
「よし、じゃあ話せッ!なにをした?」
「う〜..いたい、...どうしても、聞きたい?」
「聞きたいな」
「ん、詠唱の時、一文余計につけちゃった、ごめんちゃい!」
「はああ? それは詠唱失敗になるんじゃあないのか?」
「Rej.いえ、お姉さまの場合は全て、失敗ではないのです。その時のそれが、「成功のもの」となり正式な呪文詠唱となりますので、彼らにかけた魔法詠唱は「正式なもの」となります」
「「「「「なんだあ!それはあああッ!」」」」」
アニスとソフィア以外の者がその場で絶叫した。
「そ、それは、我々のかけられた、詠唱呪文は正に、オリジナルの固有詠唱呪文! 創造神や神の詠唱という事になるのではないのでしょうか?」
「Rog.その解釈で間違い無いですね」コクン カチャ
ソフィアの一言で、その場の雰囲気が変わった。隊長のタレスは小刻みに震えながらアニスに問う。
「まさか...まさか本当に...神..女神様ではないのですか?」 プルプル
「ん、違うよ!私は女神じゃあないから!」コクン カチャ
「Lst.お姉さま、紅茶のお代わりです。どうぞ」コポコポ
「しかし、この様な魔法を使われるのは、どう見ても神にしか出来ないと思うのですが」
「でも、違うから、これは私のスキルなの!」コク
「そうですね、あからさまに神なんて名乗れませんよね、ではアニス様、そう言う事にしておきます」
「だから、違うからって、えッ アニス様ああ⁉︎」
「はい、我々一同、先程決めました。今日より、法王国の騎士を辞め命ある限りアニス様にお使えしようと」
「だ、ダメだよ!そんな事しちゃあ! 法王国から追手が来て、みんな犯罪者、国の裏切者になってしまうよ!」
「我々の覚悟はできています! なにとぞ!よしなに!」
アニスが困っていた時、マシューが助け舟を出す。
「なあタレス」
「うん?なんだマシューよ!」
「お前さん方はそれでいいが、家族や一族のことはいいのか?」
「うッ!」
タレス達は、どうやらそこまでは考えていなかった様だ。
「やはりな、確かに物凄い称号と力、そして肉体を手に入れて舞い上がってたみたいだが、それでもお前達には、家族や友人達がいるのだろう。そいつらの事をまずは優先するべきだ」
「へええッ マシューが偉い人に見える」
「ウグッ...なあアニス」
「ん、なんだ「偉そうなマシュー」」
「ごめんなさい、その二つ名もやめてください」
「ん、わかった。では別のを考えよお!」
「やめてくれよお! 俺にはちゃんと二つ名があるからあ!」
「え、マシューよ、お前二つ名持ちの戦士だったのか?」
「ん、そう、このマシュー、変な名前持ってんの!」
「変じゃあねえよ!、ちゃんと聖王から貰ってんだからな!」
「聖王?、マシュー、お前王様から二つ名をもらっているのか?」
「ああ、一応な、あんまり言ってないんだがな」
「教えてもらえないか、お前の二つ名」
マシューは少し考えてから、恥ずかしそうに答えた。
「「閃光のマシュー」それが俺の二つ名だ!」
「「「「エエエーーッ」」」」
「お、お前が「閃光のマシュー」だったのかあ!」
タレスは驚いて大声をあげていた。
「ん、そんなに驚く事か?」モグモグ
「驚きますよ、「閃光のマシュー」と言ったら、私達の国では各士団団長か、それこそ先ほどの「インビンシブル.ナイン」の連中と同等、もしくはそれ以上といわれている存在なのですから」
「わあー、マシュー有名人!」パチパチ
「Lst.わあ..ゆうめいじん..パチパチ..と」パチパチ
「だから名乗りたくなかったんだよお! うるさいやつらが集まってきやがるんだ!」
「(やっべえー、あの人が「閃光のマシュー」だったのかあ!)」
「(お前、まともにやってたろ!よう生きてたな!)」
「(クッソおおおッ!「トリー」のヤローッ、俺を殺す気かあ⁉︎、なにが普通のパーティーだメチャメチャやべえパーティーだったじゃないかあッ!)」
「(まあ、お陰で、アニス様に会えたし、すごい力と称号も戴けたしヨシとしようぜ!)」
「(なあ、今なら「閃光のマシュー」さんといい勝負出来んじゃねえか?)」
「(そ、そうかな?...勝てそうかも.....)」
「無理だよ! なに考えてんだお前達!」
「「「隊長おおッ! すみませんでしたあ!」」」
エインヘリアルになった、カソダ、アノン、テルゾの3人が、こそこそ話をしていると、隊長のタレスがそれを止めた。
「おう、なんだったらリベンジ戦、やるかい?」
「ん、マシュー、お前ダメ。今やったらその人死んじゃうから」コク
「は? なに言ってんだよアニス、俺がそんな事するわけねえだろ!」
「Lst.マシュー、あなた、気がついてないのですか?」コク
「な、なんの事でしょうか? 僕、マシューくんはどうなったの?」
「ん、すまん、それも私のせいだ。まあこれからも頑張れ!」 グッ!
「お、お前えッ!俺の体に何かしたのかあッ⁉」
「ん、大丈夫だ、私が付いている。まだ人だ、心配するな...はははッ...」
「アニス、俺はどうなったんだ!」
「はははッ!...」
「お願いします、教えてください?」
「Lst.マシュー、とりあえず自分のステータスを見た方が早いですよ」
「お、そうか、そうだったな。 《ステータス》..............」
自分のステータスを見たマシューは、しばらく放心していた。いや、意識を飛ばして気絶していたかもしれない。
-「閃光のマシュー」ー
《名前》 マシュー・デニス・ドライアース
《種族》 超人類→超越人種
《性別》 男
《年齢》 27歳
《称号》 剣聖勇者、三大天、白金等級冒険者アーベント
↓
神聖勇者、女神の使徒戦士、白金等級は照合比較不能により破棄
《職業》 冒険者→アポステル・クリーガー(使徒戦士)
《レベル》 Lv79→Lv350
《体力》 35890→unknown
《魔力》 29800→unknown
《俊敏》 29200→unknown
《攻撃力》 32800→unknown
《防御力》 29400→unknown
《魔法属性》火、土、聖→全属性魔法
《各種耐性》痛覚耐性、毒耐性、麻痺耐性、状態異常耐性→全属性耐性
《各種異能》痛覚無視、剣術Lv10、魔術Lv10、体術Lv10、縮地v10
隠蔽Lv10、帝級剣技、神級剣技
《状態》 正常、女神の使徒、アニスの戦士
《所持武器》大聖剣「シューレン」→大神器「エーテルカイザー」
「ん、どうしたマシュー?..お~いマシュー...」
「Lst.立ちながら眠るとは、器用ですね」コク
マシューはその場で身動き一つせず立ちすくんでいた。
彼が正気に戻るまで、今しばらく話し合いは中断していた。
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次回もでき次第投稿します。