第50話 分遣隊騎士達
ー政令都市ガルア近郊ー
戦いが終わって、丘の隅にある木の生えた場所に、テンプルナイツのメンバーと、冒険者パーティー「ワルターラスター」の、合計7人がそこにいた。テンプルナイツである法王騎士が地面に縛られて正座している前に、ミニテーブルと椅子に紅茶を出してティータイムをしている3人の男女、という異様な光景であった。
「さて、あんたが隊長さんだな」
マシューが聞いた相手は片腕をソフィアに斬り飛ばされた騎士だった。
「ああそうだ、アトランティア法王国、第6騎士団ディアル皇国方面ガルア分遣隊隊長のタレスだ」
「た、隊長! いいんですか⁉︎そこまで喋って!」
「ああ、いまさらだ、それにアノン、お前もあの様になりたくないだろ」
アノンに隊長のタレスは自分のアゴを使って、放心し切ってるカソダを示した。
「タレス隊長、俺は聖王国カルナの冒険者マシューだ、それと後ろで呑気に紅茶を飲んでるのが、双子の姉妹、アニスとソフィアだ」
マシューは騎士達に、この状況の中呑気に座って紅茶を飲んでいる2人を紹介をした。
「我々騎士の剣技、魔法が通じないとは、あんたら強いな」
「なに、俺は普通さ。あの2人は鬼みてえに強えけどな」
「Rej.マシュー聞こえてますよ、後でこの前の続きをしたいのですか?」
「ごめんなさい!遠慮します。お許しを」
「Rog.今回は許します。今回だけですよ」
マシューとソフィアのやり取りを見て、タレスは含み笑いをしていた。
「フ、確かに。手も足も出なかったよ。で、我々になにが聞きたい?」
「まずは、何でアニスを襲った?、あと、なんでこんな所にいる?ってところか」
「いいだろう、答えてやる」
「隊長ーッ!」
「いいんだ!、責任は全部俺が取る。お前達はなにも心配するな」
「いい隊長さんだな。では早速だがいいか?」
「ああ、まずそこの銀髪のお嬢さんを狙ったのは、彼女が我々の仲間の暗殺手段を言い当てたからだ」
「ここの領主殺しの犯人はお前達の仲間だったのか」
「そうだ、と言っても直接のつながりはない。我々はそいつの補佐、及び後始末、情報操作係だからな」
「つまり、お前らは殺しはしていない、そいつの後始末をする為にいただけだ、と言うことか?」
「そうだ、そして彼女、銀髪のお嬢さんはそのほとんどを、そいつの暗殺の手口を言い当てた、使用した武器までな。ここまで看破されると、これからの行動に支障をきたす。という事で今回の事になったというわけだ」
「アニスの洞察力と情報が、お前達にとってはマズイということか」
「ああ、なあ....あのお嬢さん達は何者だ? 世間に知られていない技や武器のことを知っていたり、戦えば金髪の子は容赦なく強い、銀髪の子の方は不思議な能力を使う。こんな少女達は初めてだ、我が国にも存在しない」
「まあ、それは俺も同感だ。実は俺もアイツらの事はよく知らないんだ!突然現れて、いつの間にか仲間になってた。ソフィアは言うことはきついが正論を言うし行動も的確だ。アニスは一緒にいるとなんか心が落ち着くんだ!あれはウチのパーティーのムードメーカーだな、だから深くは追求しない、今は俺の大切な仲間だからな!」
「仲間か....羨ましいなその仲間、最強の存在がそばに付いているだけで、行動に差が出てくる」
「ああ、まったくだ! 俺がヘマしてもアイツらが何とかしてしまいそうだからな!」
「羨ましい......」
「さて、次だ、何でここにいるんだ?」
「ああ、ことの発端は十数日前、聖王国カルナの辺境に、莫大な魔力反応が観測された時からだ」
「莫大な魔力反応? うちの国の辺境って...あッ!城塞都市パルマの事か⁉︎」
「多分それだ、その時の魔力数値、お前は知っているのかマシューよ」
「俺の友人アデルが言ってたなあ、確か2メルテランとかなんとか」
「そうだ、正確には一回目の観測値が1.34メルテラン、2回目に観測値が3.652メルテランだ」
「な、そんなにか?また細かい数値だな」
「ああ、我が法王国には精度の高い魔道具が多いからな。その一つだろ」
「で、その数値がなんだ?」
「元老院が動いた」
「げ、元老院が動いただああ!」
「そうだ、うちの所のジジイどもがな、『彼の地の力は、我々の物だ!』とか言いだしてな、偶数騎士団に、各国の各都市に少数派遣。そこで、その情報収集及び情報操作、密偵や暗殺者の補佐をせよって指令が出て我々がここにいると言うわけだ」
「偶数騎士団だけなのか動いたのは?」
「奇数騎士団は国の守りといざという時の戦力だ、動かんよ! ただ、ジジイどもが法王様、教皇にある集団を動くように、依頼を出してな、どうやらその集団が動いている様だ!」
「どんな集団かわかるか?」
「俺みたいな下っ端にはどんなだかは分からん! 分かるのはそいつらの、集団の呼び名くらいだ」
「なんて呼び名なんだ?」
「インビンシブル・ナイン!...これしか知らん」
「インビンシブル・ナインか...わかった、よく教えてくれた、感謝する」
マシューはタレス隊長に礼を言うと、彼らの縄を切って自由にした。
「我々を自由にしていいのか? また貴様達を襲うかもしれんぞ?」 ニッ
「ああ、その時はまた、返り討ちにしてやる」二ッ
2人がそんな会話をしているとアニスから声がかかる。
「マシュー、終わったあー? クッキーたべるう?」モグモグ
「ああ、今終わったぜ!大体の事情がつかめた」
「ふ~ん、そう、そいつは良かった」モグ、ごくん
「Lst.お姉さま、彼らに告げるのですか?」コク
「ん、私にはそれをする責任があるからね」コクン、カチャ
アニスはティータイムを終わらせると、マシュー達の所にやって来た。
「ん、法王国の騎士たちよ、もう自由にしていいぞ」
「え、俺たちは、お嬢さんあんた達を殺そうとしてたんだぞ」
アニスの言葉にタレスは言い返した。
「ん、でもこちらは誰も死んでないし傷も受けてない。だからいい!」
「そうか、すまんな。まあ自由と言っても俺とカソダは騎士廃業だしな」
「そうなのか、なぜ?」
「見ればわかるだろう、俺は片腕、カソダの奴はスキルも剣技も何もかも持っちゃいねえ、ただの平民と変わらない、そんなのは騎士に居れないからな。だから騎士廃業ってやつさ」
「なあ、それを私が元に戻したら、お前ら私の味方にならないか?」
「「「「「はあッ⁉」」」」」
「要するに、私がお前やそいつを治し元の状態にしてやると言っている」
「この片腕や、カソダを元に戻せるのか?」
「ん、できる。そしてそれができたら、私の味方になってほしいって事だ」
「我々に国を、祖国を見限れというのかッ?」
「ん、違うよ」
「違うとは、いったいどういう事か?」
「私の味方と言っても、特に何かするわけではない。ただ、もう二度と私達を攻撃しない、探らないっていう事だ」
「ああ、それは約束するって言うか、万全の態勢でも勝てねえのに、そんなの当たり前だ」
「で、どうする隊長さん?」
「本当に、俺たちを治せるのか?」
「ん、治せるし、元にも戻せる」
すると隊長のタレスが返事をする前にカソダがアニスに近寄って土下座をした。
「お願いしますッ‼、お、俺を元に戻してくださいッ! さすれば俺、いや私はあなたに一生の忠誠を誓いますッ‼」
「カソダ、おまえ.....お嬢さん、私からもお願いする。俺とこいつを元の状態にしてくれ、いやしてくださいッ!」
隊長のタレスもアニスに近づき、カソダに並び、同じように土下座でアニスに頼んだ。
「ん、分かった、2人とも顔を上げてくれ」
アニスに言われ2人はその場に座ったまま顔を上げていた。
「じゃあ、元に戻す、ただしこれは他言無用だ!、決して誰にも言わないことを約束して!」
「ああ、約束する!」
「しますッ‼ この命に代えても、貴方様のため誓いますッ!」
2人が約束をしたので、アニスは2人を元に状態に戻す事にした。
いつも読んでくださりありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。