第5話 大地再生 異世界震撼
ー城塞都市パルマ跡地ー
アニスは魔力爆発の中心部までやってきて状況を確認していた。中心部は濃い密度の魔力瘴気が発生し人の侵入を拒むかのように渦を巻いていた。
「随分ひどいね、このままじゃこの土地から魔物が溢れかえってしまう。元の状態に、再び人が住める土地に、よしやってみるかな」
アニスは瘴気渦に向けて美しい青白銀色の髪をかき分けてから、両手を出し、彼女のみにしかできない究極の技を使い始めた。
周囲を確認してからそれは始まった。
「周りには誰もいませんね、それじゃあ始めましょうか」
アニスは中心部に正体し両手を左右に開き、その両手を正面に持っていき、掌を上下に重ねて魔法を唱え始めた。それと同時に両目も僅かに光り始めた。
「我、アニスじゃない、『我、ジオスが創生す、漂う全ての瘴気よ此処に集い集約せよ、この地この場所に混在する悪しき魔素と共に、創生転換元素還元』源始創生魔法!《ティラー. レジェネーションッ!》」
パアッーーン
アニスが魔法を唱えると同時に超巨大な双璧魔法陣が天と地に現れた。その巨大さは、城塞都市パルマのそれを大きく上回り、更地部分を覆い被さったと同時に白い光の超巨大な隔離空間ができた。創造者であるアニス(ジオス)だからできるオリジナル創生魔法で、その威力は絶大を通り越し超壮大な威力を出している。これが創造者のなす力、全てを作り変えることのできる力、神をも凌駕する力である。
ー聖王国カルナ 魔法省ー
ビーッ!ビーッ!けたたましくブザーが鳴る。カルナ魔法省の一室に設置してある魔法制御測定装置が異常値を叩き出した。その場の責任者である人物、魔法大臣【ガルト・ゼン・フィラウス侯爵】は配下の魔導士たちから様々な報告を受けていた。
「何事だ!」
「あっ、ガルト様。大変です!制御測定装置が異常魔力値を検知し、その測定レベルが機械性能の枠を超えて、警報が鳴った模様です」
「現在、異常魔力測定値720メルガノンッ! 更に上昇中! 領土全域に空震が発生しています」
「な、720メルガノンだと⁉︎ そんなバカな、そんな数値聞いたこともない、これまでの最大測定値でも350メルガノンだぞ! 測定器の故障ではないのか?」
「測定装置は正常です。これは現実に起こっている事です。 さらに上昇!現在870メルガノン!」
「まだ上がるのか! 聖都全域に緊急避難命令! 王様ならびに教皇様に御報告を急げ!」
ーディアル皇国 魔道館ー
カンカンカンカンカンッ! カンカンカンカンカンッ!...
その館の重要施設管内は騒然とし、多くの職員が右往左往していた。その館の総責任者【ドグルノア・ジン・ベルア侯爵】はただならぬ事態に翻弄していた。
「鐘、五つとは何事だ、どんな天災が起きた?それとも皇帝陛下に何かあったのか?」
「いえ違います!ベルア様、魔力路が異常共鳴反応を起こしています。また聖王国カルナ西、国境付近に極大魔力反応を検知、測定レベル!そ、測定レ、レベル...」
「なにかッ‼︎ ハッキリ報告せんかッ‼︎」
「ハッ、測定レベル790メルガノンッ‼︎ 現在もレベル上昇中! 異常値です!」
「なッ、790メルガノンだと、何かの間違いではないのか?」
「間違いありません、聖王国カルナ一帯は激しい空震が起きています。更にレベル上昇中、レベル890メルガノンまだ上がります! まもなく測定限界値に届きます!」
「測定危険信号! 赤! 赤! 赤! オール赤ですッ! 侯爵様ッ‼︎」
「いかん!直ちに全職員避難せよ急げ!」
「緊急避難警報!緊急避難警報! 全職員はシュルターに避難せよ!繰り返す..」
その場にいた数十人の人が緊急用のシュルターに駆け込んでいった。そんな中測定員だけはいまだにそこに留まり異常魔力値を測定していた。
「940…960…975…980…まだ上がるぞ、990…1000ッ! す、すごい、これはすごいぞ。ははッ、もっとだ、もっと、どこまで上がるどこま…」
測定員が測定レベルを1090を超えたところで、測定器と測定員は輝く白い光の中に消えた。測定装置が測定限界を超え爆発したのであった。
ドッカアーーーン‼︎
魔道館は地上部分をすっかり吹き飛ばされ炎上した。ベルア侯爵以下ほとんどの職員はシュルターに避難していて助かったが、測定員1人が行方不明になった。
ウーッ!ウーッ!サイレンの音が流れ、周りから人が集まってくる。
「消防隊前へ、救護隊生存者を早く!」
「こっちだー!こっちに人を回してくれー」
「侯爵様! ベルア侯爵様はご無事ですか⁉︎」
吹き飛んだ魔法館の片隅で沢山の人が動く中、ベルア侯爵は1人たたずんでいた。
「一体聖王国カルナでなにが起きているのだ。とにかく皇帝陛下に報告せねば」
同様のことが三大陸全ての国に起きた。そして全ての国が、ことの発端となった城塞都市パルマのあった大地に注目し動き出した。『そこに何かがあり、それを制すればこの世界の王になれると』考え。今まさに世界が動いた歴史的瞬間である。その事にアニス本人は全く気づいていない。
ー城塞都市パルマ跡地ー
アニスの魔法は終盤に入っていた。両手を左右に再び広げ、最終詠唱に入った。
「元素変換確認、最終フェーズに移行、『この地に元の平穏を、元の安らぎを、大地再生、魔素変換それを此処に顕現せよ!』《ディーバイスッ!》」
パアッッ パリイーーーンッ‼︎
最終終局魔法を唱えると、隔離空間が弾け、豊かな大地に壮大な樹々が生え、草が芽吹き、川には清らかな水が流れ、大地は元のように蘇った。流石に人の作った城塞都市は、元通りにはならなかった。そこには、広大な緑豊かな草原と森だけであった。その草原には心地よい風がそよそよと吹き、アニスは満面の笑みを浮かべていた。女の子らしくかわいいガッツポーズをとっていた。
「よしッ! これで元どうりだね!」
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