第46話 細波から波へ 3on3
ー政令都市ガルア 郊外小高い丘ー
アニスを宿屋で見失ってから数刻、あいつを探して翻弄していたさなか、都市郊外から魔法を使ったと思われる爆発音が聞こえてきた。俺はすぐ(絶対アイツだ)とアニスを連想し、すぐさま音のした方へ走った。門をくぐりしばらく走った所にアニスはいた。しかし、アイツは3人の白い鎧を着た男に囲まれていた。その中の一人がアニスに手を出そうとしていた。俺は思わず背中の大剣を抜き、剣技を使ってアニス達の所へ突っ込んだ。(俺のアニスに手ェ出すんじゃあねええッ!)そう思いながら渾身の一撃を出した。間一髪その場にいた法王騎士をアニスから遠ざけることに成功しアニスの前に立った。その後ソフィアも加わり、今、俺達は奴等と対峙している。
「いくぞッとは言ったけど、どうやる?」
「Lst.お姉さまに手を出そうとしたあの者は、私が相手をします」
「え、俺がアイツとやりたいんだが、だめか?」
「Rej.私が相手をします、マシュー貴方にはあの者を任せます」
ソフィアがテンプルナイツの大剣を抜いてかまえている一人を指さした。
「そうか、じゃあ俺は、同じ大剣使いのアイツをやる!」
マシューとソフィアの2人は、それぞれ自分の相手を決める。
「ん、じゃあ残った彼は私が相手するけど、ソフィア、アイツ二刀流のバックソード使いだぞ!いけるかい」
「Rog.問題ないです。私も二刀流ですから」
「ん、なら任せる。マシューの方も随分大柄な相手だが大丈夫?」
「はん!問題ねええ! こちとら、お前とソフィアに散々しごかれた身だあ、どうって事ねえよ!それに特訓の成果も出てるしな!」
「ああ、あのネコまっしぐら剣か?」ニッ!
「違ああううっ!《グランツ.カッツェ》だああ!」ウガッ!
「ん、冗談だ!」アハハ
「こんな時でも冗談が言えるおまえがすげえよ!」
「Rog.お姉さまは、いつもこんな感じですね」
「そういえばソフィア、ミウはどうしたんですか?」
「Rog.大丈夫です、あれは宿屋で生きてます」
「い、生きてるって、だ、大丈夫なんだよね?」
「Rog.生きてます。....たぶん」
「おおお~い、たぶんって何?、たぶんじゃあだめだよソフィア!」
「Rog.フフッ!心配なら早く帰りましょう」ニコ~
「ソフィアの言う通りだ、早く終わらせて帰ろ。いいよマシュー」
「ああ、相手も決まった事だし、そろそろいくぜえ!」
「ん、じゃあ! Fox 1 散開ッ‼︎」バババッ!
冒険者パーティー「ワルターラスター」のメンバーはそれぞれの相手に走っていった。数日前の特訓の成果か、アニスの掛け声と同時に3人ともいきなり高速移動を使っていた。その統率の取れた動きを見てテンプルナイツの隊長は部下2人に示唆をする。
「む!くるぞ、構えろ!殺してもかまわん!」
第6法王騎士団、ガルア分遣隊、その隊長の【タレス】は部下達2人に指示を出した。だが、指示を出した瞬間、すぐ目の前に光黄金色の金髪少女が、両手にショートソードを持ち急接近し現れ、攻撃をしてきた。
「うおッ!」シュンッ!シュキイインンッ! ザッ!ザザザーーッ
咄嗟に自分のバックソードを振りぬき、防御したが、その衝撃波で後ろに飛ばされる。そして、自分がさっきまでいた所を見ると、光黄金色の金髪をなびかせ、両手の神器、ショートソードの「ガルバリオン」を構えたソフィアがそこに立っていた。その姿はこの小高い丘に舞い降りた女神そのもののようだった。
「Lst.よく防ぎました、さすが二刀流の騎士。ですがお姉さまを傷つけようとした事は、万死に値します。覚悟してください」
「美しい! お姉さまだと? おなたはあの少女の妹か?」
「Rog.アニスお姉さまの妹【ドライロッド・ディア・ソフィア】以後お見知りおきを」
ソフィアは、法王騎士【タレス】に、貴族流挨拶のカーテシを決め、挨拶をした。それを聞いてテレスは驚く。
「な、家名とミドルネーム!貴様..いや、あなた様達はどこかの貴族なのですか?」
「Rej.いいえ、貴族なんて足元以下のような存在ではありませんよ!」
「な、貴族が足元以下の存在だとお?あなた様達は一体....」
「Lst.話はここまでです、行きますよ!」バッ!
「クッ!どうしたら? どうすればいいッ⁉︎」ダッ!
ソフィアと法王騎士のタレスの2人は刃を交え始めた!そのすぐ近くでは、マシューと他の法王騎士が対峙していた。
「てめえの相手は俺だ、よろしくな!」チャキッ!
マシューは相手に片手だけで自分の大剣を構えた。
「う、あれだけの大剣を片手で⁉ 何と言う胆力だ!この男相当できる!」
「俺の名前は【マシュー】、お前さんはなんて名だ?」
「聞いてどうする?」
「いんやあ、大した理由はないな。聞いてみただけだ」ニイッ
「く、後悔しろよぉ、俺の名は法王国が騎士、法王騎士団の ジステッド、11【アノン】!お前を殺すものだああッ!」 ブンッ!
彼は名のった後、自便の大剣をマシューに向かって大振りしてきた。
「は、アニスやソフィアに比べたら、遅い遅いッ! ふんッ!」ブオンッ!
マシューが切りかかってきた、アノンの大剣を、横なぎに一振りして、それを弾いた。
ガンッ!ギャンンンン――ッ!
「お前、それじゃあ俺に届かねえぜッ! もっと真剣にやれや!」
「ふん、所詮はただの冒険者!私は国では有数の剣豪でもある!これが本気ではない、覚悟するがいい!」
「ほう、それじゃあ、お遊びはこれまでだあ、お互い全力で行こうぜぇ!」 チャキッ!
「もちろん!さあ、構えろ!わが剣の真髄を見せてやる!」 チャキッ!
マシューと法王騎士のアノンはお互い剣を構え、剣技戦の体制に入った。そしてさらにそこの近く、アニスがもう一人の法王騎士と対峙していた。
「ん、私がアニスです。よろしく」
「ほう、なかなか礼儀正しい少女ではないか。だが、これは天啓だ!お前を処分させてもらう!」
「ん、天啓?処分ねえ、誰が決めたんだそんな事?」
「誰がではない、我々の判断で決めたことだ!」
「随分とわがままな連中だな、法王騎士とはただの身勝手極まりない迷惑集団なんだな」
「我々を侮辱するのかあ!」
「ん、そう聞こえるよう言ったのだが、違うのか?」
「わが法王国は、古来から現在に至るまで、女神の祝福を受けた選ばれし民、神民である。下賤なお前たちを処分する、これは女神様の思し召しでもあるのだ、従って、我らは正義、我らの行動は神からのご指示だと思え」
「ん~、そんな指示出したことないんだがなあ」
「なにを、わけのわからないことを、さあ少女よ覚悟して我が魔法剣の糧となるがいい!」
「ん、魔法剣か、お前は魔剣士なんだな?」
「ただの魔剣士じゃあない!俺は法王騎士団、ジステッド、10の【カソダ】我が団最強の魔剣士だあ!」
「その最強、もっと他に使い道わなかったか?」
「我が国の、神の教えがこの使い道だあ、下賤のものは口を閉ざすがいい!」
「何を言ってもあんたらは、自分らのいいように解釈するだな。仕方ない相手してやろう、早く帰ってやらないといけないし、さあこいッ!」シュリンッ!
「いい覚悟だ!ではこちらからいくぞおお!」シュキン!
アニスは神器アヴァロンを抜いて構え、法王騎士のカソダは自分の剣に魔法付与をし始めた。
三者三様、それぞれが対峙した相手とやり取りをしながら戦いに入った。
いつも読んで頂きありがとうございます。
次回も出来次第投稿します。