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第44話 波紋から細波へ

ー政令都市 ガルアー


政令都市、貴族街中央、そこにひときわ巨大な邸宅が鎮座していた。そこはこの政令都市の領主【ブロス・デン・ドロワ】侯爵の自宅であり、今、侯爵はこの自宅にて謹慎中であった。無断でこの国の最強兵種の翼竜を使い、それをすべて失うという失態、また特秘兵器の無断使用など、他の貴族からも譴責辞任の声がではじめて、それらを回避するために自ら謹慎を申し出てここに来たのであった。


「おのれえ、無能なやつばかりだ! シャザルゲンのルシェ! 翼竜隊隊長のクラウン! 全くどいつもこいつも役に立たん!」


自宅私室で、片手に高級赤シードルを持ち、気分を落ち着かせようと窓の外を見ていた。


「今は、事が収まるまで待つとしよう。だが必ず、この私が国を掌握してやる。腐った皇族や貴族ども、今に見ているがいい! フフフッ!」


その時ふと自宅門前を見ると、見知らぬ人影が門兵を一撃のもと倒し侵入するところを見た。次にその侵入者は、庭に配備してある警備ゴーレムと番犬型魔獣を相手に戦い始めた。


「なんだあれは! 魔族⁉ いや獣人か⁉ あの動き只者じゃあない!いかんこのままでは侵入される!」


彼は慌てた、すぐに自宅内の防御を固めて、私兵の騎士30名、魔導士12名、を自宅内に配置し、あと、強力な結界を自宅に、私室には、完全防御の結界石を置き、私室にこもり様子を見た。


「何奴が来たか知らぬが、我が邸宅には選りすぐりの者達ばかりだ、侵入して来た事を後悔するがいい。またこの結界石は我が国随一の結界石だ、神や悪魔だって入ることなどできない!」


どれくらい時間がたったか、何の変化もなく、静かな邸内に彼は少し不安になったのでドア越しに廊下の近衛の兵に尋ねた。


「どうだ!異常はないか?」


「ハッ! 今のところ以上はありません!」


「そうか、しっかり頼むぞ!誰も通してはならんッ!」


「はッ!、心得ております」


侯爵は少し安心したのか再び、高級赤シードルを飲もうとした時、自分の背後から声が聞こえてきた。


「【ブロス・デン・ドロワ】だな?」


「な、い..いかにも私が国家丞相【ブロス・デン・ドロワ】である。貴様!何者だッ! どうやってここに侵入した⁉︎、ここには誰も侵入などできぬはずだ! 私に何の用だッ! 目的はなんだッ!」


「天啓! お前の役目は終わった。後は次の者が引き継ぐ」


「なッ! そ..その言い回しはッ!ほ....ッ!」 ザシュッ!

 ドン.....ゴロゴロ......


その侵入者はいきなり、彼の首をはねた。その時その侵入者は小声で語る。


「.....法王様のために.....」 シュンッ!


そう言い残しその場から消え、ガルアの町中に消えていった。

その日の夜、領主邸は上を下への大騒ぎになったが、庭には護衛ゴーレムがすべて破壊され沈黙し、番犬魔獣はチリとなって消えていったからだ。領主私室へは誰も入れず、近衛兵や使用人がいくら声をかけても、侯爵からの返事はなかった。仕方無しにギルドへ確認依頼を出し、依頼を受けた冒険者が外壁に上り、窓から中を確認すると、結界石の横に首を絶たれた侯爵の亡骸が青い光の粒にまみれて、倒れていた。これが深夜に起きた出来事であった、その翌日アニス達は、この都市ガルアに着いて今に至る。


―政令都市ガルア 宿屋アステル内―


「と、いうわけでな、領主の部屋にはいまだに誰も入れねえ」ゴク


「ん、その結界石のせいか?」コク


「ああ、またこれが強力なやつでな、魔法士や冒険者の魔法使いが躍起になって解除している最中だ!」 ゴクン


「ん、それでそんな話をなんで今、ここでしている?」コクン


「さっきギルドから俺達『ワルターラスター』に依頼が来た。お~いエールお替り!」ドン


「ん、依頼?どんな? 私もお替りください」


「うん?ききたいかあ?」ニイイッ


「へい、お替りお待ちイ!」 ドン、トン


「ん、当然!変なのはヤダ!」コク


「侯爵を殺した奴の調査とその手口だ」ゴク


「ふむ、調査と手口ねえ...」


「どうやって侯爵の部屋に入り、殺しまでやったのかその手口とその正体ってところだ」ゴク


「ん?誰も何もわからないのか?」


「だからこうして、いろんなやつに依頼が出てる」ゴクン


「こんなの聞いただけでわかるじゃないか」コクン


「な、アニス、お前わかるのかこれが?」ザッ!


「ん、分かるよ」


「頼む!教えてくれ、いったい何がどうなったらこんなことができる?」


「《ブラインド.フィールド》」コクン


「は⁉、今なんて言ったんだアニス、もう一回言ってくれ」ゴクン


「ん、だから《ブラインド.フィールド》!、侵入者が使った技だよ」


「なんだその聞いたことのない技は?どんなだ?」


「マシュー、そのエールみたいな技だ」コク


「はあ!このエールと一緒?分からん、全然分からん」


「ん、要するに、マシュー、その手に持ってるエールに殺意や敵意を感じるか?」


「んなもん、あるわけねえだろ!大体エールに気なんか使わねえよ!」ゴクン


「ん、じゃあ、その手に持ってるエールがナイフを持った人だとしたら?」


「はッ! 誰も気が付かない、気が付いても気にならない、そう言う剣技か?」


「いや、これは剣技じゃあない。これは聖技なんだ、使える奴は少ない」


「聖技って、まさか、今回の侯爵殺しのやつは、聖職者か?」


「ん、たぶん、それもただの聖職者ではなく獣人の聖職者だ!」


「なぜ、獣人ってわかる?」


「侯爵の部屋には結界石があったのであろう?」


「ああ、いまだに稼働中で入れねえ」


「だからさ、結界石で侵入を阻止できるのは、魔力を持った者なんだ」


「そうか、獣人は魔力を持っていない、だから誰にも認識されず結界石も突破できたんだ」


「そう、それと使用した武器!」


「それもわかるのか?」


「ん、侯爵の亡骸のあたりに、青い光の粒があったんだよな」


「ああ、そう聞いてるぜ」


「たぶん、『幻影神剣 ルミナスライト』 それを使用したと思う......」 チラッ


アニスは顔を動かさず眼だけゆっくりと横に見た。


「知ってるのか?」 チラッ


マシューも同じ様に見る。


「ん、だがその前にいいいッ!.....ッ‼︎」 ババッ!キンキキンッ! カカカッ!


アニス達の席にいきなり投げナイフが飛んできた。が、その全てをアニスは背中腰にあるミドルダガーで弾き、全て床に刺さった。すぐさまマシューが立ち上がりナイフの飛んできた方に向かったが....


「ヤロおおおって、いねえ、足の速い奴だ!って、アニスもいねえッ!」


今アニスは自分たちにナイフを投げた者を追尾していた。


「ん、意外と素早い動きだ。《縮地》ではないな、少し上げるか!」バッ!ババッ‼


そういうとアニスは追いかけるスピードを上げた。逃走者もアニスの存在に気づきスピードを上げる。政令都市は広い、その中を、二つの影が猛スピードで駆け抜けていた。建物の間、人の間、川の橋や屋上の屋根など様々なところを疾走する。 ヒュヒュヒュッ!ザッシャッササッ!シュン!シュシュッ!シュンッ!


ほどなくして都市外れの小高い丘の上で二人は止まった。ザシャアアッ! タンッ!


「ん、もう終わりか?」


「ハアハアハアハアッ!な、なんだよお前ッ!ハアハアハアッ!なぜハアハアついてこれるハアハア?」


アニスの目の前で息を切らして立っていたのは、白一色の外套を着た青年だった。


「そんなことより、なぜ私たちを襲った?」


「ハアハアッ! フッ!話すと思うかい?お嬢さんッ!」ビシッ!


アニスに向かってまたナイフを投げてきた。が、またしてもそれをアニスはダガーで、素早くはじき腰の鞘に納める。キンッ! チャッキ


「何度投げても一緒だよ、私には届かない」


「くそお、こんなのは聞いてねえぞ、【トリ―】のヤツ、もっと調べて報告しろ!」


「ん、ほかにも仲間がいるのか?」


「ハンッ!さっきも言ったろ『話すと思うかい』ってな、こう見えても俺は『ジステッド、15』だ!お前のような女に負けてたまるか!」


「ん、色々聞けそうだな。仕方ない、命までは取らん!来い!」シュピンッ!


アニスは再び神器のミドルダガー「アヴァロン」を抜き構える。


「ふん、聖王国の冒険者ふぜいが、俺達の国のおかげで、お前たちの国は成り立っていることも知らない奴らが、いい気になるなよ!」


「ほう、ずいぶんと情報をくれるのだな、その調子だぞ!もっとしゃべれ!」


「ぬ、うるさいいッ!僕は、僕はあ強いんだああ!」シュキイインッ!バッ!


白外套の青年も、アニスと同じダガーを武器としていた。アニスと違い両手のダブルダガーで両手を伸ばし外套を脱ぎ捨てアニスに突進してきた。彼は白い軽装鎧と胸にロザリオをぶら下げた法王騎士テンプルナイツだった。アニスはそれを見て理解した。


「ん、ほう『テンプルナイツ』のダガー使いか、いいだろう来いッ!」ザッ!


アニスは左足を前に、前傾姿勢で右手のダガーをくるくるっと回し、逆手に持ち背の後ろへ、左腕はひじから曲げガードに、これはマシューに一撃を食らわせたアニスの攻撃姿勢だった。


「死ねえぇッ! 我らの法敵『ゴッツマーダー』めえええッ!剣技いい!《アスカロン.メッサアーッ!》」 キシュウウウンッ!


アニスに青年騎士のダガー剣技が迫っていた。それをものともせずアニスは剣技を使う。


「《縮地》剣技!《イージス.エッジ》!」 シュンッ! シュキイイインンッ!


2人の剣技の音が小高い丘にこだました。




いつも読んでくださりありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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