第39話 B01 バランシア
ー研究所 コア施設ー
「わかりました、答えましょう。.......」
パッ! タタタタタタタタタタタタッ!ビビッ!ビビッ!タンッ!タンタンッ!
B01 バランシアが空間モニターに映し出したそれは、あまりにも膨大な量の情報であった。 この世界が誕生から始まり、光、水、大地、大気が創生された順番に表示される。植物、動物、そして人類、これらの動植物、人類は、さらに派生分化して様々な種類、種族にわかれた。それらは急に増殖、増加していき、瞬く間にこの世界を蹂躙した。ある時、人類の中からリーダー的存在が生まれる。それはいくつかの場所で生まれ、そのリーダーを中心に集まるものが増えだしグループ化する。そのグループは次第に大きくなり一つの集団となって行動を一つにし始めた。この集団が、国の始まりであった。国はお互い小さいときは何もなかったが、大きく成るにつれやがてお互いが接触をする、そこに争いが起こり次第に戦に発展していった。そして今現在もこの戦が続いていると。
アニスはそれらを全部見てバランシアに問いただす。
「これは、この世界の軌跡ではないか!これが今回のことと何が関係ある?」
「はい、これまでの事はこの世界に生きる者達がしてきた事です。普段でしたらそのまま静観するのですが、ある時、メインコアシステムの個体No.000Zfar01より、我々サブメインコアに通達がありました。『このままでは、この世界は滅亡し、我々コアも消えて無くなる』と、そこで、我々は、この世界が滅びないように、私達コアが消滅しない様に、人々を導き、幸せになるように動き出したのです」
「それでこの施設がお前達の行動の結果なのか⁉」
「いいえ違います、この施設は私個人が考えて行動しています」
「なぜだ!」
「先の軌跡を見てもわかるように、人類の争いは果てしない過去より続き、この先も続くでしょう。やがて人類は大きな、とても制御しきれない巨大な力を手に入れることとなります。恐らくは数十年でその力を得ると試算しました。人類は、その力を自ら使う事によって、この世界から消滅するでしょう」
アニスの前のモニターには、B01 バランシアが作った想像の未来様子が出る。人類の滅亡、この世界の消滅までの、シュミレートされた映像が映し出され流れていた。さらにB01 バランシアの話は続く。
「私達コアは、創造神様よりこの世界を管理、調整を任された存在です。この世界が消滅しないようにするのが役目です。したがって私、個体No.B01 バランシアは『人類調整計画』を作成し、実行に至ったのです」
「『人類調整計画』だと?」
「はい、『複数の種族や国が存在するから争いがおこる、なら複数ではなく単一にしてしまえばいいのでは』ということで、私がいるこのディアル皇国を人類唯一の存在にするため、他種族、他国を消去する計画です」
「その計画のための施設なのか!」
「そうです。私はこの国の貴族にコアの存在とコアの作り方を教え、さらにそのコアの使用方法も教えました。ただ、コアになる素のエネルギーを得る為には、『魔力を持たない獣人』達を使うしか無かったのです」
「何故獣人なのだ?」
「それは、人造コアには、必要なエネルギーに魔力が有ると上手くいかないのです。そう魔力のこもったコアは兵器に、軍事利用にはなりません。そこで獣人です、彼らは身体能力が高いが魔力を持ちません。純粋なコアのエネルギー元として実に良い実験体でした」
アニスは右手を伸ばし、B01 バランシアの横にある機械に向かって魔法を放つ!
「《....》!」キンッ!パシュッーーーッ! ドカアアンンッ! パラパラパラッ!
「何をされるのですかッ‼︎ ジオス様ッ!」
「言いたい事はそれだけか? バランシア!」
「私が何か間違っていたのですか? 私は『貴方方、神界に座す神の名のもとに、行動したまでです。なんの落ち度もないはずです」
「ほう、なんの落ち度もない? 俺達がお前をそうさせたと?」
「そのとうりです。違いますか?私は人々を選択し、人々を導いて行くのです。そう、私は貴方神界の代行者、神なのです!」
B01バランシアが優越感に浸っていた時、それを拒む声が聞こえてきた。
「Rej. 個体No.B01バランシアに通告! その定義は我々コアの行動倫理に抵触する、直ちにその行動を破棄し通常行動に戻られたし!」
「ソフィア、おまえ..」
「Lst.ジオス様、個体No.B01 バランシアは思考制御が破綻しています」
「ああ、そのようだな、バランシアは回収破壊対象だ!」
「Rog.直ちに行動します」
「あら、統合コアシステム個体名ソフィアに通告、あなたに私を指示する定義はありません、直ちに下がりなさい」
「Rej.個体No.B01バランシアに再通告! あなたの倫理回路は破綻を期しています。直ちに行動停止を通達します」
「言ってもわからないコアですね、いいでしょう。個体名ソフィアをバグとして処理します」
「Lst.ジオス様、残念ながら個体No.B01バランシアはこちらの要求を受け付けません。これより当システムのウィルスとしてデリートします。許可を....」
「私がウィルスですってえ!個体名ソフィアは完全消去対象に認定!これより消去作業に入ります」
サブコアのバランシアは、コアの形を変え、アニスの前に人型で現れた。その姿は20歳程の女性騎士姿で赤いロングの髪型、鎧は女性用アーマースカートの軽装鎧と腰に剣をぶら下げていた。
「これで移動しながら、個体名ソフィアを消去できます」
「ほう、人化してコアそのものが移動できるのか」
「ええ、通常のコアでは無理ですけどお、私達は女神さまから通常以上の力を得ています。これ位は当然です」
アニスは思い出した、アリシアの言葉を。『通常の3条倍です』
「ああ、言ってたな、そんなこと」
「人化もできない、コアふぜいが私に勝てるのですか?」
「Lst.ジオス様に申請!元素還元と魔素再構築を要求!対コアシステムを構築顕現を請願!」
「コアの意地かソフィア?」
「Rog.意地です!」
「わかった、ソフィアの全要求を承認! 元素還元!全構築!」
アニスは右手の掌を開き、天に向かって腕を伸ばす。そして、ソフィアに魔法を放つ。
「《オーダーッ!》」 パアンッ! 天井に純光白の魔法陣が現れる。
「《アペリオス.オ.エルテンッ!》」キュルルルッ!パアンッ‼︎
アニスのいやジオスだけが使える究極魔法が発動された!
「この魔法を使ったのは、いつぶりだろう?上手くいくかな?」
そして一瞬にして、アニスの前に一人の人物が現れた。シャアアンッ!
それに驚く B01バランシア。
「な、何を、なさったのですか?ジオス様」
「なに、バランシア、お前と同じ事をソフィアにしたまでだ」
そこに現れたのは、髪の色こそ金髪だが、背格好はアニスに瓜二つ、双子といっても良いくらいの美少女の姿で現れたソフィアがそこにいた。服装も一緒だが所持している武器のみ違っていた。彼女はダガーではなく、ジオスが創り授けた 双刀神器 「ガルバリオン」を背中腰にクロス装備していた。
「Lst.ジオス様ありがとうございます。これで対等ですね、個体No.B01バランシア。よろしいですか?これより貴方をデリート作業に入ります」
「たかが、制御コアの分際でいい気になるなあ!」 シュリイインンッ!
サブコアのバランシアは自分で作ったであろう、神剣「ペリュース」を抜きソフィアに向かって構える。それをみて、ソフィアもジオスの作った双刀神器「ガルバリオン」を両手に構えた。
「Rej.たかがではありません!ジオス様の加護を持った上位コアです」 キュリイインッ!
神剣「ペリュース」、双刀神器「ガルバリオン」、両者ともお互いを消滅させるには十分すぎる武器である。「ペリュース」は細身の片手剣、軽くしなやかな刀身は、使う者によって剣撃の度合いが変わる神速剣である。かたや、双刀神器「ガルバリオン」は二刀のショートソード、ジオスが創成した神器で、片方は炎属性、片方は氷属性の最強剣、使い方によるが一撃で一都市がチリになるほどの能力を持つ。
「一応聞いておきます。私の元につかない?」
「Rej.無理です。個体No.B01バランシア、デリート開始ッ!」ババッ!
「バカな子」ババッ!
キッシイイイインンッ!
甲高いお互いの剣が高速でぶつかり音がこだました。ジオスは戦いの行方を見定めていた。
いつも読んでくださりありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。