第37話 外周都市エスタ
ー外周都市エスター
アニス達は無事町の中に入ることができた。ディアル皇国外周都市エスタ人口20万人の中核都市で、本来は隣国、聖王国カルナの交易拠点都市でもあった。現在は国交も断たれ、先の戦の帰還兵が町に駐屯していた。アニス達は商人と一緒に門をくぐり、大通りの前にいた。
「さて、我々は商会ギルドへ向かいます。道中お世話になりました。ではこれで」
商人の長はアニス達に少しばかりの貨幣を渡し移動して行った。
「マキ達はどうするのだ?」
「私達はこれから、ギルドに依頼完了の手続きをしてくるんだ」
そう言って「エンジェルベル」のメンバーは、冒険者ギルドへ向かって行った。
「マシュー、私達はどうする?」
「まあ、とりあえず宿を取って、街中を散策だな」
「ん、それいいな!」
「それとお前は外套をしっかり被れよ?」
「ん、わかった....これでいいか?」
アニスは外套を取り出し、外見がわからないようスッポリと被った。
「おお、それでいい、わかんねえぞお!」
しばらくしていい感じの宿があったので、部屋をとって今は繁華街を歩いている。中核都市なだけあり様々な物があふれて売っていた。所々にミニカフェやミニバーがあり、人々の顔も笑顔が多かった。
「皇国というからもっと厳格な街かと思ったが、いい雰囲気の街じゃないか」
「まあな、基本どこの国もここみたいなもんさ!違うのは、王様と政治、法律くらいかな!」
「そうか、ならなぜ国同士は争う?」
「お互い、相手の国の中が見えず、自分の国より良いんじゃないか?と思ってるからさ」
「ん、バカだな!」
「ああ、バカだ!」
繁華街は結構長い通りで、まだまだ続いていた。そんな時マシューがあるものに目が止まる。
「うおッ! ここのミニバー、ドライエールがあるじゃねえか、なあアニス、ちょっと飲んでていいか?」
「相変わらず酒が好きだな、その内身体中の穴から酒が湧くんじゃないか?」
「なんか怖いこと言ってないか?」
「酒噴水人間 その名もマシュー!」
「お願い、その二つ名はやめて、威厳がなくなるから」
「ん、あると思っていたのか?」
「ごめんなさい、何も言いません、お酒飲んできます」
マシューはミニバーのところへ行ってドライエールなる酒を飲み始めた。
「全く、まだ日も高いというのにしょうがない奴だ! マシュー!この先の店を少し見てくる!」
「おお、俺はここで飲んでるぜえ! おやじい!お替わり!」ゴクゴクップハアア!
「さて、何があるやら。」 ふんふんふん♪
アニスは鼻歌を歌いながら、いろんな店先を除いて歩いた。めぼしい物はその場で買いストレージへ入れていく。そんな買い物をしていた時、奥の広場での騒動が耳についた。
「おうおう、まだ寝るには早いぞ、猟兵小僧!」 ドカッ!
「猟兵のお前らがしっかりしねえから、俺たちが苦労するんだよ!」ガッバシッ‼
「この愚図獣人がああッ!」 ビシビシッ!
その広場には、皇国軍の兵達数人と、地面に横たわっている軽装鎧を着た獣人の子がいた。彼は兵士達に、殴る、蹴るの暴行を受け立てない様子だった。アニスはそこに割って入る。
「なあ、その子が何したか知らんが、やり過ぎだぞ!死んでしまうではないか」
「なんだあ、俺たちに説教するのか、って、コイツもガキじゃねえかあ!」
「コイツの仲間かあ? おいコイツもやっちまおうか?」
「ハハッ!そりゃあいい、この猟兵小僧、もう動かねえし飽きてた所だ!」
「ん、なんだ、私と遊びたいのか?」
「遊び?遊びになるかあ? せいぜい長く遊ばせろよっ!」 ビュンッ!
皇国兵士が、アニスに近づきいきなり警棒のような物を振り落としてきた。だが、アニスはそれを紙一重で無駄な動きをせず交わす。と同時にカウンターアタックをその兵士にした。シュンッ! ドカアアッ!
「グワアアアーーッ!」バタバタバタッ! ゴロゴロ ゴロ、ブクブク
アニスのカウンターアタックを受けた兵士は、腹に肘当てを喰らい地面を転がって行き、止まった先で口から泡を吹いていた。
「やろうう、やり上がったなあ!、全員で行くぞお!」
残りの兵士が一斉にアニスに向かってきたが、皆一撃の下に倒され、白目を剥いて気絶してしまった。それを見て住民達が一斉に賛美の拍手喝采をした。
「外套の兄ちゃんすげえぞお!」 パチパチパチッ!
「ああ、スカッとしたぜえ!」 パチパチ!
アニスは少し恥ずかしながら、横たわっている少年のところに行った。
「おい、大丈夫か?」
「ウッ......グウウッ...イッ!...クウ!....」
痛みがひどいのか、言葉にならない苦痛の悲鳴をあげていた。
「アイツらやり過ぎだ、こんな子供相手に...」
そう言いながらアニスは少年を抱きかかえた。そして隅の方にある木の下へ彼を運んで寝かした。
「大丈夫か、今、治してやるからな ヒール!」 パアンッ!
淡い光が少年を包み込み、傷を治して行った。
「ん、これでよし!ってまだ気がつかないか。しばらく休んでなさい、じゃあ行くね」
アニスは彼をその場に寝かしたままにして、マシューのいるミニバーの方へ歩いて行った。きた道を戻るとそこには顔を真っ赤にしたマシューが他の酔っ払い達と談笑していた。
「お〜いマシュー、飲み過ぎだぞお、帰る準備はいいかあ?」
「お、我妻アニスよ!出迎えご苦労!」グビグビッ ゴクン!
「あ、なに言ってんだあお前はッ!いつお前の嫁なったあ!」
「ん〜、見たあ!アイツウ、照れてんのおお! 可愛いよねえええ!、アハハ」 プハアァ~
「おうそうかあああ、これがあんたあのお、ア〜ニスちゃんかあ ヒクッ!」
「そおおう、お~れのよめえ~、ものすっごおおくツンデレえええ!」
プチン!
「ふふふッ!マシュウゥゥゥ! いい身分だなあアアア!」
その時、横の路地から見知った者たちが来た。
「あ~ッ いたいた、アニスちゃ~ん! さがしたよ~」
「やっぱり繁華街だったわね!」
そう、「エンジェルベル」のマキとソアラの2人だった。
「ねえねえアニスちゃん、こっちにおいしいスイーツがあるお店があるの、一緒に行って食べないって...アニスちゃん?」
「マキィッ! あれええッ!」
マシューと他の客が酔っ払ってアニスにくだを巻いていた。
「だいたあああい!アニスはぁ、はっきりとおお、言えばいいんだよおお!」
「ほう、マシュウゥッ!私が何をおまえにいうのだ?」 メラメラメラッ!
アニスの背中に赤いオーラがゆらめく!
「「ひいー、またなの、マシューさん!いい加減学習してええ!」」
「俺えええとお、えええっちいいしたああいってえ!」ヒイイック!
ぶちいいいッッ‼
「「マシューさん...本音が出すぎいい!」」
「いいだろうマシュー!酒がそんなに好きなら!好きなだけ飲むがあいいいぃ!」
「「きゃあー!またきたああ!」」
「究極嫌がらせ闇魔法!ツバイッ!《ヘルダアッ.ドリンカアア――ッ》」
ドビュンッ!
するとマシューの体が紫色に包まれた、そして、マシューの体から出てきた。.......エールがいっぱい。
ドルドルドルヂュビャビャババアアアアアーーーッッッ‼
マシューの口や鼻、耳の穴や体中の穴と言う穴から、でちゃあいけない所からエールが出てきた。
「い、いやあああッ!私ィッ!あれも絶対いやああ!女の子として終わっちゃうう!」
「私も絶対いや!マシューさん、当分近寄らなで..ん?」
「ああハハハッ!どうだマシュー!うまい酒だぞー..って、ん?」
アニスの後ろから外套の端をツンツンと引っ張るものがいた。アニスがそのものを見た。
「お姉ちゃん、僕を忘れないでえ」 ウルウルッ
その者は、さっき助けた少年だった。しかも、耳とシッポがあった。
「きゃあああッ!ア、アニスちゃんん!マシューさんだけじゃなく今度は少年をおおお!」
「あらああ、アニスちゃ~んこんなおいしそう、じゃない!いたいけな少年まで」
ソアラは興奮気味で顔を赤らめて言い、マキは少し不穏当な発言が混じっていた。
「え、ちが...って..こ、この子はさっき助けてあげた子でえ...」
「問答無用! ソアラ!みんなに連絡を!今日は朝までやりますと!」
「もちろんです! さあ!アニスちゃんとそこの少年!いっしょにきなさい!」
「ぎゃああああ!まただああ、またあの悪夢があああ!」
「ふふふッ!今晩は楽しいいい、夜更かしだね!アニスちゃん♡」ニコニコ
「マシュー!マシュー!起きろおお!私を助けるんだあああ!マシュゥゥゥ!」
だがマシューはそこらじゅうを酒びたしにして泣いていた。
「俺、酒噴水人間マシュー..」ぐっすん!
アニスは町のどこかにある彼女たちの集合場所に連れていかれた。
その場所は朝まで明かりが消えなかった。
いつも読んでくださりありがとうございます。
前回、ボツ作品を投稿し、投稿予定作品を消去するという失態をしてしまいました。
一部の人がそのボツ作品を呼んだと思います。読めた人はラッキー?
次回もでき次第投稿します。