第36話 アニスとマシュー 街道談義
ー皇国街道ー
一夜明け、アニス達は一路近くの町へ出発していた。荷馬車は3台、うち1台は女性専用車で、昨夜の事を皆が話題にして、街道を移動中の現在も、荷馬車の中にいる者たちで盛り上がっていた。アニスとマシューは並んで街道を進む、アニスは何も気にしてない様子だったが、マシューは時たまアニスが気になる様で、そばから離れず歩いていた。
「もうすぐ町に着く、この先の丘で最後の休憩だ」
商人の長が皆に号令をかけていた。アニス達は従う義務はないのだが、彼らと一緒に町に入った方がスムーズにいけそうだったので、同行していた。程なくして、目的の休憩場所に着いたので、それぞれ休憩に入った。アニスの所へマシューがきて横に座る。
「アニス、昨日のことなんだが....」
「ん、ああ、すまなかったな。で、傷は綺麗になっただろ?」
(治ってくれて、よかった)
「ああ、お前が治療したんだろう、綺麗なもんだぜ」
「ああするしか、治療方法がなかったからな」
(ほんっと、急だったんですから)
「え、ああするしかって、なんかしたのか?」
アニスは顔を少し赤らめながら。
「ん、口付け.....」
(ううッ、恥ずい)
「え、なんて、今....」
「だから、お前の口に直接、私の力(神力)を与えて治療した」
(2度も聞かないで、半分は私の本心だけどね♡)
「な、あれ治療だったのか?」
「ん、何だと思ったのだ?」
(これ以上はダメェ〜ッ)
「いや、ハハハ....その、俺への...告白かと...」
「な、あ、あれはだなあ。治療半分、告...は....く...ゴニョゴニョ....」
(キャアア! 言えない言えない全部言えないよお〜)
アニスは両手の人差し指同士をくっ付けて赤ら顔でモジモジしながら言う。
「え、よく聞こえないぞ、なんて言ったんだ?」
「うるさい! マシューのばかちん!空気読め!」
(あ、逆ギレで逃げた)(もう一人の私さん、ちょっとお静かに)
(はい、静かに見ています)
「あ、いやあ、すまん!俺が悪かった」
「ん、いや私も悪かった。感情に任せたとは言え、マシューに“聖痕”をつけてしまったからな」
「なんだ、その“聖痕”ってのは?」
「ん、私の武器による「プログレッシブ リアクション」要するに後日効果というもので、この武器ミドルダガーの攻撃で傷を負わされると、その後、受けた者は、神からの恩恵と、スキル(剣技、戦技、魔法)が使用出来なくなる。そう、全くなにもできないただの人になるんだ」
「な、なんてもん持ってんだああッ!お前わあッ!」
「ん、まあこれでも飲んで落ち着け」 コポコポ
アニスはマシューに紅茶を差し出す。
「お、おう!.. ゴクッ じゃないッ!説明しろッ!怖すぎるぞそのダガー‼︎」
「いや、普通に切られただけなら、ただの切り傷だ。だが私の特殊剣技が合わさって切られると“聖痕”が出来る。まあ私以外、使えないがな」
「そう言えば、アニスお前、聞いた事ねえ剣技を使ってたな」
「ん、《ガイエリアス.ファング》の事か?」 コク
「おう、それそれ。で、どんな剣技なんだ?」 ゴクッ
「ん〜....知りたい?」 ニコッ
「(う、またこの笑顔と仕草!)で、できればな」 ゴクン!
アニスはマシューのカップに2杯目の紅茶を注ぐ。コポコポ
「まあ、一度見せた技だしな。アレはマシュー達の様な剣技、戦技の一段上の剣技だ。様々な剣技、戦技に対応できる変幻自在の迎撃型剣技!大抵の剣技はこれで凌げる」 コクン
「じゃあ俺では、アニスに一生勝てそうにないな。そんな剣技があったんじゃあな」 チビ
マシューは気を落とし紅茶を飲んだ。
「ん、なんでだ?」コク
「なんでって、俺の最強剣技、《グランツ.カッツェ》を防がれてるからな」ゴク
「ん、何言ってるマシュー、お前のあれ《グランツ.カッツェ》は初現技の『水端剣技』じゃないか。なぜ終局技の『極端剣技』を使わない?」 コク
「はああ?、お、俺そんな剣技知らねえぞお!」 ダラダラ
「こぼすなもったいない。で、なんだ知らないのか?」コクン カチャッ
「知らねえよ! 大体俺の師匠だってそんな事言ってなかったぜ」
「多分、お前のその師匠とやらも会得しきってないじゃないか、その技」
「師匠が知らない《グランツ.カッツェ》があるというのか?」
「ああ、存在するし、使っていた者もいた」
「信じらんねえ、今でもこれが限界一杯の力だと思ってたんだがな」
「前に一度話したよな『イリュージョン』シリーズの事」
「ああ、確か3つぐらいあったっけ、それがどうした?」
「ん、お前のその剣技、《グランツ.カッツェ》は3つある」
「へッ!....俺の剣技が3つもある?」
「ん、3つ 正確には『カッツエ』シリーズ3種12剣技のうちの3剣技だな」
「それは俺が取得できるやつか?」
「むしろマシュー専用だな。強いぞ最終技の『極端剣技』はッ‼」
「俺専用? 何を根拠に?」
「私が取得方法を知ってるし、取得させることもできるから」 カチャカチャ
アニスはマシューに返事をして、立ち上がり紅茶セットを片付け始めた。
「それは、どんなのだ!教えてくれアニス!」ガバッ!
マシューはアニスに押し倒す勢いで後ろから被さったその時、歓声が上がった。
「きゃああ、見て見て、凄い新婚さんみたい!♡」
「羨ましいい〜、あれが、『食器を片付け中の新妻に後ろからハグ』なのね!」
「私、リアルで見たの初めてええ〜♡」
「ク、当てつけか?当てつけなんだな!俺達も嫁さん欲しいい!」
(え、お嫁さん♡ど、どうしよう心の準備が...)
アニスは額から一筋の汗が流れていた。横に顔を向けるとそこには、目を見開きこちらを見ている女子会尋問長のマキが笑顔で見ていたからだ。
「アニスちゃん、わかってるわよねええッ!」 ニコリ
「ぎゃああッ!またあの悪魔達の宴が始まるうッ!マシューのバカアアアッ!」
「さ、アニスちゃん、こちらへ。みんなとお話しをしましょう♡」ニコニコッ!
ソアラが満面の笑みを浮かべ、アニスをエスコートする。
「いやいやいやッ、いやダアァァーッ! マ、マシュー....!」
アニスがマシューを見るとマシューは両手を合わせていた。
「すまん、アニス、こればかりは俺もどうにもならん。頑張れよ!」
「あ、あいつ、何拝んでんだよ。ピンチだよ、私ピンチなのわかる!」
「ん、わかる。行って来い!」
「何私の口調を真似してんだあ!早くこの... へッ⁉」
「問答無用ッ!馬車へ連行ッ!」
「わ〜んッ!まただ、またッむぐぐウググッ‼︎」
女性陣に拘束さて女性専用のに馬車の中にアニスは消えていった。数時間後町につき、門の前でアニスは解放された。再びやつれた表情で。
「あはは...人権ないじゃん...」
いつも読んでくださりありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。