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第33話 野営地の少女達2

ー野営地ー


アニスはテント内にいた、この野営専用テントはアニスの自作である。見た目は小型の普通のテントなのだが、中は空間魔法が施され、5〜6人くらいが余裕で住めるくらいの広さと設備が整っていた。リビング、キッチン、寝室、浴室、トイレ、すでに一軒の家状態である。アニスは先程の行動の後、浴室の湯槽に入り自分を落ち着かせていた。 チャッポン!


「ふう〜、何か変だよなあこの身体、何であんな感情や行動が現れるんだ? ん〜、考えればマシューに会ってからか? この身体は確かエレンディアがこの世界用に作ったって言ってたよなあ。...あ、そうか、元々この身体には本来、入るはずの人格があったのではないか? そこへ、その人格が現れる前にわたしが入って今のアニスがいる。 まさか....本来の、この身体の持ち主の人格が現れ始めている? 多分これ迄の事もそれで辻褄が合ってくる、しばらくは様子見かな」


アニスは浴室から出て衣服を着た後、少し濡れている髪の毛を乾かしていた時、外から声がかかってきた。


「アニスちゃん、今いい?」


マキの声が聞こえたので、アニスはそのままテントから出た。そこにはマキとソアラが心配そうにしていた。


「うん、大丈夫だよ。ちょっとやりすぎちゃったかな」 


「ううん、ちょっと怖かった けどいい薬になったんじゃあない。ウチの男共もいい気味よ!」


「そうそう、いい気味ってアニスちゃん? 何で髪濡れてるの? しかも良い香りッ!」


「え、本当だあ、良い香り....アニスちゃん....正直に答えて、何してたの?」


マキが顔は笑っているが目が笑っていない表情でアニスに近づく。アニスは正直に答えた。


「気分直しにお風呂に入ってました」


「「お風呂ッッ‼︎」」 ガバッ!


「ア、アニスちゃん、何処にお風呂が有るの!答えて!答えなさいッ!」


「そ、そうよ!教えてッ!教えてくれないともう絶交だからねッ!」


2人は目を見開き肉食獣のようにアニスに問い詰める。


「ぜ、絶交もなにも、さっき友達になったばかりじゃないですかあ」


「それとこれとは別ッ!女の子にとってこれは、最重要事項なんです!さあ吐きなさい!アニスちゃんッ!お風呂はどこッ!」


「そうです、さあどこッ!」


アニスはマシューにも明かしていない、自分のテントの秘密を2人に明かした。

(女の子、怖ええ)


「このテントの中です。入りますか?お風呂」


「こ、このテントの中..いやアニスちゃんならありえる。入りますッ!お風呂入りたいッ!」


「わ、私も入りたいです!」


「で、ではついてきてください。お風呂に案内します」


「「やったああッ! アニスちゃんありがとう‼︎」」


アニスは2人をテントの中に案内する、最初は小さいテントの中なんてと思っていた2人だったが、中に入って目を見開いて驚いた。外の外見とは違い中は物凄く広い空間だったからだ。


「え〜ッと、ここがリビングでこっちがキッチン、奥がトイレでその隣があ...」


「「お風呂ねえっっ!」」 ダダッ!


2人はアニスが最後まで言う前に、お風呂のある部屋へ叫びながら駆けて行った。とびらを開け、中の湯槽の温かい湯を見て2人は叫ぶ。


「「お風呂だあああ」」 バンザーイ!


「アニスちゃん、今、今からすぐ入っていい?」


もう、餌を目の前にした腹ペコのネコのようにウズウズして聞いてきた。


「いいで....」


「「入りま〜す」」 ババッ!


アニスの返事途中にもう宣言して、いきなり服を脱ぎすて、2人は浴室に入っていった。

ざばアアアッッッーー


「あ〜、すごいあったかいお湯う〜ッ!」


「気持ちいい〜...とろけそうですう〜」


アニスは2人の服を拾い畳もうとしたが、よく見るとだいぶ服も汚れ痛んでいた。カケツギやアテ布、ほつれもあった。下着もやはり着古している。アニスは2人がお風呂から上がる前に、創造魔法を使って服の再生と新しい下着を作って用意した。本当はもっと着飾りたい年ごろなのに、服に回すほどまだ稼ぎがないのだ。そう思いアニスは冒険者の実情を見た。


「アニスちゃん、この洗剤使っていい?」


マキがボトルに入っているシャンプーとリンス、それとボディーソープをさして、アニスに使用許可をいってきた。


「いいですよ、使ってください」


「ありがとう!」


浴室では2人が『キャッキャッ』言いながら洗いあっていたようだ。しばらくして、満足したのか2人が浴室から出てきた。


「はああ、生き返ったあ〜」 ホカホカ....


「私もです、気持ちよかったあ〜」 ポカポカ....


湯上がりに2人が呆け気味に歩いてきて自分たちの服を探す。


「あれ、私達の服、どこかしら?」


「あれえ、本当だあ、ないい〜」


2人の前にアニスが先程の服を彼女達に渡した。


「はい、これきてね」


アニスは2人に新しい下着を1人3セットと再生した服を出した。


「え、アニスちゃん?これって、新品の下着じゃあ、それに服も新品みたい!」


「本当だ、しかもこの下着、すごくかわいい!」


「いいの?アニスちゃん。私たちがこれをもらっても?」


「ん、いいです。女の子なんですから、下着もきれいな方がいいですよね」


「「ありがとうッ! 大切に着るね!」」


2人はそれぞれの服を着て満面の笑みを浮かべていた。そしてテントを出ようとした時、アニスが一言。


「パーティーのみんなもお風呂に入れてあげようかな?」


そう言うとマキとソアラの2人がお互いを見つめあったかと思うと、同時にうなづきアニスに言う。


「「それはダメえ‼」」


「え、なぜですか?」


「アニスちゃん、このお風呂は女の子だけの秘密です!」


「んッ!んッ!」


マキの言葉にソアラがうなづく。


「秘密ですか?」


「そう、秘密ですッ! あんな男どもに、この素晴らしいお風呂を汚されてなるものですかッ!」


「そうです!あいつらが知ったら、この中に入り浸り、お風呂なんかぐちゃぐちゃに使うにきまってます」


「だから、ぜええったいに内緒の秘密です!アニスちゃん!」


「は、はあ、わかりました。そうですね、ぐちゃぐちゃはちょっと..」


と言うことでお風呂は少女たちの秘密事項になった。

その頃、商人達の野営場所ではアニスの魔法の効果が切れて、マシューが疲労困憊で焚き火の前にいた。自分をおそったあの 黒い悪魔達 は姿を消し、これが魔法の仕業と気がつくと自分達のテントの方を見る。そこには、アニス達3人の姿が見えた。


「し、しまったあああッ! アニスを怒らせちまったあ!」


半裸のマシューは頭を両手で抱え込み、その場にしゃがみ込んだ。


「(不味い不味い!必ッ状に不味いぞおお! どうする?どうする俺ッ‼︎)ダアアアッ!」


ただ雄叫びが上がるマシューであった。そこへ『エンジェルベル』のマシュー達が声をかけてくる。


「マ、マシューさん、凄かったですね今の、何だったんですか今のあれ?それに急に大声をあげて、何か知ってるんですか?」


「俺は、アニスを怒らせちまったんだよ!」


「アニスさん?..あ〜、あのすっごく可愛い女の子ですか? 彼女いいですよねええ!」


「はああッ!お前何言ってんの?」


「え、だって彼女、綺麗で可愛いし、スタイルも抜群じゃあないですか。俺、彼女を口説いていいですか?」


「お前、俺の前でよく言えるなあ、そのセリフ。 ダメに決まってんだろうそんなの、ダメだ!」


「なぜですってまさか、彼女、マシューさんの恋人ですか?」


マシューは顔を赤らめて反論する。


「ち、ちげえーよッ! 俺はアイツの連れだ、パートナーだッ! だから許可できねえ!」


「どうしたら許可がもらえるんですか?」


「諦めん奴だなあお前は、じゃあ俺より強かったら許可してやるッ!」


「え〜ッ! そんなの無理じゃあないですかあ、僕はまだ銅等級トールになったばかりなんですよ」


「じゃあ諦めな!お前にアニスは似合わねえぜ。実力が違いすぎる」


「え、でも彼女も銅等級ですよね?歳も16歳って言ってたし僕とそう変わらなじゃあないですかあ?」


「アニスは強えぜえッ!等級は銅だが中身はギンギンの白金等級だ。無理だよッ!」


「は、白金等級⁉︎ またまた冗談を、あんな可愛い子がそんなに強い訳ないじゃないですか。あ、もしかして、僕みたいな有望のある男を近づけない為の、言い訳ですか?ダメですよ、恋愛は自由なんですから」


「はああ、もう好きにしろ。多分断られるからな!」


「お、許可が出た!マシューさんありがとうございます。では早速...」


『エンジェルベル』のマシューは嬉々として、アニス達の方へ走っていった。


「ま、アイツがどうなろうと知ったこちゃあない。それよりどうやってアニスに謝ろう?それが重大だあ」


マシューはまた考え込んだ。もう1人のマシューは、鼻息荒く何も考えていなかった。そしてアニス達の前に来ていきなり告白する。


「ア、アニスさん、僕と結婚して下さいッ!」


前の方で爆裂音と光が輝く、考え込んでいたマシューが顔を上げてアニス達の方を見ると、そこには火炎魔法の餌食なっているもう1人のマシューがいた。それと同時に彼の悲鳴がこだまする。


「ぎゃああああああああーーー!」


それを見て、マシューは一言。


「だよなああ......アニスだからしょうがない」


さらに頭を抱えるマシューであった。


次回も出来次第投稿します。

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