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第32話 野営地の少女達

ー野営地ー


野盗達に襲われた商人と冒険者達と共に、アニスとマシューは野営準備をしていた。


「アニス、ここいらでいいか?」


「ええ、マシューあとカマドをお願い」


「おう、任せとけ」


マシューが野営用のテントを張ってカマドの制作に取り掛かる。その間アニスは夕食の準備をしていた。


「コレでよしっと、あとは薪だな。アニスッ!ちょっと薪を取ってくるわ!」


「うん、頼みますね」 ニコッ!


マシューは張り切って森の中へ入って行った。今まで普段は無表情で口数に少ない男だったが、ここ数日アニスと行動を共にする様になってから、表情にも色々変化があり、また口数も増えていった。特にアニスと会話している時のマシューは、優しい笑顔をしていた。今、アニスは青みのかかった銀髪をポニーテールにし、白いエプロンをしてストレージから出した食材を神器のミドルダガー刻んでいた。


トントントントン、ザクッザクッ!ショリショリ....


「ん、野菜の下処理終了と。次はお肉だけど、マシューは大食いだからなあ..大きめにするか」


ちょうど、マシューが森から薪を持ってきてカマドに火をつけた。中鍋に水を入れ沸くのを待つ、その間に肉の下処理をし始めた。そこまでやるとマシューにはすることが無いので、アニスはマシューに商人達から 皇国首都の話を聞いてきてもらうことにした。


「マシュー、これ持って商人達から首都パルメザンの話、聞いてきてくれる?」


「おおっ!いいぜッて、お前コレ酒かッ⁉︎」


「ん、そうだが、ダメか?」


「いや、ダメじゃあないが、いいのかこんな高そうな酒」


「ん、いい! だからよろしくね」


「おしっ! しっかり聞いてきてやるぜえ!」


水を得た魚のように、マシューは商人達の方へ歩いていった。

前に街で仕入れておいた水牛の肉の大塊から、マシューが食べそうな大きさを切り取り、まな板の上で筋切りをしている時、横からアニスに声をかけて来た者達がいた。


「あのう、ちょっといいですか?」


「ん、何でしょうか」 クルッ


ダガーを片手にアニスは横を見る。その仕草は可愛い新妻が調理中に呼ばれ、ポニーテールのシッポを軽く振りながら横を見る、何とも可愛い仕草であった。アニスに声をかけた者も一瞬見惚れたいた。


「あ、調理中にすみません、私マキと言います、この子がソアラ。私達『エンジェルベル』のメンバーです」


「ああ、さっきの、私はアニスですよろしくね、ケガはもういいんですか?」


「はい、もう大丈夫です」


「ん、良かったです、それでなんの御用でしょうか?」


「アニスさん、実は私達..あなたと友達になりたいんです、いいですか?」


「え、友達ですか?」


「あのう、ダメでしょうか?」


「いいですよ!友達です」


「「ありがとう!これからよろしくね‼︎」」


2人は余程嬉しかったのか、お礼の言葉を言いながらアニスに抱きついてきた。


「なかなか冒険者同士で、おんなじ年の子がいなかったの!だからやっとアニスちゃんを見つけた時嬉しかった」


冒険者のマキがアニスの胸に顔を埋めて語った。アニスはマキのあたまをそっと撫で2人に語りかけた。


「辛かったんですね!」


この一言で2人はアニスに抱きつきながら泣いた。冒険者を続けていくのに、男女で役割がだいぶ違う。男はもっぱら戦闘中心だが、女は戦闘になると遊撃や偵察、後方支援、野営に入れば男は飲み食いするだけで食事の支度などは女がする。女の冒険者は結構負担が大きい、だから冒険者パーティーの女性比率が低くなるのだ。彼女達もおそらく、日頃から負担が大きくなってきていたのであろう。アニスが彼女達をよく観察すると、髪の毛は艶がなく、肌も乾燥気味で腕や足には切り傷の痕や打撲痕が多数見られた。それでも人前では笑って過ごす、女の子としては辛いはずがない。


「大丈夫ですか?ほらここに座って落ち着きましょう」


アニスは2人を落ち着かせるため、カマドの近くに用意した丸太の椅子に座らせ、2人に紅茶をすすめた。2人は紅茶を飲み干すと落ち着いたのか、アニスにしゃべり始めた。


「ありがとうアニスちゃん、泣いたらスッキリしたわ」


「私も、こんなに泣いたの久しぶり」


「そう、ならよかった。でも辛くなったら何処かで息抜きも必要だよ」


「うん、でも私らの男どもは 本っとうに戦闘バカばっかりだからダメね」


「あ、それ私も思ってた。タロスはすけべだし、ダニーは体力バカ、マシューに至っては自惚れやだね」


「そうそう、マシューね。一応リーダーやってるけどねえ、自分お力量がまだわかってないのよあの人は」


いきなりガールズトークが始まり、アニスもついていくのがやっとであった。


「調理の続きしてもいいかな?」


アニスが問うと彼女達がそれに興味を持ち出した。


「あ、ごめんなさいって、やっぱりアニスちゃんが作るんだ」


「ん、まあ私が好きで作ってるから気にしないかな」


「ダメよ! 男なんて一度甘いこと覚えると、な〜んにもしないんだから」


「そうか、でも私があの人に尽くしたいから。それに応えてくれるから...」

 (あれ、何でこんな感情が湧くんだ?それに言葉までなぜ?)


「ん〜っもう!アニスちゃんは優しすぎってか..もしかしてアニスちゃん...」


「え、そうなのアニスちゃん! それでこっちのマシューさんとは何処までいったの?」


「コラ!ソアラ、いきなり直球の質問したらアニスちゃんが困るでしょ! ねえ!って」


アニスは顔を真っ赤にして、えッ‼︎ と言う表情をしていた。


「「あ、直球すぎた!」」


と2人同時に同じセリフを言った。アニスはそのセリフを聞いて自然と態度に出る。


「もうっ!知らないッ!」 フワッ

 (まただ、何で恥ずかしがるんだ?)


なぜか、爽やかな風が吹く。アニスの感情に作用されての現象だった。


「すごい、こんな仕草ができる人だったんだ」


「アニスちゃん、なんか かわいい」


「も 、もう!料理しちゃいますから、からかわないでください」


「「は〜い」」


アニスは肉を調理し始める、筋切りを終わり、塩と胡椒で下味をつけた。


「アニスちゃん、調理って何を作るの?」


「ん〜、水牛肉のソテーと野菜サラダ、あとコンソメスープと白パンかな♡」


「「お、おいしそおおッ!」」 ウルウル


2人がアニスをじっと見て同じ事ををまた言った。口が半開きになり、マキに至っては口から涎が出る勢いだった。それを見たアニスは、コレも何かの縁と思い2人を誘う。


「よ、よかったら、食べていく?」 ニコ


「「いいのッ⁉︎」」 バッ!


「ええ、構いません、友達だから」 パアアッ!


「「ありがとう!アニスちゃ〜ん!」」 ガバッ‼︎


2人は再びアニスに抱きつき、食事の誘いのお礼を言った。アニスは手際よく3人分の肉料理を作り、ストレージポーチから、簡易テーブルと椅子を出し、できた料理を並べていく。数分後3人はテーブルにつき夕食を始めた。


「お、美味しいい! 何このお肉ッ! こんなの食べた事ない!」


「私も、それに白パン! こんなに柔らかいんだあ、初めて食べたよ」


「ま、まあゆっくり食べてね」


アニスは2人が夢中になって食べている間に、その場から、相棒のマシューを探した。そして、商人の野営地にそれはいた。焚火の周りを半裸になり、その腕に商人の娘であろう少女と赤い顔をして踊るマシューがいて、そのほほに、キスマークまであった。そして、その周りに『エンジェルベル』の男連中も、酒を飲み一緒に踊っていた。それを見てアニスが動く、何やらオーラのようなものを身にまとっていた。


「フフフッ...なるほど、確かに彼女達の言う通りだ」

 (あれ、なんかイラついてるぞこの体、でもわかるぞ、その気持ち)


その尋常でない様子を見て食事中のマキたちが声をかける。


「ど、どうしたのかなあ~ ア、ニ、ス、ちゃん?」


「マ、マキッ! ちょっとアレッ!」


ソアラが指さした方をマキは見た。その瞬間2人は顔をこわばせてアニスを見た。バッ!


「ヒィィィ――ッ‼  ア、アニスちゃん! 気を静めてッ! あれ、お酒が入ってるから、本気じゃあないと思うからあーーッ‼」


しかしアニスはさらに叫んだ。


「アーッハハハッ!『閃光のバカちん』ッ!そこがお前の墓場だああ!」


「なになになにっ!アニスちゃん何するのおおッ!」


「究極嫌がらせ闇魔法!」


「「へ⁉なにそれええッ!」」


「《ブラァーック.レイィーンッ》‼」 パアンッッ!


するとマシューの頭上に黒い魔方陣ができ、世にも恐ろしいものが彼に降ってきた。

ザッバアァァァ―――ッ‼ ダダダダババババッ! 次の瞬間、マシューが叫んだ。


「ぎゃあああああ―――ッ! ゴキッ!だああぁ! だめだだめっだあー!ああ..」


マシューから、断末魔に近い叫び声が聞こえる。それを聞いてアニスは一言。


「ふんッ!」


そのままテントの中に消えていった。その場に残った『エンジェルベル』の2人は震えていた。


「あれってまさか、ゴキブリの雨ぇー⁉」


「イ、イヤァァ―ッ! 私、絶対嫌だからねあんなのオオッ!」


 2人はアニスを怒らせてはいけないと誓った。



次回もでき次第投稿します。

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