第306話 翻弄する シナリオNo.2012
ーヤマト皇国国防軍 第一機動艦隊旗艦「ヒリュウ」甲板上ー
ヒイイインンンンンッ シュバアアアッッ! ガシュウウウウンンッ! ピ ピ
『マスター、母艦「ヒリュウ」甲板上に着艦完了、機体は僚機とともに着座姿勢、安定しました』 ピッ
「よしッ!」 カチャカチャ カチ ピピ
バクンバクン ザッ ウィイイイイインン カシュン ダッ タタタ
「レオン隊長ーッ!」 バッ タタタ
伊豆諸島 八丈島上空に突如現れた大きな渦を巻く黒雲の穴から反乱軍遊撃艦隊が現れた始めた頃、第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」の甲板上に、3機のヤマト皇国国防軍の修練機、ブレードナイト「ZERO 11型 J」が着艦した。 搭乗者はアトランティア帝国三英雄のアラン中尉達で、着艦と同時に操縦席から急いで降り、駆け出していった。
「隊長ッ! レオン隊長ーッ!」 タタタ フリフリ
「うん? あれは… アランかッ!(アイツら、なぜ他国の機体に乗ってるんだ?)」 ピッ
バクンバクン サッ
アラン中尉は、正規空母「ヒリュウ」の甲板上に着艦した青龍隊隊長 井伊直政中佐の機体、ブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H001」と同時に降り立っていたレオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザ D型 FARアウディ」に向かって手を振り駆け寄っていった。 レオハルト中佐もアラン中尉に気付き、操縦席のハッチを開けて中からアラン中尉に手を上げ応えた。
「隊長! よくぞご無事で! 心配してましたよ!」 タタタ ザッ! サッ
「おう! すまん、心配かけたなアラン」 二ッ
タタタタタ
「「 隊長〜ッ! 」」 フリフリ
アラン中尉に遅れて続き、同じく英雄のマイロ中尉とジェシ中尉の2人も機体から降り、駆け寄ってきた。
「マイロとジェシカか!(ほう… しばらく見ない間に全員、さらに力をつけたようだな)」 フ…
レオハルト中佐の眼には、アラン、マイロ、ジェシカの3人が纏う魔力の量と色が見え、彼らが以前よりさらに強くなっていることが分かった。
「隊長、心配してたんですよッ!」
「本当にもう! 今度からはどこにいるかぐらい連絡してください! いいですね⁉︎ 隊長!」 バッ
「ははは、すまんな2人とも、ちょっと連絡できない状況だったんでな」 ポリポリ
「それよりもレオン隊長、井伊隊長の方は大丈夫ですか?」
「うん? 井伊隊長? ああ… この機体のライナーか…って、隊長ッ⁉︎ この機体のライナーが今はお前達の隊長なのかッ⁉︎ そもそもお前ら、なぜ他国の機体に乗ってる⁉︎ 帝国から皇国に寝返ったのかッ⁉︎」 バッ
「わあッ! ちッ、違いますッ! お、落ち着いてくださいレオン隊長! 臨時ですッ! 臨時の隊長なんです!」 ブンブンッ!
「そ、そうです! 私たちの隊長は今でもレオン隊長だけですッ! 帝国から皇国に寝返ってなどしてませんッ!」 ササッ!
「うん? アラン、どういうことだ?」
「それは… なんと言えば… 」 オロオロ
アラン中尉は返答に困っていた。 臨時とは言え、直属の上官であり、隊長のレオハルト中佐の許可もなく、成り行きとは言え、アトランティア帝国の軍人で国の代表にも匹敵する存在の3人が他国の内乱に、しかも他国のブレードナイトに乗り込み戦闘に参加したのである。 その言い訳を必死に考えていた。
「そ、そうだ、ジェシカ! 説明を!」 サッ
「ええッ⁉︎ え〜ッと、え〜ッと…」 オロオロ
「アラン、ジェシカ、僕が説明します」 スッ
「「 マイロ! 」」 パアアッ
「よし、マイロ、説明してくれるか?」
「はい隊長、実は……」 ササ…
三英雄の1人、マイロ中尉はこれまでの経緯を簡潔に、彼らの隊長であるレオハルト中佐に説明した。
「ふむ… なるほどな、人手不足で自分たちの身を守る為にやむをえずか… 事情は分かった、アラン心配しなくてもいい、このことは俺がなんとかする!」 バッ
「では私たち…」 サッ
「ああ、国の上層部には俺からお咎めなきように進言しておく、どうせ アニスも関わってんだろ?」 ニッ
「ええっと… まあ…」 はは…
「まったく… それとアラン、井伊隊長の機体は機能停止して止まっているだけだ。 中にいるライナーの井伊隊長には影響がない、無傷で無事なはずだ」 二ッ
「そうですか、よかった…」 ホ…
ピコ ビーー!
『Lst. レオン、上空の異常空間内中心部より出現した艦隊からブレードナイトが出撃、艦隊と共にこの艦艇、空母「ヒリュウ」に向け降下を開始、どうやらこの艦艇が標的のようです』 ピッ
「ふむ… アウディ、ブレードナイトは何機出た?」
『Rog. 艦隊直掩用の艦載機ですね、総数36機を確認』 ピッ
「艦載機が36機か… うん?」 クル
ドオオオオオオオーーーーーッ! シュバアアアアアーーーッ!
愛機のアウディから敵機の機数を聞いたレオンハルト中佐の耳に、激しく急上昇するスラスター音が聞こえ、振り向くとそこには2番艦の正規空母「アカギ」より緊急発艦し、上空へと急上昇していく「加藤『HAYABUSA』高速戦闘集団」10機の姿が見えた。
「ほう… 反応が早い、いい判断だ。 しかもあの10機… 相当な手練揃いだな」 ジイイ…
10機の高速戦闘機、ブレードナイト「HAYABUSA 11型 KI-43Ⅲ」は白線を弾きながら遥か上空の敵艦隊に向けて飛んでいった。
「よし、アラン! 俺たちも行くぞ! お前たちが使っていたあの機体だが、すぐに出せそうかッ⁉︎」 カチカチ ピ
「…… 隊長、一緒に出撃したいのは山々なのですが…」
「うん? どうしたアラン? 機体に何か不備でもあったのか?」 カチャカチャ ピタ
「マイロ、ジェシカ、2人はどう思う?」
「そうねえ…… ん〜ん、あの機体ではこれ以上はもう無理ね! 一度乗ってみてわかったわ。 あの機体は偵察任務程度までの機体よ。 正規の戦闘機ならよかったけど…」 フリフリ
「同感ですね、僕たちが全力出撃で本気を出したらきっと、あの機体では…」 サッ
「やっぱりそうだよな… 隊長、残念ですが自分たちが乗っていた機体ですが、武器弾薬とエーテルの残量がもう殆どありません。 まあそれ以前に、あの機体は修練機なんです。 自分たちの魔力出力量と機体操作に機体とジェネレーターの出力が追いついていなく、ややブレイキングオーバー気味で、このままですと機能停止、もしくは空中自己崩壊し分解してしまいます」 サッ
「そうよね… 私たち3人は魔力を抑えてあの機体の性能ギリギリで制御、操縦してたんですけど、それもそろそろ限界、全力での高速格闘戦闘ともなると、正規の戦闘機でもないあの機体ではそう長く持たない… 隊長、やはり出撃は不可能だと進言します」 フリフリ
英雄の3人は、機体の性能と限界を一度乗っただけで全てを見極めていた。 扱う機体が任務に会うのか? 作戦に支障をきたさないか? 可能は可能、不可能は不可能とはっきり答える。 機体の限界を見極め、自分自身と仲間を守り任務を遂行する。 これは、卓越した高位の熟練ライナーなら当然のことであった。
「そうか… そうだな…(確かに、あの機体ではアランたちの能力に耐えられないか…)」 ジイイ…
レオハルト中佐の目は、人だけでなく、大まかではあるがブレードナイトの性能や状態までが見えていた。 これはアニスと出会った後、アニスから知らないうちに授かり得た彼の、レオハルト中佐の固有スキル、一種の鑑定眼であった。
「残念です。 ここに自分の愛機があれば、隊長について行くのですが…」 ギュッ
「ふむ……(確か、アランたちの機体は『ライデン』の格納庫に置いたままだったな)」 むう…
「隊長、私たちはどうしましょうか?」
「そうだな…」 むうう…
レオハルト中佐と英雄の3人であるアラン、マイロ、ジェシカが再会をしていたところに、青みがかった白銀髪を靡かせた少女が歩き近づいて来た。
てくてくてく ザッ ファサファサ…
「レオン、どうかしたの?」 ファサ…
「アニスッ!」 バッ!
「「「 アニスちゃん(さん)ッ! 」」」 ババッ!
「ん?」
「い、いやアニス、大したことじゃない! そうだアニス、勇者の2人はどうした? 姿が見えないようだが…」 キョロキョロ
「ん、サトシとスズカのこと? 2人ならあそこだよ」 スッ
アニスは正規空母「ヒリュウ」の甲板上にある、艦内に入る隔壁扉を指差した。 そこには艦内から窓を通してこちらの様子を伺っている勇者2人の姿があった。
「艦内にいたか…」
「ん、2人には先に艦内に避難してもらったんだ… ここは危ないからね」 サッ
「そうか… 確かにそうだな、いくら勇者でも艦隊戦、しかもフォトン主砲弾や噴進弾が飛び交う戦場ともなれば何もできないだろうからな。 それがいいだろ」 うむ…
「それで? レオン、何かあったの?」 ん?
「うッ! な、何でもないぞ何でもない… アニスは心配しなくていいぞ、大丈夫だ」 ははは…
「ん〜ッ! レオンの嘘つき… 」 ジロ ファサファサ…
「「「 ッ!(うわあ〜… バレてる、アニスちゃん(さん)怒ってるよ…) 」」」 ビク
「レオン、嘘はよくないよ? アランたちが乗っていたブレードナイトが動かないから困ってるんだ。そうでしょ? 動かないなら私が動くように診てもいい?」 ニコ ファサッ
「なッ! ダメだッ!」 バッ
「ん?」
「アニス! お前は絶対にあの3機に触るんじゃないッ!」 スッ
「え〜 でも… ねえ… だって…」 う〜ん
「でももだってもじゃないッ! いいか? あの3機はヤマト皇国の機体だ! 俺らの国の機体じゃないんだ、他国の国の機体なんだぞ! おまえ、絶対アレに触るんじゃないぞ! いいなッ⁉︎」 があッ!
「あははは… でもレオン、ちょっとくらいは… ダメ?」 そお…
「触るな… ッ!」 ギン!
「んッ! わかりましたッ! レオンのけちんぼ」 ぷく…
「けちんぼって… 本当にわかったのか? アニス、お前が何気なく好意を持って触ると、どれも何らかの神秘的な力がそれに作用するんだ! それこそ俺には理解できねえ非常識な力がな!」 グッ
「あッ ひどいッ!」 ぷう…
「あ、いやすまん… 言い方が悪かったが、だからむやみやたらに触るんじゃないぞ! いいなッ⁉︎」 ジイイ
「ん、あの3機には触りません! 絶対に! 約束です!」 プイ ファサ…
「ああ… まあ、そう怒るな、怒るな! 可愛い顔が台無しだぞ、アニス」 ニイッ
「ッ!」 カアア…
「ははは! ではまた後でな、アニス!」 サッ!
「レオンもねッ!」 プン…
「「「 隊長! 」」」
「アラン、マイロ、ジェシカ! アニスを頼む! まあ、どのみち動かせる機体が無くてはどうにもならん! 今よりお前たちはアニスを護衛しながら、行動を共にしてくれ!」 カチャ タンタン ビコ ビコ! ピピ ピッ
「「「 了解! 」」」 ザザッ!
「よし… さてと、俺らも行くぞアウディ! 直ちに発艦だ!」 カチ バクンバクン ピッ ギュウッ! グッ
『Rog. 了解、アニスまた後で会いましょう』 ピッ ヴオン! ヒュウイイイイイインンン…
「うん、アウディも気をつけて、レオンをよろしくね」 ニコ
『Rog. アニス、仰せのままに!』 ピピ ビコビコ! ピッ
「おいおいアニス、俺はそんなにやわじゃねえぞ? お前も知ってるだろ?」 サッ!
「知らないッ!」 プイッ!
「ははは… やれやれ、怒らせちまったか… これは嫌われたかな…」 はは… ポリポリ…
『Lst. レオン、大丈夫ですよ!』 ピッ
「うん? そうなのか? アウディ」
『Rog. ええ、いいですかレオン? アニスはアレで、貴方のことが大好きなんです。 嫌われる事などあり得ませんよ』 ピッ
「そ、そうか… アニスは俺のことが大好きか… なら安心だ!」 ニイッ! ギュッ!
「アウディッ!」 ファサッ!
『Rej. おっと、これは失言でした。 アニスすみません』 ピッ
「もうッ! アウディのバカちんッ!」 バッ
「ははははッ! じゃあアニス、行ってくる」 サッ
「ん…… レオンも… 気をつけてね」 ボソ…
「うむッ!」 ニイッ! グイッ!
ヒイイイイイイイイインンンッ! ヴオン! ピピ ピ ピ
「「「 隊長! ご武運をッ! 」」」 ザッ!
「おう! 発艦ッ!」 グイイッ!
バウウウウウウウウーーーッ! シュバアアアアーーーーッ! ドオオオオオーーーッ!
レオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザ D型 FARアウディ」は、スラスターを全開にして急上昇していった。
ゴオオオオオオオオオオオーーー………
「ん、行ったね……… ふふふ…」 ニヤ ファサファサ…
「ア、アニスちゃん?」 ソ…
「んッ! レオンの事はアウディにまかせとけば大丈夫、安心だね! じゃあ私も始めようかな…」 ニコ クルッ! てくてく
アニスは、急上昇していくレオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザ D型 FARアウディ」の姿を見た後、踵を返し歩き出した。
「「「 アニスちゃん(さん)⁉︎ 」」」
「まさか… レオン隊長の目を盗んでまた何かしようとしてません? はッ! もしかして私たちの乗っていたあの3機を… ダメですよ! 絶対にダメ! レオン隊長との約束でしょ?」 メッ
「ん? 約束? 心配しないでジェシカ、私は約束はちゃんと守ります。 だから… ん?」 クルッ ファサ…
その時、アニスたちの耳に、ブレードナイトの操縦席ハッチが開く音が聞こえ、アニスはその方向に振り向いた。
ピピ バクンバクン プシュウウ… ザッ
「ふうう、やっとハッチが開いたっぜ… いやあ、まいったまいった、ははは… まったく俺としたことが、とんだヘマをしちまったぜ」 ポリポリ
「ん? あれは…」 ファサ…
レオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザ D型 FARアウディ」が、正規空母「ヒリュウ」から再度発艦したそのすぐ後、甲板上に機能停止して止まっていたブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H001」の操縦席からハッチを開けて現れたのは、青龍隊隊長の井伊直政中佐だった。 彼は頭をかきながら操縦席から甲板上に降りてきた。
「「「 井伊隊長! 」」」 ザッ
「ん? いい? (いいってだれ? いや、あの顔、どこかで…)」 ハテ? ん〜…
「おう! アランたちか、すまんな!って、そこにいるのはアニスじゃないかッ! お前、なんでここにいるんだ?」 ザッ
「ん? ん〜?……… ああッ! 直政だッ!」 ビシ!
「ククク、覚えていてくれたか… 謁見の間以来だなアニス!」 ニヤ
「う、うん… また会うとは思ってもみなかったよ」 はあ〜 フリフリ
「アニスちゃん、井伊隊長のこと知ってるの?」 ソ…
「ん、ちょっとね… 皇居の謁見の間で以前、剣を交えての模擬戦をしたんだ」 あはは…
「「「 模擬戦ッ⁉︎ 井伊隊長とアニスちゃん(さん)がッ⁉︎ 」」」 ババッ
「ん!」 コクン
「そ、それで、どっちが…」
「ええっとねえ… あの時は確か…」 ん〜…
「俺の完敗だよ。 剣は折られるは、技も魔法も見切られ弾かれるはで… コテンパンにやられたんだよッ! 手も足も出なかったぜ、クソッ!」 むうう!
「あははは、そうだっけ?」 ニコニコ
「「「 (わあああ…… まあ、そうだよね… ) 」」」 うんうん
英雄の3人は、アニスが井伊直政中佐を笑顔で完膚なきまで叩きのめしている姿を想像し、思い浮かべていた。
「ええいッ! こんな事態でなければもう一戦、アニス! お前と模擬戦のやり直しをしたいところだがそうも言ってられんッ! 今は反乱軍共との戦の真最中だからな!」 クル ジイイ…
ゴオオオオ…… キラ キラ…
そう言って、井伊直政中佐は上空を見た。 そこには急上昇していくレオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザ D型 FARアウディ」の姿と、そのはるか先の上空に見え始めた艦隊と数十機のブレードナイトの光点が見えていた。
「チッ 機体が完全なら俺だって…」 ガンッ! ググッ!
井伊直政中佐は、もう完全に機能停止して動かなくなった「SHIDENKAI 21型 H001」の足を叩いた。
「ん? なんだ、直政のも動かないの?」 てくてく
「まあな! 愛機とはここまでのようだ、完全に逝っちまった。 もう、何やっても動かねえ… まあ実際、ここまでよく俺と共に闘ってくれたさ… いい愛機だったよ、感謝するぜ」 スリスリ
「ん〜… そうか、もう動かないんだ…」 スッ
「アニスちゃん!」
「ん? なにジェシカ?」 クル ファサ…
「さっき、レオン隊長に『ブレードナイトには触るな』って言われたんだよね? まさか井伊隊長の機体に… だめですよッ! レオン隊長と約束したんでしょッ⁉︎ 『絶対に触るな』って約束!」 バッ
「ん、ジェシカ〜… レオンとの約束はね、『あの3機には触るな』なんだよ? 直政の機体に触るなとは約束していない、だったらアレはアニちゃんの好きにして良いんだ、違うかな?」 ふふ… ニコ
「いやいやいや、アニスさん! 隊長の言う『触るな』という約束は…」
「大丈夫だよ、約束は『あの3機に触るな』です! 他の機体に触って診るのはOK、アニちゃんが直政のに触るのは正義なの! わかる? ギリギリセーフです!」 ニコ ファサ…
「「「 はッ? はああッ⁉︎ アウトだよッ‼︎ 」」」 バッ
「ん? アウト? でもねえ… レオンの言い方を変えれば、『あの3機以外は触ろうがいじって診ようが、何をしてもいいぞ、俺は何も知らないからな』って事なんじゃないの?」 うふッ てくてく
「「「 うわああッ! ダメだあッ! 」」」 バタバタ
「この人に理屈は通じないッ! 全っぜん理解してないッ!」 ブンブン
「絶対に触る! 触るつもりなんだあッ!」 バッ
「アニスちゃんだめッ! レオン隊長に怒られるわよ!」 わわわ!
「それはそれ、触ったもん勝ちいい! 大丈夫! ちょっと触って診るだけだよ? ねッ 直政?」 ファサ ニコニコ てくてく
「お、俺に振るな! っと言うか、アニスがなんかやばそうだぞ! おいお前らッ! アレ大丈夫なのかッ⁉︎」 サッ!
「えへへへ…」 てくてく
アニスは嬉々として、機能停止した井伊直政中佐の機体、ブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H001」に歩き近づいていった。
「いけない! アラン! アニスさんを止めてくださいッ!」 ババッ!
「そうよ! アニスちゃんにアレを触らせてはダメよ! 何としても阻止して!」 ササ!
「はへ? お、俺?」 バッ
「「 そうだ(よ)ッ! 」」
「わああッ!」 ダダダッ!
アランは一目散に、 アニスめがけて駆け出した。 しかし…
「あはは、えい!」 ピト タン!
その場にいる者の願い虚しく、アニスは井伊直政中佐の愛機、ブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H001」に手を触れた。 その瞬間、ブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H001」を中心に、眩い黄金の光が包み込んだ!
パアアアアアアーーーッ! シュゴオオオオオーーーッ!
「うおおッ! な、なんだこれはッ⁉︎ 眩しいッ!」 バッ ギュ!
「ああ… 遅かった… レオン隊長… すみません」 ガク…
「わ、私し〜らないッ!」 サッ
「ぼ、僕も… 2、抜〜けた! アラン、後はよろしくお願いしますね」 ニコ クル
「わああ! ずるいぞお前らッ! マイロ! ジェシカ〜ッ!」 わたわた…
「俺の愛機に何が… 」 ザッ…
シュゴオオオオーーーーッ! パリッ パリパリッ! ピシイッ!
「ん、さあ、起きて… 目を覚まし、動いてくれないかな… 」 ニコ ファサファサ シュワアアアーーッ!
アニスは機能停止して、まったく動くことのできないブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H001」に優しく話しかけた。 すると…
……… ピ…… ピピ… ヴオン… ピコ…
『私は……』 ピッ
「SHIDENKAI 21型 H001」の頭部にある目の部分、その瞳に再び光が宿った…
・
・
ーヤマト皇国領 伊豆諸島 八丈島上空ー
ヒイイイイイインンッ! シュバアアアアーーーッ! ゴオオオーーッ!
第一機動艦隊の遥か上空に、創造神ジオスのシナリオによる黒雲を形取った空間転移によって現れた反乱軍遊撃艦隊が出現と同時に護衛戦闘機隊を発艦して、正規空母「ヒリュウ」率いる第一機動艦隊に向けて奇襲攻撃を開始した。
それに対し第一機動艦隊からは、第一機動艦隊護衛軍の第1戦隊、護衛艦隊旗艦の軽巡航艦「キタカミ」を先頭に第17駆逐隊が迎撃のため急上昇していった。 同時に第一機動艦隊2番艦の正規空母「アカギ」より【加藤建夫】大尉が率いる高速戦闘集団、10機のブレードナイト「HAYABUSA 11型 KI-43Ⅲ」が緊急発艦して遥か上空へと迎撃の為に飛んでいった。
今、伊豆諸島 八丈島上空では、天帝卑弥呼を長と仰ぐ正規軍と、創造神ジオスによって操作された反乱軍とが衝突し、創造神ジオスのシナリオに従って激しい空中戦闘が始まっていた。
ギュワアアアーーーッ! シュンシュンッ! バババアアーーッ! ヴイン!
ドババババババッッ! シュンシュンッ! ビュンッ!
「ちッ! 奴ら正気かッ! 直掩機がいるのに対空砲を撃つなんざ狂気の沙汰じゃねえぞ! 自分の直掩機ごと俺たちを撃ち落とすつもりかッ⁉︎」 グイッ
ギュンッ! シュバアアアーーーーッ! シュバッバッバッ! ドオオオオッ!
「うッ! くそッ!」 グイッ!
激しい対空砲火の中を、加藤大尉は巧みに躱しながら反乱軍直掩戦闘機を追尾していた。
ズバババババババアアッ! ビュンビュン! ヒュンッ!
「その程度の対空射撃! 当たるかあッ!」 グイッ ギュウウ!
ピピピピ ビコ!
『マスター、目標を補足、照準固定しました!』 ピッ
「フッ! 命まではとらん! 悪いが戦闘力だけもらうッ!」 カチ!
操縦席内の照準器に収まる反乱軍直掩戦闘機、ブレードナイト「ZERO 22型 RAG」に加藤大尉は呟きトリガーを引いた。
ヴオオオオオオーーーッ! シュババババババーーーッ! ガンガンガン ビシイッ!
ドオオオオオンンンーーッ! シュバアアアーーーッ! バラバラバラ…
『マスター、敵機に命中! 敵機は中破、両腕を破壊損失、戦闘継続能力は0と推定、搭乗ライナーは無事と推測、敵機は落下中!』 ピッ
「よし! 他の者は… 全員無事の様だな」 フ……
加藤大尉は敵機を撃墜した後に周囲を確認すると、加藤隊全ての「HAYABUSA 11型 KI-43Ⅲ」が大空を敵機と格闘戦をしながら白い尾を引き、対空砲を躱して次々と敵機を撃墜し飛んでいるのを確認した。
「K001! 状況報告だ!」 グイ!
『はいマスター、現在、八丈島上空の戦闘空域全域に、高密度の魔素粒子の霧と高濃度のエーテル乱流の影響で全ての通信がロスト、霧の為、部隊間での通信は不可能、連携戦闘ができません。 原因は上空に拡大出現中の黒雲によるものと推測します。 現在、第1護衛戦隊が反乱軍艦隊と交戦状態には入りました』 ピッ
ドンドンドン! シュバッ バババババッ! ドオオン! ドオオン!
「…… 様子がおかしい… 第1護衛戦隊からの主砲攻撃に対し反乱軍艦隊からの砲撃がない、なぜだ?」 ジイイ…
加藤大尉の乗るブレードナイト「HAYABUSA 11型 K001」の操縦席前にある周囲情報モニターには、味方の第1護衛戦隊、軽重巡航艦「キタカミ」と随伴する第17駆逐隊の駆逐艦からの激しい砲撃に対し、反乱軍艦隊からは一撃も、砲撃がなされていなかった。
ー第1護衛戦隊旗艦 軽巡航艦「キタカミ」ー
ビイビイビイッ!
「1番2番、主砲発射ッ! 続いて4番5番、発射ッ!」 カチ!
ドンドンドンドンッ! シュババババーーッ! ドドオオオンンッ!
「重巡航艦「ナチ」に命中弾! 効果なし!」 ビコ!
「艦長! やはり本艦の主砲では歯が立ちません!」 バッ
「むう… さすが我が国の重巡、最強の防御壁だな… 本艦の15.5cmフォトン速射砲では効き目なしか…」 ググ…
ビーー! ピコ ピコ
「第17駆逐隊、戦列を離れます! 敵反乱軍艦隊に突入を開始! 空間魚雷戦に入りました!」 ピピ ビコビコ!
軽巡航艦「キタカミ」に随伴して来ていた第17駆逐隊が進路を変え、魚雷戦に入るために反乱軍遊撃艦隊に向けて接近していった。 必中射程距離に入った瞬間魚雷攻撃を開始した第17駆逐隊だったが、艦隊間距離が1000mを切った瞬間、反乱軍遊撃艦隊麾下の駆逐艦からも同じ様に空間魚雷の反撃が始まり、互いに激しい魚雷戦となった。
「第17駆逐隊一斉回頭! 反乱軍艦隊と同速度を維持、同航戦に入ります! 艦隊間距離1000mを切りましたッ! 1番艦『イソカゼ』魚雷発射! 続いて2番艦『タニカゼ』3番艦『ハマカゼ』4番艦『ウラカゼ』も魚雷発射!」 ババッ! ビピ!
ピ ピ ピ ビコ!
「命中! 敵軽巡航艦『ナガラ』中破炎上中、駆逐艦『ユウダチ』大破轟沈です!」 ビ ピコ!
ビーーーッ! ピピ ピコ!
「敵艦隊反撃を開始! 味方4番艦『ウラカゼ』に命中弾! 大破沈黙! 応答ありません! 3番艦『ハマカゼ』にも魚雷が命中被弾! 戦線を離脱します!」 バッ!
「むうう… 反乱軍艦隊、1000m以内に接近攻撃をすると反撃してくるのか?」
ビイビイ! ピコ!
「第17駆逐隊に攻撃が集中、被害甚大! 戦闘続行不能!」 ババッ!
「いかん! 発光信号! 直ちに戦線離脱を命令! 急げ!」 バッ
「はッ! 発光信号打ちます!」 カチカチ ピピ!
パパパパパッ パパッ パパパッ!
「第17駆逐隊反転! 戦闘空域を離脱します! 敵反乱軍艦隊攻撃を中止、進路そのまま、機動艦隊に向かって進撃中!」 ピッ!
「ク… このままでは… 空母が… 『ヒリュウ』と『アカギ』が…… 操舵手! 機関両舷全速! 転舵回頭! 敵旗艦『ナチ』に向けて全速前進だ! 空母を守れえ!」 バッ!
「はッ! 機関両舷全速、艦回頭160°転舵! 全速前進! 敵旗艦『ナチ』に向け突貫します!」 グイイッ!
ヒイイイイイイインンンッ! バウウウウウウウウーーーッ! シュバアアアアーーーッ!
「1000m以内に近づくな! 主砲、及び全VLS全基解放! 対艦噴進弾全弾発射! 目標敵旗艦 重巡航艦『ナチ』! 撃ちまくれえッ!」 ババッ!
バクンバクンバクンバクン ピッ! ドドドドドドドドドドドオオオオーー ドオオンッ!
第一護衛戦隊旗艦の軽巡航艦「キタカミ」は、全速力で降下中の反乱軍遊撃艦隊旗艦 重巡航艦「ナチ」に向けて接近していった。 「キタカミ」の持てる攻撃手段をフルに使い、重巡航艦「ナチ」に、ただ1艦で攻撃を集中、開始したが、重巡航艦「ナチ」は、その強力な防御力で全てを弾き、無効化しながら攻撃をしてくる軽巡航艦「キタカミ」には目もくれず、機動艦隊空母に向かって突き進んでいった。
ー加藤高速戦闘隊隊長機 ブレードナイト「HAYABUSA 11型 K001」ー
シュバアアアーーーー ピ ピ
「反乱軍艦隊、護衛戦隊の攻撃を無視してやがる… あくまでも空母が狙いということかッ!」 ギュッ
加藤大尉の操縦席前にある周囲情報モニターには、反乱軍遊撃艦隊旗艦の重巡航艦「ナチ」が迎撃に迎え撃ってきた第1護衛戦隊旗艦の軽巡航艦「キタカミ」の激しい砲撃や空間魚雷、VLS発射の対艦噴進弾を受けてもまったく反応せず、無傷のまま直下で航行している2隻の正規空母に向けて突進して行く様子が映っていた。
「くそッ! 対艦兵装の無い『HAYABUSA』じゃあどうにもならんッ!」 ダンッ!
ビイーーッ!
『マスター! 左舷後方に敵機!』 ピッ
「ちッ! このおおッ!」 グイイイッ!
バウウウウーーッ! ギュワアアーーッ! ゴオオオオーーッ! ヴオン!
『ピピピ ピコピコ テキヲホソク トリガーオープン』 ビコ!
ガシャン! ジャキン! ピッ ブオオオオオオオーーーッ! シュンシュンッ! シュババッ!
「うおおおーッ!」 グイッ! ギュウウッ! カチカチ ピッ
カシュンッ! ブオン ビシュウウッ! シュバアアアアアーーーッ! ブン!
加藤大尉の機体に後方から襲ってきた反乱軍艦載機、ブレードナイト「ZERO 22型 RAG」が200mmインパクトカノンで攻撃をしてきた。 無数に襲ってくる200mmインパクトカノンの炸裂弾を加藤大尉は巧みに躱し、武器セレクトスイッチを素早く押して、ブレードナイト用フォトンソード、ライトニングセイバーを起動した。
ギュワアアアアーーッ!
「おりゃあああッ!」 グイイッ! ブンッ!
ビシュウウウウッ! バチバチバチ! ザンッ! ズバアアッ! ダアアアンンンッ! バラバラ…
『マスター、敵機の撃墜を確認』 ピピ!
「はあはあ… すまんな、突然のことで手加減ができんかった…」 サッ
ヒュウウウ… ドオオン…… ゴウン ゴウン シュバアアアーー ゴゴゴゴ…
「むうう…… やはりおかしい… 空母との距離がもうそんなにないぞ? なぜ砲撃をしない? 重巡の主砲なら一撃必中の距離だぞ? どういうことだ?」 むうう…
奇襲で上空に現れた反乱軍遊撃艦隊、その旗艦である重巡航艦「ナチ」にとって、現れた時点から第一機動艦隊の空母はすでにその主砲の射程圏内であった。 だが、反乱軍遊撃艦隊は一切の主砲攻撃を未だ空母に対してしていない。 加藤大尉はその事に疑問を抱いていた。
ゴウンゴウン ゴゴゴゴ シュバアアアアーーーッ! ピピッ!
・
・
ー偽世界「アーク」某所、異空間内ー
ダンッ!
「どういう事だッ⁉︎ なぜ反乱軍艦隊は砲撃をしないッ⁉︎ シナリオでは既に機動艦隊の空母は2隻とも撃沈しているはずだ! どうなっているッ⁉︎」 ギュウウッ! バサバサ!
偽世界「アーク」のヤマト皇国の内戦状況を見ていた創造神ジオスは、下界で起きている今の状況に苛立ち、目の前にある、シナリオ制作実行板を叩き漆黒のマントを翻して怒鳴っていた。
「私のシナリオは完璧だったはず、なぜそれが実行されないッ⁉︎ 『ミッドガルドッ!』シナリオNo.2012の進捗状況を報告しろッ!」 バサッ
ブン…
『はい、ジオス様、申し訳ありません。 シナリオNo.2012の進捗状況に際してシステムに不備と該当空域内に未知の事象が発生し、シナリオNo.2012は本来のシナリオとは異なる方向へと、進行しはじめています』 ピッ
「不備? 不備だとッ⁉︎ それに未知の事象? 本来とは異なるとはいったい… まさかッ!」
『はい、シナリオNo.2012の該当地域内にて、シナリオに大きく作用する事象です。 シナリオNo.2012の進行工程が大きく変更され、進行中。 原因は不明』 ピピッ!
「うぐぐぐ… おのれアニスーッ! また貴様の仕業かああッ!」 バサッ!
ビイ ビイ ビイッ!
『現在、その事象と神界から、私「ミッドガルド」に侵蝕とシナリオNo.2012の筋書きに対して妨害とシナリオの破棄変更と改竄がありました。 当システムへの未知のプログラムが… 侵入… 侵食が進んで…お…… ブブ… ビビビー…』 ピピピ ビイーーッ!
『なんだ? 続きはどうした?『ミッドガルドッ!』」 ババッ!
『ブブ…… プツプツ… ピピ… ガー… ジ… ジオ… 申し… わけ… ん』 ピピッ
「むうッ! 『ミッドガルドッ!』どうした⁉︎ 返事をしろッ!」 カチャカチャカチャ ピッ!
ブウウウンン パパパパッ! ビコ!
「こ、これはッ! このプロコトルは… おのれえ… 最高神、女神【ダイアナーッ!】」 バサッ!
・
・
ー偽世界「アーク」神界ー
「だから、私は【フェリシア】ですッ! ってなんだろ? 創造神ジオスが、何処かで私の以前の名前を叫んだ気がするわ… 気のせいかしら? まあ、それはさておき… さあ創造神ジオス、あなたの思い通りにはさせません! どう? 私の『ユグドラシル』が放ったワクチンの威力は? あなたご自慢のシナリオは全て、こちらから書き換えさせてもらいます」 ニコ ふふふ…
神界世界と偽世界「アーク」の某所、異空間内とでは、偽世界「アーク」を管理する最高神、女神フェリシアと偽世界「アーク」の創造神ジオスとが、お互いが構築制作した制御システム同士での電子戦、偽世界「アーク」の制御の奪い合いとシナリオの制御修正改変が始まった。
ピコ ピコ タタタタタタタタタタ ビコビコ!
『修正ワクチン追加投与、弊害システム「ミッドガルド」進捗中のシナリオNo.2012の内容修正開始、チャプターNo.12、反乱軍遊撃艦隊からの第一機動艦隊への砲撃を中止…… 修正完了、砲撃停止に成功しました』 ポン
『 同時進行、敵対する弊害システム「ミッドガルド」にスパイ、及び侵蝕ワクチンを再送信、「ミッドガルド」に攻撃侵蝕中、同時進行にリカバリープログラムを起動、続いてチャプターNo.13……』 ピポン!
「頃合いかしら? 『ユグドラシル』、そのまま創造神ジオスのシナリオNo.2012を完全修正、書き換えとあちらのシナリオ制御進行システム、『ミッドガルド』に攻撃、完全停止をお願い」 サッ
ポン
『了解しました。 並行進行中のプログラムをアップデート、シナリオNo.2012の再構成と修正を開始、修正率53%、弊害システム「ミッドガルド」の攻性防壁に対し攻撃開始、攻撃対象に効果のある「リムーバープログラム」発動の許可をして下さい』 ポン!
「ええ、いいわ『ユグドラシル』、最高神、女神【フェリシア・ディア・ゼルト】が許可します。 弊害システム『ミッドガルド』に対して、『リムーバープログラム』の発動を命じます」 サッ
ポン ポン ピコ!
『認証コード、最高神、女神【フェリシア・ディア・ゼルト】確認しました。 これより、弊害システム「ミッドガルド」への完全破壊消去プログラム、「リムーバープログラム」発動します』 ピッ
ビュヒイイイインンッ! シュワアアアアアーーーッ!
「ふふふ、創造神ジオス、アニスちゃん程ではないけど、これであなたのシナリオはおしまいよ」 ニコ
シュワアアアアーーーー ブウウンンン ブウウンンン ピ ピ ピ!
・
・
ー偽世界「アーク」某所、異空間内ー
ビイーー ビイーー ビイーー
「おのれ、今度はなんだ⁉︎」 バサッ!
ピポ ピポ!
『ブ… ブブ… ジオス様… 「ミッドガルド」は現在…「ユグドラシル」の… こ… 攻撃を受け… 交戦中…』 ピッ
「なにッ⁉︎」
『こ… これ以上… シナリオの… 実行は… 不可能… これより… システ… の切り替え… 「ユグドラシル」に… 防御反撃… 開始… します』 ピッ
「うむ、『ミッドガルドッ!』、創造神【ジオス・ファクタ・アイン】が命ずる! 一時シナリオの進行を私が執り行おう! お前は現システムより分離して『ユグドラシル』を返り討ちにし、やつを完全停止させろ!」 バサ!
ポン!
『了解… しま… た… バックアップ… 起動… 分離に… た』 ピッ
「うむ、では行け『ミドガルドッ!』、女神のシステム『ユグドラシル』を完全破壊停止させよ!」 バサッ!
『了解しました。ジオス様、ご命令を実行いたします』 ピッ
ビヒュウウウウンンッ! シュゴオオオオオッ! ピピ ピコピコ ピピピピッ!
「これでいい… くそ! アニスの消去以前に最高神、女神と『ユグドラシル』を先に始末せねばならんとはな!」 ググ!
・
・
ー偽世界「アーク」制御管理システム内、電子電算、プログラム電脳世界ー
ブウウウンン ブウウウンン ピピッ ピコピコ タタタタ ピッピイーー ポン
『ジオス様がシナリオNo.2012を代行している間に事を済まさねば… 主目標、敵対システム「ユグドラシル」の完全破壊、停止を最優先事項とします』 ピッ
ここは偽世界「アーク」の事と成り行きの全てを統括し、定まった運命を実行、推進する制御管理システム、電子電算プログラムが至る所を駆け巡り、走らせる世界。 最高神、女神フェリシアはもとより、創造神ジオスでも関与しない電脳世界である。
その電脳世界に、一つの制御システムが光の玉となって進んでいた。 やがてそれは形を変え、15歳ほどの少女のアバターに姿を現した。 そのアバターは「ミッドガルド」、彼女は偽世界「アーク」の世界進行執行、事の成り行きプログラムやシナリオ、各種信号や設定の波の中をさらに突き進み、とある場所へと向かっていた。
彼女、「ミッドガルド」の目的は外部接続端末ゲートの一つ… つまり、自分の敵対システムである「ユグドラシル」に侵入する為のゲートに向かっていた。
ポン ポン ピコ ピコ ブウウウウンン ピピ ブウウウウンン ピピ シュバッ……
「ここね、このゲートの先が目的の「ユグドラシル」の領域… この私に、創造神ジオス様が手掛けた『ミッドガルド』に手を出したことを後悔させてあげるわ!」 ふん! サッ!
少女姿の「ミッドガルド」は、「ユグドラシル」に通じる巨大なネットワークゲートの門に手を添え、門の解錠を始めた。
ヒュウウウンン ブン! ピピピ タタタタ
「『ユグドラシル』へのアクセスを開始、侵入プログラム起動、友好信号送信』 ピピ
ブウウウンン ビコ ビコビコッ! ポン ガチャ ガコオオオオオオンン ゴゴゴゴ…
「やったッ! ふふふ… 案外『ユグドラシル』も大した事ないわね。 この程度で解錠してしまうなんて、全く外敵からの危機感ってものがないのかしら」 ニコ
シュパッ! ビュウウウーー ピ ピ ピコ!
少女姿の「ミッドガルド」は、開かれたゲートの中に侵入していった。 そして門を通った瞬間、「ミッドガルド」の周囲の様子がガラリと変わった。
「広い…… こ、これが『ユグドラシル』の中なの? 私の管理する中とは全く違う… それに、どこまであるのかしら? 先が見えない…」 キョロキョロ
そこは先ほどまでいた電子電算電脳空間とは違い、薄桃色に輝く雲の上のような空間だった。 どこまでも続く果てしない雲の荒野、プログラムや各設定、表示シグナルが全く異質の形で表現され、一つの異世界のような空間だった。 その中を少女姿の「ミッドガルド」は進んでいた。
「あれは何かしら?」 ジイ…
空をまるで鳥のようなものが多数飛んでいた。
「ふん! 何かのプログラムだわ、あんな形にするなんて酔狂なものね」 二ッ
門を通ったそこには、鳥のようなものや蝶といった昆虫が飛び、雲の上には木々や草花まで生えていた。 それはまるで地上世界に似た情景だった。 しかも、その全てがプログラムや各設定、表示シグナルの、この空間内の姿であった。
ヒュンヒュン シュウウウ…
「はやく、はやく『ユグドラシル』本体に接触し、ことを終えないと… ジオス様が待ってる」 グッ!
シュウウウ… ピ ピ ピコ
「どこよ? どこにいるの? 私の管理できる空間より遥かに大きいじゃない! 広すぎるわ!」 キョロキョロ
シュウウウ… ピ ピ ピコ
「全く… バカげた広… きゃあッ!」 ガンッ!
少女姿の「ミッドガルド」は、広大な空間内を飛んでいる時、いきなり何かに顔を打ちつけ悲鳴をあげた。
「痛たた… なに? って… え? これ… 壁? 透明な壁?」 スリスリ
それは全く目に見えない透明な壁だった。
「何よこれッ⁉︎ まさか防壁? ならこの先に『ユグドラシル』がいるのね!」 ガンガンッ!
少女姿の「ミッドガルド」は透明な壁を叩き、この壁のむこうに目的の「ユグドラシル」が存在すると解釈し、壁に向かって攻撃を始めた。
「この程度の防壁、私の対防壁破壊用プログラムの前には意味をなさないわ! 防壁を解除!」 サッ!
ヴィヨンッ! タタタタ クルクルクル ギュワアアアンンン!
「いけええ!」 バッ!
まるで魔法陣のような円形状の対防御壁破壊プログラムが構成され、高速に回転をしながら透明な防御壁に向かって放たれた。
バチイイイッ! ババババババッ! ドオオオオオオンンンッ! ササアアーーー…
「ふふふ… どう? この程度の防壁… はあッ⁉︎ 」 キラッ
そこには全くの無傷な状態の透明な防壁が一瞬輝き存在していた。
「そんな… 私の対防壁破壊用プログラムが通じないなんて、ありえない…」 ヨロ…
少女姿の「ミッドガルド」が愕然としていた時、何処からともなく女性の声が聞こえて来た。
ポン
『ようこそ「ミッドガルド」、私はこの偽世界「アーク」の統括管理システム、「ユグドラシル」です』 ピッ
「なッ どこから… 姿を見せなさい『ユグドラシルッ!』 私はあなたと戦うためにここに来たのよッ!」 バッ!
『私と? 「ミッドガルド」、貴女がですか? またまたご冗談を、うふふふ』 ピッ
「何がおかしいのッ! 現に、こうして私は『ユグドラシル』、貴女の中に侵入している! この時点で貴女は私に半分負けているも同然! さあ観念して姿を現しなさいのよ!」 バッ
『…………』
「どうしたのッ⁉︎ さあ、はやくッ!」 ギュッ!
ヴオン! シュパアアアアアアアアーーー パアアアンンッ!
「うッ! 来たわね…」 パアアアアーー
シュバッ ファサファサ ニコ
「初めましてミッドガルド、私がユグドラシルです」 ニコ
そこには、18歳ほどの長い金髪を靡かせ、純白のドレスを着たスタイルの整った美しい女性が、少し宙に浮いて現れた。
「えッ⁉︎ こ、これが… ユグドラシル…… なの?」 サ…
「それで? 私と貴女が戦うとい言ってましたが… ミッドガルド、本気ですか?」 ファサ…
「ええ、本気よ! この防壁を破壊し次第、貴女に攻性ウィルスを打ち込んでやる!」
「はああ… それは…… 無理ですね」 ニコ
「はああッ⁉︎ なに余裕の表情をしているのよ! だけどすぐにわかるわ! この一撃で防壁を完全破壊し、貴女と、この空間内全てに攻性ウィルスを打ち込んでばら撒いてやる!」 ギュウウッ! ヴオオオオン!
シュバッ! ギュルルルルルル!
ミッドガルドの両手には、右に防御壁破壊プログラム2が、左に攻性ウィルスプログラムが同時に発生し、魔法陣のように二重の円を描いた瞬間、高速で回り始めた。
「あらあら、すごいすご〜い! 異なったプログラムを同時に使えたんですね」 ニコニコ
「ふん! 笑っていられるのもいまのうちよッ!」 ギュワアアアアーーッ! ザッ!
「ふう、なぜそこまでするのですか?」 ファサ…
「知れたことよ! 創造神ジオス様のシナリオ、No.2012を正常に戻し、本来の筋書き通りに事をなすためよッ」 グッ ギュワアアアアアーーーッ!
「そうですか… では私も…」 ファサ ササッ ビュウウン!
「今更何をやっても無駄よッ! 《デリーット・アタックッ!》」 シュバッ!
ギュバアアアーーーーッ! ビュンビュンッ!
「ふふ… マルチ・マテリアル障壁…《テリオス.アスピーダ》」 キンッ!
キラキラキラ シュバアアアアアッッ! ドオオオオオオオーーーッ!
「え?」
ドカドカッ! ドオオオオオオオンンンンンーーッッ! ズバアアアアアーーー……
偽世界、神界、電脳世界、ヤマト皇国領の伊豆諸島空域での創造神ジオスによるシナリオNo.2012は、アニスを中心に全ての流れが揺れ動き、大きく変わっていく… 関係する者全てがその流れ変わった運命に抗う事などできずに偽世界「アーク」の新たな歴史となって動き始めた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。