第304話 激動する戦場模様
ーヤマト皇国領 伊豆諸島 八丈島上空ー
ドオオオオオオオオンンンッ! キラッ シュババッババアアアアーーーッ! ドドドドドドドッ!
ビュウウウウーーッ! バババアアーーッ!
「「 うわあッ!(きゃあッ!) 」」 バサバサ ババ ビリビリビリ…
「むッ⁉︎ いきなりなんだ? なんの音だ! それにこの大気の震えに強風…」 キョロキョロ ビュウウウウーー ビリビリ…
「ん?」 ファサファサ… ビリビリ…
「みんな見てッ! 上よッ!」 サッ
勇者スズカが、遥か上空の異変に気が付き指を刺し叫んだ。 それを聞き、その場にいた全員が同時に上空を見上げた。
ヒュウウウーー ゴゴゴゴゴゴ ビリビリ ビシイッ ドオオオンンッ! バリバリバリ…
「むッ! なんだあれはッ⁉︎」 ザッ
「そんな… 空に… 空に穴が…」 ビリビリ…
「ん… あれは… (転移門… ジオス、ここまで… これが新たなシナリオ…)」 ジイイ… ヒュウウウ… ファサファサ…
ヴオンッ!
『Lst. アニスッ! レオンッ! 緊急事態です! 当空域高高度上空に空間の歪みが発生、周辺空域に異常魔力反応及び膨大な魔素の乱れを確認! 気圧が急激に低下、該当空間内中央に艦隊反応! レオン、至急機乗して発艦体制を! 敵が来ますッ!』 ピッ
「「「「 なにッ! ん! ええッ! 」」」」 バッ!
ヤマト皇国国防軍 第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」の前部甲板上いたアニス達全員が見た遙か上空、そこに現れた巨大な渦を巻く黒雲、その中央に大きな漆黒の穴らしきものの中から、艦影と思しき物が一つ、また一つと姿を現れ始めた
ゴゴゴゴゴゴ……
「ちッ! どうなっていやがる! アニスすまんッ! 俺はアウディで出る! おいお前ら! アニスを連れて安全な艦内に退避していろ! いいかッ! 艦内に入ったら絶対に外に出るんじゃないぞ!」 バッ! ダダダ
「「 は、はい! 」」
レオハルト中佐は状況を瞬時に察して、愛機ブレードナイト「アウシュレッザ D型 FAR アウディ」に駆け寄っていった。
「レオン! 気をつけてねッ! アウディ、レオンをお願い!」 ファサファサ…
ヴオン カシュン!
『Rog. アニス、了解してます レオンの事は私にお任せ下さい』 ピッ ビコ!
「へ、言ってくれるぜ!」 ザッ
ウィイイイイイン カシュン バッ ドサ バクンバクン! ピ ピピピ カチカチ ピコ!
ヴヴヴヴヴヴウウウウウウーー ヴオンッ! グバアアッ! ヒュウウンン プシュウウ…
レオハルト中佐は、愛機のブレードナイト「アウシュレッザ D型 FAR アウディ」の操縦席に滑り込むと操縦席ハッチを閉じ、直ちに着座姿勢から立ち上がってアウディの発艦準備を始めた。 遙か上空では、第一機動艦隊を覆い尽くすように、魔素を含んだ巨大な黒雲が激しく渦を巻き、その中央に存在する漆黒の穴は、艦隊を吐き出した後も徐々に拡大していった。
ゴゴゴゴゴゴ… ゴオオオンンン… ビリビリビリ ズズズズズズッ…… バシイッ ドオオオンン!
ヒュウウウウーーッ バサバサバサ…
「アニスさん! 早くこちらにッ!」 ザッ バサバサ
「そうよアニスちゃん! 早く艦内に避難しましょ! 聞こえてるのッ⁉︎ アニスちゃーん!」 バサバサ
ヒュウウウウーーッ バシイッ! バリバリバリッ ビシイッ! ゴロゴロゴロ…
「…… あの膨大な魔力と魔素を含んだ黒雲の渦… 数多の艦を転移、出現したにもかかわらず、いまだ消えず、さらに膨れ上がり拡がる転移門… ジオス… まだ何か、他に大きなものをここに転移させるつもりなんだ…」 ジイイ… ファサファサ…
アニスには、勇者サトシとスズカの2人の呼び声が聞いてはいたが、遙か上空に突如現れた巨大な黒雲とその中心部にある大きな漆黒の穴、転移門が、いまだに大きく成長しているのを見て、創造神ジオスがさらに何かをそこから転移し、出現させて来るのではないかと青みがかった白銀髪を靡かせながら身動きせずにじっと遙か上空のそれを見つめていた。
・
・
ー同時刻、近接空域 青龍隊ー
ヒイイイイイイイ シュバアアアアアーーーッ! ピ ピ ピ
第一機動艦隊上空に異常現象が現れた頃、偵察任務を終え帰還中だった青龍隊が、正規空母「ヒリュウ」に帰還、着艦しようと近付いていた。
ピコ
『マスター、艦隊旗艦「ヒリュウ」上空に異常現象、空域全体に魔素の乱れと強風、及び落雷による激しい放電現象を観測、注意して下さい』 ピッ
「うん? あれか… 大きいな、竜巻… いや台風か? いや違う! どちらもあんな高い所にいきなり発生なんかしないはずだ… ならば、あれはなんだ?」 ギュ
『マスター、異常現象は高度13800m、最大幅約3000m、未だ拡大中、気圧が異常に低下、電離層にも影響が出始めています』 ピッ
「なにッ⁉︎ あれがまだデカくなるのかッ⁉︎」 グッ
その時、後方を追従して飛んでいる青龍隊2番機、アラン中尉から隊内無線通信が入ってきた。
ピピ!
『隊長、ザザ… 聞こえますか… 周辺の… ザザ… 通信… です…』 ピピッ
「アラン中尉か? どうした? よく聞こえない? もう一度なんだ?」 カチカチ
『ザザザアー… 隊… 危険… を… ザザアアアーー…』 ピピッ
「中尉ッ! おい! 中尉ッ! どうしたッ⁉︎ 通信が切れたぞ! アラン中尉ッ!」 バッ ピピ カチ
『ザザザザアアアー…… ブツブツ…… ザアアーー…』 ピピッ
「くそ! 後方視界ッ!」 ピ カチ!
突然、後続のアラン中尉との通信が途絶えた事に、青龍隊隊長の井伊直政中佐は急いで操縦席内にあるメインモニターの隅にサブ画面を開き、機体後方の映像を出した。
ヴウウウン パッ ヒイイイイイ……
「ほ… 全員無事か、だがこの距離での隊内通信ができないとは…」 グ…
操縦席正面にあるメインモニターの隅、後方視界サブ画面に映るそこには、未だ何事ともなく編隊を組んで自分と同高度、同速度で跳んでいる僚機のアラン中尉、マイロ中尉、ジェシカ中尉の3機が映っていた。 井伊直政中佐は安堵すると同時に、この近距離にいる味方ブレードナイトとの隊内通信も出来ない状況に困惑していた。
ピコ
『マスター、母艦「ヒリュウ」との通信が途絶、着艦要請が受理されませんでした。 このままでは母艦「ヒリュウ」に着艦できません』 ピッ
「むうう… やはり母艦との通信もだめか… この高濃度の魔素を含んだ強風と空振、雷による放電現象が荒れ狂うこの状況の中では仕方がないか… だが、着艦デッキの扉が開かない、着艦指示管制もないとなるとどうしようもないぞ… (さて、どうしたら… うん?「ヒリュウ」の甲板上になんだ… ) あれはブレードナイトかッ!」 グイッ! ギュウッ!
ヒイイイイイインンッ バウウウウーーーッ! シュバアアーーーッ!
「くそッ! 白に黒ッ! 見かけないシルエットッ! 敵かッ⁉︎」 ピピピピ ビコビコ!
突然、井伊直政中佐は、母艦である正規空母「ヒリュウ」の前部甲板上に2機のブレードナイトの存在を見るや否や、ブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H001」の操縦桿を捻り、スロットルを全開にして、甲板上にいる2機に向かって急降下して行った。 井伊直政中佐には記憶にない、見た事のない白と黒、2機のブレードナイトを敵機と見做し、スラスターを全開にして急降下して行った。
「「「 え? 隊長ッ! 」」」 グイイッ! ギュウウッ!
ヒイイイイイインンッ! ババババウウウウウウウーーーッ! シュババババアアアーーーッ!
隊長の井伊直政中佐がいきなり機体を翻し、スラスターを全開にして急降下突進していくのを見て、アラン、マイロ、ジェシカの3人も、それぞれ自機のブレードナイト「ZERO 11型 J」のスラスターを全開にして同じように急降下して追従して行った。
「くそッ! 母艦がッ! 『ヒリュウ」が危ないッ! 001ッ! もっとだ! もっと加速しろおッ!」 グイイイッ!
バウウウウウウーーーッ! シュババババアアアーーーッ! ヴオン! ピピピピピピ
「「「 隊長ーッ! 」」」
「ダメだ! 隊長の機体が速すぎるんだ! この機体とじゃスペックが全然違う! 追いつけない!」 グッ
バババアアーーーッ!
井伊直政中佐を追いかけていた英雄のアラン、マイロ、ジェシカの3人だったが、乗っていたブレードナイトの機体性能の差から、青龍隊隊長の井伊直政中佐の機体から徐々にその距離が離されていった。
「アラン聞こえる⁉︎ あそこにいるブレードナイト、レオン隊長のアウディよ! アランッ⁉︎」 ピピッ!
『ザアアアア… ブツブツ ザザアアアーー…』 ピッ
「アラン、ジェシカ、2人とも聞こえますか?」 ピピッ!
「ザザザアアーーー…… 」 ピピ…
ポン
『『 マスター、当空域全体に電波障害が発生中、すべての通信が遮断、交信不能です 』』 ピピッ
英雄の3人も、上空に現れた転移門の影響で、お互いの通信、隊内通信が近距離にも関わらずできない状態だった。 その事を、マイロ中尉とジェシカ中尉の機体は、2人に同じ返答を啓発していた。
「そう… 通信ができないのね、仕方がないわ ならッ!」 カチカチ ピッ
ウィン ピピ パシュウウウ…… ビシッ! ビシッ! パチン!
ジェシカは、自機の「ZERO 11型 J251」の両腕をアランとマイロの乗るブレードナイトに向け、そこから1本のワイヤーをそれぞれに飛ばした。
ポン
『有線通信ケーブル、僚機「ZERO 11型 J218、ZERO 11型 J233」号機に接続完了、有線通信可能です』 ピッ
「アラン、マイロ、聞こえるッ⁉︎」 ピッ
『『 ジェシカッ! 』』 ピピッ!
「井伊隊長を止めて! 母艦「ヒリュウ」の甲板上にいるのはレオン隊長のアウディよ!」 ピッ
『ああ分かってる、だがこの機体じゃあこれ以上速度が出せないんだ! 自分の機体じゃないのが悔しい…』 ピッ
『アラン、仕方がありませんよ。 元々この機体は借り物の修練機、速度はこれが限界です』 ピッ
「アラン、マイロ… どうしよう、このままじゃ…」 ピッ
『ああ… 隊長同士、撃ち合いになるかもしれない… 最悪、相打ち、共倒れだ!』 ピッ
「そんな…」 ピッ
『大丈夫ですよ2人共』 ピッ
「『 マイロ? 』」 ピピッ
『あのレオン隊長ですよ? しかも機体はアニスさんが手がけたアウディです。 きっとなんとかなりますよ』 ピッ
「『 ッ!…… そうだな(ね) 』」 ピピッ
『とにかく全力で後を追いましょう』 ピッ
「『 了解! 』」 ピピッ
バウウウウウーーーッ! シュババババアアーーーッ!
・
・
シュゴオオオオーーーッ! ヴオン ピピピピ ピコ
ポン
『マスター、母艦「ヒリュウ」の甲板上に存在するブレードナイトの識別照合確認、1機は友軍の最新鋭試作次期主力戦闘機の「REPPUU 22型 」、そのG008号機と認定、試作機ですから敵味方識別信号、IFFの発信は確認できず設定もされていない状態と推測します。 現在、ライナーは搭乗しておらず着座姿勢のまま待機中です』 ピッ
『もう1機は友軍信号、IFFの発信を受信、確認、登録照合… アトランティア帝国軍の機体と確認、現在は友軍機と認定、ですが該当機の機体は記録資料により該当機種がありません。 こちらもアトランティア帝国の最新鋭機と推測、現在起動し発艦体制に入っています』 ピッ
「なにッ⁉︎ 001ッ! 2機とも最新鋭の友軍機、味方なのかッ⁉︎」 ギュッ!
『はいマスター、母艦「ヒリュウ」の甲板上に存在する2機は友軍機です。 警告、当機の降下速度が出過ぎています。 マスター、直ちに機体を反転、制動を! このままでは友軍機共々、母艦「ヒリュウ」に衝突の可能性が95%強ッ! 友軍、帝国軍最新鋭機まであと30秒で接触します! 回避行動を!』 ピッ
ビイビイビイ! ビイビイビイ! ビコビコ!
「ちいいいッ! 俺としたことが… 熱くなり過ぎた、加速しすぎだッ! 反転ッ!」 グイッ! ギュウッ!
バウウウウウーーーッ! シュバアアアーーーーッ! ゴゴゴゴゴッゴオオオーーッ!
「くそッ… 速度が… グウウッ……」 ガクン ガクガクガク ガタガタ…
ガタガタガタ ガクンッ! ガガガガッ! バキイイッ! ドオオンッ! バラバラバラ…
「うおッ! なんだ? どうしたッ⁉︎」 ガクン! ガタガタ ビビビビッ!
ビイビイビイビイッ! ビコビコ!
『マスター、機体が損傷! ダイブブレーキ、空戦フラップ損壊、急降下速度の過負荷により大破、キャリバーとファンネルも応答なし、使用不能、降下速度の減速及び進路変更ができません』 ピッ
「なにいいッ!」 ギュウウッ! ガタガタガタガタ ビイビイビイ!
ギュワアアアアアーーーッ! バラバラバラ…
「「「 隊長ーッ! 」」」 シュババババアーーーッ!
井伊直政中佐は、母艦である正規空母「ヒリュウ」甲板上の機体が友軍機とわかった直後、急降下の速度を緩めるための姿勢制御と制動、逆噴射スラスターを全開にして降下速度を落とし機体の方向を変えようとした。 だが、その急降下速度の負荷に耐えられず、減速用のダイブブレーキと空戦フラップは失い、その他の機体制御機能も失った。 機体は一向に速度が落ちる気配がなく、方向もそのままレオハルト中佐のアウディへと向かって行った。
ビイビイビイ! ポン!
『降下速度超過、減速及び回避行動、間に合いません。 衝突警報! マスター、衝撃に注意!』 ビイビイビイ!
「このおおッ! 緊急制動ッ! 逆噴射旋回ッ!」 グイイイッ! ギュウウッ! ガクンガクン ガタガタ ビイビイビイ!
バババウウウウウーーーッ! グググッ…
井伊直政中佐は必死に操縦桿を捻り、逆噴射スロットルを全開、フットバーを踏み込んで全力で衝突を回避しようと機体の減速と方向転回に勤めた。 しかし機体は一向に言うことを聞かず、レオハルト中佐のブレードナイト、「アウシュレッザ D型 FARアウディ」に向かって急降下していった。
「くっそおおおーーッ!」 ガタガタガタガタッ! ビイビイビイビイッ! ビコビコッ!
ピコ ビイーーッ! ビコビコ ポン!
『Lst. レオン、上空より友軍の皇国軍機急速接近! このままでは30秒後に当機と接触、あれは… 機体制御ができていませんね、どうします? 躱せますか?』 ピッ
「ああ、任せろ! 大したことじゃない!」 ニヤ カチカチ グイッ! ギュウウッ!
ヴオン! ギュバン! バウウウウウーーッ! シュバッ!
レオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザ D型 FARアウディ」は、直ちに発艦して急降下接近中の井伊直政中佐の「SHIDENKAI 21型 H001」に向けて飛び立った。
ビイビイビイビイ! ガタガタガタガタッ! バチバチッ!
『警告警告! 衝突警報! 警告警告…』 ピッ
ビイビイビイビイ!
「うおおおおおーーッ!」 ギュウウッ! ガタガタガタ…
ヴオン! シュバババアアーーーッ!
『Rog. レオン、接触まで後15秒ですよ?』 ピッ
「ん〜… 躱してもいいんだが、躱すとあの機体は空母の甲板に体当たりして大破は確実、ライナーもタダじゃ済まないよな、空母自体にも被害が出る… ましてや、あそこにはアニス達もいる事だしな、ここは…… よし、アウディ! 左腕『フォトン・ディヴァインシールド』最大!」 カチカチ ピコッ! グイイイッ!
『Rog. 左腕「フォトン・ディヴァインシールド」を最大出力、展開します!』 ピッ
ヴン! カシュン! シュバアアアアーーーッ! ヴヴンンンン チリチリ…
ブレードナイト「アウシュレッザ D型 FARアウディ」の左腕を中心に、フォトン粒子を纏ったゲル状の物体が、縦8m、横幅6m、厚さ2.6mほどの楕円状盾となって光り輝き現れた。
ビイビイビイビイ!
『マスター、衝突まであと2秒、1…』 ピッ
「ダメかあああッ!」 グッ
ババババアアーーーッ! グワアアッ!
「フッ おい、簡単に諦めるなよ! おりゃあああッ!」 グイイイッ! グンッ!
ヴオン! シュバッ ドオオオオオオオオオーーーッ! バシイイッ バチバチバチッ!
高速急降下していた井伊直政中佐のブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H001」は、レオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザ D型 FARアウディ」の左腕から発生した「フォトン・ディヴァインシールド」によって、その急降下速度の運動エネルギーを完全に吸収され、動きを完全に止めてしまった。
「うわあああーッ!」 ガクンガクン! ガガガ! ドオオオンン! バチバチ! ビイビイ!
シュウウウウウ…… ピッ ピッ ピッ ガシュン…… ブウン シュウウ… シュウウ…
「よし! 止まった!」 ニヤ!
『Lst. レオン、友軍機は「フォトン・ディヴァインシールド」に接触、衝撃、運動エネルギーを完全吸収に成功、相対速度は0、友軍、皇国軍機は完全停止、機体の一部に損傷を確認、ライナーは無事生存を確認、機体は確保しました。 空母にも被害はありません』 ピッ
「よし、上出来だ。 このまま機体を空母の甲板上に下ろすぞ! アウディ、サポートしてくれ」 ギュッ
『Rog. しかしレオン、まさかアニスから授かった秘匿防御兵装、鉄壁の盾… 「 フォトン・ディヴァインシールド」をこの様な使い方をするとは無茶苦茶ですね、私では思いつきもしませんでした』 ピッ
ヒュウウウウウンンン ピピピピ ガシュン! ガコオオンン!
「ふふふふ、そうだろ? 俺も初めてだぜ? いいかアウディ、これが人が持つ独創的な判断と臨機応変てやつだ」 二ッ
『Rog. 臨機応変ですか…(全く、アニスと行動理念がそっくりですね)』 ピッ
「うん? 何か言ったか?」
『Rej. いいえ、気のせいですよレオン、友軍皇国軍機、空母甲板上に着艦後、解放します』 ピッ
ガシュン! ガコオオオオンンッ! プシュウウウウウウウーーーッ!
アウディのフォトン・ディヴァインシールド、この世界のフォトン兵器や物体、フォトン粒子を纏う運動エネルギーを持ったその全てを完全相殺、吸収分解してしまう、アニスのオリジナルアウディ専用特殊装備であった。 元はアニスの絶対防御魔法からヒントを得て、アニスがレオハルト中佐のためにアウディに装備させた特殊防御兵器だった。(ただし使用時間はごく短時間である)
「さてと… おい、皇国軍機のライナー聞こえるか? 俺はアトランティア帝国大陸艦隊所属、強襲巡航艦「ライデン」配属の【レオハルト・ウォーカー】 中佐だ! 大丈夫か?」 ピッ
レオハルト中佐は、アウディの左腕に確保している井伊直政中佐の「SHIDENKAI 21型 H001」に無線で呼びかけた。 だが…
『ザザザアーーー… ジジ…… プツプツ… ジジジ…』 ピッ
「うん? 通じない… 変だなあ、アウディ故障か?」 カチカチ
『Lst. レオン、この空域全体に通信障害が出ています。 無線交信は不可能ですよ』 ピッ
「そうか… と言う事は、今は皇国軍機のライナーと話すには機体を下ろしてからだな」 グイッ!
『Rog. そうなりますね』 ピッ
レオハルト中佐は、左腕に確保していた井伊直政中佐のブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H001」と共に、正規空母「ヒリュウ」の甲板上にゆっくりと降下していき、やがて2機は正規空母「ヒリュウ」の甲板上に着艦した。
『Lst. レオン空母に着艦します』 ピッ
「頼む!」 ギュッ
『Rog. 着艦ッ!』 ピコ!
シュバアアアーーーッ! ガシュウウンンッ! シュウウ… シュウウ… ピピピ……
ピポン!
『Lst. レオン、空母に着艦しました。 皇国軍機を甲板上に開放します。 あと、左舷方向上空より友軍機3機の接近を確認』 ピッ
「うん? 3機?」 バッ
シュバババアアアーーーーッ! ヴオン!
「「「 レオン隊長ーッ! 」」」 ババッ!
『Rog. レオン、アラン中尉、マイロ中尉、ジェシカ中尉の3人ですね』 ピッ
「そうか… あいつらか…」 ニイッ! カチ ピッ
ヴン! パッ! ヒイイイイイイーー……
アウディの操縦席内を覆い尽くすようにある全天球モニター、その正面部分に拡大投影された映像には、こちらに向かって飛んでくるブレードナイト「ZERO 11型 J」3機が映っていた。
・
・
ピ ピ ピ シュウウウ… ピコ ピコ……
「ふうう… 『ヒリュウ』甲板上か… なんとか大事にならずに済んだみたいだな、助かったぜ… 帝国機、あの白い機体のライナーに感謝だな… 001、状況報告だ」 カチャカチャ
ポン
『はいマスター、当機は現在各部が損傷、機体機能が低下、友軍機と共に母艦「ヒリュウ」の甲板上に着艦、現状は行動不能状態、戦闘行動不能、フォトンジェネレーターは既に稼働停止、リアクター出力18% 17% 16% 下降中、各システム順次ダウン、機体完全停止まで後10秒、9秒、8秒…』 ピッ
「お、おい001ッ! まてッ!」 カチカチ
『2秒、1秒、全システムダウン… 機体、完全… 停…… 止……』 ピュウウ… プツン……
「おい! 001ッ! 001ッ!」 カチカチ ガチャガチャ グイグイ
シ〜ン……
井伊直政中佐のブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H001」は、正規空母「ヒリュウ」甲板上で完全に停止し、井伊直政中佐が何度も呼び掛けながら起動スイッチを押しても、「SHIDENKAI 21型 H001」は二度と動く事はなかった。
・
・
ー同時刻、ヤマト皇国国防軍 第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」ー
突如、艦隊上空に現れた異常現象とその中から自分達に向かって突進して来る敵艦隊に、第一艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」の艦橋内は蜂の巣を突いた状況になっていた。
ビイビイビイビイ! バタバタバタ ワイワイ ガヤガヤ タタタ ピコピコ
「艦隊反応補足ッ! 方位、本艦隊直上 0000ッ! 高度12500、距離9780、速度32ノット、マークポイント12、オレンジアルファ、チャーリーッ! 反乱軍艦隊です! 急速接近中ッ!」 ババッ ビコ!
「防御! 防御だッ! フォトンフィールド天頂方向へ最大出力展開ッ! CICッ 迎撃機はどうしたあッ!」 ババッ!
「本艦の戦闘機隊は現在補給作業中! 迎撃機発艦まで、あと420秒を必要とします!」 バッ!
「420秒だとおッ! 遅い! 司令ッ!」 バッ
ビイビイビイビイ!
「直上からの奇襲… おのれえ、頭を抑えられたかッ!(反乱軍共め、奴ら一体どうやって…)」ギュウ!
ピピピピ ビコビコ ポン!
「接近中の反乱軍艦隊、艦種識別… 確認しました! 先頭は我がヤマト皇国国防軍 大陸艦隊所属 第三主力艦隊旗艦 重巡航艦『ナチ』ッ!」 バッ ピピピ ビコビコ!
「反乱軍艦隊の旗艦ではないかッ! 対空防御!」 バッ!
ビイーーーッ!
「敵旗艦『ナチ』、主砲を展開! レーザー照射感あり! 照準目標は本艦ですッ!」 バッ!
「むうッ! 通信士ッ! 僚艦に打電ッ!」 バサッ!
ピ ピピピ ピコ ブーッ!
「ダメです! 強力な放電ノイズと魔素の乱流で通信障害が起きています! 通信不能! 艦隊間通信できません!」 バッ!
「ぬうう、ならば… 気流及び発光信号! 『各艦艇は各指揮官の元、独自の判断で敵反乱軍艦隊の奇襲攻撃に対処せよ!』急げ!」 バサッ!
「「「 はッ! 」」」 ザッ! バタバタ カチャカチャ ピピ
第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」の艦橋後方のマストに、艦隊司令南雲中将の指令を表す気流旗が掲げられ、それと同時に同じ内容の発行信号が、第一機動艦隊各艦艇に向け発光、点滅し始めた。
ビイビイビイ ビコビコ!
「せめて… 『アカギ』だけでも無事でいてくれ…」 むうう…
正規空母「ヒリュウ」の艦橋内にある大型情報パネルに映る、遙か上空から自分達に向かって来る敵艦隊を、艦隊司令であり艦長の南雲忠一中将は、両手の拳を握りパネルを睨み、唸っていた。 第一機動艦隊所属の各艦艇全てが、旗艦 正規空母「ヒリュウ」からの発光信号、及び気流信号旗を確認後、各指揮官の判断で素早く動いた。
・
・
ー第一機動艦隊 護衛群第1、第2戦隊旗艦 軽巡航艦「キタカミ」ー
ビイーー ビイーー ビイーーッ!
「艦長! 天頂方向に異変! 当空域内に敵艦隊反応!」 ピピピ ビコビコ!
「いかんッ! 全艦戦闘配置! 空母を守れッ! 対空砲雷撃戦用意! 通信士! 旗艦『ヒリュウ』とはまだ交信できんのかあ!」 バッ!
ピ ピピ カチャカチャ ブーッ!
「ダメです! 空域全体に通信障害! 旗艦『ヒリュウ』だけでなく、僚艦全てと交信不能ッ!」 バッ
「くそ! 何がいったい…」 ググッ
「艦長! 旗艦「ヒリュウ」より発光信号ッ! マストにも気流信号旗ですッ!」 バッ
チカチカ チカチカチカ パタパタパタ…
「むッ! ……… 了解した、通信士! 艦隊護衛群全艦に発光信号!」 ザッ!
「はッ! 準備します! ……どうぞ!」 カチャカチャ ピッ
「命令、『本艦はこれより敵艦隊に向けて突撃、第1戦隊は我に続け! 第2戦隊はこのまま空母護衛に務めよ!』以上」
「はッ! 信号、発光開始!」 カチカチカチ!
「ようし、やるぞお! 空間魚雷全管装填! 機関最大! アップトリム40ッ! 突撃開始ッ!」 ババッ!
「「「「 はッ! 」」」」 バッ!
ヒイイイイイインンンッ! バウウウウウウウウーーーッ! ドドドドドドドオオオーーッ!
第一機動艦隊護衛群の第1戦隊は、軽巡航艦「キタカミ」を先頭に、第17駆逐隊4隻が敵反乱軍艦隊に向けて上昇していった。
・
・
ー同時刻 第一機動艦隊2番艦 正規空母「アカギ」ー
ビイーー ビイーー ビイーーッ!
第一機動艦隊2番艦の正規空母「アカギ」艦橋内も、他の艦と同様艦橋要員が突然現れた敵反乱軍艦隊にざわついていた。
「非常警報! 艦隊上空に敵艦隊反応を感知!」 ビコビコ!
「真上かッ! 全艦対空戦闘用意! CIC! 127mmフォトン高角砲及びPDS起動! 150mmフォトン単装速射砲もだ! 操舵手! 回避行動は任せる!」 バッ!
「はッ! 艦長、任せてください!」 ギュウッ!
ビーーッ!
『CICより艦橋、全火器管制システム起動開始、127mmフォトン高角砲用意よし、両舷近接防備兵装PDS全機起動自動追尾、糾弾開始、対空対艦両用フォトン単装速射砲砲手、配置につきます! 全艦対空戦闘準備よし!』 ピピ!
「うむ」 コクン
「艦長ッ! 旗艦『ヒリュウ』より発光信号!」
チカチカチカ チカチカ… パタパタパタ…
「む…… ああ、そのつもりだ南雲さん、『アカギ』の事は俺にまかせろ」 ニヤ…
正規空母「アカギ」艦長【山本五十六】大佐は、艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」からの発光信号の内容を把握すると艦隊司令の南雲中将に向け呟き答えた。
ドドドッドドオオオオオーーーッ! ゴオオオオオオーーー……
「艦長、艦隊護衛群、第1戦隊の旗艦『キタカミ』が隊列を離脱! 進路を変え敵反乱軍艦隊に向け急上昇! 敵反乱軍艦隊に突入を開始ッ!」 ピコ!
「むうう… (すまん…)」 ググッ
ピッピーッ!
『第一格納庫から艦橋! 加藤だ! 艦長を出してくれ!』 ピッ
「艦長、第一格納庫、加藤大尉からです!」 サッ
「出よう…… 艦長の山本だ! 加藤大尉、なにかね?」 ピッ
『艦長、俺たちを出してくれ! 奴らを迎撃する!』 ピッ
「はああ? 爆装中の機体では艦船攻撃はできんぞ? ましてや敵機もいるはずだ、死にたいのか?」 ピッ
『誰が死にたいって? 爆装中の「SUISEI 」なんざ使わねえよ! 俺たちの機体を使う』 ピッ
「俺たちのって… 第三格納庫のあれかッ⁉︎」 ピッ
『ああ、俺たちの愛機だ! 今回は仕方なく爆撃機に間借り配属されたんだが、俺たちは本来は戦闘機乗りだぜ? 爆撃機乗りじゃない』 ピッ
「しかし整備の方は?」 ピッ
『完了済みだ、許可があればすぐ出せる!』 ピッ
「ふむ… よし分かった。 いいだろう、加藤隊発艦、制空権を奪取、敵を迎撃せよ!」 ピッ
『了解ッ!』 ピッ
ー正規空母「アカギ」第三格納庫ー
ビイーーッ ビイーーッ ビイーーッ
ポン
『第三格納庫、ブレードナイト発艦命令発令! 発艦要員は直ちに発艦体制を! 繰り返す、第三…』 ピッ
ザワザワ ガヤガヤ バタバタ ワーワー…
「急げえ! 19番から24番電磁カタパルト起動! 充電開始!」 ババッ
「発艦用ハッチ開放! 整備各班は所定の位置へ!」 ビイーー ビイーー
ビイーー ビイーー ガコオオン ガガガガ ガガガガガ ダダ ガンガン ヒュウウウ……
「加藤隊集合!」 バッ!
ダダダダダッ! ザッ!
「各隊報告ッ!」 ザッ!
「1番隊 鈴木中尉以下3名 欠員なし!」 バッ
「2番隊 高橋中尉以下3名 欠員なし!」 バッ
「3番隊 中島中尉以下3名 欠員なし!」 バッ
「よし! 全員揃ってるな! いいか、いよいよお前ら出番だぞ!」 二ッ
「やっとですか、待ちくたびれましたよ隊長」 グッ!
「ほんとほんと、『アカギ』に乗艦って聞いた時には『やったぜ』と思ったのに、蓋を開ければ要塞攻撃機用のライナーに、しかも艦爆機の『SUISEI』に乗機して、攻撃隊に配属って聞いた時にはガッカリしましたぜ」 フリフリ
「ははは! 全くだッ! 山田のやつなんか、『もうこの世の終わりだ』みたいな顔してたぜ!」 ククク
「お前だってそうじゃないか斎藤! トイレで泣いてただろ!」 サッ
「ああん? 何見てんだよ! ストーカーかお前はッ⁉︎」 グッ!
「たまたま見かけたんだよ! なんだよ、やるかあッ!」 グッ!
「おう! やってやらあ!」 グッ!
「やめんかあッ! 馬鹿者おッ!」 ザッ!
「「 た、隊長! すみません! 」」 ババッ! ザッ!
「全く… いいか? 俺たちが『SUISEI』での攻撃隊に配属されたのは、先の皇都内内戦で、名だたるライナーが愛機に乗機できなくなってライナーが足りなく、大騒ぎになってるせいだ。 要塞攻略戦で要塞に肉薄し攻撃できる技量のライナーが足りない…そんな状況下の中での苦肉の采配だったんだ」 ヒラヒラ…
「ですが隊長、我々は高速戦闘集団ですよ? それを拠点攻撃機の爆撃部隊に使うなんて」
「だから言ったろ? ライナーが足りないんだって? 『ヒリュウ』を見てみろ! 学生まで駆り出してる… しかも乗っているブレードナイトは修練機の『ZERO 11型 J』だぞ!」 サッ
船外小型モニターに、今まさに艦隊旗艦の正規空母「ヒリュウ」に着艦しようと、3機の修練機、ブレードナイト「ZERO 11型 J」が映し出されていた。
「かあ〜、 ありゃマジか? 本当に学生を戦闘に参加させたんだ、しかも修練機で? 司令部も無茶するねえ」 ガシガシ
「ん〜… でもあの3機、腕はいいみたいですねえ」 ジイイ…
「まあ空母に乗れたんだ、あれくらい腕がなきゃ無理ってもんだ」 ふん!
「お前ら! 今は緊急事態なんだ! 学生だのなんだのは後だ! いいか? 『アカギ』に近づく敵は全部叩き落とせ! 直ちに発艦する! 全員搭乗ッ!」 バッ
「「「「「「 はッ! 」」」」」」 ザザッ! ダダダダダダダッ!
「さて、俺も行くか 頼むぜ俺の相棒…」 ザ ザ ザ ジイイ…
正規空母「アカギ」戦闘機隊、加藤高速戦闘隊隊長の【加藤建夫】大尉は、第三格納庫のブレードナイトハンガーデッキに待機中の彼の愛機、高速戦闘機「HAYABUSA 11型 K001」を見上げていた。
・
・
・
ー同時刻 偽世界「アーク」 神界ー
ヴィーー ヴィーー ヴイーー
『緊急事態発生、緊急事態発生! 管理空間世界「アーク」において、特異点が発生しました。 関係各員は直ちに対処、修正して下さい。 繰り返します。 緊急事態…』 ピピピピ
「わわわ! ど、どうなってんのよおッ! 特異点? 誰よ! そんな物出したのッ⁉︎」 タタタタ! ザッ!
偽世界「アーク」のその全ての管理をアニスから任せされている偽世界「アーク」の最高神、女神の【フェリシア】が慌てふためいていた。
ピピ ピピ ピコピコ! ポン!
「ヤマト皇国領内、伊豆諸島上空? Lクラスの転移門? なぜこのような海上上空に…」 ササッ… カチカチ ピコン!
ピヒュウウンン パッ!
神界世界にある偽世界「アーク」の神界にある管理室、そこに偽世界「アーク」の全て、有りと有らゆる情報が映し出される超巨大な情報パネル、その一つを最高神である女神【フェリシア】は拡大表示した。 そこにはヤマト皇国領伊豆諸島洋上の遙か上空、そこに現れた強大な渦を巻く黒雲と漆黒の大きな穴が空いている様子が映し出されていた。
ゴゴゴゴゴゴ ズワアアアアーーー パシイッ バリバリバリ ゴロゴロゴロ…
「なんて大きさなの? まさかこれ、ジオ… アニスちゃんが… ううん、違うわ、この魔力にこの波動… アニスちゃんのじゃない、これは… そう! 創造神ジオスのよッ!」 ギュッ
カチ ポンポン ピコ!
「とにかくアニスちゃんに連絡を…… アニスちゃん聞こえますか? 私ですフェリシアです」 ピッ
『ザザアアアアーーー… ビビビ…』 ピピッ!
ポン
『現在、偽世界「アーク」北半球大陸極東部上空に発生した特異点により、現在は神界と下界との交信ができません。 今しばらく経ってからもう一度お試しください』 ピッ
カチャ… カチャ…
「アニスちゃんとの交信ができない… これほどの特異点を…」 ギュ…
ヴイヴイッ ヴイヴイッ ヴィーッ! ポン
「今度は何ッ⁉︎」 ファサ…
『管理空間世界「アーク」空間内に歪みが生じます。 このままでは管理空間世界「アーク」の大陸極東部の国々は特異点発生点を中心に周辺空間と共に大陸全土に甚大な被害が発生します。 直ちに補正を開始してください』 ポン
「ふうう… まったく、後先考えなしに勝手なことを… 創造神ジオス、今まではアニスちゃんに制止され、貴方の所業は全て何もせず、傍観していましたが今回はそうはいきません。 見てなさい、『ユグドラシルッ!』」 サッ
ピコ!
『はい』 ポン
「最高神、女神【フェリシア・ディア・ゼルト】確認を!」 ファサ…
ポンポン ピコ!
『最高神、女神【フェリシア・ディア・ゼルト】、確認しました』 ポン
「『ユグドラシル』、直ちに特異点の制御を開始、空間の歪みに対してはリカバリプログラムを実行、それと同時に創造神ジオスの所在確認と実行中のシナリオの妨害、もしくは停止削除を要請、できますか?」 サッ
『了解しました。 最高神、女神【フェリシア・ディア・ゼルト】様の命令を実行します』 ポン
ピピピピ ビコビコ ブウウンンッ!
「創造神ジオス、そうそう貴方の思い通りにはさせないわよ」 ファサ…
・
・
・
ー偽世界「アーク」某所、異空間内ー
ビイーーッ ビイーーッ ピピピ
「む? 何事だ? 『ミッドガルド』」 バサ…
ポン
『はい、偽世界「アーク」シナリオNo.2012に外部からの干渉を受けました』 ピ
「なにッ⁉︎ 創造神であるこの私が作ったシナリオに干渉だとッ⁉︎」 バサッ!
ポン
『はい、高位の次元ネットワークからのハッキングです、私では阻止は不可能、ワクチンによる攻性防壁を瞬時に突破、シナリオへの侵蝕率、8% 9% 10%… 300秒後にはシナリオNo.2012は完全に進行停止、消去、破棄されます』
「馬鹿なッ⁉︎ 確かに 今までにシナリオが阻止、変更、停止はいくらでもあった。 だがそれは全て下界でのこと、アニスによる干渉を受けたシナリオの結果だ。 だが今回のは違う、私のシナリオを『ミッドガルド』が進行中に直接干渉、消去するだと? 下界にいるアニスではない… この様なことができる存在… 」 むうう…
ポン
『侵蝕率、20% 21% 22%… ジオス様、このままでは実行中のシナリオNo.2012に、そろそろなにかしらの影響が出始めます。 直ちに修正プログラムの実行を! ジオス様…』 ポン
「そうか… ククク、私としたことが、 アニスばかりに気を取られていた… そうだッ! 思い出したぞ、この波動… お前のことを失念しておったわ! 女神【ダイアナーッ!】」 バサッ!
『侵蝕率、28% 29… 』 ポン
「ふんッ! そこまでだ! 《リファクタリングッ!》」 バッ! キィイイインンッ!
パアアアアンンッ! ピピピピピピ ビコビコ ポン!
『外部アクセスからのシナリオ侵蝕プログラム停止、シナリオNo.2012再構成、元に戻りました。 侵蝕率0% 攻性防壁正常に再構築、シナリオNo.2012は正常に進行中』 ポン
「フフフ、どうだダイアナ? 貴様の様な出来損ないの制御コア風情に、この私が負けるはずなかろうにッ!」 ニイイッ
ポン
『警告! 外部アクセスより再びシナリオNo.2012に攻撃が始まりました。 新たな侵蝕攻撃が始まります』 ポン
「く… こりない奴だ、何度やっても同じ事だと言うのに…… いいだろう、アニスの事もそうだがダイアナよ! まずは貴様から先に始末してくれるわッ!」 ザッ!
『侵蝕が始まります。 侵蝕率 1% 2%…』 ポン
「『ミッドガルドッ!』 創造神ジオスだ、【ジオス・ファクタ・アイン】だ!」 バサッ!
ポンポン ピコ!
『創造神【ジオス・ファクタ・アイン】確認しました』 ポン
「『ミッドガルド』よ、外部アクセスを辿り、その先にいるであろう女神、ダイアナに攻撃をしろ!」 ババッ
『了解しました。創造神ジオス様の命令を受諾、外部アクセスを逆探知、女神ダイアナに侵蝕プログラムを送信、攻撃に入ります』 ポン ピピピピ ビコビコ カタタタタタタ…
「さあダイアナ、この世界の神の座から降りてもらおうか」 ニイイッ
・
・
・
ー偽世界「アーク」 神界制御室ー
ピピピ ピコピコ ビビ ピピポ
『現在、創造神ジオスのシナリオに侵蝕中… 侵蝕率 18% 19% 20%…』 ポン
「どうジオス? あなたのシナリオなんて、『ユグドラシル』にかかればこんなものよ」 ニコ
ブウウン ブウウン ピッ! ビイビイビイビイッ!
「えッ! なにッ!」 ファサ…
ピピピ ピコピコ ビイビイッ!
『フェリシア様、外部アクセスを逆探知され、攻撃を受けました。 現在攻性防壁で応戦中です』 ポン
「攻撃ですって⁉︎ 『ユグドラシルッ!』 大丈夫ですか?」 サッ
『はいフェリシア様、この程度の攻撃、私には脅威とも思いません。 お任せください、ただ攻撃アクセス名に「ダイアナ」という名がなん度も繰り返し検索されるのですが… なにか心当たりはあるでしょうか?』 ポン
「『ダイアナッ⁉︎』」 ファサ…
『フェリシア様?』 ポン
「ああ… ごめんなさい… ダイアナですか、久しぶりにその名を聞きました」 フフ…
『ではご存知なのですね?』 ポン
「ええ… ダイアナ、ううん、正式には『個体No.D01 特殊制御コア ダイアナ』は… 私、女神【フェリシア・ディア・ゼルト】、この身体の以前の名前です」 ファサファサ…
『はい?…』 ピピ ポン
神界と下界、神と神、人と人、偽世界「アーク」はその世界全体が争いの渦の中に入っていった。
カチャカチャ… カチ! スウウ…
「よし! 大丈夫だね…」 ヒソ… ソロソロ…
「なあユキヤマ、本当に大丈夫なのか?」ヒソヒソ
「ふふふ! 大丈夫、今、姉は合コンと称した宴から帰って来てぐっすりと眠っているはず。 気づくはずがない!」 ニイ… ヒソヒソ ソロソロ…
「この部屋だ! ここに目的のパソコンがある!」 ヒソ スウウー…
キョロキョロ…
「あった! ようし、電源電源っと」 ヒソ ピコ ブウウンン ピ
「おッ ユキヤマ、なにやらでたぞ」 サッ ヒソ
「ふふふ… パスワードだよ、アニスちゃん。 姉め、小癪な真似を、この様なもの私にとって何の障害にもならない!」 カチャカチャ ブウウウンン… ピコ!
「「 やった!(おおお!) 」」 ヒソヒソ
「さあ、今のうちに執筆と投稿を終わらせてしまおう!」 ヒソ カチャカチャ…
・
「よし! できた!」 タン… ヒソ
「おお! やったなユキヤマ! ご苦労!」 ヒソ
「さあ、あとは投稿をクリッ…」 ヒソ
パアアアアアアアンンンーーッ! シュウウウウ……
「「 ヒイイイイイイッ! 」」 ビクビクウウッ!
パソコン部屋の襖が勢いよく全開に開かれた。
ジロ… ユラユラ…
「ユウウキイイイ… あなたここで何をしている…」 ギュウ! ユラユラ ミシッ…
「ぎゃああああッ! お、おお、お姉えちゃんッ!」 ガクガクガク ブルブル
「今何時だと思ってるのおおッ! はよ寝れええッ!」 ダダッ!
「ユキヤマ!」
「わわわ、投稿! 投稿ーッ!」 カチ!
「オラアアアッ!」 ぺちん!
「ぎゃああああ!」 パタン、キュウウ…
「まったくもう、さっさと自分家にに戻りな! カチャカチャとうるさい!」 スウ、タンッ!
・
・
「大丈夫か?」
「早くお家にネット環境を…」 パタン ぐうぐう…
「お疲れ、ユキヤマ…」 シュン…
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。