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第297話 アニス対勇者ヒカル2

ー第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」甲板上ー


ドオオオオオオオオンンンーーーッ! バババアアアーーー… モクモクモク… ビシイイッ!


ドガアアアアアアンンンッ! ベキベキ! グバアアッ! ダアアアアアンンッ! メラメラメラ…


「あははははッ! どうだ見たかッ! この威力ッ! やはり僕は最強の勇者だあッ! さあて、あいつはどうなったかなあ…… う〜ん?… ククク、姿が見えない… フッ あはッ! 消えた消えたあッ! あはははは! アニスのやつ、チリひとつ残さず消え去ったよッ! 僕の言うことを素直に聞かないからこういう事になるんだッ! ああ~いい気味だッ! ああっははははははッ!」 バッ!


シュワアアアアーーーッ ドオオンン! ゴゴゴゴ…  ボウボウ モクモクモク…


「そんな… アニスちゃんがまさか…」 ガクン


勇者ヒカルが放った神級殲滅剣技、《ヴァルハラ.グラン.シュトライザ》のその威力は凄まじく、アニスがいたであろう周辺には超高温の炎と熱風のため焼けただれ、正規空母「ヒリュウ」の硬い装甲上甲板は容易く溶解、大穴を開け、そのまま艦内から艦底部までを貫いて海上へと達していた。 


そこにアニスの姿は何処にもなかった。 そして、その影響で正規空母「ヒリュウ」の艦内各所に二次、三次爆発と誘爆が起こり、正規空母「ヒリュウ」の艦首部分は完全に破壊されその姿を消し去ってしまった。

          ・

          ・

ー第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」艦橋ー


ドオオオンンーーーッ! ユラユラ グラッ! ガガガガッ ガクンッ!


ビーーッ! ビーーッ!


「司令ッ! 艦首で爆発ッ! 艦首全システム通信途絶ッ! 映像が途切れましたッ!」 バッ! ピピ ビコ!


「ぬううッ!」 グラグラグラッ バチバチッ! バンバンッ 


ポン!


『緊急警報! 緊急警報! 艦体に深刻なダメージを受けました! 繰り返します。 緊急警報! 緊急…』 ピッ ドオオンッ! ガタガタガタ ユラユラ ゴゴゴゴ…


ビイーーッ ビイーーッ ビイーーッ!


「むううッ! 被害報告ッ!」 バサッ!


「はッ! 艦首部にて異状魔力爆発を確認! 艦内で誘爆と火災が発生していますッ! 艦首区画との通信が途絶! 連絡ができませんッ!」 カチカチ ピッ ブーッ


ドゴオオオオオオオオンンンッッ! ガクンガクンッ! グラッ! バチバチバチッ!


「「「「 うわあああッ! 」」」」 ザザッ! ガタタッ! グラグラ…


ビイーーーッ ビイーーーッ ビイーーーッ! ドオオン… ガタガタガタ 


ポン!


『警告 警告 第3区画に異状事態発生! 同区画との隔壁を閉鎖します。 警告 警告 第3…』 ピッ


ビイーーーッ ビイーーーッ! ピコ ウィイイイインン ガコオオオンンッ! ビコッ!


「報告しますッ! 艦首は大破ッ! 第1から第3区画反応なし! 同区画は完全に破壊されましたッ! 集中電探室も応答ありません! 前部、空間魚雷発射管室及びVLS発射管制制御室からの応答も無しッ! 艦首要員の安否は不明ッ! おそらく、状況から艦首要員の生存は絶望! 全滅した模様ッ!」 バッ! ビイッ ビイッ ビイッ! ビコビコ!


「ぜ、全滅! 全滅だとッ⁉︎ 艦首には100人以上が詰めていたはずだぞッ! それが全滅だとッ⁉︎ 艦首はどうなってるッ⁉︎ 映像に出せッ!」 バッ!


「はッ! 直ちにッ!」 ババッ! カチャカチャ ピッ ビコビコ!


ポンッ!


『現在、本艦の艦首周辺の監視装置は機能していません。監視装置の確認と点検を行って下さい』 ピッ


「そんな、一基二基じゃなく艦首部にある全基が故障だと言うのか? 『ヒリュウ』もう一度だ!」 カチャカチャ ピコ


ポンッ!


『現在、本艦の艦首周辺の…』 ピッ


「そんな… まさかッ⁉︎ 『ヒリュウ』、監視装置の状況をッ!」 カチャカチャ ピピ


正規空母「ヒリュウ」の電信員は、「ヒリュウ」の艦首周辺の監視装置にアクセスを試み、映像を出そうとしたが、何度試しても正規空母「ヒリュウ」の艦首映像は出ず、「ヒリュウ」の艦艇支援システムからの返事は何度やっても同じだった。 電信員は艦艇支援システムに艦首周辺に設置されている監視装置の状況を表示させた。


ポンッ!


『本艦の艦首周辺監視装置の現在の状況を表示します』 ピッ


 ピ ビコビコ ピピピ パパパパパパパッ! ビコビコ! ピピッ!


「なッ! 艦首周辺設置の監視装置L1からL6、S1からS5及びR1からR7までの全てに反応なし! 映像出力が作動しませんッ! 全基使用不能ッ! 画像が粗くなりますが、防空指揮所の監視装置S6のみが艦首方向の映像が出せます!」 カチカチ ピコ


「うむ! それでもよい! 映像を出せ!」 バサ!


「はッ! 監視装置S6の映像を出します!」 ピピ タンタン ピコ!


パッ パパッ! ザザアアーー ブウウン パッ!


「むッ!」 ザッ


「お、おい見ろッ! 艦首がッ!」 ガタガタッ! ザワッ!


「そ、そんな… 艦首が… 艦首が無いッ!」 ヨロッ ガクガク…


「「「「 馬鹿な… 信じられん… あ、あああ… 」」」」 ザワザワ ガヤガヤ オタオタ…


正規空母「ヒリュウ」の艦橋内にある大型情報用パネルには、艦橋の前に設置されている防空指揮所の艦外監視装置S6による艦首方向の映像が映し出された。 その映像には、赤く溶けて高熱を出している上甲板に炎と爆煙、その先に80ⅿはあったはずの艦首部分が全て消えてなくなっている映像が映し出されていた。 十数人いる艦橋要員全員が驚きざわめいた。


「むうう… 凄まじい破壊力だな、空母ヒリュウの艦首を吹き飛ばすとは、いったい何をすればあのような… ん? あれは…勇者…か?」 モワモワ… ビビビ…


正規空母「ヒリュウ」の艦橋内にある大型情報パネルの映像には、炎上する甲板上に横たわっている勇者サトシとそれを支えている勇者スズカ、その状況を神剣と聖剣の2本を両手で持ち、高笑いしている勇者ヒカルの姿も映っていた。 そしてその時、さらに大きな爆発と揺れが正規空母「ヒリュウ」の艦内と艦橋を襲った。


ドオオオンンーーッ! グラグラグラッ!


「「「「 うわああッ! 」」」」 ガタガタ ユラユラ バチバチッ! ガガーーッ!


「慌てるなッ! これしきの事でこの『ヒリュウ』、落ちなどせんっ!」 バサッ!


「「「「 はッ! 」」」」 ババッ!


ドゴオオオオンンーーッ! グラグラグラ プチンッ! パパパッ ピヒュウウウウンン……


「ぬッ! 映像がッ!」 バッ!


勇者ヒカルの神級殲滅剣技、《ヴァルハラ.グラン.シュトライザ》の威力により、艦首部分を破壊しくされその姿を無くした正規空母「ヒリュウ」、その影響は正規空母「ヒリュウ」の制御系にも及び始め、メイン動力のフォトンリアクターに続きフォトンジェネレーター、さらには主機関までもが緊急停止してしまった。 


その影響で大型情報用パネルの映像は照明と共に突然切れて艦橋内は真っ暗になり、近接防備兵装のPDS、対空対艦用のVLSなど火器管制制御システム、ブレードナイトの発着艦管制システムと各種探知センサーから管内通信、艦内環境設備までの全てが停止、使用不能になり主機関も停止した正規空母「ヒリュウ」は徐々に高度を下げ始めていった。


ガクン! シュウウウ… ゴゴゴゴ… ズズズズ……


カチカチ ピッ ピッ タンタン ピコピコ…  シ~ン…


「ダメですッ! 『ヒリュウ』の全システムがダウンッ! 機関停止ッ! 高度が維持できませんッ! 『ヒリュウ』降下を開始ッ!」 ババッ!


ゴゴゴゴゴ… ズズ…


「いかんッ! 予備電源に切り替え高度を保て! 窓の装甲シールドを解除! 艦橋内に光を入れろ! 明るくするんだ! しかる後、総員全力を持って原状回復に努めよ! なんとしても機関を最優先に動かし、艦の制御を回復するのだッ! 予備電源ではそう持たんぞ! 急げッ!」 バサッ!


「「「「「 はッ! 」」」」」 ザザッ! バッ! カチャカチャカチャ バタバタ ガヤガヤ 


ヴンッ! ウイイイインン カシュンカシュン パアアアア…


電源が全て落ちた暗い艦橋内では適切な行動ができない… 戦闘時には艦橋内の安全を図る為、窓を全て厚い装甲シールドで覆っていた。 それを、非常用電源を使用して解除し、外の光を艦橋内へと取り込んだ。 明るくなった艦橋内を艦橋要員の兵は慌ただしく動き始めた。


バタバタ ザワザワ ワーワー ガヤガヤ


「むうう… まだだ、まだこんな所で『ヒリュウ』を落とす訳にはいかんッ! なんとしても機関を再始動し、要塞まで… 父島要塞攻略へ行かねばならんッ! それが我らの使命だッ!」 ダンッ!


第一機動艦隊総司令官で正規空母「ヒリュウ」の艦長でもある南雲中将は、機能停止状態となった旗艦、正規空母「ヒリュウ」の艦橋内で、「ヒリュウ」の復旧に向けて全力で指揮をとっていた。

          ・

          ・

ー第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」上空…ー


シュバアアアアーーーッ!  ヴオンッ! シュバババアアーーッ!


「うおおおおッ! この野郎ッ!」 カチカチ ピピ


ビシュウウウッ! ザンッ! バチバチバチッ! ドオオオオンンンッ!


『マスター、敵機撃墜を確認! 警告! 左舷下方30°より敵機2機、急速接近!』 ピッ!


ゴオオオオーーーッ! ヴオンッ! ジャキンッ! ブオオオオーーッ!


ピピピピ ビコッ!


「ちッ! させるかあッ!」 グイッ! ギュウッ!


ヒイイイインッ! バウウウウウウーーーッ! シュバアアーーッ! ゴオオーーッ!


ピピ ビコ!


『隊長! 隊長ーーッ! わあああッ! ガガガガ…』 プツン


ドオオオオンンン!


「高木ーーッ!」 バッ!


ピコ


『友軍22番機、高木曹長、ブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H322」ロスト』 ピッ


「くそうッ!」 グイイッ!


シュバアアアーーーーッ! ギュウウウウンンンッ! ピピピピピピ ビコッ!


「そこだああッ! 落ちろおおッ!」 カチッ!


ブオオオオオオーーーッ! シュバババババッ! ガンガンガンッ! ビシイッ!


ドオオオオオオオンンンッ! バラバラ…


ピコ


『マスター、敵機1機の撃墜を確認、1機は逃走、離脱しました』 ピッ


「はあはあはあ、いいぞ、003状況報告だ」 ギュ ピピ


勇者ヒカルが正規空母「ヒリュウ」の上甲板でアニス達と戦っていた頃、その上空では「ヒリュウ」直掩戦闘機ブレードナイト第3中隊が勇者ヒカルが率いてきた父島要塞所属の反乱軍ブレードナイト部隊と、勇者ヒカルにその自由を奪われ、洗脳された元「ヒリュウ」戦闘機ブレードナイト第1第2中隊との激しい空中格闘戦が続いていた。


ピコ


『はいマスター、戦闘開始から既に30分19秒、敵機の損耗率28%、友軍機の損耗率38%、ややこちらが残機数から見て不利かと思います』 ピッ


「ああ、分かってる… 100機をその3分の1の戦力で相手してるんだ、当然だろ」 グッ


ビイイーー!


『マスター 右舷400mに敵機2個小隊8機が正規空母「ヒリュウ」に向けて降下を開始、さらに左舷500m上空800mから正規空母「アカギ」に向け敵機3個小隊12機が急降下! 指示を願います』 ピッ


ガンッ!


「くそッ! 分かってるッ! 分かってるが、数が多すぎるんだッ!」 ギリッ!


『マスター、優先順位で正規空母「アカギ」へ急降下中の敵機排除を推奨します』 ピッ


「ああ、003、お前の判断はいつも正しいな」 ググ…


ピピッ! ビーーッ!


『マスター! 正規空母「ヒリュウ」に異常魔力爆発ッ! 「ヒリュウ」被弾!』 ピッ


「何いッ⁉︎」 バッ!


第3中隊の中隊長、榊原大尉が愛機の全周囲モニターの下を見ると、遙か下方を艦首に大きな爆発炎と煙、破片を撒き散らしながら艦首を爆散していく第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」の姿があった。


「クッ! 構うな! 第3中隊! 手の空いてるやつは俺について来いッ! 俺たちは空母『アカギ』に降下中の敵機を排除する!」 カチカチ ギュウ!


ピピ


『しかし隊長、「ヒリュウ」が被弾したんですよ! このままでは「ヒリュウ」が…』 ピッ


「柴田少尉、確かに貴様の言い分はわかる、通常ならそれが正論だ! だが今の『ヒリュウ』は空船だ! それよりも攻撃隊を満載している空母『アカギ』の方が戦局を大きく左右する戦力なのだ! 司令も同じ判断をするはずだ!」 グッ


『了解しました。 隊長の指示に従います!』 ピッ


「うむ、他の連中も俺について来い! 今敵機の相手をしてるやつは戦闘を継続! 行くぞッ!」 グイイッ!


『『『『 了解ッ! 』』』』 ピピ グイイッ!


バウウウウーーーッ! シュバババババアアアアーーーッ!


正規空母「ヒリュウ」の上空は敵味方、70機程がいまだに乱戦状態で空中を駆け巡っていた。

          ・

          ・

ー正規空母「ヒリュウ」第一ブレードナイト発艦デッキー


ヒュウウウウ… ドオオン… ガアアンン… グラグラ ガタガタ…


「ここはもういいッ! 総員! 艦首方向の被害復旧作業に回れ!」 バッ


「「「「 はッ! 」」」」 ババッ! タタタタタ……


正規空母「ヒリュウ」の艦内にある第一ブレードナイト発艦デッキ。 予備のブレードナイト数機を残し、デッキ内整備作業員は総出で艦内復旧作業にその場を出て行き、今は無人となっていた。 デッキ側面のハッチが複数開いたままだったので、電源が落ち照明が切れていても外光が差し込んでおり、デッキ内は非常に明るかった。(戦闘中でもデッキ側面のハッチを開いておくのは換気のためだけでなく、デッキ内が万が一被弾した時、その威力と爆風を外に逃すためである)


シ〜ン………  キラキラキラ  パアアアンンンンンッ! シュバアアアアーーーーッ! 


無人となった第一ブレードナイト発艦デッキ内の広い床に、いきなり巨大な光り輝く輪が現れ、その中に数多くの人影が現れ始めた。


シュンシュンシュンッ! シュパパパパパパパアアアッ! シュウウウウウウーーー………


多数の人が現れたその後、その光輝く巨大な輪の少し上の空中に、少し遅れてもう1人、青みがかった白銀髪と純白のスカートを靡かせながら1人の少女が現れ、静かにブレードナイト発艦デッキの床へと舞い降りた。


パアアッ! フワッ トン ファサ… ヒュウウウウ…… ザッ ファサファサ…


「ん、間に合ってよかった… みんな無事に避難できたようだね」 ニコ ファサ… てくてくてく…


第一ブレードナイト発艦デッキに現れたのは、先ほどまで正規空母「ヒリュウ」の艦首上甲板で、勇者ヒカルと戦い、勇者ヒカルの神級剣技によってその姿が消えたはずのアニスと、正規空母「ヒリュウ」の乗組員兵士達だった。 アニスは兵士達の無事を確認をすると、彼らをそのままにしてブレードナイト発艦デッキ出口へと、彼らに気づかれないように歩いて出ていった。


「「「「「 ううう… ああ〜… あれ? こ、ここは… 俺たちは… 」」」」」 ムク… フリフリ… ザワザワ…


巨大な光り輝く輪の中に現れた多数の兵士、彼らは正規空母「ヒリュウ」の艦首部分で各任務についていた乗組員兵士、112名であった。 彼らはアニスによって、破壊された艦首の各所属部署より、ここ無人となった第一ブレードナイト発艦デッキへと避難転送、救助されたのであった。


トントントン てくてく…


「ん、さすがだね『ヤマト』、あれだけの人数を一度に一瞬で転送移動できるなんて凄いよ、こんな事をできるのは 君くらいだけだ」 うん てくてく


コ~ン…


『いいえ、それはアニス様がいらしてたからこそできた事です』 ピ


「ん? 私?」 ガチャ てくてく


『そうですよアニス様、アニス様があの時、彼らの座標を瞬時に魔法陣で指定して下さったからです。 私はその座標指定された魔法陣を転送移動させただけです。 しかし、よくあのような局面で短時間にこのような事を… 奇跡としか言いようがありません』 ピッ


「えへへ、そうかなあ」 ニコニコ てくてく


『アニス様、あのような事は流石に神であっても瞬時にするなど、なかなかできませんよ? アニス様だからです。 アニス様、やはり貴女様は創造神シュウゴ様が仰ってた通り、全ての世界において唯一無二の偉大なる存在なのですね』 ピ


「ん? なんだそれ? シュウゴのやつ、また適当にいい加減なことを… だけど、彼らを助けられてよかったよ… あの勇者、私だけを狙えばいいのに、このふねの中に乗ってる人たちまで道連れにしようとしたんだよ… 創造神ジオスと私の戦いなのに、何の関係もない人たちを… しかも神級の剣技まで使用するとはねえ…」 う~ん てくてく


アニスは先ほどまでの事を思い出していた…

          ・

          ・

          ・

「あははッ! 神敵用の剣技だあ! 喰らえ! 神級殲滅剣技ッ!《ヴァルハラ.グラン.シュトライザーッ!》」 シュビュンッ! バッ!


キイインッ! ドゴオオオオオオオーーーッ! バアアアアアアーーッ!


「わああッ!」 バッ キュッ!


「これで終わりだあッ! アニスーーッ!」


ギュワアアアアーーッ!


「まったく… 創造神ジオスのやつ、こんなものまで与えていたんだ…」 ギュウッ!


ドゴオオオオオオオーーーッ! シュバアアアアアアーーーッ!


「ん? 殲滅でこの威力は… これなら『アヴァロン』で打ち返し… ん? 下に人の気配? なんで… ああッ! このふねの兵士さんたちかあッ! 『ヤマトッ!』聞こえるッ⁉︎ お願いッ! 座標を送るから指定した場所にいる人を全員転送避難させてッ!」 ササッ! 


コ〜ン…


『え? ええッ⁉︎ ア、アニス様ッ⁉︎』 


「急いで!《ディク.マクレットサークッ!》」 シュバッ! キイイインンッ!


『わわッ⁉︎ た、 対象座標確認! 転送開始ッ!』 ヴンッ!


パアアアアアアアーーーッ キラキラキラ シュンッ!


アニスは咄嗟に念話で離れた距離にある超重巡航艦「ヤマト」の制御システムを呼び出した。 そしてアニスが詠唱を唱えた瞬間、正規空母「ヒリュウ」の艦首艦内で任務についていた兵士全員の足元に金色の魔法陣が現れ、その瞬間後彼らの姿は光に包まれその場から消えていった。 


その直後、勇者ヒカルの神級殲滅剣技、《ヴァルハラ.グラン.シュトライザ》がアニスのいた周辺に直撃し、正規空母「ヒリュウ」の艦首部分を破壊していったのだった…


ドオオオンンッ! メキメキメキ ドバアアアアアアーーーーー………

          ・

          ・

          ・

てくてくてく…


「本当はあの時ね、『アヴァロン』で打ち返そうかと思ったんだ。 だけど、それだと私は平気なんだけど確実にふねの中にいた兵士さんたちの何人か… ううん、何十人かは犠牲になってたからね、かなりの被害が出たはずなんだ… 私はそれを防ぐために咄嗟に君に転移するよう判断したんだ」 サッ! てくてく


『確かに、彼ら全員を救うには良い判断だったと思います。 まあ、それも私の転移技術があったからですけどね』


「そうだね、君を創りこの世界によこしたシュウゴには感謝だね。 まあ元々君の転送技術は、惑星の衛星軌道上から地上の人や物を転送移動ができる、超長距離転送技術装置だったんだよねえ… だから、この程度の距離ならできる、造作もないっと思ったんだ」 てくてく


『その通りです、アニス様』


「ん、『ヤマト』ありがとう、助かったよ」 ニコ てくてく


『どういたしまして、アニス様』


「ん?」 ピタ


ガヤガヤ ザワザワ ガサゴソ ザッ


「おい、ここは格納庫じゃないかッ!」 ババッ!


「そうだいつの間に!」 ザッ 


「「 どうやって? わからん! 」」 ガヤガヤ ワイワイ


わーわー… ザワザワ…… てくてくてく…


「ん… 彼らはあのままでも大丈夫そうだね、さてと…」 てくてく サッ!


避難転送された112名の正規空母「ヒリュウ」艦首要員の兵士達は、自分達がいつの間にか持ち場の艦首から、遠く離れた艦の中央にある、第一ブレードナイト発艦デッキにいる事に、気づきざわめき始めた。 アニスは第一ブレードナイト発艦デッキから既に外の連絡通路へと出て歩いており、デッキの出入り口から聞こえてきた彼らの声を聴いて安心した。


『アニス様、これから勇者の元へ行かれるのですか?』 


「ん、彼にちょっとね、私は戻るよ」 ファサ…


『ではアニス様、私が転送いたしますか?』


「ん? ありがとう… でもいいよ、私1人なら転送よりも自分で動いたほうが早いからね」 ニコ


『では《刹那》を? 人の身では絶対に会得できない神速を誇る超加速移動術ですね。 わかりました、お気をつけてください、アニス様』 ピ


「ん、またね『ヤマト』、いくよ《刹那》」 シュヒュンッ! サササアアーー…


『一瞬ですか… 凄いですねアニス様』 コ〜ン…

          ・

          ・

ー正規空母「ヒリュウ」前部上甲板ー


ゴゴゴゴゴゴゴ… ドオオンン… モクモクモク… ヒュウウウ…


「ククク、このふねももう終わりって感じ? どんどん海に向かって落ちてるじゃないか」 ニヤア


「ヒカルッ!」 ググッ キッ!


「あは! いいねえその表情! その反抗的な目つき! 僕がしっかりと躾直してあげるよ! 僕の妻に相応しい、絶対服従の躾をねええ」 ニヤニヤ


「だ、誰が貴方のなんかにッ!」 ババッ! グッ!


「ククク、そうやって僕に逆らえるのも今のうちだよ! だいたいさっきのを見ただろ? 僕の神剣の技の威力を! あのアニスとかいうも惜しいことをしたよ… 見ろよ! 跡形もない、完全に吹き飛び、消滅しちゃったジャないか、 君もああなりたいのかな?」 ニヤニヤ ジャキン!


ジュウウウウ… チリチリ…


「う、ううう…」 ギュ


「ククク、さあスズカ、まずはそこを退いてくれないかなあ? サトシをこの手で息の根を止め、その力、そして能力を吸収したいんでね! それに、サトシがいると君はいつまで経っても僕のところに来てくれないからねえ」 ニヒヒ ザッ ザッ ビュンビュン!


「こ、こっちに来ないで! 貴方なんかにサトシを殺らせはしないわッ!」 バッ!


「ククク… スズカ、君はまだわからないかなあ? 僕はね、神様の言う通りに動いてるんだけなんだ! つまり、僕がやってる事は全て神様が望んでいること、神様の意思そのものなんだ! そう、これは誰にも逆らうことのできない決定された行い、神様のシナリオなのさッ!」 ザザッ!


「そんな… サトシが腕を無くした事が… 神様によって既に決まっていたことだと言うの!」 グッ


「そう! 全ては決まってたことなんだよ! このふねが落ちること、アニスというが消滅したこと、サトシがここで右腕を無くし僕の手で消え去ること、そしてスズカ… 君が僕の妻になることなどね、どれも神様が決めた決定事項なんだ! ふははははッ!」 ザッ バッ! ニイイッ


勇者ヒカルは、勇者サトシとスズカに向け不敵な笑みをして言い放った。 が…


『ん〜… それはちょっと違うかな勇者ヒカル…』 キン…


「「 なッ⁉︎ えッ⁉︎ 」」 バッ! クルッ!


シュバッ! ヒュウウウウ… ふわッ トン てくてくてく ピタ! ザッ!


勇者ヒカルと勇者スズカの2人が声が聞こえた方を見た瞬間、何もないその場所にいきなり青みがかった白銀髪と純白のジャケットにスカートに格闘戦闘用ショートブーツを履いたアニスが現れた。


「「 お、お前はッ!(アニスちゃんッ!) 」」 ザッ! パアア…


「ん!」 ニコ ファサファサ…


勇者の2人が同時に叫んだそこには、青みがかった白銀髪と純白のスカートを風に靡かせ笑顔のアニスが立っていた。 その姿を見て勇者ヒカルは驚き、スズカは安堵の表情を浮かべていた。


「アニスちゃん… よかった、無事だったんだ…」 ヘタ…


「ごめんねスズカ、心配かけたね」 ニコ


「そんな馬鹿なッ! あり得ないッ! なぜだッ! なぜ平気でそこにいるッ! お前は僕の技で消し飛んだはずだッ! アニスッ!」 ジャキン!


「ん? ああ、あの神から授かったとか言う剣技のことですか?」 サ…


「そうだ! ただの剣技じゃないんだぞ! 神級の、しかも神様の神敵に対する最大級の攻撃剣技なんだぞッ! なんでお前は平気なんだよッ!」 ババッ!


「ん〜、そうですね… 確かに、アレは神級の剣技でしたね。 だけど…」 ファサ…


「だけどなんだあッ⁉︎ 神様の敵を倒すほどの威力がある技を受けてなぜッ! 勇者でもない普通の女の子のお前がなぜ生きているんだあッ⁉︎」 ババッ!


「まあ、どんなに強力な技でもねえ… 当らなければいい事だし、その気になれば相殺もできたよ? 」 うん?


「ふん! またいい加減なことを… 偶然助かっただけなんだろ! いいだろう、今度こそ完璧にお前を消し去ってやるよッ!」 ニイイ ジャキンッ!


「ええ〜、なんだろうねこの勇者は… 全然、人の話を聞かない、理解しないんだ… ん〜、しょうがないか…」 ス〜 チャキ!


勇者ヒカルは怒りをあらわにし、アニスに向けて神剣と聖剣の両方を構えてきた。 アニスもまた背中腰裏にある神器の「アヴァロン」を抜いて構えた。


「アニスちゃん!」 バッ


「ん、スズカ、サトシと一緒に少し下がってて、ちょっと忙しくなりそうだから」 ニコ


「は、はい! サトシ行くよ!」 グイ 


「うう…」 ザッ ザッ…


勇者スズカは傷ついて眠っているサトシと一緒にその場から邪魔にならない程度に下がっていった。


「ククク… やれやれ、どこに居ても一緒なのにねえ… まあいいや! ところで、お前はまたそんな小さな剣で僕とやるつもりかなあ?」 ニイイ


「ん、前にも言ったよね、これで十分だよ」 ニコ ファサファサ…


「うぐぐ… くそう、全くふざけたやつだよ、面白くない… じゃあ今度こそ確実に消えてもらうよ!《縮地ッ!》」 シュバッ!


「ん、《縮地》」 シュバッ!


勇者ヒカルとアニスは同時に再び《縮地》による高速近接戦闘に入った。


シュバッババババババアアーーッ! ビュンビュンッ!


「ふんッ! はあッ! おおおッ!」 シュバッ! ザザッ! ババッ!


「ふんふん♪ ほいほいっと よッ はいッ!」 ババッ! ヒュンッ! シュババッ!


シュシュシュシュッ! ババババアアーーッ! ダダダダダッ! ビュウウウッ!


「ちッ やはりアニスは速い! だが、これならどうだ!」 バッ!


「ほいほい ん?」 シュバッ! ヒュヒュンッ! ピク!


「アニスッ! この高速移動中にこれは避けられないだろ!《インフェルノ・ドーヴァッ!》」 バッ!


キインッ! シュゴオオオオオーーーッ! ビュバーーーーーッ!


「ん!《ヴェルダー.ディルウィードッ!》」 サッ!


キュインッ! ドゴオオオオーーーッ! ギュワアアッ!


ビシイッ! ドオオオオオンンンッ! ジュウウ… パラパラパラ パラ…


シュバババババアーーーッ! ヒュウウウーーッ ビュンビュンッ!


「なッ⁉︎ アレを避けずに相殺したと言うのかあッ⁉︎ くそおッ! これならどうだあッ! 喰らええッ!《ファイヤー・ブレッドーッ!》《アイシクル・ランスーッ!》 うおおおッ! 聖剣剣技!《グランド・ギガ・エクステイションーッ!》」 バババッ!


キンキンキイインッ! ズバババババババアアアアーーーッ! シュゴオオオオーーーッ!


「うん? 魔法と… 勇者最強の魔法剣技ですか… では…《ファントム》」 ユラユラ ヒュンッ! パッ


「なッ⁉︎ アニスが消えたッ⁉︎」 シュバババババーーッ! ザザアアーーーッ! ピタ!


シュバババッ! ドドドドッドドオオオーーーーッ! ドゴオオオーーーンンッ!


勇者ヒカルの高速移動術との最大級の攻撃複合技、攻撃魔法と勇者の聖剣剣技が同速のアニスに向けて放たれた。 しかしそれが当たる瞬間、アニスの姿がブレその場から消え去った後、勇者ヒカルの攻撃魔法と聖剣剣技がアニスがいた辺りで炸裂した。


消えたアニスの姿を探すため、勇者ヒカルは《縮地》を解き、辺り周辺を見渡した。


「くそッ! どこだ! どこに消えたッ!」 キョロキョロ ヒュウウウ…


「ここだよ!」 シュバッ!


「えッ?」 サッ


「ん、剣技!《グランツ. カッツエ!》」 ビュンッ! シュバアッ!


「なッ⁉︎ わあああッ!」 キイイインッ! バシイイイッ! ドオオオンンンッ!


ダンダン! ザザアアアーーッ!


勇者ヒカルの背後に突然アニスはその姿を現し、即座に神器ミドルダガーの「アヴァロン」による剣技攻撃を放った。 勇者ヒカルは突然のことで、神剣「エクスカリバー」でそれをなんとか防いだが、アニスの剣技の剣圧に押され、後方へと吹き飛ばされてしまった。


ふわッ トン ザッ


「さすがは勇者、私の攻撃をよく防いだね」 チャキ ニコ ファサファサ…


「ち、ちくしょう… なんだよお前のその動きは! 僕の剣技は躱すわ、魔法は相殺するわ、ましてや神様からの神級の剣技まで… 僕は勇者なんだぞ… それも最強のッ! なぜだアニス! なぜお前に僕の技が効かないんだあ!」 ムクッ ザッ! ババッ!


「ん、あのね勇者ヒカル、貴方の剣技は完全ではないの… そう、その右手に持つ神剣と左手の聖剣の技、それを使った神級の技、どれも貴方は自身のモノになってないんだ…」 フリフリ


「はあ? それはどう言う事だッ! 僕のモノじゃないだって? 最強勇者の僕が持つこの神剣である『エクスカリバー』と聖剣の『グリフォール』、神敵用の神級剣技ッ! それが全てが僕の力、勇者である真の力ではないって言ってるのかッ⁉︎ それは僕の持つ力が全て偽物だとでも言いたいのか! アニスッ!」 ジャキンッ!


「ん、残念だけどね… 勇者ヒカル、貴方の剣技に至ってはどれも本物ではない… いいえ、本来の剣技の姿じゃないの… そう、貴方の神級剣技は全て仮初の剣技… 貴方のは一度使用したら同じ剣技は二度と発動しない、創造神ジオスからただ借りただけの一度きりの使い捨て剣技なんだ」 サッ


「なッ! そんな出まかせを… 僕がそれを信じるとでも思ってるのかッ! さっきのを見ただろ! 偽物の技がこのふねをあのように破壊できるかッ⁉︎ 海に落として沈めようとできるかッ⁉︎ できないだろッ!  できないはずだ! この結果は僕の技が本物だという証拠なんだッ!」 ザザッ!


「ん~… ええっとねえ勇者ヒカル、同じ神級剣技を二度使用した事はあるの?」 ファサ


「ないッ! 神級の技を使うほどの相手がいなかったからね! お前とサトシに使ったのがはじめてだよ! 見ただろあの威力! アレのどこが仮初の剣技なんだッ! アニスッ!」 ザッ


「そうだね… でも、貴方は知らないようだけど、神級剣技の本来の威力ならあれでは済まないんだ。  そう… 神、もしくは神の許可を受けた者だけが使う事の許される神級剣技… しかも『殲滅剣技』はその名の通り、対象目標の生きとし生けるもの全てとその周辺共々消し去る剣技… あんな中途半端な威力じゃないんだ」 ジイ…


「そんな… 全てを消し去るなんて… じゃあサトシが使った技も…」 ガクガク


「スズカ、神級の名を持つ技は全て人智を超えた威力を発揮するんだ… 軽はずみな考えで使っていい技じゃない… サトシは十分気を付けてたよ」 サッ


「ふん、知ったような事を… ではアニス、お前は僕の技が中途半端だと、二度と使えない技だと言い切るんだなッ!」 ギリ…


「ん、本当… 残念だけどね」 フリフリ


「ククク、いやあ全く… お前はどこまでもこの僕をイラつかせてくれるよ… 」 プルプル…


「ん?」


ザッ! グググッ! ブワアアアーーーッ!


勇者ヒカルはその身に膨大な魔力を纏い始め、彼の両手に持つ神剣と聖剣、「エクスカリバー」と「グリフォール」は青白い光を帯び始めた…


「あはははッ! じゃあアニス… これが、これがお前が言う中途半端な技だあッ! もう一回受けてみろおッ! 神級殲滅剣技ッ!《ヴァルハラ… ガハッ! うああッ!… うう…」 ふらッ ガクン! ガシャアン! カランカラン… パアアアッ… シュウウ……


勇者ヒカルが、アニスに対して再び神級剣技を発動しようと技名を名乗った瞬間、勇者ヒカルはいきなり強烈な目眩と頭痛に襲われた。 身に纏っていた魔力は霧散し、神剣と聖剣の両方も青白い光は消え失せて両手から甲板上に落ち、勇者ヒカルはその場に膝をついて蹲ってしまった。


「…… やっぱり… だからもう使えないって言ったのに… 」 フリフリ


てくてくてく… ピタ…


「ううう… そ、そんな馬鹿な… 力が… 魔力が消えていく… な、なんだ… よ、これ… は… うう、あ… やめろ! ぼ、僕に近寄るな!… 触るなッ!」 ガクガク…


アニスは膝をついて頭を抱え苦しんでいる勇者ヒカルの元へと来て止まり、甲板上に落ちていた勇者ヒカルの神剣と聖剣を見た。


ジイイ…


「勇者ヒカル、貴方がどれだけ神の剣技を授かったかは知らないけど、使った分の剣技はもう使えないよ、それとその神剣と聖剣、貴方にこれを授けたのは恐らく創造神ジオスでしょ? 彼らしい作りだよ」 フリフリ…


「うう… ふう ふう 《ヒール!》」 シュバアア…


勇者ヒカルは自分自身に治癒魔法の《ヒール》をかけ、痛みを取り除いた。


「はああ… よしッ! いいぞ… それでアニス、それはどう言う意味なんだよ! 僕の神剣が偽物だと言いたいのかッ!」 ガバッ! ザ! ガシイッ! ビュビュンッ! ジャキン!


勇者ヒカルは回復すると、すぐさま起き上がって甲板上に落ちていた自分の神剣と聖剣を拾い上げ振り回し、アニスに三度向けて構えた。


「わっと… まあね、確かに創造神アイツも一応、今は神になってるからねえ… 神剣と言えば神剣なんだけど… 神剣、『エクスカリバー』ねえ… 勇者ヒカル、貴方は気づいてるの? それ、未完成の神剣だよ?」 ジイイ…


「なッ! 嘘をつくなッ!」 バッ


「ん〜ん、嘘じゃないよ、それに勇者ヒカル、貴方も創造神ジオスの単なる手駒、貴方の神級剣技は全て仮初、全て偽物なんだ」 フリフリ


「そ、そんなこと、僕は信じないッ! 信じないぞッ! だがそれが事実だとして、僕にはまだコイツがある! 僕の神剣、『エクスカリバー』が! 聖剣の『グリフォール』がここにあるんだ! これがあれば神級剣技なんか使えなくても僕は最強なのには変わりないさ!」 ググッ


「ん、まだやるつもりなんだ」 


「ふん! アニス、神級剣技が使えなくても僕が最強の勇者なんだよ!」 バッ! ジャキン!


「ん?」


「僕が最強なのは剣や魔法だけじゃ無いって事だ、これはどうかなあ!」 グググッ!


勇者ヒカルは、離れた場所で片膝をついて待機している彼の乗機、ブレードナイト「REPPUU 22型 G008」に右手をかざし命令した。


「『REPPUUッ!』、上の連中は今どうなってるッ⁉︎ アイツらに僕の声を伝えろッ!」 ザシ


ブオンッ!


『了解です、マイマスター、上空の友軍ブレードナイトは自己判断で空母及び敵機に攻撃、交戦中です。 全機に通信回線開きます』 ピッ!


「いいぞ、じゃあ命令だあ!」 ニヤア


「ヒカルッ! 何をするの! もうやめなさいッ! 貴方じゃアニスちゃには勝てないわッ! もう、無駄な事はやめなさい!」 バッ


「ふッ! スズカ、さっきも言ったろ? これは神様が決めた事なんだと、僕がすることは全部神様の意思だと、これは全て決定されたことなんだと、だから僕が負けることなんて絶対にないんだッ!」 バッ


「ヒカル…」


「ククク、さあみんな! 僕の声を聞け! 聞くんだ! 僕に忠実なお前たちッ!」 バッ!


「ん? 忠実なお前たち? なんだそれ?」 うん?


「はははは、最終命令だ! 自分の愛機ごと空母に突っ込めえッ!」 ババッ!


『マスターの声を送信、上空の友軍機全機が確認、命令を実行に移行します」 ピッ


勇者ヒカルの忠実な僕となった反乱軍ブレードナイト部隊と、正規空母「ヒリュウ」の直掩戦闘機、第一第二中隊の残存機が一斉に、第一機動艦隊に所属する正規空母「ヒリュウ」と「アカギ」に向かって急降下を始めた。


「「「「 ウウウ… 了解、御命令ノママニッ! 」」」」 ブオンブオンッ!  グイイッ!


ヒイイイイイイインンンッ! ババババ バウウウウウウーーーッ! シュバアアーーーッ!


「あはははは! もう止めるのは無理だぞ! アイツらは必ず空母に突っ込む! 僕の命令は絶対なんだ! 最強の勇者とはこんな事もできるんだよ! どうだ!驚いただろ! アニスッ! これでお前ら全員、ここで終わりだあ! スズカも残念だよ! さっさと僕の元に来ないからこうなるんだ! じゃあ僕はこの場は下がるとしよう、巻き込まれたくないからね!」 ニイイ! クルッ ザッ ザッ


「ヒカルッ! この卑怯者ッ!」 バッ


「ククク、なんとでも言えばいい! 褒め言葉と受け取っておくよ!」 ニヤア… ザッ ザッ!


「ヒカルーーッ!」 ググッ!


「ん〜 あの数は凄いねえ、このふねの防御膜も消えてるみたいだし、直接当たっちゃうとねえ… これはちょっと無理かな? どうしよう…」 ん〜…


キラキラッ! ゴオオオオーーー…


動力を失い、海上へと降下中のアニス達の乗る正規空母「ヒリュウ」、その後方に無傷で航行している正規空母「アカギ」と護衛艦隊、それらに向けて上空から多数の反乱軍ブレードナイト及び、洗脳され人格はすでになく、勇者ヒカルの傀儡、人形となった元正規空母「ヒリュウ」の元第一第二ブレードナイト中隊が一斉に急行以下を始め突撃していった。


ヒュウウウウ…  グワアアアアア… 


「ん… そうだよね、もう彼らは人ではない… 人間には戻れないんだ… その姿は可哀想だね、辛いよね、だから… ね…」 ググッ クルクルッ! チャキ! ザッ!


アニスはゆっくりと海上に落ちていく正規空母「ヒリュウ」の甲板上からそれらをじっと見ていた… そして神器ミドルダガーの「アヴァロン」を右手の中で回し逆手に持ち直し、急降下中のブレードナイトをじっと見つめて構えた。


「ん! 神級迎撃剣技…」 グググッ シュバアアーーーッ ボウッーーーッ!


アニスの身体に膨大で青みがかった金色の魔力が纏い始めた。


「なッ⁉︎ アニスお前ッ! まさかその剣技はッ!」 ザザッ!


ニコ…


「勇者ヒカル、これが本物です… 《ガイエリアス.グラン.ファングッ!》」 シュピンッ!


ドオオオオオオオオオオオーーーーーッ! ギュワアアアアアアアーーーーッ!


膨大な青みがかった金色の魔力の本流が、急降下して来る大多数のブレードナイトに向けて、アニスから放たれていった…




いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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