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第294話 創造神ジオスの勇者とアニスの勇者

ー第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」甲板上ー


ヒュウウウ… ドオオンンッ! ゴオオオーー… ダアアンッ! バババッ! ドンドンドンッ!


第一機動艦隊の周辺では、護衛艦や駆逐艦及び各艦搭載の直掩ブレードナイトと、勇者ヒカル率いる反乱軍のブレードナイト編隊とが激しい対空戦闘や空中格闘戦をしていた。 そんな中、旗艦である正規空母「ヒリュウ」の広大な甲板上に、勇者ヒカルの乗る漆黒のブレードナイト「REPPUU 22型 G008」と戦闘による強い風が吹く中を、黒髪を靡かせ聖剣、聖槍を構えた勇者のサトシとスズカが武器を構えて対峙していた。


ピ ピ ピ ヴオン! ガシュン!


「うう… くそッ! くそおッ! なんでアイツらが… この国に勇者は僕と【レン】の2人だけだったはず! どうしてここにいるだよお⁉︎」 グッ ガンガン!


勇者ヒカルは、この国ヤマト皇国にいる筈のない自分と同じ勇者のサトシとスズカが目の前にいる事に驚きを隠せず苛立ち、操縦席の足元を蹴っていた。 自分と同じ勇者が現れた… それは、ここまで創造神ジオスの指示で自由にやって来た彼にとって、彼らの登場は想定外で邪魔以外の何者でもない事だった。


ヒュウウ… バサバサ ファサ…


「う〜ん、なかなか降りてこないわね… まあ、ヒカルらしいって言えばヒカルらしいわね」 フリフリ


「まあな、アイツはいつもそうだったからなあ… 威勢がよく自信過剰、だけど本当はかなり臆病なんだ… あの性格は変わらないのさ」 チャキ ポリポリ


「そうね… そう言えばサトシ、さっき『お仕置きの時間』って言ったけど、あれアニスちゃんの真似でしょ」 ニコ


「あ、気づいてたんだ。 いやあアニスさんが僕らと模擬戦する時にたまに言うからさ、つい口から出てしまったんだ」 はは…


「あのねサトシ、あれはアニスちゃんだから言っていい言葉なの! アニスちゃんにまだまだ遠く及ばない私たちがアニスちゃんを差し置いて使っていい言葉じゃないわ」


「ああ、そうだな、気をつけるよスズカ… もっともっと力をつけて、アニスさんに近づけたその時まで使わないようにする!」


「アニスちゃんにかあ… 何年かかるかしら?」 う〜ん…


「さあ?」 フリフリ


「「 ふッ あはははははッ 」」 


ブウウン ピ ピ


「ちッ! お前ら何がそんなに可笑しいッ! この僕を馬鹿にしやがってええ… そうだ、今の僕は最強なんだ… 神様から特別にもらった能力もある! ククク、今の僕はお前らよりも強い! 以前の僕とは違う、違うんだああッ!」 カチカチ ピッ!


ウインッ! ガシュンッ! ジャキ!


勇者ヒカルのブレードナイト「REPPUU 22型 G008」が、勇者の2人に向け300mmインパクトカノンを構えた。


ピコ


『マスターヒカル! 当機の主兵装、300mmインパクトカノンは対ブレードナイト用です! 対人用ではありません!』 ピッ


「構うもんかあッ! 喰らええッ!」 カチ


ヴオオオオオオオーーッ! シュババババババッ!


勇者サトシとスズカに向けて、対ブレードナイト用の300mmフォトン炸裂弾が撃ち出された。 が、しかし…


「スズカッ!」 バッ!


「ええッ!」 コクン!


「「 《縮地ッ!》 」」 シュバッ! ヒュンッ!


ドドドドドッ! ドカドカドカッ! ダンダンドオオンンッ! 


300mmフォトン炸裂弾が勇者の2人に当たる寸前、勇者サトシとスズカの2人は高速移動術、《縮地》を使用し、その場から消え去った。 2人がいた辺り周辺は、フォトン炸裂弾が降り注ぎ、正規空母「ヒリュウ」の甲板上に命中する度に破裂していった。


「ははははッ! どうだ! 2人とも跡形もなく吹き飛んだだろ!」 ニヤア


全周囲モニターには、300mmインパクトカノンのフォトン炸裂弾による爆発と煙で、勇者サトシとスズカの2人の姿を捉えることができなかった。


ピコ


「マスターヒカル、2人の存在をロスト」 ピッ


「あはははッ! やったやった! どうだ! サトシ! スズカ! 流石のお前らも一溜まりもなかっただろ!」 ニイイッ!


300mmインパクトカノンによる攻撃で、全周囲モニターから勇者のサトシとスズカの姿が消えたのを見て、勇者ヒカルは狂喜に満ちていた。 だが、勇者サトシとスズカは高速移動術でいきなりブレードナイト「REPPUU 22型 G008」の足元に現れ、攻撃をした。


シュバッ! ザッ! サッ!


「そんな物から出て来なさいヒカルッ! 聖槍槍技!《アーテルッ!》」 ヴンッ! シュババアッ!


「ヒカルッ! 勇者なら道具に頼らず生身で来いッ! 聖剣剣技!《クラウド.バーストオオッ!》」 ビュンッ! キュウインッ!


ズバアアアアアーーーッ! ドゴオオオオーーーッ! ドオオオオンンンッ!


「うわあああッ! なんだああッ!」 ガクンガクンッ! ガタガタッ! バチバチバチイイッ!


勇者サトシとスズカの攻撃は、ブレードナイト「REPPUU 22型 G008」の右腕を吹き飛ばし、左足の膝関節も破壊して、攻撃と移動手段を奪っていった。 操縦席内は激しく揺れ、機器類が多数ショートして火花を散らしていた。


ビーーッ! ビーーッ! ビイーーッ!


『警告! 警告! マスターヒカル、右腕損傷消失、左脚膝関節アポジモーター損傷破壊歩行不能、主兵装300mmインパクトカノン使用不能、緊急事態です。 当機の戦闘能力が80%ダウン! 戦闘維持は不可能、直ちに退避してくださいッ! 警告! 警告!……』 ピッ


「なッ! お前らああッ!」 ババッ!


ザッ スタタッ! ヒュンヒュンッ! ビュンッ! ファサ…


「うん、こんなものかな? ヒカル、僕たちにそんな物の攻撃は通用しないよ」 二ッ チャキ!


「さあヒカル! もう『REPPUU(そいつ』は動けないわ! いい加減にして出て来なさいッ!」 ビュン! チャ!


ビーーッ! ビーーッ!


『ハイドロ応答なし、左脚不動の為擱座着地、待機状態に入ります』 ピ ピピ


グワアアアッ! ガシュンッ! ドオオン! ドオオンン! ビュウウウンンン…


「く、くそう! サトシッ! スズカッ! 調子に乗りやがってえッ!」 ググッ シュウウ シュウウ…


ブレードナイト「REPPUU 22型 G008」は、片膝を立てた状態で正規空母「ヒリュウ」の甲板上に着座した。 勇者ヒカルは、操縦席内に響き渡る警告を聞きながら、再び全周囲モニターに映った勇者サトシとスズカを睨みつけていた。


ズウウウンン… ドンドンドンッ! パパパ… ゴオオオー… ビュウウウ…


バサバサバサ…


「ねえサトシ、ヒカルは出てくるかしら?」


「出てくるしか無いだろ? もう、『REPPUU(あれ』は役に立たない。 ヒカルのやつもそれはわかってるはずさ」


周辺で戦闘音が響く中、やがてブレードナイト「REPPUU 22型 G008」の操縦席ハッチが開いた。


ピッ バクンバクン ザッ!


「お前らああ…」 ググ…


「ふふ、やっと出て来たわね」 ニコ


「やあ、ヒカル」 二ッ


ウイイイインン カシュン ザッ ザッ ザッ!


「サトシ、スズカッ! お前らよくもやってくれたな! 僕にこんな事してタダで済むと思うなよ!」 グッ


「タダでか… そんな事よりヒカル、勇者のお前がここで一体何をしている! この周りの状況は一体なんだッ⁉︎ 何を考えているッ⁉︎」 バッ


「うん? ふッ ククク… なんだお前ら、その様子だと何も知らないんだ…」 ニヤ


「どう言う事? 解るように答えなさいヒカルッ!」 サッ! ビュン!


「あははッ! スズカそう怒るなよ、言われなくても今教えてあげるさ! サトシもよく聞け! 僕はね、ただ神様に言われた通りに動いてる… そう、これは神様が望んだことなのさ!」 ニイイッ!


「「 神様だとッ!(ですってッ!) 」」 ザッ!


「そうさ! 僕はね、お前たちとは違うんだ! 神様から選ばれ、最強の能力を与えられた勇者の中の勇者! 最強の勇者なのさ」 ニヤ


「神様って、俺たちがこの世界に召喚された時に出会ったあの神様の事か?」


「そうさ、創造神ジオス様さ!」


「やっぱり… それでヒカル、貴方は神様から何をしろと言われたの?」


「ふふふ、どうせお前らも僕の言いなりになるんだ、教えておいてやるよ!」 ニタア…


「なにッ!」 ザッ!


「落ち着いてサトシ、ヒカル言いなさい!」 サッ


「ふん! いいかい? 神様はねえ、『この国に現れる悪しき存在により、この国の人間をが全て狂わさせられる。勇者ヒカルよ、お前にだけ特別な能力、全てを制する力を与える。 その能力をもってこの国を、一度その全てを浄化し、悪しき存在をも排除、消滅するのだ! これは神命である!』だってさ! 今起きているこの状況はいわば神様の意思だ! 僕はそれに忠実に従っているだけなのさ」 ババッ!


「『悪しき存在』かあ… なあスズカ、それってやっぱり…」 サ…


「ええ… 十中八九、アニスちゃんの事ね」 フリフリ


「ああ? なんだお前ら、神様の神敵である悪しき存在の事を知っているのかッ⁉︎」 ザッ!


「「 ああ、(ええ)知っている!(わ!) 」」 ファサ…


「へええ… それは都合がよかった。 これで心置きなくお前らを僕の支配下に出来そうだ! サトシは僕の従者としてそいつと戦ってもらう、スズカはそうだなあ、君は僕の恋人に、そばに置いてあげるよ! にひひひ!」 ニヤニヤ


「ヒカル! おまえ正気かッ⁉︎ そんな事できるはずないだろ!」 チャキッ!


「ヒカルうう… だれがあんたの恋人になんかなるもんですかッ!」 ワナワナ スチャ!


「あはははは、そう言えるのも今のうちさッ! 僕には神様からもらった特別な能力があるんだ。 その能力の前では勇者のお前たちだって逆らえない! そう、あの月夜見やその部下たちも全てがそうだったように、僕のいいなりになるんだ! 神様から授かったこの能力からは逃れる術なんてないのさ!」 バザザ! ググッ!


「スズカ来るぞッ!」 ザッ!


「ええッ!」 スタ! クルクルッ ビュンッ!


勇者のサトシとスズカは聖剣と聖槍を構え、同じ勇者ヒカルの攻撃に備え構えた。


シュワワワアアッ! ユラユラ シュバアアアーーッ!


「あはははッ! これが僕の能力だあッ! これでも喰らい、後悔しながら僕に服従しろおおッ!」 ザッ!


バババアアアーーーーッ!


「「 クッ! 」」 チャキッ! バサバサ ググッ!


「はああッ!『神聖なる支配領域ッ!』」 シュバッ!


キュインッ! パアアアアアンンンッ! シュバアアアアアーーーッ!


「「 うわああッ!(きゃあッ!) 」」 ボッ! バババッ!


勇者ヒカルは、創造神ジオスより授かった特殊能力、「神聖なる支配領域」を勇者の2人に向けて放った。 それは甲板上にいたため、白いモヤのような壁が勇者ヒカルを中心にドーム状に広がり、あっという間に勇者サトシとスズカをその支配領域内に取り込んでいった。


「はあっははははッ! かかったな! どうだい? もう指一本動かせないだろ? この空間はね、僕の自由意志で最大が半径500mまで自由自在に操れるんだ! さあ、2人とも僕の言う事を聞くんだッ! 武器を捨ててこのぼくに跪けッ!」 バッ!


「「 ………… 」」 ジ…


「どうした? さあ早くこっちに来い! 僕の元に来て忠誠の証として跪くんだッ!」 バッ


勇者ヒカルは勇者サトシとスズカに呼びかけた。 しかし2人からは思いもよらない返事が返ってきた。


「はああ? 何ふざけた事を言ってんのヒカル? なんで私たちがあなたに忠誠をしなきゃいけないのよ!」 ファサ!


「同感だね、それに今のはなんだったんだ? 特に体に異常はないしどこも、なんともない… さっきのが神様の能力なのか? この後何か体に効果でも出て来るのか?」 サ サッ! パ パ


勇者ヒカルの特殊能力「神聖なる支配領域」の中で、勇者サトシとスズカの2人は全く影響を受けず平然としていた。


「はああッ⁉︎ ば、馬鹿な! なぜ動けるッ⁉︎ なぜ僕に口答えをするんだッ⁉︎ この支配空間内では何もかも全て僕の意思に反論できず、言いなりになるはずなのに、なぜお前たちはそうならないッ! なぜだああッ!」 バッ!


「なぜって言われてもなあ…」 


「そんな事はどうでもいいわ! 私たちに攻撃を仕掛けて来たのは確かッ! つまりヒカル、あなたは私たちの敵でいいのねッ⁉︎」 ササッ ビュンッ スチャ


「ふッ ククク… 敵かあ、元々僕は最初からお前らなんか味方とも、仲間とも思っちゃいないのさッ!」 ニイイッ


「ヒカル… お前どうしたんだ? 前はそんなんじゃ無かったじゃないか…」


「あははは! サトシ、僕はねッ! 神様から選ばれた最強の勇者なんだッ! お前たちただの勇者とは格が違うんだよ格がッ!」 ババッ!


「ヒカル、あなた少しおかしいわよ! ううん、違う… 異常よッ!」 ザッ!


「異常で結構ッ! 僕はそのうち勇者の枠を超え、この世界の神の1人になってやるんだッ! そう、お前たち勇者やこの世界の者たち、その全ての上に立つ存在にだッ! 正常な常識? 行動? 言質? 神になろうとしている僕にとって、それらが当てはまるわけが無いだろ? 正常の上をいく異常が僕の正常なのさッ!」 バッ! ふふふ…


「ヒカル… 俺たち勇者は人なんだ、人の身で神になる事なんて出来ない… 不可能なんだッ! だから…」 バッ!


「無駄よサトシッ! アレはもう私たちの知っているヒカルじゃ無いわッ! ヒカルによく似た別人よ! 何を言っても無駄だわ!」 ファサッ!


「ふんッ! 僕は僕のままだッ! 変わってなどいないッ! 神様が僕に勇者最強の能力を与えてくれた事、この国に召喚した事、この国の浄化を依頼した事、そして悪き存在を排除、消滅を命じた事、これは全て神様のシナリオにそっての事さ! 勇者とて神様のシナリオを覆す事はできない。 これはすでに決まった運命なんだ!」 バッ


「はああ、運命か… もう何を言っても無駄なようだなヒカル…」 フリフリ


「サトシ、ヒカルは危険だわ、私たちでヒカルを止めるしかないのよ!」 サッ


「ははッ! 僕を止めるだって? できるものかッ! これでどうだ!『人神遊戯!』」 ササッ


ヒュウウウンン スパンッ!


「なッ! 光の表示板ッ⁉︎ また新たな能力かッ⁉︎」 ザッ


「なにあれッ⁉︎ ヒカルの前に出た光の板に何か書いてあるわよ? 情報ウインドウ?」 ササッ!


勇者ヒカルの目の前には光の板が現れ、その中には多数の人の名前が記されていた。


「ふふふ… さあて、勇者サトシとスズカは………」 ツ〜


勇者ヒカルは、現れた光の板に記されている多数の名前を指でなぞり、勇者サトシと勇者スズカの名前を探し始めた。


「サトシサトシサトシ…… あれ? じゃあスズカは…」 ブツブツブツ…


勇者ヒカルは光の板の中を指でなぞりながら、勇者サトシとスズカの2人の名前を探した。 しかし何度最初から探しても二人の名前はそこに記されていなかった。


「え? ないッ! そんな、名前が載ってないッ! どう言う事だよ! 神様ッ! 話が違うじゃないかあッ!」 ババッ!

          ・

          ・

          ・

ー創造神ジオス、偽世界「アーク」某所 隔絶空間ー


『神様ーッ!』 ブン…


ガタッ! ダンッ!


「馬鹿なッ! この偽世界を創造した時、そこに生ける人間は全て私の管理の元、全てシナリオが決まっている存在のはずッ! それが例え召喚した勇者といえどもだッ! しかしそれがなぜッ⁉︎ その表示板に名が載ってないッ⁉︎ あり得ない事だッ!」 ババッ カタカタカタ カチャカチャ ピ ピピッ!


今、勇者ヒカルが置かれた現状を見て、創造神ジオスは偽世界「アーク」に存在する異空間、アニスにもこの偽世界「アーク」の最高神である【フェリシア】にも悟られない隔絶空間内で驚き、そこに設置してあるこの偽世界「アーク」のシナリオシステムのキーボードを素早く叩きながら確認作業に入った。


カタカタカタ ピ ピピッ タンタン ピコピコ ビビッ! ポンッ!


「なッ! こ、これは… 」 カチャカチャ… カチャ……


シナリオシステムの大型情報パネルには、偽世界「アーク」誕生から今日まで、全ての歴史とそこにおける全ての出来事、人や動植物、天災に人災、文明の発達と消滅、流行病に戦争、そしてそれに関わり生まれ消えていく人間、全てのシナリオが記されていた。


「ここだ! ここから全てが狂い始めたのだ!」 ダンッ!


それはほんの最近、この偽世界「アーク」の他に存在した異世界「アーク」、その再構成世界の新生世界「アーク」、そしてこの偽世界「アーク」、創造神ジオスがとある人物にこの特殊な世界空間に閉じ込められた後に起こった出来事、そのとある人物は創造神ジオスの最大の仇敵、この全ての「アーク」と名のつく世界に降臨した女神の姿の生き写しアニス、そのアニスが特定の人間に手を差し伸べてから、彼のシナリオや人間の管理が狂い始めたのだった。


「おのれ… またしてもアニスかッ! 『人神遊戯』は私が創造したこの偽世界「アーク」の人間全てを制御するシナリオシステム、それが創造神たる私の管理下から人間がすでに数人、私の管理から外されているとは… このままではアニスの完全抹殺、消滅に支障をきたす。 私が他の神界世界に行けぬではないか!」 ググ…


創造神ジオス、元は特殊制御コアの個体No.000Zfar01が暴走、6大女神の力を授かっていた特殊制御コアが独自進化し、自らを創造神ジオスへと昇華して現在に至る存在だった。 この特殊な世界の一つ、偽世界「アーク」はあニスを抹殺、消滅するために創造神ジオスが創造した世界、そこに存在する人間を管理し数多くのシナリオを作り、アニスの抹殺、消滅を画作して他の神界世界へと移動しようとしていた。 


その創造神ジオスを正常に戻すために、神界世界からこの特殊で複数存在する空間世界の「アーク」に降臨したのがアニスこと創造者【アニライトス・ディオ・ジオス】で、アニスは創造神ジオスをこの空間世界、複数の「アーク」の中に閉じ込めたのであった。 創造神ジオスがアニスの本名のジオスを名乗ったのは、6大女神の影響である。


「むうう… 私がアニス抹殺、消滅のために召喚した勇者が2人もアニス側に付いた… いや、私の元から離れアニスの勇者となったのだ! それで私の制御シナリオシステムから名が消えたのだ… 私から勇者までも奪うとは、忌々しいやつめ」 ググ…


シナリオシステムの大型情報パネルの隅に表示されている、偽世界「アーク」勇者召喚者10名のうち、すでに4名がこの偽世界「アーク」から姿を消した。 そしてサトシとスズカの名が消え表示されず、そこには創造神ジオスの勇者4名の名のみが明るく表示されていた。


「勇者ケンゴ、勇者ヒカル、それとミューロン連邦国家の勇者ヒビキとミユキか… ふむ、ケンゴは順調に成長し、その力と能力はもはや神の領域に近いな、いい感じだ。 ヒカルは… このままアニスの勇者と戦い、足止めにちょうど良い、あとはヒビキとミユキだな…」 カチ


ピ ブウウン ピコ ピコ


「ふふふ、仕方がない、少々シナリオを変更するとしよう… ミューロン連邦国家の彼女らには人の身を捨て、対アニス用の勇者兵器になってもらおうか、ついでに連邦全ての人間にもな! それには今しばらく時間が必要だが… まあ、間に合うだろ」 ニヤ カチャカチャ ピッ


ブウウウンン タタタタタ ピコッ!


『シナリオNo.2011 ミューロン連邦国家、アトランティア帝国へ侵攻 追加変更シナリオ、勇者及び連邦国家人民人体改造プログラム作動開始』 ピコ!


「ふふふ、これでいい… そしてこの後同時にNo.2024が発動すれば… アニスは消える! 間違いなく消滅するはずだあ! ああっははははははッ!」 バサッ! カツカツカツ プシュウー ピ


創造神ジオスは、アニスの抹殺、消滅のシナリオの作動を確認した後、高笑いしながらシナリオシステムの部屋から出ていった。

          ・

          ・

          ・

ー第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」甲板上ー


ドンドンドンッ ヒュンヒュン ダダダッ ダダダダッ! ドゴオオオオンンッ!


ビュウウウウーー…


「くそッ くそッ! 僕の最強能力、神様からの能力が通じないなんて…」 ググッ!


「よく分からないが、そこまでのようだなヒカル!」 チャキッ


「そうね、さあ、今のこの状況をすぐに止めなさい!」 ササッ!


「はあ? そんなの無理に決まってるだろ? さっきも言ったろ? これは神様が望んだシナリオなんだと… それに、もうあいつらはただ戦う為だけの僕の忠実な人形なのさ! 人格も人としての常識も無いただただ僕の命令のみに動く人形、今更止めてもどうしようもないのさ!」


「ヒカル… お前ええ……」 グッ


「それと、お前たちは何か勘違いをしている」 サッ


「「 勘違い? 」」


「僕の強さは神様から授かった能力だけじゃないって事さ、最強勇者って言ったろ? つまり、僕はお前たちなんかより強い、それも圧倒的にね」 スッ ジャキンッ!


「そ、それはッ!」 バッ


「神剣… それもただの神剣じゃないわ!」 ザッ


ヒュンヒュン ビュンッ!


「そう、これは僕が神様からもらった神剣『エクスカリバー』、創造神でもある神様に作ってもらった本物の神剣なのさ!」 ニヤ ビュンッ! チャキ!


ブオオオオオンン シュワッ 


黄金の柄、青白い聖なる力を放つ白銀の刀身、ところどころに刻まれた植物をモチーフにした意匠、まさしく神剣の名に相応しい、そのものであった。


「へええ、『エクスカリバー』かあ、映画や漫画、小説なんかに出てくる武器だけど本当にあったんだ」


「ええ、秘めた力もありそうね、だけど…」 う〜ん


「あははは、どうだ凄いだろッ! さてと、お前たちの武器それ、聖剣に聖槍だろ? 神剣の僕に勝てるのかなあ?」 にひひ


武器の優劣では確かに聖剣、聖槍は神剣に劣る。 だが…


「そうだねえ、武器だけなら俺たちの方が不利かな」 トントン


「ええ、武器だけならそうね」 ニコ


「な、なんだよお前ら! 神剣だぞ神剣ッ! 負けるんだぞ! それでもいいのかッ!」 ザッ


「そうだ、いいことを教えてあげるよヒカル」


「なに?」


「俺を、いや俺とスズカを鍛えてくれたある人はねえ、小さなダガー一本で聖剣はへし折るわ、魔法を弾くわ、岩や大地も穿つわでとんでもない人なんだ、空間まで引き裂くんだぞ? それに比べれば今の君がそんな神剣一本を構え、叫んできても負ける気配がしないんだ」 サッ


「そうね、アニスちゃんどころか八岐大蛇様やアコンカグア様とも比べたら神剣一本なんて、どうって事ないわ」 フリフリ


「くそう、舐めやがってええ…」 ググ…


勇者ヒカルは神剣「エクスカリバー」を構え同じ勇者のサトシとスズカに襲いかかった。


「これでどうだあッ! 『エクスカリバーッ! エクスプロージョンッ!』」 シュバッ! 


ドオオオオオーーーッ! ギュワアアアアアーーーーッ!


「スズカッ!」 バッ


「ええッ!」 コクン


「「 縮地ッ! 」」 シュバッ! ヒュン!


勇者ヒカルの攻撃が当たる瞬間、勇者サトシとスズカの2人は高速移動術《縮地》を使用してその場から一瞬で消え去った。 攻撃を放った勇者ヒカルにはそれが見えておらず、自分の放った攻撃が2人に当たったものと見ていた。


ドゴオオオオンンッ! ブワッ! バアアアーーッ!


「ああっははははは! 見たかッ! これが僕の力だ!」 シュウウウウ…


2人がいた辺りは激しいほので燃え盛っていた。 がその時、勇者ヒカルは背後からいきなり攻撃を受けた。


シュバッ!


「ここだヒカルッ! 聖剣技ッ!《烈刀閃ッ!》」 ズバッ!


「うわッ!《ガードナアッ!》」 キュインッ! 


ドオオオオンンッ! ビシイイッ! ビリビリビリッ! 


ズサッ! チャキ!


「さすが勇者、瞬間防御魔法障壁か!」 ニッ


「うう… いつの間に背後に…」 ササッ! チャキ!


シュバッ!


「ヒカル! よそ見をしないッ! はああッ!聖槍技ッ!《閃火槍襲撃ッ!》」 シュババババッ!


「なッ! このッ! このおッ! うわあああッ!」 キンキンッ! ズバアアッ!


ブシュウウッ! ダアンンッ! ザザザアアアーー…


勇者ヒカルの背後にいきなり現れた勇者サトシとスズカ、勇者ヒカルは勇者サトシのいきなりの一撃を防御魔法の魔法障壁で防ぐことができたが、そのすぐ後から畳み掛けるように勇者スズカの聖槍槍技の蓮撃を受け、左腕にそれが擦り、傷口から血を流しながら後方へと吹き飛ばされた。


スタン クルクルクルッ ビュン! ファサファサ…


「ヒカル、あんな攻撃では私たちに通用しないわ!」 シュン!


ズザザ… ザッ! スクッ! パンパン バッ バッ


「痛てて… 《ヒール》」 シュバ パアア…


勇者ヒカルは立ち上がり、スズカから受けた左腕の傷を治癒魔法を使って治した。


「ヒカル、おまえまだ本気じゃあないんだろ? さあ来いッ!」 チャキ!


「ああ、本気じゃないさ、しかし驚いたよ、随分と早く動けるじゃないか、これは僕も本気で行こうかな」 ニイイ


「サトシくるわよ!」 サッ


「ああッ!」 チャッ!


「くくく、雷帝…《撃滅雷撃閃ッ!》」 グググッ! ビュバッ!


ズドオオオオオーーーーッ バリバリバリッ! バババアアアーーッ!


「え?」 バッ!


「こ、この剣技はッ⁉︎ くううッ! スズカ下がって! 聖剣技!《爆崩風雷斬ッ!》」 シュババッ!


スバアアアアアーーーッ! バチバチバチッ! ビュをオオオオーーッ!


ギュワアアアアアッ! バチイイッ! ドゴオオオオオンンンッ! ババババアアアア…


シュザ チャキ…


「へええ、威力を相殺したか… やるじゃないかサトシ、それでこそ勇者だよ」 ニイイ ビュンビュン!


パラパラパラ ヒュウウウ…


「そりゃどうも… だがヒカル、ひとつ聞きたい」


「どうぞ、同郷の勇者で友達のよしみだ、なんだい?」 トントン


「では、今の技は確か【レン】の技じゃなかったか? なぜお前が使えるッ⁉︎」 グッ!


「そうよ! なぜなのッ⁉︎ 答えなさい!」 ファサ…


「ふッ そんなもの、レンから奪ったからに決まってるだろ!」 ニヤアッ


「なッ 奪った? レンから奪っただと? ではレンはッ!」 バッ


「ああ、レンならもういないさ、ここにいる、僕の中にねッ!」 トントン ニヒイッ!


勇者ヒカルは自分の胸に右手の親指を立ててつつき、不敵な笑みを浮かべていた。


「まさかッ! レンを…レンを殺して取り込んだのかッ⁉︎」 ザッ!


「そんな… なんてことを… あなた達親友同士だったんでしょ? なんで!」 ファサ


「ああそうだ、親友だったさ、僕に力を与えてくれたね。 アイツを取り込んだおかげで僕はよりいっそうパワーアップしたんだ! 感謝するほどのな!」 ふふふ


「親友を犠牲にするなんて…」 ググッ


「さあ本気の僕を見たいんだろ? 見せてやるよ!」 グググッ! シュバアアアーーーッ!


「サトシッ!」 サッ


「スズカは離れていて、ヒカルは僕がやる、勇者として同級生としてこの僕がアイツを止める!」 グッ!


「ええ、わかったわ」 ササッ


「ククク… サトシ1人だけでいいのか? 言っとくが、今の僕はただの勇者じゃない、最強の勇者だ! 勇者が勇者を取り込んだんだ、取り込んだ勇者の力と能力は飛躍的に上がるんだ!」 ググッ


「くッ! だがそれでも2倍、いや3倍程度だ! 今の俺でもなんとかなる!」


「ああっははははは! サトシ、それは違う! 間違いだよ! 2倍3倍なんかじゃない、2乗倍3乗倍なんだ!」 ニヤア


「は? そんな… 馬鹿な…」 チャッ


ズバアアアアアーーッ!


「あははは! いやあ、もう力をつけ過ぎちゃったかなああ… 力の加減がつかないかもだよ? サトシ、覚悟しろよ? こうなるともう手加減なんてできないからねえ」 ニヒヒ


ブワアアアッ ゴゴゴゴゴゴ…


勇者ヒカルの身体を包むように濃密な魔力が溢れ纏わり始めた。


「そうか… なるほど、まんざら嘘じゃないようだ… これは俺も全力を出し切るしかないか」 グッ


シュバアアアアッ! ボオオオオオッ!


勇者サトシもその身体に青白く光る魔力を纏い始めた。


「ははッ! さすが勇者! 凄い凄い! サトシ、お前を取り込みたくなったよ! 取り込んでさらにパワーアップだ! そうすれば僕はこの世界最強になる! 本物の神にもなれそうだ!」 ああッ!


「ふッ そう簡単に行くかな? ヒカル、君は真に強い人がいる事を知らない。 勇者だろうが神獣だろうが、ましてや亜神や神すらも敵わない人がいる事を… 」 グッ


「ふん! そんな存在がいるなら会ってみたいねッ! 行くぞサトシッ!《縮地ッ!》」 シュバッ!


「うッ! 《縮地ッ!》」 シュバッ!


2人の勇者は高速移動術を使い、その場から一瞬で消えた。 そして次の瞬間、辺りに高速移動音と剣と剣が鍔迫り合いをする甲高い音が響き渡った。


ビュン! シュバババババッ! ギイイイイイインンッ! バチバチバチッ!


「ヒカルッ! やっぱり《縮地》が使えたのかッ!」 ビギギギッギッ!


「あははは、当たり前だろ? 僕は最強の勇者なんだ、お前たちが使えて僕が使えないなんて事ないさ!」 ニイ ギギギッ!


ギャリンッ! ババババッ! ザザッ シュウウウウ……


「流石に強いな。 さっきの言ったことはまんざら嘘じゃないようだねヒカル」 チャキ


「ああ? 当たり前だろ? 僕が嘘なんかつくもんか。 さて、あまり長引いても仕方がないし、スズカを僕のものにもしたいからさっさと決着をつけようか?」 チャキン!


「クッ! スズカをお前になど渡すかあッ! 彼女は俺がこの命に変えても守るッ!」 ビュンッ!


「サトシ、あなた…」 カアア…


「あはははは、無駄無駄無駄ああッ! 今の僕に敵う者なんて僕の神様以外いないさ!」 ククク!


「ふッ 『僕の神様』か… 勝手に言ってろ! なら俺はお前を倒し、スズカを守る!(アニスさん、貴女の技、使わせていただきます)」 ギュウッ!


「いいだろう… やってみろおおッ! サトシーーッ!」 シュバッ!


「行くぞッ! ヒカルーーッ!」 シュバッ!


ビュンビュンッ! シュババババババアアーーッ!


「「 うおおおおおおおおーーッ! 喰らええええッ! 」」 バババアバアーーーッ!


ビュバッ! ドゴオオオオオオオオンンンッッ! ブワアアアアーーーッ!


「サトシーーッ! きゃあああーーーッ!」 ズバババアアアーーーッ!


バチバチバチ バリバリ ドドドドドドオオオオーー……


創造神ジオスの勇者ヒカルと創造者アニスの勇者サトシ、2人の本気の戦いが正規空母「ヒリュウ」の甲板上に、巨大な爆発による炎の塊と夥しい威力の放電現象を起こし、それが強風と共に吹き荒れていた。




いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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