第291話 最強勇者ヒカルの能力
ーヤマト皇国 排他的経済水伊豆諸島上空ー
ヒイイイイイインンンーーッ! シュバババババーーーッ! ビュンビュンッ! ビュンッ!
第一機動艦隊旗艦、正規空母「ヒリュウ」から発艦したブレードナイト「SHIDENKAI 21型」第一戦闘機大隊の第一第二中隊60機が、高度3000mの上空を艦隊に接近中の反乱軍、敵ブレードナイト部隊を迎撃するために編隊を組んで飛んでいた。
ヒイイイイイーーーーッ ピ ピ ピ
「第一戦闘機大隊より『ヒリュウ』CICへコンタクト」 ピッ
ピポ
『こちら「ヒリュウ」CIC受信」』 ピッ
「現在、我が隊はヤマト皇国領内伊豆諸島、八丈島上空を通過! 間もなく敵ブレードナイト編隊と接触する!」 ピッ
『了解、センサーで確認した、接敵まであと80秒、貴隊の検討を祈る! オーバー』 ピッ
「了解、迎撃戦闘に入る アウト」 ピッ
ヴュオン! ガシュンッ! ビコ!
『マスター、主兵装200mmインパクトカノン安全装置解除、迎撃可能です』 ピッ
「よし、全中隊各機へ、大隊副隊長の平岩だ! 間も無く敵と接触する、迎撃準備ッ!」 グイッ
『『『『『 はッ! 』』』』』 ピピッ!
ギュワアアアアーーーッ! シュンシュンッ! シュンッ! シュバアアアアーーッ!
「むッ! あれは…」
キラッ キラキラキラ…
正規空母「ヒリュウ」の第一戦闘機大隊60機は戦闘態勢を整え暫く進むと、雲ひとつ無い大空のはるか前方に無数の光の光点が見え始めた。
ピピ ビコビコ!
『マスター敵機です、捕捉しました』 ピッ
「ああ002、俺にも見えてる! 第一戦闘機大隊全機突入ッ! 全て叩き落とせッ!」 グッ グイッ!
ヒイイイイイインンンッ! バウウウウウウウーーーーッ! シュバアアアアーーーッ!
『『『『『 了解ッ! 』』』』』 グイイッ!
バババババウウウウウウーーーッ! シュバババババッッ! ビュンビュンビュンッ!
第一戦闘機大隊副隊長、平岩大尉のブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H002」を先頭に、60機全機がスラスターを全開にして飛んで行った。 やがて、先頭の平岩大尉の機体がその照準に敵機を捉えた。 が…しかし、平岩大尉はその照準を通して敵機に違和感を抱いた。
ピピピピピピ ビコ!
「なんだ? 奴ら俺たちが見えてないのか? 油断するにも程があるぞ? 何故いまだに編隊を組んだまま飛んでいる? 奴らも俺たちに気づいているはず、それなのに何故戦闘態勢に入らない? このままでは俺たちに撃ってくれと言わんばかりでは無いか」 ギュウ…
そう、平岩大尉の言う通り、大尉たち第一戦闘機大隊が主兵装の200mmインパクトカノンを両手で構えながら高速で急接近してきているにも関わらず、反乱軍のブレードナイト部隊46機は悠然と編隊を組み、武器も構えずに通常飛行速度で飛んでいたからだった。
ヒイイイイイインンン シュバアアアアーーーー…
「なんだかよくわからんが、悪く思うなよ…」 グッ
ピピピピピピッ ビコッ!
平岩大尉が操縦桿の射撃ボタンに手を添えたその時、ライナー支援啓発システムから警告が鳴り響いた。
ビイイーー ビイイーー ビイイーーッ!
『マスターッ! 前方に障壁が発生ッ! 衝撃に備えてください!』 ピピッ
「なにッ! うおッ!」 バッ
よく見ると、第一戦闘機大隊のすぐ前の空間に、白いもやっとした幕が突然現れ、急激な速さで遙か上空から垂れ下がっていった。
「「「「「 うわあああああーーーッ! 」」」」」 ググウウッ!
ギュワアアアアーーーッ! ジュボオオッ! ジュバジュバッ! ババババッ ボボッ!
第一戦闘機大隊2個中隊60機は、突撃速度のまま垂れ下がってきたその白い幕の中へと突っ込んでしまった。
ヒイイイイイーーーー… ピ ピ ピ…
「うう… はッ なんとも無い、なんだったんだあれは? おい!002ッ! 状況を知らせろッ!」 カチカチ ピ
ブウウウン…
『… ジジ ジ ビビ ガガ…』 ピッ
「うん? どうした002! 機体と周辺の状況を早く出せ!」 グイ
ピコ!
『ジジ… マスター、支援システムにわずかな影響が出ました… ガガ』 ピッ
「なに! 大丈夫かッ! 002ッ! うッ!」 ガクンッ! ピヒュウウウンン… グググ ピタ!
平岩大尉が事態をライナー支援システムに聴こうとしたその時、今まで高速で動いていた大尉の機体ブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H002」が突然停止し、操縦席内の電源が全てダウンして暗闇になってしまった。 これは大尉の機体だけでなく、迎撃に来ていた第一戦闘機大隊2個中隊60機全てが同じ状態になってしまい、その場の空中で全てが空中停止していた。
「馬鹿なッ! 機体が止まった? ライナーが操縦席にいるんだぞ⁉︎ なぜ機体の電源まで落ちる!」 グイグイッ! カチャカチャ カチカチ
平岩大尉は必死に動かなくなった自分の愛機、ブレードナイト「SHIDENKAI 21型 H002」の暗闇になった操縦席内でスイッチ類を押し、電源の復旧に努めた。
カチカチカチ タンタン! バンッ!
「くそおッ! 動けッ! 動けッ! 002! 返事をしろッ! 中隊各機! 聞こえるか? 応答しろ!」 カチカチ ピッピッ グイグイッ!
ピッ
『ガガガガ… ジジ…』 プツン!
『…ジジ… ジジジ…』 プツプツ…
「くそ! ライナー支援システムどころか隊内通信もダメかッ!」 ダンッ!
ピッ カチカチ グイッ! ピーーーッ!
「ううッ! 緊急用ハッチも開かない… 外は一体どうなってる!」 ググッ ダンダンッ!
なにをやってもなんの反応もない暗闇の操縦席で平岩大尉が苛立ち、一向に開かない正面ハッチを素手で叩いて出ようとしたその時、大尉のヘッドギアにある無線機レシーバーに若い男の声で通信が入ってきた。
ピッ
『やあ、手も足も出ない状態は気に入ってくれたかな?』 ピッ
「なッ 通信が… だ、誰だッ!」 バッ!
『僕? いやだなあ、僕の声に聞き覚えがないかなあ… それでもヤマト皇国の国民かい?』 ピッ
「ま、まさかその声は…」 タラ…
平岩大尉はその声の口調と声色で、1人の人物に気付いた。
『あッ ようやく僕が誰だか分かったみたいだね! やはりそうだよねえ、この国の者なら僕が誰だか分からない訳ないんだ。 なんたって僕は神様によってこの国に呼ばれて来た、選ばれた人間だからね』 ピッ
「貴方は! 勇者ヒカル様ッ!」 バッ
『うん正解〜! ご褒美に動けるようにしてあげるよ!』 ピッ
パチンッ!
平岩大尉の耳に聞こえてきたのはこのヤマト皇国の勇者【ヒカル】の声だった。 その勇者ヒカルが無線越しの向こうで指を鳴らす音が聞こえた瞬間、平岩大尉率いる第一戦闘機大隊2個中隊60機のブレードナイトの機能が回復し、電源が一斉に戻っていった。
ビュヒイインッ! ピ ピ ビコ! ビコビコッ! ヴオンッ! ヒイイイイイイイインンン…
「うおッ! 電源が戻ったッ!」 ピ ピコピコ ブウウンンッ!
ピポ!
『マスター、システム再起動! 申し訳ありません、突如全システムがダウンしてしまいました… 直ちに戦闘準備に入ります』 ピッ
「うむ。頼んだぞ002ッ!」 カチカチ ビコビコ!
ピッ!
『『『『『 隊長! 』』』』』 ピピッ!
「おおッ! 全員無事か? 各機被害報告ッ!」
『第一中隊全機異常なしッ!』 ピッ
『第二中隊も全機異常なしです!』 ピッ
「よし! さて! 002、情報をくれ!」 グイッ!
『はいマスター、先程のは何らかの魔法障壁の一種と考えられます。 攻撃、防御力は皆無、されど通信が全て遮断されました。 母艦である正規空母「ヒリュウ」とのコンタクトができません なお、現在位置の特定不明、されど前方方向に反乱軍と思われるブレードナイト45機を確認…距離2000mの位置で空中停止、待機中です」 ピッ
「待機中だと! そうだ、勇者がいた! 今どこにいるのか探してくれ!」
『了解、サーチを開始します』 ピッ
「頼む!(そういえば敵は46機だったはず… 数が合わない、もう1機はどこに消えた)」 むうう…
ピコ!
『探す必要はないよ! 僕ならここにいるさ!』 ピッ
「えッ⁉︎」
ビイ ビイ ビイッ!
『マスターッ! 当機直上より異常接近機ッ!』 ピッ
「なッ! うわあッ!」 バッ!
ギュンッ! ドバアアアッッ! ビュンッ! ババババババアアーーッ! バリバリッ ビシイッ!
平岩大尉の機体「SHIDENKAI 21型 H002」のすぐ前に、全身が真っ黒、漆黒のブレードナイトがいきなり現れ空中停止した。
ドオオオンンンッ! プシュウウウ…… ピ ピ ピッ!
『異常接近機、当機前方50mの位置で停止』 ピッ
シュバアアアーーーッ! ヴオンッ!
「く、黒いブレードナイトだと… 右肩には我が国のマーク、002ッ!」
『はいマスター、機体解析開始します、皇国兵器開発局データーバンクに照合………… 照合確認、該当する機体は1機のみ、ヤマト皇国国防軍、試製一七号、次期主力艦上戦闘機A7M1S 「REPPUU 22型 G008」号機です』 ピッ
「試製一七ッ⁉ 『REPPUU』だとおッ! 我が軍の最新鋭秘匿機じゃないかッ!、まだ実戦配備どころか量産さえされてない機体だぞッ!」
「あははは、さすが優秀な『SHIDENKAI』のライナー支援システムだね… そう、この機体はね実戦配備用の最終試作完成機さ! これから量産に入るところらしいけど、その前に僕がもらってあげたんだ」 ニイイッ!
「勇者ヒカル様ッ! それは勝手に試作機を持ち出したと言う事ですかッ⁉︎」
「あ? いや、ちゃんと月詠からもらったんだ! いい機体だよコイツは、最高速度と高機動運動性能、重武装に強力な防御力、どれをとっても最高傑作だね、勇者の僕が使うに相応しい機体だよ」 ニッ
「うぐぐ、月詠様… 反乱首謀者が… 勇者ヒカル様! 貴方は我が国の勇者のはず! 天帝卑弥呼様の味方ではなかったのですかッ!」 ギリッ!
「味方? 卑弥呼の? この僕が? あはははは、違う違う! 僕はこの国の誰の味方でもないさ! 卑弥呼も月詠も、そして君たちも… そう、この国の人間全て味方なんて思ったことは一度もないよ!」 ククク…
「なッ⁉︎ 我々を、卑弥呼様をッ! そしてこのヤマト皇国をッ! その全てを裏切るおつもりかッ!」 バッ
「裏切る? さっきも言ったように僕は最初からこの国、ヤマト皇国の味方に成ったつもりはないよ。 君たちが勝手にそう思っていただけ、僕はこの世界に神と召喚者によって召喚された… このヤマト皇国に来た時、君たちが僕らをいいように祭り上げたので僕もそれを利用し、この国に居着いていただけさ!」 サッ
「勇者レン様は! あなたと同じくしてわが国に召喚された勇者レン様も同じ意見だったのですか!」
「レンかあ… いや、あいつは僕とは違ってねえ、真面目すぎたんだ。 レンも馬鹿なやつさ、もっと自由にすればいいのにねえ、せっかく力を得たのに『この国のために頑張ろう! この国の為につくそう!』だってさ! それをしつこく僕にも強要するからレンには消えてもらったんだ」 ニイ
「消えてもらった? そんな… 勇者レン様は自ら国を抜け出し失踪したものと… それを貴方が?…」 ワナワナ
「そう! 僕がレンを消したんだ! あいつは僕を信用してたからねえ、油断した勇者なんて一撃だったよ。 しかもそのおかげで僕は勇者レンの勇者の力を吸収することができたんだ! 素晴らしいパワーアップだったよ!」 ググッ!
「うぐぐ、お仲間を… 同じ勇者を貴方は… こ、この事は艦隊本部に報告させてもらいますぞ!」 グッ
「うん? 報告だって? うくくく、あはははッ! 無理無理無理! 無理だよ、今君たちがいるこの空間は僕に支配されているんだよ? 僕の許可がなければ君たちはなにもできない。 その場から満足に動くことができないし、ここから出る事もできない、ましてや通信なんて全くできやしないんだ」 ふふん!
「そんな… 支配された空間だとッ⁉︎ では先程の障壁は…」 ギュウ…
「やっと気がついたんだ、そうだよ、ここは僕の支配空間の中、さっきのはその壁さ! 入ったら僕が許可しない限り、二度と外に出られないけどね」 ニヤ…
ピコ
『隊長、確かに勇者ヒカル様の言う通りです! 先程から数機が何度も試しているのですが、先程の障壁を超える事ができません! 通信も国防軍本部どころか、どの部隊とも連絡ができません! 艦隊旗艦、母艦「ヒリュウ」にもコンタクト不能、通信ができませんッ!』 ピッ
「ク… 閉ざされた空間という事か… まさかこれが勇者ヒカル様の力、能力なのかッ⁉︎」
「あははは、そう、これが僕が神様からもらった僕だけの能力なのさ! あれ? 誰かの技の廉価版だったかな? まあいいや、とにかく他の勇者の誰よりも強い! 勇者最強の能力なんだ!」 バッ ギュウウッ! パチンッ!
ブワアアアアアンンンッ! シュバアアアアアアーーーッ!
「うおッ!」 バッ!
勇者ヒカルのブレードナイト、漆黒の「REPPUU 22型」から強力な魔力が吹き荒れ、勇者ヒカルが持つ空間全体にそれが広がっていった。
ビイ ビイ ビイッ!
『警告 警告! マスター、未知なる高密度魔力を感知、当機各所に影響を及ぼしてます。 至急退避をッ! マスターッ!』
「なにッ! わッ!」 バチバチッ! パン! ポン! ビビビ!
ブレードナイト「SHIDENKAI 21型」の操縦席内にある各種装置やスイッチ、計器類が膨大な魔力の負荷に耐えきれず、至る所でショートし放電と火花を散らしらていた。
シュウウ シュウウ… バチバチ ポン!
「くそう! 勇者だからと言ってもブレードナイトの扱いに関してはまだ不慣れなはず! 我らの方が有利だ! 全機突撃ッ!」 グイ!
プシュウウウ… グググ… ブウウウン ブウウウン
平岩大尉は中隊全機に突撃の指令を出し、操縦桿を思いっきり引いたが、大尉の機体ブレードナイト「SHIDENKAI 21型H002」始め、2個中隊60機全機が全く動くことはなかった。
「どうした002ッ! なぜ動かない! 中隊各機突撃だ!」 バッ!
シ〜ン
「002ッ! くそッ! おい山岡ッ! 佐々木ッ! 各員返事をしろッ!」 ピッ
『『『『 …ガガガ…ジ、ジジジ… 』』』』 ピピッ
「くそッ! 002ッ… 返事しろ002ッ!」 カチカチ ピピ
『ビビビ… ブ、ブブブ…』 ピ…
「そんな、002まで…」
平岩大尉がどんなに呼びかけても、中隊の誰からも返信はなく、ライナー支援システムの002も再び沈黙してしまった。
「あははは、だから言っただろ? 僕が許可しないと何もできないって」 ニヤア
「勇者ヒカル様! 貴方は我々をどうする気だッ⁉︎」
「どうするかって? そんなの決まってるだろ、後ろの奴ら同様に僕の手駒になってもらおうかな!」 フフン クイッ!
勇者ヒカルの後方で空中待機中の反乱軍ブレードナイト「ZERO 32型」45機の部隊を示した。
「わ、我らに反逆者になれと?」 グッ
「そうそう、反逆者! 僕の手足となって動く都合のいい手駒にだよ!」 ニイ!
「ふざけるなッ! 我らは天帝様に忠誠を誓った、言わば精鋭中の精鋭! どんなことがあっても天帝様に弓引くが如く所業に手を染めたりはしない!」 バッ
「はああ… やはりね、君たちもそうなんだ。 全く、この国の人間は頑固だからねえ… なかなか僕の言うことを聞いてくれない… それでは仕方がない」 ササッ シュバッ!
ヒュウウウンン スパンッ!
勇者ヒカルの目の前に光の板が現れ、その中には多数の人の名前が記されていた。
「ククク… 君たちにいい事を教えてあげるよ」 ニコ
「いい事ですと!」 グッ!
「そう、僕が神様から与えてもらえたもう一つの僕の最強能力、『人身遊戯』をね! ええっと… ヤマト皇国の…」 ぶつぶつ
「『人身遊戯』… 何だ? 勇者ヒカルは何をしているんだ?」
勇者ヒカルは、現れた光の板を指で直りながら数多くの名前を見ていた。
「あッ あったあった! これかあ、ブレードナイトライナー【平岩親吉】国防軍大尉」 ニヤ
「なッ! なぜ自分の名前を!」
「うん、ではさようならだね平岩親吉大尉」 ピッ ブウウン!
勇者ヒカルが、光の板にある平岩大尉の名前を指で押すと、平岩親吉の名前が赤く光り点滅し出した。それと同時に平岩大尉の様子がおかしくなっていった。
「うがッ! あ、頭がッ! あ、あああッ!」 ガクガクガク ガタガタ
「あはははッ! 大尉、気分はどうだい? 意識が消えて来ただろ、もうすぐ人格がなくなり僕の言う通りに動く人形になる。 そう、ブレードナイトの燃料として、その命尽きるまで魔力を放出する人形にね」 ニヤニヤ…
「ガアアアアッ! た、隊長… 勇者ヒカル…あまりに…危険…げて…い」 ガクン…
平岩大尉は、操縦席の中で意識を失い倒れ伏してしまった。
ピピピピ ピコ!
「さてと… それじゃあ他の者も同じようにっと」 タンタン パパパパ!
勇者ヒカルは光の板に表示されている第一戦闘機大隊第一第二中隊残りの59機のブレードライナー全ての名前を順に押していった。
「「「「「 があッ! ぐわあッ! や、やめろおおッ! 」」」」」
ピ ピ ピピ ピピピ
「うん、この能力、すごいのはわかるけど僕の目が行き届いてる支配空間内だけってのがねえ… 神様も意地が悪い、どうせならもっと広範囲でどこだろうとできれば楽なのに、なんでそうしないんだろう?」 ピ ピ ピピ ピピ
やがて、第一戦闘機大隊第一第二中隊60機のライナー全てが勇者ヒカルの手駒に変わっていった。 彼らの目には生気がなく、ただ茫然と操縦席に座り勇者ヒカルの命令を待っていた。
「「「「「…… うう……うう…」」」」」
ブウウンン ブウウンン プシュウウウ…
「うん、これで全部100機以上か… いいねえ、さあみんな行こうか、めざすは機動艦隊旗艦 空母「ヒリュウ」の撃沈だッ!」 サッ!
『『『『『 了解…ヒカル様ノゴ命令ノママ二! 』』』』』 ピッ
ヒイイイイインンンッ! シュババババアアアアーーーッ!
勇者ヒカルの乗る漆黒のブレードナイト「REPPUU 22型 G008」を先頭に、「SHIDENKAI 21型」「ZERO 32型」合計106機のブレードナイトが機動艦隊に向け飛んでいった。
・
・
・
ー創造神ジオス、偽世界「アーク」某所、隔絶空間ー
そこは創造神ジオスの作った偽世界「アーク」に存在する隔絶空間、彼はそこでアニスに気取られず、偽世界「アーク」におけるアニスの消去消滅と人類殲滅のシナリオを制作発動させていた。 だがそのシナリオの殆どが発動させるも条件が整わずに不発消去に終わったり、創造神ジオスの思惑とは違った方向へと流れたりと、その度に不要不発となった数多くのシナリオは消え、彼はまた新たなシナリオが作り、それらが作動するのを待っていた。
ピポ…
「うん? 何番が作動したんだ?」 サッ
ピ タタタタタ タタタタタ
「シナリオNo.1918… ヤマト皇国のシナリオが動き出したか… ふむふむ…」 ジイイ…
タタタタタ タタタタタ ピコ!
「ほう、あの勇者か… ケンゴとはまた違ったタイプの勇者だったが… ふむ、私が与えたアニスと似た能力『神聖なる支配領域』と『人身遊戯』をうまく使いこなしているようだな… ククク、いいぞ! その調子だ! その能力でアニスをできるだけ追い詰めるのだ! アニスは人間に甘い、あの勇者ではアニスを倒し、消滅させる事など遠く及ばないが、次のシナリオの発動までの時間稼ぎくらいはなるだろ!」 ニイッ カチャカチャカチャ ピピ
タタタタ ピコ!
『シナリオNo.2024 偽世界「アーク」世界大戦誘発、人類文明消滅と偽世界の崩壊』 カタカタカタ ピッ
「ふふふ、さあアニスよ! 相手は人間、貴様はどう出る!」 ニヤ
・
・
・
ーヤマト広告国防軍 第一機動艦隊旗艦 正規空母「ヒリュウ」ー
シュゴオオオオオーー ゴゴゴゴ ピ ピ ピ
ビイーー! ビコ! ビコビコ! ポン!
「司令! 戦闘空域にて動きが! 多数の機影がこちらに向かって飛行中!」 バッ
「むッ! 動きがあったかッ! どうだ、迎撃部隊の様子はッ⁉︎」
ピコ ピコ ピッ ピコ ピコ ピッ!
「方位0125、距離20800! チャートNo.017、エリア188、マークポイント106、グリーンオレンジデルタ! 速度700ノット、高度3000! 急接近中!」 ビイーッ!
「解析確認、接近中の機影は友軍機と敵機の混成部隊!」 ババッ!
「第一戦闘機大隊からの応答なしッ! 敵編隊と状況は不明ッ! 目標、共に当艦隊に接近ッ!」 バッ!
「なッ なんだとッ! 第一戦闘機大隊に通信! 呼びかけ続けろッ!」 ファサ!
「はッ! こちら艦隊旗艦空母「ヒリュウ」、第一戦闘機大隊にコンタクト」 ピッ
『ジ、ジジ ザザアアーーー…』 ピッ
「こちら「ヒリュウ」ッ! 第一戦闘機大隊フルコンタクトッ!」 カチカチ ピッ!
『ガ、ザザーーー… ジジジ…』 プツン!
「司令ッ! 第一戦闘機大隊、通信を拒絶ッ! ブロックされましたッ!」 サッ
「くッ 上空援護の第3中隊迎撃戦闘準備ッ! 全艦対空戦闘用意ッ!」 バッ
「了解ッ! 「ヒリュウ」より護衛の各艦艇に伝達! 敵ブレードナイト多数が接近、各艦対空戦闘準備!」 ピッ!
ビイーー ビイーー ビイーー
「全艦対空戦闘準備、両舷127mmフォトン高角砲スタンバイ、 PDS全機作動給弾開始、全部甲板VLS開放、対空噴進弾装填!」 カチャカチャカチャ ビコ ビコビコ ピッ!
「艦内隔壁閉鎖! フォトンフィールド最大!」 ビコビコ!
ヴヴウウウンンンッ!
機動艦隊旗艦、正規空母「ヒリュウ」は接近してくる106機のブレードナイトに対し迎撃準備が整っていった。
ビイイーーーッ! ピポ!
「司令!『ヒリュウ』及び護衛の全艦、対空戦闘準備完了! 上空直掩機の第3中隊も迎撃準備完了しました。ですが…」
「ああ、わかっておる… ブレードナイトの数が足りないのだろ?」
「はい、今からでも2番艦の空母『アカギ』搭載のブレードナイト隊を迎撃発艦させてはどうでしょうか?」
「ダメだ! 『アカギ』の部隊はすでに要塞攻略戦用に全機が爆装させている! 今から爆装を取りやめ戦闘機仕様にするには時間がなさすぎる! 『アカギ』の部隊はそのまま動くな!」
「はッ! 現行戦力で迎撃します!」 サッ
「うむ、全艦そのままだ! 接近中の目標を補足したまままだ動くなッ! 直掩のブレードナイト第3中隊もそのまま艦隊上空にて待機、命令あるまで動くな! 井伊中佐に通信を!」 バッ!
「了解! 井伊中佐、こちら艦隊旗艦「ヒリュウ」コンタクト」 カチャカチャ ピッ
ピコッ パッ
正規空母「ヒリュウ」の艦橋内にある大型情報用モニターのサブ画面に、正規空母「ヒリュウ」所属、第一戦闘機大隊隊長の井伊直政中佐が、ブレードナイト操縦席に座った状態で現れた。
『第一戦闘機大隊 大隊長の井伊中佐です!』 ピッ
「井伊中佐、悪い状況になった」
『確認してます、自分の部下たちがまさか敵側に寝返るとは…』 ピッ
「井伊中佐、60名全員がこの短時間で1人の欠員もなく、全員が敵側に寝返るなんてことがあると思うか?」
『……確かに、考えられないですね、やはり部下たちに何かあったのかもしれません』 ピッ
「そこでだ中佐、今君が指揮している『青龍隊』に斥候として奴らの状況を偵察してきて欲しいのだ」
『斥候ッ⁉︎ 強行偵察任務ですかッ! いや、アトランティアの英雄たちは兎も角、帝都学園の学生たちには荷が重すぎるのでは?』 ピッ
「頼む! 長距離センサーではどうにもならん事があるのだ。 と言って直掩のブレードナイトを割くこともできん! 彼らがどうなったのか、人の目で見て、君が感じたことを報告して欲しい」
『わかりました。 私の判断で任務をこなして良いのであればお受けいたします』 ピッ
「君の裁量に任せる!」
『了解しました! これより「青龍隊」は接近中の敵ブレードナイトの偵察と第一戦闘機大隊の様子を目視確認に向かいます』 ピッ
「うむ! 検討を祈る!」 サッ
『はッ!』 ピッ サッ ブン!
「頼んだぞ 中佐…」
・
・
・
ー機動艦隊上空 2000m付近「青龍隊」ー
「ふうう… という訳だ、全員俺について来い!」 グッ
『強行偵察ですか、遭遇戦もありですね?』 ピッ
『そうだね、じゃあ僕は、速射性の高いアサルトモードにしておきます』 ピッ
『『『 遭遇戦ッ⁉︎ 』』』 ザワ… ピピッ!
『当たり前でしょ、戦場なんだからあって当然よ!』 ピッ
「よしッ! アラン、マイロ、ジェシカ! 英雄の3人で三井たち3人をサポートしてくれ!」 サッ
『了解しました、では中佐殿が偵察を?』 ピッ
「そうだ、偵察自体は俺1人でする! その方が気楽だし自由に動けるからな!」 ニイッ!
『無茶しないでくださいね』 ピッ
「おう! まかせろ! では行くぞッ! 全機、高度を下げろ! 敵のセンサーに引っかからないように低空で近付く! 俺につづけッ!」 グイッ!
ヒイイイイイイイインンンッ! バウウウウウウウウーーッ! シュバアアアアーーーッ!
『『『『『『 了解ッ! 』』』』』』 ピピッ! グイイイッ!
シュバババババッッ! バウウウウウウーーーッ! シュゴオオオオオーーッッ!
井伊直政中佐率いる「青龍隊」は、接近する勇者ヒカル率いるブレードナイト隊に向け、スラスターを全開にして飛行高度を下げて飛んでいった。
・
・
・
ーヤマト皇国国防軍、総艦隊旗艦 超重巡航艦「ヤマト」ー
シュゴゴゴゴゴゴゴオオオオーーー ゴウン ゴウン ゴウン ピ ピ ピ
「総司令官閣下! 友軍ブレードナイトと敵反乱軍ブレードナイト部隊が同時移動を開始、目標我が第一機動艦隊!」ピコ!
「むうう、どうやったか知らんが迎撃部隊を取り込みおったか…」 ふむ…
ピ ピ ピ ピコ! ビコビコ! ピピ!
超重巡航艦「ヤマト」の広い艦橋内にある超大型の情報パネルを見て、ヤマト皇国国防軍総司令官の織田信長元帥は、そこに移るブレードナイトと各艦隊の動きを見て唸っていた。
「ん〜、取り込むねえ… まさか、またジオスが何かやったんじゃないのかな?」
「アニスよ、ジオスというのは例の創造神のことか?」
「ん、そう… まだわからないけどね」 ニコ
「ふむ… で、あるか… 操舵手! 速度をいっぱいまで上げよ! 機関が焼き切れても構わん! 『ヤマト』は機動部隊援護に急行するッ!」 バサッ!
「はッ! 了解しましたッ!」 サッ!
グヲオオオオオーーーッ! ゴンゴンゴンッ! シュゴオオオオオオーーッ!
ヤマト皇国領近海、硫黄島父島要塞の遥か手前の小笠原諸島付近で、勇者ヒカルの操るブレードナイト部隊106機と要塞攻略部隊、第一機動艦隊旗艦「ヒリュウ」とが戦闘を始めようとしていた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。