第29話 神界世界 機密事項
ー神界世界ー
神界、そこは誰もが夢見る世界。ほとんどの者がそこは楽園であり、心安げるのどかな風景を思い浮かべる。だがそれは、神界を知らず、夢見る者の妄想でしかない。現実は今いる世界と何ら変わらない、そんな世界なのだ。だが、ほとんどすべての生きとし生けるものは神界に行くことができない、だから知らない。そんな神界の一角にある場所に、あの事件以来そこから離れないものがいた。6大女神が1人【エレンディア・ディア・ゼルト】だった。彼女はあれ以来、休むことなく異次元に消えていった創造者【アニライトス・ディオ・ジオス】と彼女の作った創造世界アークを探し続けている。すでにその数は数千億を超えており、そのすべてに痕跡が見られなかった。
ピ、ピピピピピピピピピッピピ! タンタンタン、縦3m横4mの巨大な表示パネルの下に一人、椅子に座り手元のコンソールキーボードを叩くエレンディアがいた、あれからずっとここを動かず、異次元捜索に没頭している。
「探査No.12331002-B 高速探査終了 目標対象認知できず。終了、次の探査フェーズに入ります。探査No.12331002-C 探査開始、異次元内異世界反応、約300万世界、第1世界より高速探査開始します。....」
このように異次元内の異世界は無限にあり、当然その一つ一つの世界に人や動植物、妖精や魔族、魔王に勇者、それぞれの世界がある。その中の一つを探すのだ、神以外こんなことはできない作業であった。いや、神でも困難を極める作業である。だから、異次元に迷い込みロストしてしまった異世界は、神、女神の管理恩恵が立たれ、やがて異次元内で元素分解、消滅してしまうのである。
「いない、いない、ここにもいない。これは違う、ここも違う、これッ!..似ているけど違う。ジオス様、ごめんなさい、ごめんなさい、見つけますから絶対に見つけますから....」
独り言の様に探査一つ一つ調べた結果を言う、そんなエレンディアの後ろから声をかける者がいた。
「エレン、ちょっとは休みなさい。その間、ダイアナかフェルちゃんに代わってもらえばいいから」
「アリー姉さま、ありがとうございます。でもこれだけは、私のせいなんです。私が探してあげないと.」
「だからよ、しっかり休まないと、見つかるものも見つからないわよ」
「でもう..」
「休みなさいッ‼」
「ひゃいッ‼ 休みます!」
アリシアこと【アリシア・ディア・ゼルト】6大女神の長女、に手を引かれその場を出る。入れ違いにダイアナが部屋に入っていき、異次元探査、ジオス捜索に入った。
「後はやっておくね、ゆっくり休んでエレンちゃん」
【ダイアナ・ディア・ゼルト】6大女神の四女でエレンディアの姉である。
アリシアに連れて来られたのは沐浴場、いわゆるお風呂場であった。
「一度、湯に浸かってスッキリしなさい。女神がそんなじゃ台無しですよ」
「はい、すみません。では湯に浸かってきます」
脱衣場で衣服を脱ぎ一糸纏わぬ姿で浴場の扉を開く。扉の向こうは膨大な空間で、その中に多数の湯が貼ってある池状の湯槽があった。エレンディアはその中の一つに入り体を沈めた。
「ふう〜、 確かに安らぎますう」
エレンディアが浴槽の中で寛いでいると、隣に一人入って来た。
「となり、入るわよ」
「アリー姉様!」
二人は仲良く並び湯船に浸かっていた、そしてアリシアがエレンディアに話しかける。
「エレンちゃん、そんなに気にしなくても大丈夫ですよ。あのジオス様です、異次元に行ってもなんとかしちゃう人なんですからね」
「姉様にはジオス様のお力がわかるんですか?」
「わかりますよ、だって貴方達をこの神界に顕現させた時のあの力、すごかったんですから」
「私達をここに? 私はてっきりシュウゴ様が私達を顕現して下さったと思ってました」
「あら、エレンは知らなかったかしら。そうね、この際だから話しておくわね」
エレンディアはアリシアの話に身構えた。自分の知らない自分達の誕生の話だから。
「ジオス様がいたこの神界世界は、他の神界世界とは全く別物なの」
「何か違うのですか?」
「まず、ここだけ神界世界No.が無いの」
「あ、そうです、セカンダリーの神界世界は当然としてファースターでも番号がふってありますね」
「でしょう、ファースターは第1から第9まで、セカンダリーは第10から第28まで、でもここには無いの、その番号が。不思議でしょう」
「全然気が付きませんでした。言われればここの神界世界、番号なんて無いですね」
「それはね、ここが源初の神界世界だからなの」
「えっ!ここが源初の神界世界⁉︎ あの神界世界間の中で、どこかに存在しているのではないかと言われている神界世界が、ここ⁉︎」
「そう、その神界世界がここなの。知っているのはごく僅かな神だけ」
「ではここが、この神界世界がジオス様が生まれ、同時に出来た場所なんですか?」
「ん〜、ちょっと違うかな。ジオス様は別のどこかで生まれてここに来た、そして最初にここを作ったの。確かにここ以外の全ての神界世界もジオス様が作られたわ、でもここはジオス様本人が別の目的で作った神界世界、ここはジオス様の本心、心の源であり彼の方の拠所。つまりここは、ジオス様が作った住居です」
「住居って、ここお家だったんですかあ?」
「せいかあ〜い! そ、ここはジオス様の お、う、ち、家だったのです」
「ははッ、なんてスケールのでかい..」
「で、そこに存在する私たちも特別な存在!」
「特別?」
「そう、特別なの。ファースターにしろセカンダリーにしろ、ここの神界世界だけなの6大女神が存在するのは」
「他の神界世界にはいないのですか、女神は?」
「女神はいるわよお、いないのは6大女神! 私達の様な存在ね」
「やっぱり何か違うのですか?」
「ここからは神界機密事項だから、気をつけて聞いてね」
「機密事項!そ、そんなの私に喋っていいんですか?」
「あ、それは大丈夫、上位者同士の情報交換は無問題だから」
「はあ...」
「私達6大女神とシュウゴ様、デュアル様、フィーア様、あとゼクス様とクロア様シロア様、この12名の神が特別な存在ね」
「私達と6人の神界世界創造神様、で他の神との違いはなんですか?」
「私達と6人の神界世界創造神以外の創造神はジオス様が無から生み出した、いわば創造創造神なの」
「創造創造神⁉︎」
「そう、だから彼らの感情や性格は後からジオス様と一部の神が付けて上げたものなの」
「それでは、作り物の意思性格という事ですか?」
「そうね、最初はそう、だけど暫くして皆自我に目覚めそんな事は忘れてしまう。自分が最初から作られた存在なんて事を」
「じゃあ、お姉様や私達は違うのですか?」
アリシアは優しい目つきでエレンディアを見つめ頷く。
「私達6大女神と6人の創造神様は、ジオス様の体から生まれた、そうジオス様の分身体女神、創造神なの」
「えっ‼︎...」
「そう、私達は皆、ジオス様の子供達なのよ」
ここに来てエレンディアは神界における超機密事項を知った。姉、アリシアの話が本当なら、自分の体はジオス様そのもであり、ジオス様は自分を顕現、誕生させてくれた親なのだと、父親なのだと。
その瞬間エレンディアは両目から涙が溢れ泣きながら、アリシアの胸に頭を添えて懇願した。
「アリシア姉様、わ、私は今すぐに、ジオス様に、お父様に会いたいですっ‼︎」
「そうね...会いたいね..会えると..いいね..」
アリシアは自分の胸に頭を添えて泣いているエレンディアの頭を撫でた。
沐浴場内にアリシアはすすり泣き、エレンディアは声を出し鳴き声がこだまする。
エレンディアはより一層、ジオス様に合いたくなった。会っていろいろお話しをしたい、一緒に笑いたいと、もっとそばに居たいと.....
「探査No.12331002-C 高速探査終了 目標対象認知できず。修了、次の探査フェーズに入ります。探査No.12331003-A 探査開始......」
「アニスちゃんなにしてるの?」
「ん、帰る」
「えッ!か、帰るって」
「あっちに呼ばれた、またくる」
「うん、まってるね」
「じゃ、...シュンッ!...」
「またね...」
次回もよろしくお願いします。