第288話 正規空母「ヒリュウ」の学生ライナー
ーヤマト皇国国防軍 第一機動艦隊旗艦『ヒリュウ」ー
シュゴオオオオオーーー ゴウン ゴウン ゴウン ピ ピ ピ
「定時連絡、艦隊周辺に敵影なし、全艦異常なし」 カチャカチャカチャ ピ ビコ
「現在、皇国領土、三浦半島上空を通過、艦隊進路そのまま、速度28ノット、海上に出ます」 ピピ
「うむ、陸から離れる! これより、海上海中にも注意ッ! 総員、対空対潜警戒を厳とせよ!」 バ
「「「「 はッ! 」」」」 ササッ! カチャカチャ ピ タンタン ピコ! ブウウン!
カンカンカン ビーーッ!
『総員第一種警戒体制ッ! 対空対潜警戒! 繰り返す、総員…』 ポン
「この高度だ、海中からいきなり襲われることはないと思うがな」 ふむ
ヤマト皇国国防軍総本部より出撃した要塞攻略第一機動艦隊、その旗艦「ヒリュウ」の艦長で、艦隊指揮官でもある、【南雲忠一】中将は、上空と海上海中の警戒を強めるよう全艦隊に指示を出していた。 その艦橋内に1人の上級士官が入って来た。
ピ プシュウウー カツカツカツ ザッ
「空戦隊大隊長、井伊直正中佐、入りますッ!」 ババッ サッ!
「おお、井伊中佐、よく来てくれた」 サッ
「はッ それで司令官、ご用件とは何でしょうか?」 ビシッ
「フフフ、中佐、そう固くならずとも、昔の様に忠一おじさんと呼んでくれてもいいんだぞ?」 ニヤ
「い、いやああ、それはちょっと… いくら親父と同期で昔馴染みだからって今は艦隊司令官、しかも作戦行動中ですよ」 ヒソ
「くくく… まったく、直弼のヤツとそっくりだな貴様は、まあそうだな、確かに中佐の言うとうりだ」 ふむ
「それで、自分に用とはなんでしょうか?」
「うむ… 中佐、艦隊は海上に出た段階で地上部隊からの援護が一切なくなった、それは分かるな?」
「はッ、存じておりますが…」
「問題は中佐に預けた急遽、新編成編入されたブレードナイト部隊だ。 中佐の目から見て彼らは使えそうか?」
「はああ… その件でしたか… 」 う〜ん…
「中佐? どうした? いつもの様にはっきり言ってくれてかまわんぞ?」
「では… 我々、元帝都防空隊は全員が精鋭中の精鋭、今回の作戦にもなんの支障もない者たちばかりなのですが、新たに編入された増援のブレードナイト部隊の連中、あれは駄目だ、全員が1回目の出撃で帰って来れそうもない」
「それほどなのか?」
「だいたいなんですか彼らは、頂いた資料によれば熟練時間は200時間強、実践経験はゼロッ! 中には親の見栄と権力でライナーになったエセライナーもいる! とてもじゃないが戦場で、彼らに自分らの背中を任せて戦うことなどできない!」 バッ
「ふうう、やっぱりそうか…」 フリフリ
「しかもブレードライナーのくせに『ヒリュウ』には連絡艇で意気揚々と乗艦、自分たちの所有するブレードナイトは輸送機で運ばれて第二格納庫に格納ですよ? ブレードライナーなら自分の愛機を使って『ヒリュウ』に着艦してこいって言ってやりたいッ!」
「すまんな中佐、彼らはまだ未熟なんだ」
「未熟? 指令は彼らのことを知っているのですか?」
「まあな、彼らは全員、帝都学園の学徒動員兵なのだよ」
「学徒ッ! 学生を戦場に連れて来たんですかッ! 頂いた資料にはどこにもそんな事は書いてませんでしたよッ!」 バッ
「わしも彼らが乗艦した後で知ったのだ。 すぐに上層部に異議を唱えたのだぞッ! 『学生に何ができる! 作戦の邪魔だ、足手纏いになる!』とな」
「だけど無理矢理に押し付けらた…か…」
「うむ、軍上層部からは『新規精鋭を派遣する、期待してくれ』と言われていたのでな、そのまま受け入れたのだがまさか帝都学園の学生だったとは思わなかった」 う〜ん
「司令、今回の出撃の相手は要塞ですよ? しかも月読命ら反乱軍との激戦、そんな戦場に彼らが何の役に立つと言うのですか? 立ちはしませんよ! 即刻、帰すべきです!」 ザッ
「中佐の言うとうりだ、わしもそう思う、だが… 帝都学園の教師連中や軍上層部の連中は現場を何もわかっておらんのだ、反乱軍の討伐をまるで遠足気分で見ておる」 むうう…
「どうしてそんな…」
「おそらく、反乱軍側が要塞を除いてそのほとんどが無人の艦隊やブレードナイトだがらじゃないのか?」
「学生たち、学徒動員兵でも充分と?」
「うむ、しかも学生たちの中には『自分たちはブレードライナーだッ! 無敵だ、最強なんだ』と風潮し、勘違いしておる者もおる!」
「はああ… たかがブレードナイトを貸し与えられただけの仮ライナーなのによくそんなことが…」
「まったくだ、本来正式にライナーに成った者は武士の称号と国よりブレードナイト1機の自己所有が認められ、機体を1機、国から与えられる。 もちろん、ライナー自身が死亡、もしくは引退、廃嫡の暁には国へと返却されるが、その愛機と共に戦場を駆け巡るのが正規のライナーだ。 それをまだ自己所有が認められず、ただ一時所有の貸し出し量産機をまるで自分の所有物の様に扱っている。 それらはいずれ学園を卒業後には国に返さなければならぬ機体なのにな」
「もしかしたら、卒業までに大きな実績が欲しいんじゃないんですか?」
「実績? あれかッ! 『要塞攻略戦参加章!』」 バッ
「おそらく… まあ、滅多に手に入れることのできない勲章の一つですからね」 サッ
「だがあれは、攻略作戦に参加出撃してその作戦中になんらかの戦果を上げ、無事に帰還出来た者しか授与されんのだぞ? 経験もない学生風情にどうやって?」
「だから、自分たちの権力を持つ親にでも頼んで、元帝都防空隊の下に配属されたんじゃないかな?」
「なッ! そう言うことか… 」 ググ!
「たぶん彼らは、『俺たちは卒業までになんらかの実績が欲しい、親に頼んで学園と軍部に働きかけてもらおう、反乱軍討伐の『ヒリュウ』がいい、『ヒリュウ』に配属された時点で『空母航空隊章』が授与される。 さらにもう一つ大きな勲章が欲しい、だが自分たちはあまり戦いたくない、楽をして勲章を得たい、どうすればいい? そうだ、『ヒリュウ』のベテランたちの後ろで後方支援だ、頼めば可愛い後輩の俺たちに手柄を譲ってくれるかもしれない、これで楽々勲章を得ることができる。 今後の人生に大きく関わってくる証が手に入るぞ』ってところですかね」 ヒラヒラ
「まったく、生死をかけた戦いに何を… 若さゆえの甘い考えだな… 」 はああ…
「司令の言うとおり、学生たちは自分たちが戦死することなんて微塵も思っていませんからね」
「やれやれ、なあ中佐、彼らを少しでも生還できるように鍛え直してはくれぬか?」
「俺… 私に教官まがいなことをしろと? 正気ですか? 作戦行動中ですよ? 敵がこちらの都合に合わせて攻撃の手を緩ませるとお思いですか? 敵味方、数百のブレードナイトの正面戦闘、激戦の中でですよ?」
「わかっておる、だがまだ彼らは若く幼い、たとえ勲章が目当てでも死なせるには忍びないのでな…」
「はああ… (帝都学園の学生といえば15,6歳の学生か… まだまだ子供だな… ん? 待てよ確かこの艦には…)司令」
「ん?」
「まさかその学生たち、好き勝手に艦内を動き回ってはいないですよね?」
「ははは、流石にそれは無いはずだ、いかに学生とはいえ、今は準軍属扱いなのだぞ? 許可なく自由に動き回ることはできないはずだ! 彼らの専任士官にもそう言い渡しておる」
「う〜ん… だと良いのですがね…」
・
・
・
ー正規空母「ヒリュウ」 第二格納庫ー
ピーピーピー ウィイイイイイン ガガガガ
「オーライ オーライ ストーップ!」 ガコオオオンン ビコ!
「よおっしッ! 12番修練機、リフトアップ完了ッ! ハンガーへ戻せええッ! 次ッ 13番機だッ! 始めるぞッ!」
「「「「 了解ッ! 」」」」 ババッ! バタバタバタ
ピッピー ピッピー ウィイイイン ガンガンガン ジジ、ジジジジ ピ プシュウウ…
正規空母「ヒリュウ」、その艦内には大量のブレードナイトを運用するための設備が整っており、第一と第二の格納庫が存在していた。 第一格納庫には元帝都防空隊、井伊直政中佐の第一機動大隊90機が格納され、この第二格納庫には,新規編入された、学生達による増援のブレードナイト、学園仕様の修錬機が30機、格納されて整備員総出で整備の真っ最中だった。
井伊直政中佐の第一機動大隊の機体は全て帝都防空最新鋭の実戦機「SHIDENKAI 21型」で、そのまま要塞攻略戦に使用可能の高性能機だったが、編入され「ヒリュウ」の第二格納庫に搬入されてきた学生達の機体は訓練時の状態の「ZERO 11型」だった。 そこで急遽、艦内で実戦配備用の機体にする為の換装整備作業の真っ最中だった。 整備員はいつ出撃命令が出ても良いように、24時間体制で30機もの修錬機を早急に実践機使用にする為の換装作業に追われていた。
そんな忙しい第二格納庫内に、皇国国防軍「空戦隊」の記章と「空母航空隊」の記章を胸に付けた濃緑色のジャケットを着た数人の若者達が中に入って来て、慌ただしく作業をしている整備員達に声をかけてきた。
ザッ ザッ ザッ
「おいそこの整備員ッ! しっかり整備してくれよッ! なんたって俺たちの初陣を飾る大事な機体だからなッ!」 ニイッ
「三井の言う通りだ、整備員の君たちが手を抜くと苦労するのは僕たちライナーだからね」 へへ
「まったくです。 僕の愛機に傷ひとつつけたら訴えますよ」 ニヤ
その声に、一瞬第二格納庫の動きが止まった。 作業をしていた整備員が手を止め、彼らの方を一斉に見たからだった。
ざわ…
「はああ? なんだアイツら…」 ヒソ…
「この忙しい時に何言ってやがる!」 ヒソヒソ…
「手を抜くだと? うう…(ふざけるなッ!)」 ググ
整備員達は換装整備作業の手を止め、一斉に彼らに向け冷たい視線を送りながら、彼らに聞こえない程度で文句を言っていた。
「何をしているお前たちッ!」 ザッ!
「「「「 班長ッ! 」」」」 ババッ!
「作業の手を止めるなッ! 日が暮れちまうぞッ!」
「しかし班長、アイツらの態度があまりにも…」
「ああん? はんッ!(ヒヨッコどもか…) かまうなッ! いいか、ここはもう戦場だ! いつ敵襲があっても良いようにするのが俺たち整備員だッ! いちいち相手にするなッ!」 バッ!
「「「「 はッ! 」」」」 バタバタ ザワザワ ジジジジ ガンガンガン
整備員達は再び換装整備作業を再開していった。 第二格納庫に入って来て、整備員達に反感を買っていた若者達は、帝都学園よりこの正規空母「ヒリュウ」に配属された学徒動員兵の学生達で、彼らは自分たちの愛機である学園仕様の修錬機ブレードナイト「ZERO 11型」の様子を見に来ていた。
「なあ三井、見たかアイツら? 俺たちにビビってたぞ」 ククク
「当然だ、なんたって俺たちブレードライナーはこの世界で最強に位置する高位の存在なんだ!」 ふん!
「そうだよ、それに僕たちは華族ッ! 軍上層部にも意見できるほどの上流階級の家柄なんだ。 アイツら整備員が何人集まったところで僕らに逆らう事は許されない、出来ないさ」 ひらひら
「おい、次に行くぞ、まだほかにも見て回りたいからな!」
「「 ああッ!(うんッ!) 」」 コク
「ではお前たち! しっかり整備してくれよッ! いいなッ!」 ニヤ クルッ ザッ ザッ
「「 ははははッ! 」」 ザッ ザッ
学園使用の修錬機ブレードナイト「ZERO 11型」の仮ライナー、三井、住友、安田の3人の准尉は、大柄な態度で整備員達を見下した後、第二格納庫を出ていった。
ガガガガッ バチバチ バチ ガンガンガン ジジジ…
「ちッ! なんであんな奴らがブレードライナーなんだ!」 ガチャガチャ
「まったくだ、あんな奴らの機体整備なんて、命令がなけりゃしてやるもんか!」 グイグイ キュ!
「はああ、第一格納庫の井伊中佐たちは良かったよなああ」 ジジ ジジジ
「まあな、中佐たちは誰1人、俺たちを見下したりしないし、逆に労を労ってくれたもんな!」 コンコン カチ
「まあその代わり、細かいところまでチェックが入るけどな、 ん?」 カチャカチャ
「どうした? 鈴木」 サッ
先ほどの学生達が愛機にしているブレードナイト「ZERO 11型」13番機の操縦席内を整備していた鈴木整備員が、操縦席シートの裏に見慣れない装置の箱を見つけ、困惑していた。
「なんだこれは? なあ、『ZERO』にこんな装置ついてたか?」 コンコン
「本当だ、なんだろ? 班長ーッ! ちょっと良いですかあッ!」 バッ
「うん? どうした? 何かわからないのか?」 ササッ トントントン ザッ
第二格納庫の責任者である整備班長が、換装作業中の学園使用のブレードナイト「ZERO 11型」13番機の操縦席まで上がってきた。
「これです班長、これ一体何かわかりますか?」 スッ
「うん? ほおお、まあだこんなもんに頼ってるライナーがいるのか、驚きだな」 ガリガリ
「班長、これがなんなのか知ってるんですか?」
「ああ、お前たち最近整備士になった者は知らないか… コイツはブレードナイトを制御操作する上で必要とされる魔力が足りない時に使用する魔力の増幅装置さ」
「「 はあ? 魔力の増幅装置? 」」
「そうだ、通称『エビル・ブースター』、まあ要するに魔力が少ない者がこの装置を使えば、ブレードナイトを楽に操縦出来る装置ってわけだ」
「それってズルじゃないですかッ!」
「ズルじゃないさ、上が認めればこの装置を使っても、そいつはライナーに認定される。 まあ、最近はライナー規定が厳しいからその増幅装置自体見なくなったんだが、学園での使用が認められているのか、それとも…… おい、 この機体だけなのか?」
「ちょっと待ってください、12番機まではついてないのは間違いありません、今調べます! おい、行くぞ!」 バッ ダダダッ!
「「 おうッ! 」」 バッ ダダダッ!
そう言って、鈴木整備員は他の整備員達と共に、まだ換装整備前のブレードナイト「ZERO 11型」を調べ始めた。
「班長! 14番機、15番機、23番機に増幅装置が付いてますッ!」
「30番機にも増幅装置付きですッ!」
「ふむ… 全部で5機か、機体レポートがあっただろ? それを見せろッ!」
「はいッ!」 サッ
整備員の1人が増幅装置付きの機体の細かい情報、パーソナルデーターが記されているタブレット端末を整備班長に手渡した。
ピ タタタ サッ サッ ピ タタタ ササッ ピ タタタ…
「うん? はああ… そう言う事か…」 フリフリ
「班長?」
「ああ、なんでもない… このまま換装整備作業を続けろ! 例の装置には触れるな! そいつはそのままにしておけ、いいなッ!」 バッ!
「「「「 はッ! 」」」」 ババッ! バタバタバタ
ジジ ジジジジ! ピーピーピー ウイイイイン ガコオオンン カチャカチャ…
「むうう… 上流階級華族、三井家の指示で増設された増幅装置か… 一応、上には報告しておいたほうがいいな…」 サッ ピピ ピコ!
トゥルルルル トゥルルルル ガチャ
「あ、第二格納庫主任、整備班長の本多です……」
整備班長は手元の端末機でどこかに連絡を取り始めた。
・
・
・
ー正規空母「ヒリュウ」士官居住区通路ー
コツコツコツ トコトコ
「へええ、さすが正規空母、俺らの『ライデン』と違い、艦内通路も余裕の広さだね」 コツコツ
「そうね、でも、元々の設計自体が違うんじゃないの? 国ごとに空母は空母、巡航艦は巡航艦とか設計があって」 トコトコ
「ジェシカ、帝国の正規空母も同じ広さの筈だよ、確かこの世界の全ての艦艇、船舶は基本設計って物があって、多少の誤差とアレンジはあるけど皆同じ筈なんだ」 コツコツ
「そうなんだ、てっきり国別でみんな違うと思ってたわ」 トコトコ
「まあ、南の軍事国家、ミューロン連邦の艦艇や船舶はどうだか知らないけどね」 コツコツ ヒラヒラ
「そうだな、国交がないからそういう情報は入って来ないからな」 コツコツ
士官専用居住区通路を、ヤマト皇国国防軍の制服を着たアトランティア帝国の英雄、アラン、マイロ、ジェシカの3人が、艦内通路を歩いていた。 彼らは井伊直政中佐に案内された高位士官が使用する個室が与えられ、着替えもヤマト皇国国防軍の物だったが着ていいと言うことで、それを着て歩いていた。
「う〜ん、しかしヤマト皇国国防軍の軍服かあ、なんか変な感じだよな」 ササッ! コツコツ
「あら、結構似合ってるわよその軍服」 ニコ トコトコ
「そうか? ジェシカは気にならないのか?」 コツコツ
「ええ、私は他の国の軍服が着られて嬉しいわ、滅多にないことだからね」 ニコニコ
「そっか、まあ、『ライデン』に戻るまでの間だけだからそれもいいか」 コツコツ
アトランティア帝国の軍服は基本黒色で、所々に金や白などのラインや刺繍が入っており、その刺繍が着る者の階級を表していた。 ヤマト皇国の軍服は濃紺色で、階級章というバッチを右胸と襟につけていて、ともに普段は上着に男性はズボン、女性はタイトスカート姿である。 ただ、英雄の3人には借り物の軍服だったため階級章がついていなかった。
「そういえばサトシとスズカは? 一緒に来ないのかしら?」 トコトコ
「ああ、彼らは他国の勇者で名も顔も知られてるから部屋で大人しくしてるってさ」 サッ カツカツ
「ああ〜… そうだよねえ、目立つからねえ…」 トコトコ
「それより、ここの格納庫にあるブレードナイト、見たくはないか?」 二ッ ピタ
「ああ、ぜひ見たい! なんでもこの国の最新鋭機らしいじゃないか」
「そうなのッ⁉︎ 私も見たい!」
「よしッ! なら見にいこうぜッ!」 バッ
「「 おう!(うん!) 」」 バッ
タタタタッ!
3人は「ヒリュウ」のブレードナイト格納庫へと駆け出していった。
・
・
・
ー正規空母「ヒリュウ」兵員食堂ー
ガシャアアアーーーンッ! バタタタ!
「痛ってええ! 何しやがるッ!」
「ふん!、上官に対してなっていないから礼儀を教えたまでだ! 何か文句でもあるのか?」 ニイイ!
2000人を超える「ヒリュウ」の乗組員の胃袋を賄う食堂で、第二格納庫で横柄な態度を取っていたの学生ライナーの3人が、再び騒動を起こしていた。
「俺たちが何したってんだよ!」
「「 そうだそうだ! 」」 ザワ!
「はん! この階級章が見えないのか? 俺たちはお前たちより上官、ブレードライナーなんだぜ? その俺たちにそんな態度をとっても良いのか?」 ニヤ
「そうだぜ! 俺らはお前らより偉いんだ、それを教えてやってるってのになんだその態度は? 隊長に言ってお前らを全員独房にぶち込んでも良いんだぞ?」 ニヤニヤ
「「「 うう…… (くそおお 階級差がなけりゃあんなヤツら…) 」」」 タジ…
「いいか? 俺たちが来たらその場ですぐに敬礼! 速やかに席を譲りもてなせ! 分かったなッ!」 バ!
「「「 は… はい…… 」」 グググッ…
「「「 はははははッ! 」」」 ゲラゲラ
学生ライナーの3人が笑っていた時、食堂の横をアラン、マイロ、ジェシカの3人が走り去っていった。
ドダダダッ! タタタタ…
「む! なんだアイツら、俺たちに敬礼もせずに通り過ぎるとは」 ザッ
「俺たちがライナーだってことに気づいてないんですかね?」
「1人は女だったぞ!」
「女?… 女か、あの方向は俺たちの第二格納庫の方向だな」 フフフ…
「なあ三井、行ってみるか?」 二ッ
「当然だ、アイツらに俺たちの凄さを見せてやるか」 ニヤア
「おう!安田、行くぞ!」
「うん! 僕らが偉い存在だってことを教えなきゃね」 コクン
「邪魔したな下級兵ども、次に会ったらちゃんとしろよ」 ニイイ ザッ
「君たち分かったね! あはははは!」 ザッ
そう言って、学生ライナーの3人は、アランたちを追うように笑いながら食堂から出ていった。
・
・
・
ー正規空母「ヒリュウ」第二格納庫ー
ピッ! プシュウウーー タタタ ザザッ!
「「「 うわあああ…… すごく広い… 」」」 バアアアアーー
アラン、マイロ、ジェシカの3人の英雄は、正規空母「ヒリュウ」の第二格納庫に入ってきて、その余りにも広い格納庫内に驚き息をのんだ。 彼らの目の前では数多くの整備員達が、巨大なブレードナイトの換装作業に大忙しで動き回っていた。
ガンガン ピッピイー ピッピイー ウイイイイ ガコオオン! ジジ ジジジ、 バチバチバチ
「13番修錬機、リフトアップ完了! 次いッ! 14番機い!」 ババ
「「「「 了解ッ! 」」」」 バタバタバタ ガガガガ バチバチバチ
ウイイイイインン ガコオオン! ビコ!
「ハンガー固定ッ! 換装整備作業開始い!」 バッ!
「「「「 はッ! 」」」」 バババ バタバタ ガガガ ジジ ジジジ ガンガン…
「へええ、すごいですねえ、整備員の手際の良さ、感心するよ」 うん…
「ああ、どこの国の整備員も一生懸命にライナーのために働いてる。 俺たちも『ライデン』の整備員たちには感謝しなくちゃな」
「ええそうね、でも…」
「どうしたんだいジェシカ?」
「これが最新鋭機なの? なんかそうには見えないんだけど…」 ジイイ…
「そういえば… この機体『ZERO 21型』じゃないのか?」 ジイイ…
英雄の3人が目の前で換装整備作業中の機体を見ていた時、彼らの後ろから声がかかった。
「そいつは『ZERO 21型』じゃない、初期型修錬機の『ZERO 11型』だッ!」
「「「 えッ! 」」」 クルッ バッ!
その声に3人が振り返ると、そこには先ほどまで整備作業の指示を出していたこの第二格納庫の責任者、主任の本多整備班長が立っていた。
「ようッ! お前さんら、初めて見る顔だがここへは初めてか? 所属はどこだ?」
「あッ すみません勝手に入ってしまって」 ペコ
「「 すみません 」」 ペコ
「ああ、構わん、で、どこの所属だ?階級章もないようだが?」
「はい、自分たちは井伊直政中佐に、この『ヒリュウ』でアトランティア帝国の強襲巡航艦『ライデン』まで乗せていってもらっています、アトランティア帝国大陸艦隊所属、強襲巡航艦『ライデン』配属のブレードライナー、アラン・フォン・ウィルソン中尉です」 サッ
「同じく、マイロ・フォン・カルヴァン中尉です」 サッ
「同じく、ジェシカ・フォン・ルーカス中尉です」 サッ
「なッ 中佐殿の客人、しかも他国のライナーでしたか! 失礼しました。 私は『ヒリュウ』第二格納庫主任、整備班長の本多史郎技術中尉です」 サッ
「本多中尉、お邪魔をしてすみません」
「いやいやいや、ライナーでしたら興味を湧くのも致し方ありません、どうぞゆっくりと見て言ってください」
「ありがとうございます」
「「「「 はははははッ! 」」」」
バチバチバチ ガガガガ ウィイインン ガシャンッ! ジジジ ジジジジ!
「うん? おい、班長が笑いながら話してるヤツらは誰だ?」 カチャカチャ
「あん? ほんとだ、班長が笑ってら、誰だろ?」 カンカン パチ
「さっきの嫌味たっぷりの新人ライナーじゃあなさそうだ…」 ガガガガ ガンガン
「1人は女の子みたいだぞ、しかも結構可愛いいぞ!」 ガチャ…
「「 何いいッ! 可愛いだとッ! 本当だ… 可愛いい…… 」」 バッ カチャ ピタ
整備員たちの中には、本多整備班長が笑いながら話をしている3人の内の1人、ジェシカ中尉を見て、作業の手を止めて見惚れているものがいた。
「ははは、そうですか、ん? おいそこおッ! 作業の手を止めるなって言ってんだろおッ!」 ババッ!
「「「 は、はいッ! すみません! 班長ッ! 」」」 バババ サ カチャカチャ ジジジ ジジ!
「まったく。時間がねえって言うのに…」 ふむ
「なんかすみません」 サ
「いや、中尉たちが悪いんじゃないので、なんだったら少し機体を見ていきますかい?」 ニコ
「「「 はいッ! 」」」
「まあ、見て行くっつても今作業中のこの機体ばかりだがな」 サ
「そういえば新型機じゃない見たいですね」
「新型機? ああ、井伊中佐達の機体の事か、それなら第二格納庫じゃなくて上の第一格納庫の方だよ」
「ここじゃなかったんだ」
「そっちを見にくかい?」
「いえ、せっかくですからこちらの期待を見ていきます」
「そうか、では今換装整備作業中に機体には近づかんでくれ、危ないからな!」
「はい、ではあちらのは良いでしょうか?」 サッ
「うん? ああ、換装整備が終わってる『ZERO』か、良いぞ、触ってみるか?」
「「「 良いんですかッ! 」」」 バ
「ああ、かまわん! どうせ搭乗員たちも今はここにいない事だしな、触るぐらい良いだろ」
「「「 ありがとうございます 」」」 バッ! タタタタ
アラン達は換装作業が終了し、すでに戦闘機として整備が終了している機体の一機に近寄理、機体に触れ軽く魔力を流した。
さわ ピタ ヴン!
「これが『ZERO 11型』かあ、マイロ、ジェシカどうだろう?」 さわさわ
「ん〜、僕のサニーと比べると随分と火力が小さいかな?」 さわさわ
「そうね、この機体で私がレパートと同じ事したらなんか壊れそう、かえって操縦しづらいかも?」 さわさわ
「そうだね、きっとこの機体は格闘戦ではなく一撃離脱が得意の高速機なんだと思うよ、単騎ではなく、二機から三機くらいの小隊で編隊を組んでのヒットアンドウェイ、その方が戦果があげられる機体だね」 ザッ
「凄えええ、全くその通りだ! 機体に触っただけでそこまでわかるとは、流石に正規のライナーは違うな!」
3人の英雄と整備班長の本多中尉が、換装作業終了機に触れて話していた時、彼らにけたたましい大声で叫ぶ物達が現れた。
「お前らああッ! 誰に断って俺の愛機に触っていやがるッ! そこから離れろおおッ!」 ババッ!
「「 そうだッ! 離れろッ! 」」 ババ!
「「「「 うん? 」」」」 クルッ!
アラン達4人が振り向いた先には、鼻息を荒くし、顔を真っ赤に怒りの表情をした学徒動員兵の三井准尉と仲間の住友准尉、安田准尉の3人が立っていた。
「三井准尉ッ!」 バッ
「だれ?」 スッ
「さあ?」 ひらひら
「マイロ、ジェシカ、多分この機体のライナーじゃないか? 『俺の』って言ってっるし」
「ライナーッ! あれが? この機体の?」 サッ
「アラン、冗談でしょ? あの人がこの機体のライナーって… (アレで操縦できるのかしら? 魔力がほとんどないじゃない)」 ええ〜…
「いえ、彼がこの機体、『ZERO 11型』13番機の操縦者、ブレードライナーです」
「「「 は? 彼がですか? 」」」
「はい、彼がです」
「ふはははは、そうだ、俺がその機体のライナーだッ!(ふふふ、いいぞいいぞ、驚いてる、どうだ俺がこの若さでブレードナイトになったことにもっと驚け、もっと尊敬しろ)」 ムフフフ
ブレードナイト『ZERO 11型」13番機のライナー、三井准尉は鼻を高く勝ち誇った顔をして、アラン達を見ていた。
「ああ、なんかすまん」 ペコ
「触ってごめんね」 サッ
「申し訳ない、じゃあみんな、他へ行こうか?」 スッ
「「 ああ(うん!)」」 ササッ
アラン達3人の英雄達が三井准尉達に頭を下げ、その場を離れようとした時、再び三井准尉が叫んだ。
「なッ ちょっと待てええ!」 バッ
「「「 うん? 」」」 ピタ
「なに勝手に帰ろうとしてんだよ!」
「いや、別に、もう用がないから」
「はああッ? ふざけんなッ! 俺の機体にベタベタと触りやがって、どうしてくれるんだよッ!」 ダン!
「はああ… ねえアラン、あれ何?」 スッ
「さあ、なんだろねえ」 ははは…
「ジェシカ、彼はきっとこう言いたいんだよ、『俺の大事な大事な機体に勝手に触りやがって、汚いじゃないか、綺麗に掃除をしろ』ってことじゃないんですか?」 うんうん
「えええっ? あの機体のどこを掃除するのよ! 整備員さん達がピッカピカにしてあるのに?」 ス
「ウググっ! お前らあ、そんなんじゃあねえッ! おい、そこの女ッ!」 ビシッ
「え? わたし?」
「そうだ、お前だッ!」
「私になんか用なの?」
「この落とし前をつけろ! 今日からお前は俺の女だッ!」 ニヤア!
「はああッ? アラン、マイロ、アイツ頭おかしいんじゃない?」
「あはは、ジェシカさんもうちょっと言葉を選んだ方が…」 ちら
「うぬぐぐぐぐうううッ!」 カッカカカカアーッ!
「うわああ… 彼、顔が真っ赤っかだよ」
「ゆ、許さんぞお前たち、この俺を怒らせたらどうなるか…」 グググ
「ああ〜 はいはい、どうもならないわよ」 ササッ
「うおおおッ! もう許さんぞおッ! 決闘だッ! 俺たちと勝負しろこの野郎ッ!」 ババッ
「決闘ですって、どうする?」
「あのう、本多中尉?」
「はあ、」
「こう言う場合はどうなるんですか?」
「そうですなあ、あの方々は皆華族でしてね」
「「「 華族? 」」」
「はい、まあ貴方方からすれば貴族ってとこでしょうか…」
「ああ、なるほどね、もう後には引けないんだ、決闘は彼らの決定事項なんだね」
「はい… すみません」 ペコ
「よし、じゃあやろうかみんな?」
「「 うん(ええ)もちろん! 」」 コクン
「フフフ、階級もない雑魚どもめ、最下級の二等兵崩れだろ、おいお前ら準備しろ」
「三井、やる気だね? 誰をやる?」 ニイイ
「もちろん、俺にあんな態度をとったあの女だ、俺がみっちりと教育し俺に従いさせやる!」 グググ
「じゃあ俺はアイツを、安田はあのゆるそうなやつをやれ」 スッ
「うん、あんなやつ、僕にかかれば一瞬だよ、任せて」 くくく
「じゃあ行くぞ!」 ザッ
「「 おう!(うん!) 」」 ザッ
3人の准尉達はアラン達3人と決闘をやる気満々にしてアラン達に近づいていった。
「ねえアランどうする? 私はかまわないけど」
「そうだねえ、向こうが引かないって言うならやるしかないか」
「僕も構いませんよ? ただ、どの程度までやっていいんでしょうかね?」
「そうか! 本多中尉、どうすれば決闘は勝ちになるんですか?」
「そ、そうですねえ、基本的には相手が負けを宣言するか失神するか、または…」
「うん? またはなんですか?」
「そのう、戦闘不能… 要するに身動きできないほどの重症か、死に至った場合です」
「なあんだ、そんだけか」 パアア
「アラン中尉?」
「要するに、彼らに負けを宣言させればいいんだ! よしマイロ、ジェシカ、思いっきりやっちゃえ!」
「「 ああ!(うんッ!) 」」
カツカツカツ トコトコ ザッ ザッ ピタ!
「組み合わせと武器はどうしますか?」
「ああ、武器はライトニングセイバーの麻痺モード、組み合わせは俺が女ッ!お前だ!」 ビシ!
「ええ、いいわよ」 ニコ
「ぬふふ、威勢だけはいいな、おい班長、武器を渡してやれ、調整もしておけよ!」
「あ、ああ」
「俺がそこの男!」 スッ!
「ああいいよ、わかった」 コクン
「僕がそこの君だよ、覚悟してねお兄さん」 ニコニコ
「いいですよ」 ニコ
「三組一斉にやる! おい班長! 審判だ! いいな、ズルはするなよ?」 ニヤアア
「わかった、アラン中尉すまない…」
「いいですよ本多中尉」 ニコ
「なにをごちゃごちゃ言ってやがるッ! はじめるぞ!」
換装整備作業が終了したハンガーデッキ内で、アトランティア帝国の英雄アラン達3人とヤマト皇国帝都学園の学徒動員兵、三井准尉達3人の決闘が始まった。
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